「災害救助の現場で働きたい」「現場に出向いて人の命を救いたい」といった思いから、DMAT隊員を目指す方は少なくありません。医師とチームを組み、自衛隊や救急隊と協力しながら災害現場で活躍する姿に憧れを抱く看護師さんもいるでしょう。
当記事では、DMAT隊員になるためのプロセスや適性について分かりやすく解説しています。看護師さんとして働きつつ、将来のステップアップを考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
DMATとは?
DMAT(ディーマット)とは、Disaster Medical Assistance Teamの略称で、「災害派遣医療チーム」を意味します。
厚生労働省や地域からの要請を受け、災害急性期の医療活動や現場近くの病院での医療支援を行うことがDMATの主な業務です。自然災害の発生現場や大規模な事故現場など、さまざまな派遣先で救命医療を行っています。
(出典:厚生労働省DMAT事務局「DMATとは」)
DMATは下記のメンバーで構成されたチームに分かれて活動しています。
チームの人数 | 基本的に4人 |
---|---|
構成員 | 医師1人 看護師2人 業務調整員1人 |
役割 |
医師
|
看護師
|
|
業務調整員
|
常に複数人が1つのチームとなって行動するのが原則で、チーム内の看護師さんは「DMAT看護師」や「DMATナース」とも呼ばれます。医師がスムーズに多くの患者さんを診療できるようサポートするのはもちろん、患者さんの身体及び精神のケアを行うのも、DMATに加わる看護師の重要な役割です。
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DMATになるための方法は?
DMAT隊員として活動するためには、厚生労働省の定める「DMAT登録者」になる必要があります。看護師であれば新たに取得しなければならない資格はありませんが、DMAT隊員養成研修へ参加して試験に合格し、DMATメンバーとして登録を受けることが必要です。
(出典:厚生労働省DMAT事務局「日本DMAT活動要領」)
看護師さんがDMAT隊員になるための、詳しい方法を確認しましょう。
DMAT指定医療機関で働く
DMAT隊員になるためには、以下の指定医療機関で働き、厚生労働省の定める研修と試験を受ける必要があります。
1.「DMAT指定医療機関」 |
---|
災害時等、DMAT登録者の派遣に協力することを厚生労働省・都道府県と約束している医療機関 |
2.「災害拠点病院」 |
災害時等、医療を提供する地域の拠点として国に指定され、災害時にDMAT活動拠点本部として使用される病院 |
「DMAT指定医療機関」が更新制である点は注意が必要です。DMATを目指す方は、勤務している病院がDMAT指定医療機関になっているかどうか必ず確認しましょう。DMAT指定医療機関は、広域災害救急医療システム「EMIS」で調べられます。
研修を受け、DMAT登録者になる
DMAT隊員として登録するためには、以下いずれかの要件を満たすことが必要です。
- 厚生労働省が実施する「日本DMAT隊員養成研修」を終了していること
- 研修と同等の学識・技術を有するものとして厚生労働省から認められていること
研修を受けず隊員として認証されるケースは極めて稀であり、通常は「日本DMAT隊員養成研修」を受講し合格して認証・登録を受けます。
研修を受けるには医療機関からの推薦を受ける必要があるため、勤務先の病院にあらかじめ希望を伝えておくとよいでしょう。
研修は4日間行われ、内容は救急や消防、自衛官などの代表者による講義をはじめ、実技指導や想定訓練など多岐にわたります。最終日に行われる筆記および実技試験に合格することで、DMAT隊員としての登録が行えます。
(出典:厚生労働省DMAT事務局「平成22年度第5回日本DMAT隊員養成研修」)
(出典:東京都福祉保健局 東京DMAT「10.隊員養成研修」)
DMAT隊員資格は5年ごとの更新制です。更新には、5年以内にDMAT技能維持研修を2回以上受講することが必要です。また、さまざまな災害に備えるため、ほかにも定期的に研修が行われます。
下記では、DMAT隊員が受ける研修の一部を紹介します。
研修名 | 所要日数 | 概要 |
---|---|---|
DMAT技能維持研修 | 2日 |
|
統括DMAT研修 | 2日 |
|
DMATとして働くのに向いている人は?
DMAT隊員として活動する際には、病院とは状況が大きく異なる過酷な環境下での活動が求められます。そのため、災害医療活動では病院勤務とは異なるスキルや適性が必要です。
ここでは、DMAT隊員として活動するために必要な能力や心構えを紹介します。自分がDMAT隊員として働くのに向いているかどうか、判断する際のヒントにしてください。
救急医療の経験がある人
DMATは、災害急性期に活動することを目的とした医療従事者のチームです。十分でない医療体制の元で多くの被災者の救済を行う必要があるため、急性期に特化した高い医療スキルが求められます。
病院勤務でも、救命救急や救急外来の現場で活躍してきた方は、DMAT隊員として災害現場で多くの人を助けられるでしょう。救急医療に必要な経験・スキルは、DMATでも同様に求められます。
- 医療施設以外での現場活動経験(ドクターヘリや災害現場)
- 豊富な救急、救命処置経験(救急蘇生処置、止血、包帯法、骨折時の応急処置)
- 生活行動支援
- 処置介助
- 医療チームが円滑に機能するよう調整する能力
- 一般の人達に対する救命・救急処置の指導
- 迅速な判断力
- 適切なストレス対処能力
出典:日本救急看護学会「救急領域の認定看護師・専門看護師とは」)
突然の出動要請に応じられる人
万が一災害が発生したとき、DMAT隊員は即時に待機を行う必要があります。その後、災害の規模に応じて派遣の有無が決まり、出動することになれば突然の要請でも現場に向かいます。
DMAT出動要請概要 | |
---|---|
災害発生時、厚生労働省や被災地域の都道府県からの派遣要請に基づき、派遣される。要請の基準は災害の種類によっても異なり、規模によっては要請の範囲を他県、所属ブロック、全国と広げる。 | |
災害の規模 | 要請の範囲 |
震度6弱の地震 死者数が2名以上50人未満程度の災害 |
管内のみ |
震度6強の地震又 死者数が50人以上100人未満見込まれる災害 |
管内 隣接する都道府県 所属するDMAT地区ブロック |
震度7の地震 死者数が100人以上見込まれる災害 |
管内 隣接する都道府県 所属するDMAT地区ブロック 所属ブロックに隣接する地区ブロック |
南海トラフ地震(東海地震、東南海・南海地震を含む) 首都直下型地震 | 全国 |
自分が所属する都道府県及びDMATブロック以外の地域の災害においても、災害の度合いによっては派遣要請が出る可能性があります。そのためDMAT隊員には、直ちに出動要請に応じられる人材が求められます。
まとめ
当記事では、看護師さんがDMAT隊員として活動するためのプロセスや適性について解説しました。
DMAT隊の看護師さんとして活躍するためには、迅速な判断力、高い救急処置技術、豊富な看護経験などさまざまなスキルが求められます。隊員になるには医療機関からの推薦や研修の受講などの要件をクリアする必要があります。
災害介護や人命救助活動に興味のある方は、救急医療のスペシャリストであるDMAT隊員を目指してみてはいかがでしょうか。医療従事者としてのステップアップや仕事への新たなやりがいを求める方は、看護業界に精通したキャリアアドバイザーに相談できるマイナビ看護師をぜひご活用ください。DMAT指定医療機関や災害拠点病院への転職についても、無料で相談が可能です。
※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています