• 2023年3月25日
  • 2023年3月22日

点滴滴下計算はどのように行う? 計算方法や点滴時の注意点も解説

 

患者さんへの点滴は、看護師が行う機会の多い業務です。看護師が患者さんへ点滴を行う際は、医師から渡される点滴指示書に沿って行う必要があります。点滴指示書には、安全に点滴を行うためのいくつかの決まりが記載されており、看護師はそれを参考に点滴滴下計算をしながら点滴を行うことが基本です。

しかし、点滴滴下計算はやや難しく、ベテラン看護師のように暗算で出すことが難しい看護師さんも多いでしょう。慣れていないからこそ、無理に暗算で求めず、正しい計算方法を理解することが大切です。

そこで今回は、看護師が行う点滴滴下計算について、概要や算出方法を挙げながら詳しく解説します。点滴を行うときの注意点も説明しているため、点滴に慣れていないという看護師さんはぜひご覧ください。

点滴滴下計算とは?

点滴滴下計算が何かを知る前に、まずは点滴の滴下数について理解しておきましょう。

点滴滴下数とは、輸液ポンプ用セット・輸血用セットから落ちる輸液の敵数のことです。輸液の注入速度は決まっており、看護師は点滴指示書に記載された指示に従って点滴を行う必要があります。

注入速度が早ければ、当然滴下スピードも早くなります。滴下スピードが基準値よりも早まると、さまざまな症状が出るおそれがあるため、看護師は滴下計算を正確に行うことが大切です。

簡略化した式や独自の式を用いた計算に慣れた看護師は、暗算で点滴滴下数を出すケースもありますが、点滴滴下計算はやや難しく、最初のうちは混乱することも多々あるでしょう。

前述の通り、点滴滴下のスピードは患者さんの負担に大きく影響する要素といえます。点滴や点滴滴下数計算に慣れていない看護師だからこそ、最初はしっかりと正しく計算することが大切です。

点滴滴下計算の方法は?

点滴滴下計算の方法は?

点滴滴下計算は、「1時間あたりの投与量」を求めた後に「1分あたりの投与量」を求め、最終的に「1分あたりの滴下数」を求めることが基本です。

それぞれの計算方法は、下記の通りとなっています。

(1)1時間あたりの投与量
総投与量 ÷ 投与時間

(2)1分あたりの投与量
1時間あたりの投与量 ÷ 60分

(3)1分あたりの滴下数
1分あたりの投与量 × 20滴/mLまたは60滴/mL

基本の点滴滴下計算は上記の形となるため、まずはこの形式をしっかりと覚えておきましょう。

一般用輸液セットと微量用輸液セットどちらを選ぶ?

前述した「1分あたりの滴下数」では、1分あたりの投与量に20滴/mLまたは60滴/mLをかけるという計算方法が基本と説明しました。この「20滴/mLまたは60滴/mL」は、点滴の際に使う輸液セットの違いで判断します。

20滴/mLの輸液セットは「一般用輸液セット」と呼ばれるもので、主に成人用ルートとして用いられます。一方で、60滴/mLの輸液セットは「微量用輸液セット」と呼ばれ、主に小児用ルートとして用いられることが基本です。

しかし、大人の患者さんであっても微量用輸液セットを用いるケースはあります。どちらの輸液セットを用いるかは、最終的に1時間あたりの輸液量で判断するためです。

点滴においては、1時間あたりの予定投与量によって一般用輸液セットと微量用輸液セットのどちらが滴下数を調整しやすいかが変わります。「1時間あたりの投与量が60mLより多ければ一般用輸液セット、少なければ微量用輸液セットを用いるとよい」と考えておきましょう。

実際の計算はどのように行う?

ここまで紹介した点滴滴下の基本的な計算方法と、一般用輸液セット・微量用輸液セットの違いを踏まえ、現実的なシーンに沿って点滴滴下計算のシミュレーションをしてみましょう。

たとえば、5時間で500mLの点滴を一般用輸液セットを使用して行う場合の点滴滴下数は、下記のような計算方法で求めます。

(1)1時間あたりの投与量
500mL ÷ 5時間 = 100mL/時

(2)1分あたりの投与量
100mL ÷ 60分 = 1.666…mL

(3)1分あたりの滴下数
1.666…mL × 20滴/mL = 33.333…滴

点滴滴下計算では、得られた数値の小数点以下第1位を四捨五入することが基本です。したがって、5時間で500mLの点滴を一般用輸液セットを使用して行う場合の点滴滴下数は、四捨五入して「約33滴」となります。

点滴を行うときの注意点

点滴を行うときの注意点

点滴を行う際は、滴下数の計算だけでなくほかにも気を付けるべきポイントがいくつかあります。主な注意点は、下記の通りです。

  • 滴下速度が変わっていないか確認する
  • 静脈炎・血管外漏出が起こっていないか確認する
  • 副作用やアナフィラキシーショックが起こっていないか確認する

最後に、患者さんに点滴を行うときの3つのポイントを詳しく解説します。

滴下速度が変わっていないか確認する

点滴滴下速度は、患者さんの体位・体動によって変化しやすいことに注意が必要です。特に、臥床患者さんよりも自由に体を動かせる患者さんは、腕の位置や高さが変わりやすく、点滴スタンドやボトルと刺入部の高低差によって滴下速度が変化しやすくなります。加えて、腕の湾曲などで血管が圧迫(うっ血)することによっても流量は変化します。

そのため、看護師は患者さんの点滴状態を定期的に確認し、滴下速度が変わっていないかをしっかり見ておきましょう。滴下速度が変わっていた場合は、変動要因を把握したうえで、患者さんに滴下速度が変動しないための方法を説明する・患者さんの体位変化をして点滴速度調整を行うなど、適切な対処をとる必要があります。

静脈炎・血管外漏出が起こっていないか確認する

静脈カテーテルの状況によっては、静脈炎や血管外漏出が起こる可能性があります。

静脈炎とは、点滴で投与した輸液・薬液が血管内皮を刺激することによって、発赤や痛み・腫れといった症状が静脈に沿って起こる状態のことです。そして血管外漏出とは、点滴で投与した輸液・薬液が血管外の周辺組織に漏れることによって、組織の炎症が起こる状態を指します。

静脈炎や血管外漏出は、患者さんの体動が原因となるだけでなく、たとえ臥床患者さんであっても血管の脆弱化が原因で起こるケースもあることに注意が必要です。これらをしっかり防ぐためには、定期的に観察し記録に残す必要があります。また、点滴中の患者さんに静脈炎や血管外漏出の症状が見られた場合はすぐさま主治医に報告し、主治医の判断・指示に沿って適切な処置を講じましょう。
(出典:神奈川県看護協会「(公社)神奈川県看護協会 医療安全情報 No.8≪血管外漏出対応≫」

副作用やアナフィラキシーショックが起こっていないか確認する

点滴や患者さんの状態によっては、副作用やアナフィラキシーショックが発生し、患者さんの体調や健康状態に何らかの変化が起こる可能性もあります。

点滴によって考えられる副作用としては、痛み・口渇・低血糖・低カルシウム血症などが挙げられます。どのような副作用がどのようなレベルで発生しているのかは個人差があるため、一人ひとりの患者さんの状況を見て適切な対処法を判断する必要があるでしょう。

また、点滴によるアナフィラキシーショックでは、全身の皮膚の掻痒感や痛みといった皮膚症状から、呼吸困難などの呼吸器症状、さらに嘔吐などの消化器症状が発生します。

アナフィラキシーショックは、点滴の投与後比較的早い段階で起こる傾向にあるため、点滴開始5~15分間は早期発見のためにも定期観察にはさらなる注意が必要です。また、症状の発現だけでなく進行速度も個人差があるため、少しでもアナフィラキシー症状が見られた場合は速やかに点滴を中断し、適切な処置を講じる必要があります。

まとめ

看護師が患者さんに点滴を行う際は、点滴滴下計算を行い適切な注入速度を求めなければなりません。点滴滴下計算では、1分あたりの点滴滴下数を求めます。計算がやや難しいため、最初から暗算でスムーズに求めることは困難でしょう。最初のうちは、無理に暗算するよりもスマホの電卓機能や計算機などを用いて正確性を重視することが大切です。

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※当記事は2023年1月時点の情報をもとに作成しています

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