体位変換の重要性と目的は? 手順や看護技術のポイントを解説
  • 2025年3月1日
  • 2025年2月28日

体位変換の重要性と目的は? 手順や看護技術のポイントを解説

 

患者さんの体位を変える「体位変換」は、看護現場で欠かせないケアの1つです。適切な体位変換は、褥瘡(床ずれ)を防ぐだけでなく、呼吸機能の改善や血流促進、リハビリのサポートにも効果を発揮します。また、体位を変えることで患者さんの快適さを保ち、精神的な負担を軽減する効果も期待できるでしょう。

当記事では、体位変換の重要性を深掘りし、目的や手順、安全に行うためのコツを紹介します。看護の質を向上させたい方や、患者さんにより良いケアを提供したい方は、ぜひ最後までお読みください。

体位の基本的な概念とは

体位とは、体の位置や姿勢を指す概念であり、立位(りつい)、座位、臥位(がい)などの種類があります。体位の定義でポイントとなるのが、「頭部・体幹と重力方向との関係」と「支持基底面の構成要素」です。

たとえば、重力方向と体の向きによって背臥位、側臥位、腹臥位、倒立位、そのほかの体位に分類できます。さらに、支持基底面の構成により、そのほかの体位は立位や四つ這い位といった姿勢に分けられます。

患者さんの安全性や快適性、日常生活動作の支援にもつながるため、適切な体位の維持は医療・介護の現場において欠かせない要素です。
(出典:J-STAGE「姿勢の定義と分類の再考」

体位の重要性

患者さんにとって適切な体位を取ることは、末梢神経障害や循環障害、褥瘡(床ずれ)などの合併障害を予防するうえで極めて重要です。また、手術に応じた適切な体位は、外科医師が良好な術野を得るのに役立ち、手術の精度と効率を高めるのに欠かせません。なお、手術体位については、外科医師や麻酔科医師、手術室看護師など多職種で協力して行う必要があり、職種の垣根を超えてチーム全体で体位を選択・管理することが求められます。

看護における体位変換の目的

看護における体位変換の目的

体位変換には、おもに次のような目的があります。

  • 褥瘡の予防
  • 変形や拘縮のリスク低減
  • 循環機能の改善
  • 肺の拡張促進
  • 廃用症候群の予防

同じ姿勢を続けると血流不良が引き起こされるほか、動きの制限による合併症のリスクも高まるため、定期的な体位変換が必要になります。体位変換により身体を動かすことで、循環障害が予防・改善でき、胸郭が広がって肺が拡張しやすくなり、呼吸機能の向上や分泌物の排出を助けるのにも効果的です。

体位変換は患者さんの快適さやQOL向上にも大きな役割を果たしています。患者さんの状態に応じて頻度や方法を調整するなど、きめ細やかなケアが求められます。

体位変換の基本的な技術とポイント

体位変換の基本的な技術とポイント

スムーズに体位変換するには、基本をしっかり押さえることが大切です。また、体位変換の注意点を知り、適切な器具の選定方法を学ぶことで、患者さんへの負担を最小限にできます。ここでは、基本的な体位変換のステップやポイント、使用器具について詳しく解説します。

基本的な体位変換の手順

体位変換にはさまざまな種類がありますが、ここでは以下の3種類の基本的な手順を紹介します。

【仰臥位から側臥位】

  • 体位変換する向きに枕を移動させ、患者さんの顔を横に向ける
  • 患者さんの腕を前胸部で組む
  • 両膝をかかとが臀部に付くくらいまで引き上げ、変換する方向へ倒す
  • 肩と腰を支えながらゆっくり側臥位にする

【側臥位から仰臥位】

  • 枕を中央に移動させる
  • 上側の下肢を支えながら後ろに回旋させる
  • 肩と腸骨を支えつつ、背中をゆっくりベッド面に戻す
  • 骨盤の位置を調整して体を直線に整える

【仰臥位から端座位】

  • 介助者の手を患者さんの首元から差し込み、首や肩を支える

  • もう片方の手を患者さんの膝を抱えるようにして支える

  • 患者さんの臀部を軸に、頭が弧を描くようにして90度回転させる

  • 抱えていた患者さんの膝をベッドの下に降ろす

患者さんの体の状態は一人ひとり異なるため、それぞれに合った変換方法で実施することが大切です。また、介助者の人数によっても手順が異なる場合があるため、状況に応じて柔軟に対応しましょう。

1人で介助すると、患者さんを引きずってしまうことがあるため、皮膚に摩擦やずれが起きやすくなります。引きずりによる皮膚の負担を少なくするためには、あらかじめ滑りやすいシートを体の下に敷いておくとよいでしょう。

安全な体位変換を行うためのポイント

体位変換を安全に行うためには、動作を行う前に患者さんに対して「これから足を動かしますね」など具体的に説明して心の準備を促すことが大切です。患者さんの体を突然動かすと、不安にさせるだけでなく思わぬけがにつながる可能性もあります。

また、ボディメカニクスを活用し、患者さんと重心を近づけて動作を行うと、介助者の身体的負担を軽減できます。効率よく体位変換できるように、ベッドの高さを変えるといった対策も方法の1つです。

さらに、安全を最優先に体位変換するためには、患者さんの身体状態に常に注意を払う必要性があります。循環状態(血圧や脈拍)、呼吸状況、意識レベルなど全身の状態を観察し、個々の状態に適した体位変換スケジュールや変換方法を選択しましょう。

使用する器具とその選び方

体位変換に用いる器具にはおもに次のようなものがあります。

  • 体圧分散グローブ
  • スライディングシート
  • クッションやポジショニング枕

体圧分散グローブはミトン型の器具で、体位変換時に生じる圧を軽減できます。スライディングシートは、患者さんを持ち上げずに移動させられるため、負担をより少なくして体位変換が可能です。

クッションやポジショニング枕にはさまざまな形状があり、体圧の分散や褥瘡の予防、姿勢の安定などを目的に用いられます。たとえば、側臥位の時は横向きの姿勢を維持するために背側に枕を置き、足部分の圧力が和らぐように足の間にクッションを挟むと効果的です。器具を選ぶ際には、骨の突出や筋緊張、浮腫など患者さんの身体状態を確認し、目的に応じて最適な器具を選ぶようにしましょう。

体位に関連する看護技術

体位に関連する看護技術

体位管理は、褥瘡予防や呼吸機能改善、リハビリ支援にも欠かせません。ここでは、看護するうえで押さえておきたい体位やポジショニングに関する技術について紹介します。

褥瘡予防のための体位管理

褥瘡の有効な予防法の1つが、定期的な体位変換です。2時間ごとを基本とし、仰臥位と30度側臥位を交互に組み合わせることで、体圧を効果的に分散させます。30度側臥位は殿部の広い筋肉で体重を支えることで圧力を効率よく軽減できるため、褥瘡ができやすい患者さんに有効な姿勢です。クッションや体圧分散寝具などの適切な器具を組み合わせ、可能であれば2人体制で摩擦や姿勢のずれがないように体勢を整えましょう。

また、アライメント(自然な体軸)を整えることも重要です。自分で体を動かせず不本意な姿勢が続くと、筋肉が緊張し血流が悪くなり、褥瘡のリスクが高まります。そのため、寝具やクッションを利用して、患者さんの体が緊張しないような姿勢をつくり出すことが、褥瘡予防になります。
(出典:一般社団法人 日本褥瘡学会「褥瘡の予防について」

呼吸機能改善を目的とした体位調整

呼吸機能を改善するための体位調整では、体位変換による機能的残気量(以下、FRC)の変化が重要です。FRCとは、安静時の呼気終了時に肺内に残る空気量のことで、ガス交換に大きく関係します。背臥位はFRCが最も少なく、肺が圧迫されて換気効率が低下しますが、座位や立位ではFRCが増加し、呼吸がより楽になります。

側臥位のFRCは背臥位と座位の中間程度で、呼吸機能の改善に有効です。また、支持前傾姿勢(上肢を支えた前傾姿勢)はCOPD患者の呼吸困難感を軽減し、FRCを増加させる効果があります。
(出典:J-STAGE「体位により変化する換気運動と呼吸機能」

リハビリテーションにおける体位の活用

リハビリテーションを進めるうえで欠かせないのが、適切な体位とポジショニングです。ポジショニングの目的には以下の4つがあります。

  • 体を安定させ姿勢を保つ
  • 筋肉の緊張を緩和する
  • 圧力を分散する
  • 患者さんがスムーズに動き出せるようにする

ポジショニングを行う際には、患者さん一人ひとりの状態や生活の状況を考慮することが大切です。たとえば、拘縮がある患者さんには、筋緊張による隙間を埋めるようなポジショニングにし、食事や移動時には改めて適切な姿勢に正すといったサポートが求められます。

ポジショニングを行うポイントは、クッションや除圧マットレスなどを使用し、体の一部に圧力が集中しないようにすることです。局所的に圧力が高まると褥瘡の原因となるため、効果的なポジショニングで皮膚や筋肉への負担を軽減し、快適かつ安全な姿勢を保持しましょう。

腕や足が拘縮している場合、無理に伸ばしたりすると骨折する可能性があります。拘縮があるときは、重力を活用することが重要です。ポジショニングピローを挿入するときには、どの方向にすれば重力がうまく利用できるか検討するとよいでしょう。

まとめ

体位変換とは、患者さんが同じ姿勢を長時間続けることで生じる健康リスクを防ぐために、体の位置を調整するケア方法です。褥瘡予防や呼吸機能の改善、リハビリテーションの促進など、さまざまな目的で行われます。

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※当記事は2024年12月時点の情報をもとに作成しています。

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