• 2022年11月2日
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認知症認定看護師とは? 3つの役割からなる方法まで

 

今後ますます高齢化が進む日本において、認知症患者さんは急増し、深刻な状況になることが予想されます。認知症は患者さんだけでなく、ケアを行う看護師やご家族にも負担を伴うことがあるため、看護現場全体を捉えた的確なケアやサポートの実施が重要です。

認知症の患者さんに対して正しいケアを行える看護師は、看護現場において不可欠な存在となるでしょう。このような背景もあり、現在は認知症認定看護師が注目を集めています。

当記事では、認知症認定看護師の必要性や役割などを解説します。認知症認定看護師について詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。

認知症認定看護師とは?

認知症認定看護師とは、認知症分野に特化した看護師のことです。精神科病院や医療・保健福祉施設などが主な就業場所で、専門的な知識をもとに適切なケアを実施します。

認知症認定看護師は日本看護協会によって2006年に認定が開始され、2021年12月時点で合計2,014人が認定されています。
(出典:日本看護協会「【A課程】認知症看護認定看護師数1,935名」
(出典:日本看護協会「【B課程】認知症看護認定看護師数79名」

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認知症認定看護師の重要性

少子高齢化が加速する現代において、認知症の専門知識を持つ認知症認定看護師の需要は急速に高まっています。認知症の症状は進行具合や種類、個人によって異なり、それぞれに適した対応を取ることが重要です。しかし、認知症の患者さんに対し、専門的知識や実務経験の乏しい方が常に最適な対応を取ることは、簡単ではありません。

特に、暴力や徘徊などの行動は対応が困難で、看護師の負担も増える傾向にあります。事故防止のため、抑制や薬剤に頼るケースもありますが、そうした対応は認知症看護の質や患者さんの生活の質(QOL)が低下する要因になります。

このような状況の中、熟練した看護によるケアの実施、または現場の人材育成など、大きな役割を担う認知症認定看護師は看護現場に欠かせない存在です。一般の看護師やほかの医療職をサポートし、認知症看護の質の向上を実行できる重要な存在であるため、より一層必要性が高まっています。

認知症認定看護師に必要な能力

認知症認定看護師は、看護のスペシャリストとして知られる認定看護師であるため、さまざまな能力が求められます。認知症認定看護師に必要な能力(一部抜粋)は下記の通りです。

1.認知症者の意思を尊重し、権利を擁護する

2.認知症の発症から終末期まで、その状態像を統合的にアセスメントし、各期に応じたケアの実践や体制づくり、認知症者家族のサポートを行う

3.認知症の行動心理症状を悪化させる要因・誘因に働きかけ、予防・緩和する

4.認知症者にとって、安心かつ安全な生活・療養環境を調整する

5.他疾患合併による影響をアセスメントし、治療的援助を含む健康管理を行う

6.認知症に関わる保健・医療・福祉制度に精通し、地域にある社会資源を活用しながらケアマネジメントを行う

7.認知症看護の実践を通して役割モデルを示し、看護職に対する具体的な指導・相談対応を行う

8.他職種と積極的に連携し、認知症に関する知識の普及とケアサービス推進の役割を担う

(出典:日本看護協会「認定看護師教育基準カリキュラム(特定行為研修を組み込んでいない教育課程:A課程教育機関)」
(出典:日本看護協会「認定看護師教育基準カリキュラム(特定行為研修を組み込んでいる教育課程:B課程教育機関)」

認知症認定看護師の3つの役割

認知症認定看護師の3つの役割

認知症認定看護師として働く場合、認知症そのものについて正しく理解することが求められます。認知症認定看護師の役割は「実践」「指導」「相談」の3つを実施し、現場のリーダーとして認知症における病院・病棟全体の看護の質を高めることです。

以下では、3つの役割について詳しく解説します。

実践

認知症患者さんやご家族に対しての最適な看護はなにか、認知症における専門知識にもとづき判断して実践します。具体的な活動例は下記の通りです。

  • 徹底した観察によるアセスメントを行い、患者さんの隠れたニーズを読み取る
  • 的確なケアを行い、周辺症状を予防・緩和する
  • 専門知識にもとづく医療環境の整備を行い、事故・症状の悪化を防止する

患者さんのQOLを考慮し、安心できる生活環境の提供が重要であるため、生活リズムを整えたり自宅に近い環境に近づけたりするなど、居心地のよい環境を作ります。上記のような試みを実践すると看護環境の改善が期待でき、患者さんのQOL向上が可能です。

指導

ほかの看護師に対して水準の高い看護を行えるようにサポートし、自分自身が手本となって専門知識や看護技術などを指導します。具体的な活動例は下記の通りです。

  • 実践を通して、認知症における多様な症状の具体的な対応方法、ノウハウの指導をほかの看護師に行う
  • 勉強会や研修会の開催、看護活動のマニュアル整備を行う

安心・安全な環境作りの方法、アセスメントやケアの方法といった看護実践を通してロールモデルを示し、具体的な指導・相談対応を行います。また、各看護師によってケア手順や内容に違いが出ないよう、マニュアルの整備を行うことも重要な役割です。

相談

患者さんやご家族、看護師に対し、現場で直面する問題や疑問などの相談に乗り、改善策を導き出せるよう支援します。具体的な活動例は下記の通りです。

  • 周辺症状などが原因で介護に行き詰まり、困窮しているご家族へのケアやアドバイスを行う
  • ケア方法に問題を抱える看護師や介護職員チームへのアドバイスを行う

認知症への不安を抱える患者さんやご家族の相談に乗り、不安の軽減に努めます。また、アドバイザーとしての役割を担い、病院・病棟全体のケアの質を高める働きかけが求められます。

出典:認定看護師制度に関するよくあるご質問 – 日本看護協会

認知症認定看護師になるには?

認知症認定看護師になるには?

認知症認定看護師になるための条件は、下記の通りです。

日本国の看護師免許を有すること

看護師免許取得後、実務研修が通算5年以上あること
(うち3年以上は認定看護分野の実務研修)

認定看護師教育機関入学・修了

(引用:日本看護協会「認定看護師になるには」

日本看護協会が実施する認定看護師教育課程は、A課程とB課程に分けられています。

A課程認定看護師教育機関 B課程認定看護師教育機関
  • 特定行為研修を組み込んでいない認定看護師教育機関
  • 2026年度をもって教育を終了します。
  • 特定行為研修を組み込んでいる認定看護師教育機関
  • 2020年度から教育を開始します。
(引用:日本看護協会「認定看護師になるには」

また、A課程・B課程のカリキュラムは下記の通りです。

  教科目名 必修/選択 時間数
共通科目

1. 医療安全学:医療倫理

2. 医療安全学:医療安全管理

3. 医療安全学:看護管理

4. チーム医療論(特定行為実践)

5. 相談(特定行為実践)

6. 臨床薬理学:薬理作用

7. 指導

8. 特定行為実践

9. 臨床薬理学:薬物動態

10.臨床薬理学:薬物治療・管理

11.臨床病態生理学

12.臨床推論

13.臨床推論:医療面接

14.フィジカルアセスメント:基礎

15.フィジカルアセスメント:応用

16.疾病・臨床病態概論

17.疾病・臨床病態概論:状況別

18.医療情報論

19.対人関係

必修

必修

必修

必修

必修

必修

必修

選択

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選択

15

15

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30

40

45

15

30

30

40

15

15

15

小計 105

小計 305

105
(+305)
専門基礎科目  

1. 認知症看護原論

2. 認知症基礎病態論

3. 認知症病態論(認知症の原因疾患と治療)

4. 認知症に関わる保健・医療・福祉制度

必修

必修

必修

必修

15

15

45

15

小計 90 240
専門科目

1. 認知症看護倫理

2. 認知症の人とのコミュニケーション

3. 認知症看護援助方法論Ⅰ(アセスメントとケア)

4. 認知症看護援助方法論Ⅱ(生活・療養環境づくり)

5. 認知症看護援助方法論Ⅲ(ケアマネジメント)

6. 認知症の人の家族への支援・家族関係調整

必修

必修

必修

必修

必修

必修

15

15

45

30

30

15

小計 150
学内演習・臨地実習 学内演習 必修 90 小計 270 270
臨地実習 必修 180
総時間数 615(+305)
科目名 教科目名 時間数*
共通科目

1. 臨床病態生理学

2. 臨床推論

3. 臨床推論:医療面接

4. フィジカルアセスメント:基礎

5. フィジカルアセスメント:応用

6. 臨床薬理学:薬物動態

7. 臨床薬理学:薬理作用

8. 臨床薬理学:薬物治療・管理

9. 疾病・臨床病態概論

10. 疾病・臨床病態概論:状況別

11. 医療安全学:医療倫理

12. 医療安全学:医療安全管理

13. チーム医療論(特定行為実践)

14. 特定行為実践

15. 指導

16. 相談

17. 看護管理

40

45

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30

30

15

15

30

40

15

15

15

15

15

15

15

15

380
専門科目 認定看護分野専門科目

1. 認知症看護概論

2. 認知症の病態生理・臨床診断・治療

3. 認知症看護における倫理

4. 認知症の人とのコミュニケーション

5. 認知症の人のケアマネジメント

6. 認知症の人の生活機能の評価と支援

7. 認知症の人の家族支援

30

45

15

15

45

30

15  

195
特定行為研修区分別科目

1. 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連

2. 精神及び神経症状に係る薬剤投与関連  

22

35

57
演習・実習 学内演習 15 165
臨地実習 150
合計時間数 797

(引用:日本看護協会「認定看護師教育基準カリキュラム(特定行為研修を組み込んでいない教育課程:A課程教育機関)」
(引用:日本看護協会「認定看護師教育基準カリキュラム(特定行為研修を組み込んでいる教育課程:B課程教育機関)」

認知症認定看護師の今後

認知症認定看護師の今後

前述の通り、高齢化社会は今後さらに進むことが予想されるため、認知症認定看護師の需要がより高まる可能性があります。
(出典:内閣府「第1章 高齢化の状況(第1節1)」

正しい情報にもとづいた専門性のある看護がより求められるため、資格手当の割増など、認定看護師の待遇向上も検討されています。

出典:日本看護協会「看護職のキャリアと連動した賃金モデル」

まとめ

認知症認定看護師は、認知症看護に関する専門性を持った看護のスペシャリストです。今後、専門性のある認知症看護の需要は高まることが予想され、多くの場で活躍が期待できます。看護師としての幅を広げたい方やキャリアアップを目指している方は、認知症認定看護師の資格取得を検討しましょう。

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※当記事は2022年7月時点の情報をもとに作成しています

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