• 2023年4月11日
  • 2024年1月5日

治験コーディネーターへ看護師が転職するには? 仕事内容や給与・必要スキルも

 

治験コーディネーターは、治験が円滑に行われるように製薬会社や医療関係者、被験者の調整役を担う職業です。現在看護師として働いていて、治験コーディネーターへの転職を考えている方もいるでしょう。

看護師が治験コーディネーターを目指すには、医療機関に所属する方法と治験施設支援機関(SMO)に所属する方法の2通りがあります。当記事では、治験コーディネーターの業務内容や給与、治験コーディネーターになるための資格や条件、さらに看護師が治験コーディネーターに転職する際のポイントを詳しく解説します。

治験コーディネーター(CRC)とは?

治験コーディネーターとは、治験がスムーズに行えるように調整する仕事です。新薬を開発する製薬会社や、治験を行う医療機関と協力し、被験者になる患者さんをサポートします。

治験コーディネーターとして働く方法は、下記の2つです。

  • 医療機関に所属して業務を行う
  • 治験施設支援機関(SMO)に所属して派遣先で業務を行う

医療機関に所属する治験コーディネーターは、すでに薬剤師や看護師、臨床検査技師として所属している方が、異動または兼任で業務を行うことが多い傾向です。

SMOでは、治験を行う医療機関と契約して治験業務の支援を行っています。SMOに所属する場合は、治験コーディネーターとして提携する医療機関へ派遣される仕組みです。
(出典:厚生労働省職業情報提供サイト(日本版O-NET)「治験コーディネーター-職業詳細」

治験コーディネーターが関わるSMOとは?

病院・クリニックは看護師の代表的な活躍フィールドですが、「企業で働く」という選択肢もあります。実際にマイナビ看護師が行った「看護師白書 2020年度版」の調査では、看護師全体のうち2.1%が「企業」で働いています。
(出典:マイナビ看護師「看護師白書 2020年度版」

看護師が企業で働くときは、「SMO」と呼ばれる企業に所属し、治験コーディネーターとして働くという方法も1つの選択肢です。

SMOとは、「Site Management Organization」の頭文字を取った略称であり、いわゆる「治験施設支援機関」のことです。GCPに基づく適正かつ円滑な治験を実施できるよう、次のようなあらゆる治験業務を支援します。

SMOの主な業務
  • 治験開始・実施中のサポート
    「SOP」と呼ばれる手順書を医療機関ごとに作成・提供し、治験責任医師や協力スタッフへの説明・周知を行います。また、治験実施中は院内に「治験事務局」を立ち上げ、あらゆる関連情報を収集しながら進行状況の管理・関係機関の窓口を担います。
  • IRB(治験審査委員会)の設立・運営補助
    治験の安全性や倫理性などを中立的な立場で審査するIRBの設立を補助するほか、資料・議事録の作成や委員への会議招集・教育といった運営サポートも行います。
  • 治験コーディネーターの教育・派遣
    専任の治験コーディネーターを配置できない小規模クリニックや、治験コーディネーターの所属人材が不足している医療機関に対して治験コーディネーターを派遣します。

治験コーディネーターになるために必要な資格

治験コーディネーターになるために必要な条件や資格は、定められていません。特別な資格や経験がなくても治験コーディネーターへの転職を目指すことは可能です。

ただし、医療に関する知識や経験がある場合は、採用時に優遇されやすい傾向にあります。看護師・薬剤師・臨床検査技師などの資格を持っていれば、治験コーディネーターへの就職や転職の際に有利に働くでしょう。

また、医療機関に所属する場合、新卒採用で治験コーディネーターになれるケースはごく稀です。院内で働く治験コーディネーターは、看護師や薬剤師として働きつつ、治験コーディネーターの業務を兼務するケースが多く見られます。
(出典:厚生労働省職業情報提供サイト(日本版O-NET)「治験コーディネーター-職業詳細」

治験コーディネーターとして勤務する看護師の仕事内容・給与

治験コーディネーターとして勤務する看護師の仕事内容・給与

看護師が治験コーディネーターとして働く場合、「治験の準備」「治験中の対応」「結果報告」などの業務を担当することになります。治験コーディネーターの仕事に興味がある看護師さんは、まず実際の仕事内容や給与について知っておきましょう。

ここからは、治験コーディネーターとして勤務する看護師の仕事内容と給与について具体的に解説します。

治験コーディネーターとして勤務する看護師の仕事内容

治験コーディネーターとして勤務する看護師の仕事内容は、下記の通りです。

治験の準備
  • 治験実施計画書の確認
  • 製薬会社が行う説明会に参加
  • 治験薬や検査キットの受け取り
  • 被験者の募集と選考
  • 投薬や検査の日時などの予定表を作成
治験中の対応
  • 被験者に対する服薬指導
  • 検査の方法や副作用の説明
  • 医師の診察への同席
  • 服薬状況や有害事象などのデータ入力
結果報告
  • 製薬会社に報告する症例報告書の作成補助
  • 製薬会社と病院への治験終了報告書提出

治験コーディネーターは、製薬会社の担当者や被験者、医師といったさまざまな人と関わる時間が長く、コミュニケーション能力が求められます。

被験者が安心して治験を受けられるよう、不安に寄り添うことや悩みを聞くことも治験コーディネーターの仕事の1つです。また医師は診療時間が限られるため、時間内に問診や服薬状況の確認などを済ませておく必要があります。
(出典:厚生労働省職業情報提供サイト(日本版O-NET)「治験コーディネーター-職業詳細」

治験コーディネーターとして勤務する看護師の給与

治験コーディネーター含む「その他の保健医療従事者」の年収相場は、下記の通りです。

年収 約443万円

治験コーディネーターの想定年収は、勤務地・職場・経験年数などによっても異なるものの、約443万円が相場となっています。一方で、看護師の年収相場は約508万円です。年収相場は治験コーディネーターよりも看護師のほうが高く、看護師さんが治験コーディネーターに転職すると年収がやや下がる可能性があります。
(出典:e-Stat「令和4年賃金構造基本統計調査 表番号1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」

治験コーディネーターに転職する際に給与面が気になる場合は、求人内容に「看護師資格保有者への資格手当支給」「役職手当支給」などが記載されている勤務先を選ぶとよいでしょう。しかし、給与面だけを見て応募先を決めるのはよくありません。福利厚生が充実しているか研修制度が充実しておりスキルアップを図りやすいかといったポイントも要チェックです。

また、治験コーディネーターとして経験を積むと「CRC認定試験」が受けられます。CRCの認定資格を有していることで資格手当が支給されるケースもあるため、治験コーディネーターを目指す方はCRC認定試験があることも覚えておきましょう。

治験関連企業(CRA、CRCなど)の看護師求人・転職・募集おすすめ一覧 – マイナビ看護師・公式

治験コーディネーターに転職する看護師に必要なスキル

治験コーディネーターに転職する看護師に必要なスキル

看護師が治験コーディネーターとして転職する場合は、多彩なスキルが求められることを覚えておきましょう。

  • PCスキル
  • 事務処理能力
  • 薬事関連法規への理解力
  • 疾患背景・統計解析・薬物動態への理解力
  • スケジュールの管理能力
  • 治験チームの調和・調整力
  • 治験チーム・被験者への説明力
  • 医師との専門的な会話力

治験コーディネーターがあらゆる業務を円滑に行うためには、基礎的な医学知識はもちろん、PCスキルや事務処理能力も必須です。これらのスキルは多くの求人において最低限必須とされることも多いため、転職前にしっかりと身につけておくとよいでしょう。

また、治験支援業務を進めるためには薬事関連法規や疾患背景などへの理解力も欠かせません。薬事関連法規や疾患背景などへの理解力があれば、治験の手順をスムーズに把握できるほか、あらゆる場面における判断力も培われます。臨床経験を積んで医学・薬学的知識や法的知識を身につけることで、薬事関連法規や疾患背景などへの理解力は自ずとアップするでしょう。

加えて治験コーディネーターに転職する看護師には、治験を実施する医療機関の医師やスタッフ、治験依頼者・被験者の方との高いコミュニケーションスキルも必要といえます。特に被験者には倫理的配慮も求められるでしょう。
(出典:厚生労働省職業情報提供サイト(日本版O-NET)「治験コーディネーター-職業詳細」

看護師から治験コーディネーターへ転職するメリット・デメリット

看護師から治験コーディネーターへ転職するメリット・デメリット

看護師が治験コーディネーターへ転職する場合、やりがいや働き方の面でさまざまなメリットがあります。一方で、人によってはデメリットに感じる部分もいくつかあるため、メリットとデメリットを確認したうえで転職を検討することが大切です。

ここでは、治験コーディネーターへ転職するメリットとデメリットを解説します。

治験コーディネーターへ転職するメリット

治験コーディネーターへ転職する主なメリットは、以下の通りです。

  • 新薬開発に貢献できる
    治験コーディネーターの役割は新薬開発のサポートであり、病気に悩み苦しんでいる人を救うことにつながります。新薬開発という目標に向かって、日々やりがいを持って働けます。
  • プライベートを確保しやすい
    治験コーディネーターには夜勤がなく、基本的に日勤のみです。勤務する医療機関によっては土日に休みを取りやすく、プライベートの時間をしっかり確保できます。

看護師の1か月あたりの夜勤回数は、4~5回です。勤務形態は、日勤と夜勤の2交代制や3交代制の職場が多く見られます。プライベートの時間を確保できないことに悩んでいる看護師も少なくありません。
(出典:マイナビ看護師「看護師白書 2020年度版」

「新薬開発に貢献したい」「プライベートの時間を確保したい」という看護師さんは、治験コーディネーターへの転職も検討してみましょう。

治験コーディネーターへ転職するデメリット

治験コーディネーターへ転職する主なデメリットと注意点は、以下の通りです。

  • デスクワークが増える
    治験コーディネーターの仕事は、書類作成などのデスクワークも多くなります。長時間のデスクワークが苦手な場合は、疲れやストレスを感じやすくなる可能性があります。
  • 医療行為を行わない
    治験コーディネーターは採血や調剤などの医療行為を行わないため、業務のなかで看護師としての経験を積むことはできなくなります。そのため、看護師として元の職場へ戻ることが難しい場合もあります。

治験コーディネーターは最低限のPCスキルが求められるほか、法律に関する一定の知識も必要です。また治験コーディネーターは医療行為を行わないため、看護師業務にブランクが生じることも理解しておきましょう。

治験コーディネーターに向いている看護師の特徴

治験コーディネーターに向いている看護師の特徴

治験コーディネーターに特別な資格は不要ですが、スムーズに治験を進めるには適性が求められます。

治験コーディネーターに向いている看護師の特徴は、以下の通りです。

コミュニケーション能力がある人
治験には製薬会社の担当者や被験者、病院関係者など多くの人が関わるため、治験コーディネーターには治験をスムーズに進めるコミュニケーション能力が求められます。また、それぞれの立場の人と連絡を取りながらスケジュールを調整するのも大切な仕事です。治験コーディネーターとして働くうえで、コミュニケーション能力や調整能力は必要不可欠といえるでしょう。

柔軟な対応ができる人
治験は予定表に沿って進められますが、被験者の体調やさまざまな事象によって予定が変わることも少なくありません。「状況に合わせて予定を変更する」「優先順位を考えて動く」など、柔軟な対応力が必須です。

責任感のある人
治験コーディネーターは、目の前の患者さんだけではなく、病気に悩む多くの患者さんの未来に関わる仕事です。医療現場で働くスタッフと同様に、責任感と使命感を持って働ける方に向いています。

治験コーディネーターは人と直接関わる機会が多いため、コミュニケーション能力と柔軟な対応力が欠かせません。被験者や多くの患者さんの健康に関わる仕事をしているという責任を自覚し、日々の仕事に取り組むことが大切です。

看護師が治験コーディネーターに転職する際の確認ポイント

看護師が治験コーディネーターに転職する際の確認ポイント

看護師が治験コーディネーターに転職する際は、「看護師経験者の数」と「治験の領域」の2つをポイントに転職先を探しましょう。

求人選びの際は、その施設における看護師経験者の数と治験の領域をあらかじめ確認しておくことで、転職後のミスマッチを防げます。

なお、これらのポイントは求人情報に記載されているケースもあれば、記載がないケースもあります。求人情報に公開されていない場合は、看護師求人サイトのキャリアアドバイザーを通して聞く、もしくは直接問い合わせて確認するとよいでしょう。

ここからは、看護師が治験コーディネーターに転職する際の確認ポイント2つを、それぞれ詳しく説明します。

看護師経験者の数

「看護師出身の治験コーディネーターの割合」が多い職場は、それだけ看護師経験者にとって価値観がマッチしており、職場の雰囲気に馴染みやすいということです。

スタッフ同士で共通の経験があるからこそ関係性も構築しやすく、チームでの業務もより積極的に取り組めるでしょう。

また、看護師経験のある治験コーディネーターが教育担当者となった場合は、自身が看護師として培ってきた経験・知識・資質を正確に理解してくれる可能性も高まります。適切な指導を受けられる機会の増加によって、スムーズなスキルアップも実現できるでしょう。

治験の領域

看護師が治験コーディネーターへ転職するときは、各SMO事業・医療施設が実施する治験の領域をチェックすることも大切です。

職場によって、主に実施する治験内容の傾向は大きく異なります。たとえば「オンコロジー領域(がん領域)」「CNS領域(中枢神経系領域)」「ワクチン領域」など、分野は実にさまざまです。

職場が得意とする治験の領域と自身が経験・興味のある領域が合っていれば、仕事のやりがいを感じやすく、モチベーションを維持しながら働けます。

転職先を探すときは、経験または興味のある領域での治験が行われているかどうかを見ておきましょう。治験実績(治験支援実績)・治験実施症例数などを確認することで、その職場が得意とする領域や特に力を入れている領域が分かります。

【看護師向け】治験コーディネーターの志望動機

【看護師向け】治験コーディネーターの志望動機

看護師が治験コーディネーターとして働ける求人に応募したときは、当然履歴書や職務経歴書の作成・提出が必要です。履歴書には志望動機を記入する必要があるほか、面接では面接官から改めて具体的な志望動機を聞かれることも多々あります。

面接官や採用担当者に対してよい印象を与えるため、そしてできる限り採用率を高めるためにも、志望動機を作成するときは下記3つのポイントをおさえましょう。

  • 業界で働きたい理由を述べる
  • これまでの就業経験から活かせるスキルを話す
  • 応募する企業を志望した理由を述べる

文字数が限られている志望動機では、伝えたい内容を端的にまとめるためにも、まずは業界で働きたい理由を述べましょう。看護師から治験コーディネーターへの転職であれば、「なぜ看護業界から治験業界に興味を持ったのか」を考えると、自ずと理由が見えてきます。

その後、看護業務の経験から治験コーディネーターとして活かせるスキルは何かを話しましょう。活かせるスキルを述べることで、業界への興味度がより伝わるだけでなく、自身がどのような治験コーディネーターとして活躍できるかといった意気込みも伝わります。

これらの前提条件を述べた後は、「数ある治験施設からなぜここを選んだのか」という、企業への志望動機をしっかりと伝えましょう。このとき、「ほかの企業でもよいのでは」と思われないよう、「患者さんや医療の未来を切り拓く仕事に携わりたい」、「この先患者さんとなる方をより数多く救える仕事に就きたい」というような内容にまとめると、「なぜ治験業界を選んだのか」が伝わりやすいでしょう。

治験コーディネーターの志望動機の例文

最後に、看護師から治験コーディネーターに転職する際の志望動機の例文を紹介します。

前職では、総合病院の病棟看護師としてがん患者さんと接する機会が多くありました。入院患者さんのなかには、新たな治療法や薬の開発を待ち望んでいた方が多くいたにもかかわらず、何もできないことを日々悔しく感じていました。こうした経験から、治験コーディネーターとしてのキャリアに興味を持つようになりました。

私は、患者さんのニーズの理解や臨床試験の適切な実施サポートに強みを持っています。

今後は看護師としての経験を活かして、がん患者さんの希望を実現するため、そしてチームと協力して確かな成果を出すためにも、がん領域の治験を行っている貴社に貢献したいと考えております。

志望動機は200文字以上300文字程度で作成するとよいでしょう。志望動機が100文字以下と少ない場合は、「意欲がない」と判断されやすくなります。一方で400文字以上の長文は読み手側の負担となるほか、本当に伝えたいことも伝わりにくくなることに注意が必要です。

まとめ

治験コーディネーターとして働くうえで、特別な資格は必要ありません。しかし、治験が適切に行われるように多くの人とコミュニケーションを取り、スケジュールを調整する能力が求められます。看護師さんが治験コーディネーターに転職する際は、看護師として培ってきた薬に関する知識、コミュニケーション能力が十分に活かせるでしょう。

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※当記事は2023年11月時点の情報をもとに作成しています

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