日々看護必要度を評価している看護師の方のなかには、看護必要度がどのように活用されているか詳しく知らない人もいるでしょう。看護必要度の評価は、適切な看護人員配置を示すための重要な指標です。
当記事では、看護必要度の概要や評価基準、評価方法について詳しく解説します。看護必要度の理解を深めたうえで、評価を適切に行いましょう。
看護必要度とは
看護必要度とは、入院している患者さんが看護をどの程度必要としているかを測り、看護師の適切な人員配置を実現するために導入された指標のことです。平成20年度診療報酬改定からはじまりました。
入院している患者さんといっても、常にモニタリングや看護を必要とする重症の方もいれば、それほど看護師の対応が必要ない軽症の方などさまざまです。看護必要度を正しく評価することで、適切なケアを行うために必要な人員配置を把握できます。
また、看護師の人員配置は診療報酬の入院基本料にも関わります。看護師の人員が多く、手厚い医療を提供する医療機関であるほど入院基本料は高く設定されるため、看護必要度は診療報酬を算定する際にも影響する非常に重要な指標です。
看護必要度の変化
看護必要度は「平成20年度 診療報酬改定」で導入されて以来、診療報酬改定のたびに項目・判定基準・看護必要度の基準を満たす患者割合などが見直されてきました。「平成26年度 診療報酬改定」では、名称が『重症度・看護必要度』から『重症度、医療・看護必要度』に変更されています。
看護必要度の変化は以下のとおりです。
平成20年度 | 「一般病棟7対1入院基本料」の算定要件に、 一般病棟用に係る重症度・看護必要度の基準に該当している患者割合が導入 |
平成22年度 | 10対1入院基本料の届出医療機関においても、 患者の重症度・看護必要度を継続的に測定し、評価を行っていることを評価する加算が新設 |
平成24年度 | ・一般病棟における7対1入院基本料の算定要件の見直し ・一般病棟における10対1入院基本料の算定要件の見直し ・入院基本料13対1の算定要件の見直し |
平成26年度 | ・A項目:急性期患者の特性を評価する項目になる ・名称を「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」に変更 |
平成28年度 | ・A項目:急性期医療の必要性が高い患者の状態を追加 ・B項目:ほかの項目と類似する2項目を削除し、 「診療・療養上の指示が通じる」「危険行動」の項目を追加 ・C項目を新設 |
平成30年 | ・重症度、医療・看護必要度ⅠとⅡに評価⽅法が分かれる ・処置等を受ける認知症・せん妄状態の患者がより評価されるよう基準を追加 |
令和2年 | ・入院の必要性に応じた重症度、医療・看護必要度の見直し |
令和4年 | ・評価項目(A項目)の見直し |
参照元:厚生労働省「(令和5年度第8回)入院・外来医療等の調査・評価分科会」
看護必要度ⅠとⅡの違い
看護必要度ⅠとⅡとでは、評価方式が異なります。
Ⅰは研修を受けた看護師が評価をする従来の方式で、Ⅱはレセプト電算処理システムを用いて評価する新しい方式です。
従来、看護必要度は研修を受けた看護師が目視で評価をしていましたが、レセプト電算処理システム用コードの導入により、診療の実績データから評価を行えるようになりました。より正確なデータを用いられるうえ看護師の業務量も削減できるため、現在は許可病床数が200床以上の病院では看護必要度Ⅱで評価を行うよう求められています。
看護必要度はどのように評価する?
看護必要度を評価する基準や方法は、厚生労働省の診療報酬改定によって細かく定められています。ここでは、看護必要度の評価基準や評価方法を解説します。
看護必要度の評価基準
看護必要度は、以下のA項目・B項目・C項目を確認して評価します。
A項目
A項目では、実際に患者さんに行った処置について評価します。
A | モニタリング及び処置等 | 0点 | 1点 | 2点 |
---|---|---|---|---|
1 | 創傷処置 (①創傷の処置(褥瘡の処置を除く)、② 褥瘡の処置) |
なし | あり | ― |
2 | 呼吸ケア(喀痰吸引のみの場合を除く) | なし | あり | ― |
3 | 注射薬剤3種類以上の管理 | なし | あり | ― |
4 | シリンジポンプの管理 | なし | あり | ― |
5 | 輸血や血液製剤の管理 | なし | ― | あり |
6 | 専門的な治療・処置 (① 抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)、 ② 抗悪性腫瘍剤の内服の管理、 ③ 麻薬の使用(注射剤のみ)、 ④ 麻薬の内服、貼付、坐剤の管理、 ⑤ 放射線治療、 ⑥ 免疫抑制剤の管理(注射剤のみ)、 ⑦ 昇圧剤の使用(注射剤のみ)、 ⑧ 抗不整脈剤の使用(注射剤のみ)、 ⑨ 抗血栓塞栓薬の持続点滴の使用、 ⑩ ドレナージの管理、 ⑪ 無菌治療室での治療) |
なし | ― | あり |
7 | Ⅰ:救急搬送後の入院(5日間) Ⅱ:緊急に入院を必要とする状態 (5日間) |
なし | ― | あり |
B項目
B項目では、患者さんの状態を評価します。
B | 患者の状態等 | 患者の状態 | × | 介助の実施 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
0点 | 1点 | 2点 | 0 | 1 | |||
9 | 寝返り | できる | 何かにつかまればできる | できない | ― | ― | |
10 | 移乗 | 自立 | 一部介助 | 全介助 | 実施なし | 実施あり | |
11 | 口腔清潔 | 自立 | 要介助 | ― | 実施なし | 実施あり | |
12 | 食事摂取 | 自立 | 一部介助 | 全介助 | 実施なし | 実施あり | |
13 | 衣服の着脱 | 自立 | 一部介助 | 全介助 | 実施なし | 実施あり | |
14 | 診療・療養上の指 示が通じる | はい | いいえ | ― | ― | ||
15 | 危険行動 | ない | ― | ある | ― | ― |
C項目
C項目では、医学的な状況を評価します。
C | 手術等の医学的状況 | 点数 |
---|---|---|
16 | 開頭手術(13日間) | 1点 |
17 | 開胸手術(12日間) | 1点 |
18 | 開腹手術(7日間) | 1点 |
19 | 骨の手術(11日間) | 1点 |
20 | 胸腔鏡・腹腔鏡手術(5日間) | 1点 |
21 | 全身麻酔・脊椎麻酔の手術(5日間) | 1点 |
22 | 救命等に係る内科的治療(5日間) | 1点 |
23 | 別に定める検査(2日間) | 1点 |
24 | 別に定める手術(6日間) | 1点 |
参照元:厚生労働省「(令和5年度第8回)入院・外来医療等の調査・評価分科会」
看護必要度の評価方法
看護必要度は、いつ・どこで・誰が・どのように評価をするのか細かく定められています。
評価日・評価対象時間
看護必要度の評価は毎日行います。
評価対象時間は0時から24時の24時間です。
外出・外泊や検査・手術などによって、24時間の観察を行うことができない患者さんであっても、当該病棟に在棟していた時間があれば評価の対象となります。なお、退院日は当日の0時から退院時までが評価対象時間です。
評価対象場所
原則として、評価の対象場所は当該病棟内です。当該病棟以外で実施された、治療・処置・看護・観察については評価しません。ただし、A項目の放射線治療とC項目の手術等の医学的状況については、当該医療機関内における治療を評価の対象場所とします。
評価者
評価は、院内研修を受けた人が行います。なお、医師や薬剤師、理学療法士などが一部項目の評価を行う場合も、院内研修を受ける必要があります。
評価の判断
評価の手引きにあるアセスメント共通事項、B項目共通事項および項目ごとの選択肢の判断基準等に従って評価の判断をします。また、評価は観察と記録に基づいて行うもので、推測で行ってはいけません。
参照元:全国保険医団体連合会「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度に係る評価票 評価の手引き 」
看護必要度を評価する際の注意点
看護必要度の評価は、毎日記録として残す必要があります。評価漏れがあると、看護必要度や患者さんの重症度などが正しく伝わりません。
以下は、特に評価漏れ・反映漏れに繋がりやすい状況なので注意が必要です。
- 医師が一人で処置や検査を行うことがある
- 理学療法士が体位ドレナージまたはスクウィージングを行う
医師が一人で行う処置や検査を、看護師がすべて把握するのは難しいのが現状です。そのため、医師が一人で処置や検査を行った際は、看護師に一声掛けるように伝えておきましょう。
また、A項目の呼吸ケアに該当する体位ドレナージとスクウィージングは、理学療法士も行うケアです。そのため、理学療法士には当該ケアが看護必要度の評価項目であることを伝え、実施した際には連携するよう依頼しておきましょう。
看護必要度は、特に自身が実施していない項目で評価漏れ・反映漏れが発生する恐れがあります。そのため、日頃から医療従事者間の連携体制を整えておくことが重要です。また、勤務終わりに看護記録と一緒に評価内容を見直すなど、評価漏れ・反映漏れを防ぐ工夫を行いましょう。
まとめ
看護必要度は、患者さんがどのくらい看護を必要としているのかを把握するために用いられる手法であり、病院の診療報酬や看護師の人員配置にも関わる重要なものです。看護必要度の評価基準は、診療報酬が改定されるごとに変更されています。看護必要度を評価する際には最新の情報を確認し、定期的に研修を受けるなどして知識を更新し続けましょう。
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