• 2022年11月24日
  • 2022年11月24日

乳がん看護における看護師の役割・ケアのポイント|専門資格も紹介

 

近年、日本人女性によるがん罹患数のなかでも多いのが乳がんであり、専門的なサポートを提供する看護師の需要が高まっています。これから看護師を目指す方や、すでに活躍中の看護師さんのなかには、「乳がん医療やがん看護学について詳しく知りたい」と思う方も多いのではないでしょうか。

今回は、乳がんとはどのような疾患なのかをはじめ、ケアのポイントや乳がん看護における看護師の役割について、シーン別に解説します。また、乳がん専門看護資格にも言及しているので、ぜひお役立てください。

乳がんとは

乳がんとは、乳腺や乳房を構成する組織から発生する悪性腫瘍で、女性に多く見られる病気です。発生個所のほとんどは乳管となっており、乳腺小葉が由来のケースもあります。腫瘍は周囲の気管に広がり、リンパ節や骨、肺などに転移することがあります。

乳がんの種類は、大きく分けると以下の2つです。

  • 非浸潤がん:がん細胞が乳管や乳腺小葉に見られる初期の状態
  • 浸潤がん:がん細胞が乳管や乳腺小葉だけにとどまらず、周囲にまで浸透している状態

具体的な症状としては、次のようなものが挙げられます。

  • 乳房のしこり
  • 乳頭からの分泌物
  • 乳房のえくぼ
  • 乳頭や乳輪のただれ
  • 乳房の変形

(出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「乳がんについて」

乳がん検査の種類

乳がんを診断する検査方法には、主に以下の5つがあります。

視診・触診

視診では、左右の乳房の形をはじめ、ただれやえくぼ、分泌物の有無などを目で見て確認します。また、触診は乳房から脇下までのラインを手で触り、しこりの有無をチェックすることが特徴です。

マンモグラフィ

マンモグラフィは乳房に特化したX線検査で、病変の位置確認のほか、細かな石灰化などを見つけるのに役立ちます。

超音波検査

超音波により、乳房の表面からプローブと呼ばれる機器をあてて反射させ、乳房内や脇の下などの病変や転移の有無、しこりの性状などを確認する検査です。

生検・病理検査

生検・病理検査では、細胞や組織の一部を採取して顕微鏡で確認し、超音波などほかの検査方法とあわせて診断を行います。

MRI・CT検査

MRIは磁気を使用し、CTはX線により病変の状況や転移の有無について確認します。乳がんの手術や放射線治療を検討する際に実施するのが一般的です。

(出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「乳がん 検査」

乳がんの治療の流れ

乳がん患者さんの治療は、一般的に以下のような流れで行います。

1. 病期の診断

2. 治療の選択

3. 入院・手術

4. 放射線治療

5. 薬物療法

6. 治療の経過観察

また、生活の質に重点をおく緩和ケアをはじめ、症状・治療に伴う副作用や合併症予防の支持療法、リハビリテーションも必要に応じて行われます。手術後に再発乳がんや転移が見つかった場合は、再び治療の計画を立てる流れです。
(出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「乳がん 治療」

乳がん看護における看護師の役割

乳がん看護における看護師の役割

乳がんの患者さんをサポートするにあたり、看護師にはどのような役割が課せられるのでしょうか。まずは、乳がん予防から治療までの具体的な内容を確認しましょう。

【乳がん予防から治療までの役割】

  • 乳がん検診の促進や予防・早期発見の関連情報の提供
  • 臨床検査データやホルモン環境、家族歴などの評価
  • 要望を尊重した治療法の意思決定のサポート
  • 診断や治療方針に必要な説明や評価
  • 治療に伴い心身にかかる負担の緩和
  • 治療工程の管理と副作用のモニター対応
  • リハビリテーションの促進

加えて、治療後のフォローアップやリスク管理も、乳がん看護の専門家の役割です。

【乳がん治療後の役割】

  • 自己管理指導
  • 日常生活や仕事の相談サポート
  • 精神面に関する支援
  • 乳がんリスク要因の把握
  • カウンセリングのアクセス支援

乳がん看護は、手術療法が終わった後も多くのタスクがあるのが特徴です。期間にすると10年余り患者さんを支えるケースもあり、看護師さんは患者さんの心に寄り添い、ともに歩むこととなります。

【シーン別】乳がん患者さんのケアのポイント

乳がん患者さんの看護ケアでは、心のケアも重要な要素といえます。一人ひとりの患者さんの気持ちに配慮し、チームが一丸となってサポートすることが大切です。 ここでは、乳がん患者さんのケアポイントをシーン別に解説します。

検査時のケア

不安な気持ちを抱える患者さんに対し、「不安ですよね」と、気持ちを受け止め、同じ目線で共感しましょう。また、情報提供や検査への理解促進などを行います。

告知後のケア

動揺する患者さんに対し、「よければお気持ちお聞かせください」とヒアリングするのも1つの方法です。闘病生活への不安や治療への期待、生活習慣や体調の変化などを評価しながら、適切な対応を行います。

手術・入院時のケア

手術の際には、患者さんやご家族に対して、医師の説明を補足します。また、「おつらいですね」と、患者さんの心情に寄り添うことに加え、不眠や食欲不振などがある場合は、ほかの領域の医師と連携しながら手術の準備を整えます。

乳がん看護に関する専門資格

乳がん看護に関する専門資格

乳がんに特化した看護資格は、専門性の高い知識をもとに患者さんを多方面から支援できることがメリットです。また、乳がん看護において、正しい方向にチームを牽引する存在になれます。

ここでは、乳がんに関わりの深い、「乳がん看護認定看護師」と「がん看護専門看護師」の2つの資格について解説します。

乳がん看護認定看護師

「乳がん看護認定看護師」は、2006年より施行され、2020年に再編成された資格です。乳がんに関する症状や治療、副作用など、幅広い知識を持つ看護のスペシャリストです。

乳がん看護認定看護師の資格を取得するためには、特定看護分野の実務研修内容の基準を満たす必要があります。

1)通算 3 年以上、乳がん患者の多い病棟または外来等での看護実績を有すること。

2)乳がん患者の看護を 5 例以上担当した実績を有すること。

3)現在、乳がん患者の看護に携わっていることが望ましい。

(引用:日本看護協会「特定看護分野の実務研修内容の基準」

上記の基準を満たす看護師は、日本看護協会の基準カリキュラムにもとづき、集合教育を受けることが可能です。専門科目を254時間、実習施設で演習・実習を165時間受講し、乳がん看護認定看護師に必要なスキルを身につけます。
(出典:静岡県立 静岡がんセンター「乳がん看護分野」

また、乳がん看護認定看護師として働くうえで、大切な知識や技術は下記を参考にしてください。専門的技術はもちろん、女性のライフサイクルに配慮した支援、治療方針の意思決定支援など、患者さんに寄り添ったサポートが含まれます。

  • 個別化された集学的乳がん治療に関する知識及び治療方針の意思決定支援技術
  • 術前から個別の病態に合わせた術後合併症予防及び緩和のための周術期看護技術
  • 女性のライフサイクルの課題を踏まえた、治療にともなう女性性と家族支援技術
  • 乳房自己検診、リンパ浮腫等の乳がん治療関連合併症の予防・管理技術
  • 身体所見から病態を判断し、創部ドレーンの抜去ができる知識・技術

(引用:静岡県立 静岡がんセンター「乳がん看護分野」

がん看護専門看護師

「がん看護専門看護師」は、がんを患う患者さんとご家族が抱える心身の苦悩を理解し、生活の質を意識した看護を提供することを目的とした資格です。

がん看護専門看護師になるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 看護師として5年以上の実務経験
  • 看護学部のある大学院修士課程修了
  • 専門看護師認定審査に合格

がん看護専門看護師は5年ごとに資格を更新します。教育基準カリキュラムの詳しい内容は、以下の通りです。

1. がんに関する専門的知識を深め、エビデンスに基づく的確な臨床判断を行うことができる

2. 熟練した高度なケア技術とキュアの知識を用いてがん患者および家族に対して看護を実践することができる。

3. 社会に対し、がんの予防および早期発見のための教育・啓発および相談活動ができる。

4. 医療・看護職者に対して、がん看護に関する教育・相談活動ができる。

5. がん患者を取り巻く医療提供システム内を調整することができる。

6. がん患者の人権を擁護するために適切な倫理的判断を行い、判断に基づいた態度と行動をとることができる。

7. がん看護に関する専門的な知識や技術を深めるための研究を積極的に実施することができる。

(引用:厚生労働省「がん看護専門看護師・がん化学療法・がん放射線療法看護認定看護師の 養成・就業状況について」

がん看護専門看護師になると、乳がんをはじめ、さまざまながん医療に対応でき、より専門的なサポートを行えることが魅力です。

まとめ

乳がん看護は、患者さんと信頼関係を構築しながら、長期にわたり多角的なサポートが必要です。より専門的な知識や技術を身につけたい看護師さんは、乳がん看護認定看護師やがん看護専門看護師などの資格取得を検討するとよいでしょう。

「マイナビ看護師」では、看護業界に精通したキャリアアドバイザーとして、求職情報や役立つ情報を発信しています。無料で書類作成や条件交渉などのサポートを行っているため、転職を検討する際にはぜひご活用ください。

※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています

著者プロフィール