• 2022年11月29日
  • 2022年11月28日

ROM(関節可動域)とは? 看護現場で知っておきたい測定方法も解説

 

ROMはすべての看護師さんに必須の知識です。しかし、看護師さんのなかにはROMの知識や技術を活かす機会が乏しい方もいるでしょう。また、これから看護師を目指す方にとっては馴染みが薄いかもしれません。さらに、看護技術を高めるためにも、ROMについて勉強し直したいと考えている方もいるのではないでしょうか。

当記事では、ROM測定の目的や代表的な関節の可動域、関節運動の種類、測定値の表示方法を解説します。あわせて看護師さんがROM測定・訓練を行う際のポイントについても紹介するため、ROMについての知識を深め、現場で看護を行う際の参考にしてください。

ROMとは?

ROMとは、身体の各関節が傷害などを起こさず、生理的に運動できる範囲や角度を示す用語です。ROMの数値が大きいほど関節は柔軟かつ大きく動き、反対に小さいほど動きが硬く、小さくなることを示します。

ROMは看護師国家試験出題基準にも含まれており、すべての看護師さんにとって必須の知識です。
(出典:厚生労働省「看護師国家試験出題基準」

ROM測定の目的

ROM測定は、具体的には次のような目的で実施されます。

ROM測定の目的

  • 関節の動きを阻害している原因について探る
  • 障害の程度を判定する
  • 適切な治療法を選択する際の手がかりにする
  • 治療・訓練の評価を行う

(出典:J-STAGE「関節可動域表示ならびに測定法」

ROM測定を行うことで正しい診断や適切な治療・訓練につながるため、正しく測定することが重要です。

代表的な関節の可動域

人体には多くの関節があり、関節ごとに可動域が存在します。ここでは、なかでも代表的な関節について可動域を紹介します。

部位名 関節運動 可動域
屈曲 0-125°
足首 底屈 0-50°
背屈 0-20°
屈曲 0-160°
手首 屈曲 0-90°
伸展 0-70°

(引用:e-ヘルスネット「関節可動域 / ROM(かんせつかどういき)」

可動域0°は、ROM測定の基準となる数値です。ROM測定で可動域が0°となる姿勢は「基本肢位」と言い、基本的には「解剖学的肢位」と呼ばれる、気をつけの姿勢で手のひらを前に向けている状態を指します。

ただし、一部の関節および関節運動の測定では、基本肢位が解剖学的肢位と異なるケースがあります。たとえば、前腕の回外・回内を測定する場合、手のひらが前ではなく体側の内側を向いている肢位が基本肢位です。また、股関節の外旋・内旋は、股関節と膝関節をそれぞれ90°に曲げた状態を基本肢位として扱います。

看護師向け|ROM測定における関節運動の種類

看護師向け|ROM測定における関節運動の種類

関節運動には曲がる・回すなどさまざまな種類があり、看護現場ではすべての関節運動についてROM測定を行う可能性があります。ここでは、ROM測定における関節運動の種類を表にまとめて解説するため、各項目を参考に理解を深めましょう。

関節運動 運動を行う関節 詳細
屈曲・伸展 肩関節、頚部・体幹・手関節、指、母趾・趾

いわゆる関節の曲げ伸ばし運動
屈曲:基本肢位で隣接する2つの部位が近づく動き
伸展:隣接する部位が遠ざかる動き

背屈・底屈 足関節・足部 屈曲と伸展を使用しない運動
背屈:足背に近づく動き 底屈:足底に近づく動き
外転・内転 体幹・指・足関節・足部・母趾・趾 など 外転:体幹・指・足関節・足部・母趾・趾の軸から遠ざかる動き
内転:各軸に近づく動き
外旋・内旋 肩関節・股関節 外旋:上腕軸または大腿軸を中心に外方へ回旋する動き
内旋:各軸を中心に内方に回旋する動き
外がえし・内がえし 足関節・足部 外がえし:足底が外方を向く動き
内がえし:足底が内方を向く動き
回外・回内 前腕・足関節・足部・母趾・趾 回外:前腕軸や母趾・趾などを中心に外方に回旋する動き
回内:前腕軸・母趾・趾などを中心に内方に回旋する動き
水平屈曲・水平伸展 肩関節 水平屈曲:腕を真横に上げて前方へ向かう動き
水平伸展:腕を真横に上げて後方へ向かう動き
挙上・引き下げ(以下、下制) 肩甲帯 挙上:上方へ引き上げる動き
下制:下方へ引き下げる動き
右側屈・左側屈 頚部・体幹 右側屈:右方向へ傾ける動き
左側屈:左方向へ傾ける動き
右回旋・左回旋 頚部・胸腰部 右回旋:右方に回旋する動き
左回旋:左方に回旋する動き
橈屈・尺屈 手関節 橈屈:前腕骨の親指側の骨(以下、橈骨)に向かう動き
尺屈:前腕骨の小指側の骨(以下、尺骨)に向かう動き
橈側外転・尺側内転 母指   橈側外転:母指の基本軸から橈骨側に開く動き
尺側内転:母指の基本軸から尺骨側への動き

(出典:一般社団法人日本骨折治療学会「関節可動域表示ならびに測定法(2022年4月改訂)」

看護師向け|ROM測定の方法

看護師向け|ROM測定の方法

関節の部位によって可能な関節運動が異なるため、それぞれに適した方法による測定が必要です。ここでは、関節の部位と関節運動別にROM測定の方法を説明します。

他動運動による測定値を使用
ROM測定では、原則的に他動運動で行います。他動運動とは他者や機械などのサポートを受けて身体の部位を動かす運動、自動運動とは本人の意思による筋収縮で目的の部位を動かすことを意味する用語です。なお、患者さんが筋収縮を用いず、自分自身の手などで部位を支えて動かす場合は他動運動となります。

5°刻みで測定
柄の長さが十分な角度計を使用し、角度を5°刻みで測定するのが一般的です。

基本軸・移動軸を基準に測定
角度計の中心は、各関節の基本軸と移動軸の交点に合わせて測定します。指・趾などの場合は、それぞれの背側に角度計をあてると測定しやすくなります。   関節の運動に応じて角度計の中心を移動させたり、必要に応じて移動軸を平行移動させたりすることも可能です。

多関節筋が関与する場合の測定方法
原則的に、測定は多関節筋の影響を除いた肢位で行います。股関節屈曲の測定を例にとると、ハムストリングスが関節運動に影響する可能性があるため、膝関節の屈曲によってハムストリングスを緩めます。ただし、筋・腱の短縮を評価したい場合は、多関節筋を緊張させた肢位で測定を行ってもかまいません。

測定時の肢位
肢位の指定がある場合は特定の肢位で、特に指定がない場合は肢位を限定せずに測定を行います。変形や拘縮で所定の肢位がとれない場合は、指定と異なる肢位で測定可能です。

(出典:J-STAGE「関節可動域表示ならびに測定法」

測定値の表示方法

測定値は看護師さん・理学療法士さん・作業療法士さんなどをはじめとする医療スタッフの方だけでなく、介護・福祉・行政などの関連職種の方も参照することがあります。そのため、共通のルールに則した分かりやすい方法での記録が必要です。ここでは測定値の表示方法を解説します。

・測定値の表記

ROMの測定値は、基本肢位を0°として表示します。測定値の表示方法は次の2通りです。

例:股関節の可動域が屈曲位20°から70°の場合
屈曲20°から70°
屈曲は70° 伸展は-20°
(出典:J-STAGE「関節可動域表示ならびに測定法」

・特記事項の表記

症例によって異なる測定法を用いる場合や、そのほかにROMに影響を与える事項がある場合、測定値とともに特記事項を併記します。特記事項は次の4通りです。

自動運動を用いて測定する場合
測定値を( )で囲むか「自動」「active」などと明記

指定と異なる肢位を用いて測定する場合
具体的な肢位を明記
例:背臥位・座位 など

多関節筋を緊張させた肢位で測定する場合
測定値を< >で囲んだうえで「膝伸展位」などと具体的に明記

疼痛などが測定値に影響を与える場合
「傷み」「pain」などと明記

(出典:J-STAGE「関節可動域表示ならびに測定法」

看護師がROM測定・訓練を行う際のポイント

ROM測定や訓練を行う際には、正しくかつ患者さんに負担がかかりすぎない方法で行うことが大切です。ここでは、看護師さんがROM測定や訓練を行う際に押さえるべきポイントを紹介します。

測定の際は、患者さん個人の可動域に注目しましょう。可動域は目安が示されている場合もあるものの、個人差があります。異常を判定する場合は目安に頼りすぎず、年齢・性別・測定肢位・測定方法などを考慮することが必要です。

ROM訓練を行う場合は、開始前にバイタルサインや衣服が訓練に適しているかを確認したうえで、ROM測定の結果に基づいて行いましょう。訓練を開始できる状態であれば、患者さんにこれから訓練を行う旨を説明し、先にトイレなどを済ませてもらうことも大切です。

訓練中も患者さんのバイタルサインや表情に注意を払いながら行います。訓練時は無理に関節可動域を広げようとせず、疼痛が強くならないようゆっくりと行いましょう。

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まとめ

身体中の関節や関節運動には、それぞれのROM(関節可動域)が存在します。また、治療や訓練はROM測定値に基づいて行われるため、適切な治療・訓練を行うには看護師さんがROMへの理解を深め、正確に計測することが重要です。

ROM測定はすべての看護師さんにとって必要な知識であり、特に整形外科では重要な役割を果たします。ROMの知識を深めたい方や整形外科でROMの知識を活かしたい方は、「マイナビ看護師」にぜひご相談ください。マイナビ看護師では非公開求人なども多数取り扱い、看護師専門のキャリアアドバイザーが看護師さんのスキルを活かした転職・就職をサポートいたします。

※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています

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