• 2022年8月13日
  • 2022年8月10日

クリティカルケアとは? 看護師の役割やキャリアパス例など

 

看護師として働いていたり看護学を学んでいたりすると、「クリティカルケア」という言葉を見聞きする機会があるのではないでしょうか。認定看護分野でも「クリティカルケア分野」の教育が2020年度から開始されるなどし、今後さらにニーズが高まると予想されるため、この機会に詳細を把握しておきましょう。

今回は、クリティカルケアの概要や、クリティカルケアにおける看護師さんの役割を解説します。また、クリティカルケアに従事する看護師さんのキャリアパス例も紹介します。クリティカルケアについて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

クリティカルケアとは?

クリティカルケアとは、疾病や外傷などで危機的な状況に陥っている重症患者さんに対するケアのことです。命の危機にある患者さんと向き合うため、クリティカルケアでは看護師の皆さんにも高度先進医療や全身管理、早期回復についての知識・経験が求められます。また、クリティカルケアにおいても一般的な看護ケアと同じく、患者さんを全人的に捉えて、身体的ケアだけでなく心理・社会的な側面もケアの対象とすることが重要です。

クリティカルケアの専門家である「クリティカルケア認定看護師」のカリキュラムには、下記のような内容が含まれます。

  • 臨床病態生理学
  • 臨床薬理学
  • チーム医療論
  • 患者及び家族の心理・社会的アセスメント
  • フィジカルアセスメント

(出典:日本看護協会「生涯学習支援」

クリティカルケアが実践される場所

クリティカルケアが実践される場所は、主にICU(集中治療室)や救急救命センターなどです。ICUに入室した重症患者さんは、モニターで24時間脈拍や血圧などをチェックされ、必要に応じて人工呼吸器や除細動器などが使われます。

また、2022年診療報酬改定に伴い、急性期病棟での入院期間が短縮される流れを受けて、一般病棟においても急性期の患者さんを扱うケースが増えており、クリティカルケアのニーズは高まっている状態です。在宅医療の現場においても同様で、人工呼吸器など高度医療を受ける患者さんや、病状が急変した患者さんへのケアはクリティカルケアといえるでしょう。

(出典:厚生労働省「令和4年度診療報酬改定説明資料等について」

上記を踏まえると、「生命の危機に瀕している患者さんがいる場所」がクリティカルケアの現場といい換えられます。

クリティカルケアの課題

クリティカルケアが抱える主な課題は、以下の3つです。

患者さんやご家族に対する心理的サポートの時間確保が難しい
患者さん本人だけでなく、ご家族の方々にも看護師さんによる心理的な援助が必要です。しかし、クリティカルケアに携わる医療スタッフは多忙であり、患者さんやご家族と十分なコミュニケーションを取ることが難しくなっています。

人の手によって患者さんの生死が決定される
医療技術の発達により、以前は助からなかった命も救われるケースが増えました。しかし、延命措置によって「人が自然に死ぬとはどういうことか」という倫理的な課題に直面することがあります。

救急医療の現場に高齢者や末期の患者さんが増えている
救急搬送される方は、交通事故や心筋梗塞といった突発的な状態の患者さんが多くいました。しかし、現在は高齢者や看取りの段階に入った患者さんが増加しています。そのため、緊急性の高い怪我や疾病の患者さんの治療に影響が出ています。

(出典:日本クリティカルケア看護学会誌
Vol.1 No.1 – 日本におけるクリティカルケア看護の歴史と現在
Vol.4 No.2 – クリティカルケアにおける倫理的課題について
Vol.14 – クリティカルな情報から命・生活をつなぐシームレスな看護)

クリティカルケアにおける看護師の役割

クリティカルケアにおける看護師の役割

クリティカルケアにおいても、看護師の基本的な仕事内容は変わりません。クリティカルケアで特に重要視される看護師の役割は以下の通りです。

・患者さんの異常の早期発見

クリティカルケアに携わる看護師さんは、いち早く患者さんの変化に気づき、適切な判断を下すことが求められます。小さな変化に気づけるようさまざまな情報に意識を向け、患者さんの異常を察知できる経験も必要です。

・家族へのケア

患者さんが危機的な状況にあるときのご家族の不安やストレスは相当なものであるため、クリティカルケアでは家族へのケアも重要な要素です。家族看護では、相手の立場に立って共感することが求められます。

・医師やほかの医療スタッフとの連携を強めること

命の危機に瀕している患者さんを救うためには、医療従事者はチームで動く必要があります。チームスタッフの連携を強められるよう、看護師さんの働きかけが重要です。

・患者さんのアドボケーター(擁護者)になること

自分の意見をうまく伝えられない患者さんの代わりになって、意見や権利を主張する方がアドボケーターです。クリティカルケア領域の医療チームでも、患者さんと接する機会の多い看護師は、患者アドボケーターとしての役割を果たすことが期待されます。
(出典:日本看護協会「臨床倫理のアプローチ」

クリティカルケアに従事する看護師のキャリアパス例

クリティカルケアに従事する看護師のキャリアパス例

クリティカルケアに従事する看護師には、さまざまなキャリアパスの選択肢があります。キャリアパスの1つとして、専門性を活かして専門看護師や認定看護師になることも可能です。

ここでは、急性・重症患者看護専門看護師と集中ケア認定看護師を例に挙げ、それぞれの概要と役割、なり方を紹介します。

急性・重症患者看護専門看護師になる

専門看護師とは、特定の専門看護分野において卓越した看護実践能力を有すると認められた看護師です。クリティカルケアは「急性・重症患者看護」分野に当たります。急性・重症患者看護専門看護師の役割は、危機的な状況の患者さんに対して集中的な看護を提供することや、患者さん本人やご家族への支援、医療スタッフ間の調整などです。 専門看護師になるためには、下記の2点を満たしている必要があります。

  • 看護系大学院修士課程修了者で、日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定の単位(総計26単位または38単位)を取得していること
  • 実務研修が通算5年以上あり、うち3年間以上は専門看護分野の実務研修であること

(引用:日本看護協会「専門看護師・認定看護師・認定看護管理者」

集中ケア認定看護師になる

認定看護師は、特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有すると認められた看護師です。「集中ケア分野」が含まれる現行の認定看護分野は2026年度をもって教育終了となり、新たな認定看護分野では「クリティカルケア分野」になります。集中ケア認定看護師の役割は、危機的な状況にある患者さんに対して、モニタリングで病態の変化を予測してスタッフに提言したり、患者さんにケアを提供したりすることです。

認定看護師になる流れは下記の通りです。

看護師免許取得後、通算5年以上の実務経験(うち3年は特定分野での実務経験)を積む

認定看護師教育機関でカリキュラムを修了する

認定看護師認定審査に合格する

(出典:日本看護協会「専門看護師・認定看護師・認定看護管理者」

集中ケア認定看護師の特定分野での実務経験は、疾病や外傷、手術などにより高度に侵襲を受けた患者さんの看護を5例以上担当した実績が必要です。
(出典:日本看護協会「特定看護分野の実務研修内容の基準」

クリティカルケアの今後は?

クリティカルケアの今後は?

認定看護分野の「救急看護分野」と「集中ケア分野」が統合され、新たに「クリティカルケア分野」の教育が2020年度から開始されました。また、現在は大学などの教育・研究機関でもクリティカルケア看護学領域が誕生しているため、クリティカルケアは今後さらに注目を集める可能性があるでしょう。

クリティカルケアについて理解を深めたい方は、日本クリティカルケア看護学会のセミナーを受講することも1つの方法です。

日本クリティカル看護学会は、クリティカルケア看護学に関わる看護職が集結し、人々に貢献するクリティカルケア看護学の確立と発展を目指して設立されました。会員でなくともセミナーに参加できるため、興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。
(参考:https://www.jaccn.jp/index.html

まとめ

クリティカルケアとは、危機的な状況にある患者さんに対するケアのことです。クリティカルケアは主にICUなどで行われますが、昨今では一般病棟や在宅ケアの場面でも実践される機会が増えています。クリティカルケアにおいても、看護師さんの仕事内容は一般的なものと変わりませんが、家族ケアがより重要となります。

マイナビ看護師では「病棟」や「ICU」など担当業務別にお仕事の検索が可能です。また、看護職専門のキャリアアドバイザーによるサポートも受けられますので、転職を検討中の方はぜひマイナビ看護師にご相談ください。

※当記事は2022年7月時点の情報をもとに作成しています

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