• 2022年9月20日
  • 2025年11月21日

ディストラクションとは? 看護・小児における意味やプレパレーションとの違い

 

医療処置を受ける子どもは、痛みや不安から強い緊張状態に陥ることがあります。そんなときに有効なのが「ディストラクション」です。

この記事では、ディストラクションの意味や目的、プレパレーションとの違い、具体的な実践方法まで詳しく解説します。小児看護に携わる方はもちろん、保護者への支援にも役立つ内容となっているので、ぜひ参考にしてください。

五藤 良将 ■監修者
五藤 良将

千葉県立東葛飾高校卒、防衛医科大学校医学部卒。その後に自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどの勤務を経て2019年9月に継承開業に至る。

ディストラクションとは

ディストラクションとは、医療処置に伴う子どもの痛みや不安を和らげるために行う「気をそらす支援」のことです。予防接種や治療といった恐怖や緊張を伴う場面で、遊びや音、映像など五感を刺激する方法を用いて、注意を別の方向へ向けます。

ディストラクションの目的

ディストラクションの目的は、医療処置を受ける子どもの痛みや不安を和らげることです。緊張や恐怖を減らすために注意をそらし、処置中の抵抗や泣き出しを防ぎます。

安全かつスムーズな看護を実現するために、ディストラクションは重要な支援方法の一つです。

ディストラクションとプレパレーションの違い

ディストラクションとプレパレーションは、どちらも心理的負担を軽くする支援ですが、その目的と方法が異なります。

ディストラクションは、注意をそらすことで苦痛を和らげる対処的な方法です。一方でプレパレーションは、あらかじめ処置の内容や流れを説明し、子どもの不安を軽減する予防的な支援になります。

つまり、ディストラクションは「今の不安」を和らげる手段であり、プレパレーションは「これからの不安」に備える取り組みです。どちらも場面に応じて使い分けることが大切です。

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ディストラクションの具体的な例

小さな子どもに向けたディストラクションとしては、声掛け以外にも、絵本やおもちゃなどを使う方法があります。ここではディストラクションの具体例を5つに分けて紹介します。

●視覚刺激

  • 絵本を読む
  • 動いたり、光ったりするおもちゃを見せる
  • 動画を見せる

●聴覚的刺激

  • 音楽をかける
  • 歌を歌う
  • 音が鳴るおもちゃを使う

●触覚的刺激

  • 手を握る
  • 体をさする
  • ゴム製のボールを触らせる
  • 粘土を触らせる

●嗅覚的刺激

  • アロマセラピー

●その他

  • シャボン玉
  • 風船
  • ゲームをする

看護師の支援だけではなく、家族などの保護者に声掛けや抱っこで参加してもらうのも効果的です。また、保護者の精神状態は子どもに大きく影響するため、保護者の心配や不安にも寄り添うことが大切です。あらかじめ保護者へプレパレーションやディストラクションの内容について丁寧に説明し、理解と協力を得ましょう。

何をすれば気が紛れるのかは、子どもの興味や年齢により異なります。そのため、日頃から子どもとコミュニケーションを取り、子どものことをよく知っておくことが大事です。

ディストラクションを実践! 子どもに処置するときの流れ

小児看護においては、どのような流れでディストラクションを実践するのでしょうか。採血のケースを例に挙げて、具体的なケアの流れを紹介します。

採血前

  1. カルテや子ども、保護者からの情報により、過去の採血における体験や今回の採血についての理解度を確認する
  2. 採血の目的や方法について分かりやすい言葉で説明する
  3. 採血に対してどのように対処するかを一緒に考える

事前準備として、処置室に可愛らしい装飾を行うなど、なるべくリラックスできる環境を整えます。

採血前には、どのように採血に対処するのかを子どもの希望を聞きながら考えます。ベッドに寝るのか座るのか、絵本を見るか、ボールで遊ぶかなど、子ども自身に選んでもらいましょう。

採血の目的を説明するときにも、どこでどのように行うのか、どのような感覚がするのか、子どもに分かりやすく伝えるのがポイントです。

採血中

  1. 子どもが希望する姿勢ややり方で採血できるように準備を行う
  2. 以下の流れでディストラクションを行う
    1. 保護者に子どもをぎゅっと抱っこしながら支えてもらう
    2. 採血する方の腕を出してもらい、採血を行う
    3. ディストラクションを担当するスタッフが子どもに選んでもらったおもちゃなどを使い、採血による痛みや不安が軽減するように支援する
  3. 処置を行うスタッフとディストラクションを行うスタッフが役割分担し、安全かつ短時間で採血を終了する

保護者が抱っこせずに採血を行う場合も、子どもが処置を乗り越えられるよう、声かけやおもちゃでサポートしましょう。ディストラクションを行う際には、子どもの表情を見ながら行うとより効果的です。

やむを得ず1回で採血が完了できなかったときは、子どもの心身の負担に配慮し、十分なケアを行います。休憩の取得や声かけ、保護者による抱っこなどを通して、子どもの自己効力感を高めてあげることが大切です。

採血後

  1. 子どもに採血が終わったことを伝える
  2. 「できていたこと」を伝え、頑張り褒める

採血が無事終わったら、子どもにできたことを伝えて褒めてあげましょう。

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ディストラクションを効果的に行うためのポイント

ディストラクションを行う際のポイント

ディストラクションを効果的に行うには、子どもの特性や状況に応じた工夫が必要です。ポイントを3つ紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

子どもの年齢や発達段階に合わせる

ディストラクションは、年齢や発達に応じて適切な方法を選ぶことが大切です。
たとえば、乳児には音や光などの視覚・聴覚刺激が効果的です。幼児には絵本や動画、小学生にはゲームや会話が有効とされています。子どもによって反応や好みが異なるため、個別性に配慮しましょう。

発達段階を理解したうえで関わることで、よりスムーズに注意をそらすことができます。

処置前から準備・説明をしておく

処置中にいきなりディストラクションを行っても、うまくいかない場合があります。そのため、事前に処置内容や方法を簡単に説明するプレパレーションを行い、心の準備を整えておくことが重要です。

説明には、やさしい言葉や絵を使うと理解しやすくなります。あらかじめ見通しを持たせることで、ディストラクションの効果も高まります。

関心を引く内容・好きなものを選ぶ

ディストラクションを成功させるには、子どもが興味を持つものを選ぶことが重要です。
好きなキャラクターやおもちゃ、音楽などを使うと、注意が向きやすくなります。一方、関心のないものでは気をそらすことが難しく、効果がない場合も…。そのため、普段の様子や保護者の話から、子どもの好みを把握しておくと良いでしょう。

個々に合わせた対応が、ディストラクションの成功度を高めます。

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まとめ

ディストラクションとは、医療処置時に子どもの痛みや不安を和らげる「気をそらす支援」のことです。視覚や聴覚、触覚など五感を使った刺激を活用し注意を別の方向に向けることで、処置への抵抗を減らします。安全でスムーズな看護を実現するために、ぜひ日々のケアに取り入れてみましょう。

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ディストラクションは、単なる「気をそらすテクニック」ではなく、子どもの痛み・恐怖・不安を科学的に軽減する看護技術です。小児は「いま目の前の不快」に強く反応しやすく、
そのときの体験が、将来の医療行動や健康観にも影響します。
だからこそ、
• 子どもの発達段階に合わせる
• プレパレーションと併用する
• 家族の情緒にも寄り添う
• 処置後の“成功体験”までサポートする
これらが看護師の大切な役割です。
小児の医療現場では、看護師の一言や、そっと置いたおもちゃ、保護者に寄り添う姿勢が、子どもにとっての「安心の記憶」になります。
皆さんの日々の関わりが、子どもたちの医療体験をより良いものにし、未来の健康行動につながることを、心から願っています。

五藤良将
医療法人社団五良会 理事長

著者プロフィール