• 2022年7月8日
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リフレクションとは? 看護現場で注目される理由や実践方法を解説

 

看護実践能力を高めるためには、リフレクションが効果的です。リフレクションは看護教育だけでなく、マネジメントや臨床現場における継続教育にも役立ちます。看護学生、新人看護師、中堅看護師、看護管理者など、各段階でリフレクション学習を取り入れることで、経験学習ができる看護師へと成長できるでしょう。

当記事では、リフレクションの概要や、看護現場での重要性について述べた後、看護研修リフレクションの実践方法を解説します。また、看護リフレクションを効果的に行うためのポイントや、具体的な手法も紹介します。

リフレクションとは?

リフレクションとは、自分の経験を振り返り、行動や思考を見つめ直して改善へつなげていくプロセスのことです。リフレクション(reflection)を直訳すると、「反射、反響、反映、東映、影響、内省」といった意味になります。

経験学習としてのリフレクションの概念は、アメリカの教育哲学者ジョン・デューイと、ドナルド・ショーンの理論を基盤として形成されました。現在では、さまざまな業界の人材育成の手段としてリフレクションが用いられています。

リフレクションと反省の違い

リフレクションの目的は、自分の経験を客観的に振り返り、新たな気づきを得て改善へつなげることです。自分の行動や発言を冷静に見つめ直し、理想とのギャップをどのように埋めるべきか、次回にどう活かすかなどを検討します。

反省とは、何か問題が生じたときに、同じミスを避けるための対策を考える際に用いられる言葉です。リフレクションと比較すると、反省は主観的であり、感情が介入しやすい傾向にあります。

たとえば、情報共有に問題があった場合、反省では変えることのできない過去に対して責任の所在が追求されます。リフレクションでは、伝達の正確性を保つためにICT化の導入などが検討されるでしょう。リフレクションは反省よりも、建設的で前向きなアクションであるといえます。

リフレクションとフィードバックの違い

フィードバック(feedback)を直訳すると、「反応、意見」といった意味になります。フィードバックの目的は、自分の行動に対して、他者から意見をもらうことです。

リフレクションでは、自分もしくはグループでの経験を当人たちが振り返るため、第三者からの意見を必要としません。リフレクションとフィードバックでは、評価する相手が異なります。

リフレクションのフレームワーク

リフレクションを効果的に実践するためには、フレームワークを活用します。下記に、リフレクションを行う際の代表的な3つの手法を解説します。

Keep(今後も継続すること)

KPT

  • Keep(できていることを続ける)
  • Problem(問題点を見つける)
  • Try(改善に挑戦する)
改善に向けた取り組みを、効率よく実施する際に効果的な手法。よい点と問題点を明確にし、改善策の計画を練る。失敗の活かし方を具体的に考えられることがメリット。
KDA

  • Discard(今後は破棄すること)
  • Add(追加して行うこと)
継続すべきことと、やめるべきことを明確にし、新たな挑戦を検討する手法。必要なものを整理することで、キャパオーバーによる非効率化を防ぎ、理想像に近づくための選択ができる。個人での振り返りにおすすめ。
YWT

  • やったこと
  • 分かったこと
  • 次にやること
経験から得た気づきを整理し、次の計画を立てる手法。日本で開発されたフレームワークで、個人・チーム問わず活用できる。シンプルな手法で、スピード感のあるリフレクションができることが特徴。

実施する目的や状況に応じてふさわしいフレームワークを選ぶことで、よりリフレクションの効果が感じられるでしょう。

看護現場でリフレクションが重要視される理由

看護現場でリフレクションが重要視される理由

看護では、専門的な知識・技術をただ実施するのではなく、患者さんや状況に応じた判断が求められます。自分の経験や考察が必要となる看護現場では、思考や価値観を整理し、看護観の形成及び発展のため、冷静に自分自身を見つめ直すリフレクションが重要です。

ここでは、看護現場でリフレクションが重要視されている3つの理由を解説します。

業務の効率化や円滑化につながる

リフレクションによって、自分もしくはチームの課題が明らかとなり、適切な対策を取れるため業務効率化が期待できます。多忙で瞬間的な判断が求められる看護現場では、自分の言動が適切であったかがうやむやになることも少なくありません。リフレクションを行えば、自分の言動について振り返りができ、看護ケアの質をより高められます。

また、看護体制やチームの状況をフラットな視点で見つめ直せるため、看護師間のコミュニケーションがスムーズになり、連携強化にもつながるでしょう。

スタッフの自立心を培える

自分が行った言動を自分自身で評価するリフレクションは、看護師の自立心を引き出すために役立ちます。ミーティングやカンファレンスなどで指摘がなされても、看護師自身が正しく受け止めて次に活かせるかという点については、疑問が残る部分もあるでしょう。

しかし、リフレクションでは自分で改善策を導き出すので、自身が納得したうえで自主的に次のステップへ進むことができます。一人ひとりの看護師が主体性を持つためには、適切なリフレクションが欠かせません。

リーダーシップを持つ人材の育成ができる

リフレクションによる自己アセスメントが進むと、客観的思考とマネジメント能力、目標決定能力といったリーダーシップに欠かせない能力が養われます。リフレクションを行う看護師は高い実践能力を備えているので、ほかの看護師や患者さんからの信頼も厚く、リーダーとしてふさわしい人材に成長します。

また、人材育成を行ううえでも、リフレクションが大いに役立ちます。看護部長や看護師長が率先してリフレクションを行うことで、看護師一人ひとりに対する理解が深まり、より強い組織へと成長できるでしょう。

看護研修におけるリフレクションの実践方法

看護研修におけるリフレクションの実践方法

看護研修では、複数人によるグループでのリフレクションを実施します。看護リフレクション研修の大まかな流れは、下記の通りです。

(1)役割の確認・環境整備

(2)アイスブレイク

(3)リフレクションの実施(グループワーク)

(4)感想の発表

看護研修のリフレクションでは、各項目で時間配分を決めておき、限られた時間内で最後まで円滑に進むようにしてください。リフレクション研修が長時間にわたる場合は、適宜休憩時間を設けるなどして、看護師が集中できる環境を整えるとよいでしょう。

リフレクションの話題では、いつもとは異なる行動や困った場面など、心に引っかかった出来事を取り上げます。下記に、リフレクションの話題として適した状況の例を挙げるので、参考にしてください。

  • 患者さんが無断で外出していたので、声をかけて部屋に戻した。
  • 自分の説明によって、患者さんを不快にさせてしまった。
  • 患者さんが不安になっている状況で、声をかけられなかった。
  • いつも無口な患者さんが、笑顔であいさつをしてくれるようになった。

ここでは、看護研修におけるリフレクションの実践方法について、ステップごとに解説します。

研修の準備

研修を始める前に、各参加者にリフレクションを行う場面について、文章にまとめてもらいます。5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を意識し、具体的に記載してもらいましょう。事前に経験談を集め、グループワークで使用する資料を作成しておくこともおすすめです。

また、机を円形に並べるなど、参加者同士が顔を見ながら話しやすい状況を作りましょう。必要に応じて、飲み物の準備などもしておきます。

研修冒頭のアイスブレイク

グループワークに入る前に、参加者が話しやすい雰囲気を作るため、アイスブレイクの時間を設けましょう。アイスブレイクによって参加者の緊張が和らげば、グループワーク中の積極的な発言が期待できます。

アイスブレイクの手段としては、自己紹介やゲーム、テーマに沿った近況報告などがあります。自己紹介だけだと単調になりやすいので、簡単なお題と組み合わせることがおすすめです。アイスブレイクでは、看護師全員が参加できる内容を選び、長引かないよう5~10分程度と時間を決めて取り組みましょう。

グループワーク

参加者の経験が記載された資料をもとに、グループワークを始めます。各参加者は自分の経験について語り、そのときの感情や、自分がそう思った理由などについて語ります。患者さんの行動の背景や、周囲の状況について述べても構いません。

また、よかった点や改善したいと思う点についても考察します。誰かが話している間はほかの参加者は傾聴し、参加者間での質問や討論は避けましょう。1人当たりの持ち時間を決めて、参加者全員が公平に話せるようにしてください。

感想の発表

参加者全員が経験について語り終えたら、感想を発表します。リフレクションを行って感じたことや、ほかの看護師の話を聞いて感じたことについて語り合いましょう。

グループでのリフレクションは、1人で行うものとは全く異なる体験です。リフレクションへの理解が深まり、参加者同士の交流のきっかけにもなります。お互いの看護観を共有するためにも、自分の思ったことを率直に発言してもらいましょう。

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リフレクションにおけるファシリテーターの役割

リフレクションにおけるファシリテーターの役割

リフレクションを円滑に進めるために、ファシリテーターを配置します。ファシリテーターとは進行役のことで、参加者の発言や気づきを支援するためのサポートを行う存在です。

下記に、リフレクションにおけるファシリテーターの役割をまとめます。

  • 参加者が話しやすい雰囲気を作る
  • 参加者の感情や発言を掘り下げ、気づきを促す
  • 設定時間に沿ってリフレクションを進行させる

ファシリテーターには、看護リフレクションの意図と目的を理解しており、リフレクションについて十分な経験を持つ人がふさわしいでしょう。

フィードバックを行う際の注意点

看護リフレクションを効果的に実施できるかについては、ファシリテーターの能力が大きく関わります。下記は、リフレクションの参加者にコメントを行う際の注意点です。

  • 問題点を指摘するなど、ネガティブな方向へ誘導しない
  • 分からない部分は質問し、参加者全員が理解できるように進める
  • アドバイスを行うのではなく、参加者自身が答えを導き出せるようにする

ファシリテーターはあくまでもサポーターであり指導者ではないため、批判や忠告を行うことは不適切です。中立的な立場から事実を整理し、有意義な結論を見出せるように手伝いましょう。足を組んだり、上から目線で発言したりといった高圧的な態度は、リフレクションを妨げるため注意してください。

また、看護研修におけるリフレクションの目的には、参加者全員で情報を共有することも含まれます。話が抽象的であれば具体化する、筋道を整理するなど、ほかの参加者が分かりやすいように話を進めると、リフレクション研修の質を高められます。参加者の表情や性格を読み取り、一人ひとりに合わせて質問の仕方を変えられれば、より効果的です。
(出典:日本赤十字社「人が育つ-リフレクションの導入とその効果-」

リフレクション研修を効果的に行うためのポイント

リフレクション研修を効果的に行うためのポイント

リフレクション研修の効果を高めるためには、看護師一人ひとりの意識や意欲を大切にする必要があります。限られた時間を有意義に使うためにも、リフレクションの効果を最大限に引き出しましょう。

ここでは、看護におけるリフレクション研修のポイントを、3つ紹介します。

強制せず自発的な参加を促す

リフレクションでは、自分の看護経験や、偽りのない感情を他者に話すため、参加者が精神的負担を感じることもあります。また、自分の看護業務に問題がないと感じている場合は、リフレクションの意義が理解できず、貴重な時間を無駄にしてしまうでしょう。

リフレクションは継続して行うことも大切であり、一度研修に参加したからといって効果が得られるものではありません。また、不本意な参加では、リフレクションに対して悪い印象を抱く恐れもあります。したがって、リフレクション研修への参加は強制せず、看護師の自発的な参加を待つことが大切です。

人ではなく事柄・行動に注目する

看護リフレクションを行う際は、参加者や話に登場する人物ではなく、起こった事実に注目します。リフレクションは、参加者本人の性格や人格を否定するものではなく、誰かに責任を問うものでもありません。

たとえば、「患者さんが急に怒りだしたので、怖くなって退出した」という事実がある場合、事柄に注目すると「驚いてとっさの対応をとった」となります。しかし、人に注目すると「患者さんの気持ちに寄り添わなかったことは、看護師として不適切だ」となり、参加者への批判になりかねません。

リフレクションを行う際には、事実のみを解釈し、物事の良し悪しを判断することは避けましょう。

失敗も成功もバランスよく振り返る

リフレクションでは、失敗だけに目を向けず、よかったことやできたことについても振り返ることが大切です。責任感が必要な看護業務では、できないことに意識が向きやすいので、落ち込む看護師の方も多いでしょう。しかし、「患者さんの本心を聞けた」「患者さんの要望にできる限り応えた」といった成功談も語る中で、看護師としての自分の強みに気づくことができます。

リフレクションの最大の目的は、弱点を改善してさらなる強みへ昇華させ、自己成長へつなげることです。失敗と成功をバランスよく振り返ることで自己肯定感を維持し、実力を備えた魅力的な看護師を目指しましょう。

リフレクションをより深めるための2つの手法

リフレクションをより深めるための2つの手法

看護研修のリフレクションでは、学習モデルに沿って話を進めるケースが多く見られます。順序立てて経験を振り返ることは、物事を体系的に捉えて、客観性を持った思考を引き出すために効果的です。

ここでは、看護の現場や教育において、リフレクションをより深めるための手法を紹介します。

リフレクティブ・サイクル

リフレクティブ・サイクルは、1998年に教育学者ギブズによって提唱された学習モデルです。下記に、リフレクティブ・サイクルのモデルを示します。

(1)記述・描写 何が起こったのかという事実を客観的に示す。
(2)感覚 自分は何を感じたのかを主観的に考える。
(3)推論 経験に対し、よかった点や悪かった点を振り返る。
(4)分析 記述・感覚・推論からなぜそうなったのか、事実の背景を分析する。
(5)評価 経験から得た学びや、今後の改善点について考える。
(6)行動計画 次に同じような状況に遭遇したとき、どのような行動を取るかを考える。

リフレクティブ・サイクルでは、段階を追って丁寧に振り返りができます。実際に看護研修のリフレクションで使用されることも多く、リフレクションが初めての方にもおすすめのモデルです。

ALACTモデル

ALACTモデルは、オランダの教育研究社コルトハーヘンによる学習モデルです。下記に、ALACTモデルの概要を示します。

第1局面:行為 起こった行動や発言の事実を表す
第2局面:行為の振り返り 行為の背景にある感情や考えを具体化する
第3局面:本質的な諸相への気づき 感情の原因を掘り下げ、自分や相手について新たな気づきを得る
第4局面:行為の選択肢の拡大 第1~3局面を踏まえて、新しい選択肢を考える
第5局面:試み 第4局面で考案した選択肢を実行に移す

ALACTモデルの第2局面では、深い省察を行うために、自分と相手が「何をして」「何を思い」「何を感じ」「何をしたかったか」という質問を適宜用います。自分の思考の癖や価値観に気づくために有効な学習モデルです。

まとめ

リフレクションとは、自分の経験を振り返り、新たな気づきを得て改善を促すプロセスです。看護研修におけるリフレクションでは、成功と失敗をバランスよく振り返り、学習モデルに沿って進めるなどすると、効果を高められます。

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※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています

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