• 2022年7月5日
  • 2022年7月5日

看護研究のテーマの決め方|項目別の書き方・書く時のポイント

 

看護職として一定の経験を積んだ看護師は、「看護研究」に取り組むことがあります。看護研究は看護の質向上を図るため、そして看護師自身のステップアップに資するために古くから行われている活動です。

しかし、看護研究は決して簡単な活動ではありません。そのため、苦手意識を持つ看護師の方も多くいるのではないでしょうか。

そこで今回は、看護研究の概要から進め方・テーマの決め方、項目別の書き方、書く時のポイントまで詳しく解説します。苦手意識をなくし、自信をもって看護研究を行いたい看護師の方は、ぜひご一読ください。

看護研究とは

看護研究とは、看護の質を向上し患者さまによりよいケア・サポートを実施するため、看護の基盤となる知識を洗練し、既存の看護学に新たな知識を創り生す活動のことです。

看護研究の歴史は、1930〜1940年代にまで遡ります。初めて看護研究を行ったのは、近代看護教育の母とも呼ばれるイギリスの看護教育学者「フローレンス・ナイチンゲール」で、クリミア戦争での戦傷者の死亡率を、統計手法を用いて研究したことが始まりでした。現代においても看護の基盤として参考にされている『看護覚え書』は、フローレンス・ナイチンゲールの看護研究の成果といえるでしょう。

看護研究の目的は、主に「看護の質向上」が挙げられます。看護の質が向上すれば、将来的な看護の発展に役立てられるだけでなく、看護師一人ひとりのステップアップにもつながるでしょう。

高齢化が進む近年、医療・看護の需要はますます高まっています。そのような状況の中、業界全体の質の維持・向上につながる看護研究は非常に重要な活動といえるでしょう。

看護研究の進め方

看護研究の進め方

看護研究は、具体的に下記のようなプロセスで実施することが基本です。

(1)研究するテーマを決める

看護研究を進めるにあたり、まずは研究テーマを決定します。「研究したいテーマは特にない」という場合は、身近に感じている日頃の疑問を深堀りするとよいでしょう。

(2)先行研究や文献を確認する

ある程度のテーマが定まったら、先行研究や文献を確認しましょう。これらの確認は、すでに重複したテーマでの研究文献がないか、または自身の看護研究に活かせるデータや情報がないかを調べることに役立ちます。

(3)研究計画書を作成する

研究テーマを確実に決定したら、いよいよ研究計画書を作成します。研究計画書とは、「このような考えのもと、このような方法で研究を進める」ということが分かる、いわゆる企画書のような書類です。

(4)データを収集する

研究計画書を作成したあとは、記載した方法に沿って必要なデータを収集します。データの収集方法には、主に「質的研究」「量的研究」の2つがあります。質的研究とは、インタビューや聞き取りなどの面接調査で、対象者が語った内容を分析するという研究方法で、量的研究とは、あらかじめ配布したアンケート用紙から集まった回答を分析するという研究方法です。

(5)収集したデータを分析する

質的研究・量的研究のいずれか、または双方からデータ収集ができたら、次はデータ分析を行います。分布を見て平均値を算出したり、傾向や関係性を調査するなど、研究の目的に沿った分析方法を実施しましょう。

(6)研究結果を発表する

収集データの分析が完了したら、研究結果を論文にまとめ、看護研究発表会にて発表します。多くの場合、パワーポイントにまとめてスライド形式で発表します。一目見るだけでも分かるよう、なるべく1枚のスライドに膨大な情報量を詰め込まないこと、適宜表やグラフを用いて論文作成を行うことがポイントです。

看護研究のテーマの決め方

看護研究のテーマの決め方

看護研究のテーマは、いわゆる看護研究の柱です。看護研究発表会に参加する人々にとって興味深い内容でなければ、積極的に読んでもらうことはできないといっても過言ではないでしょう。とはいえ、多くの人が興味のあるテーマを考えることは決して簡単ではありません。

では、看護研究のテーマはどのようにして決めるとよいのでしょうか。最もおすすめなのが、前述したように「身近に感じている日頃の疑問を深堀りすること」です。

例えば、「なぜリハビリに消極的な患者さまが多いのか」「カルテ管理だけでなく、受付や会計もすべて自動化されると、一体どれほど効率化されるのか」などは、よくある小さな疑問となるでしょう。これらをそのまま看護研究のテーマとして活用すれば、テーマを決めることも比較的困難ではなくなります。さらに実態調査や院内検証もしやすく、資料作りにおいても効率よく進められるでしょう。

看護研究のテーマは大きすぎず小さすぎず、かつ実務に関連するものが望ましいことを考えると、このような日々感じる小さな疑問は最も適切といえます。

看護研究でおすすめのテーマ

これまで実際に行われてきた看護研究には、さまざまなテーマがあります。下記は、一部のテーマ例です。

看護研究のテーマ例
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う社会人の生活習慣と健康状態の変化
  • 専門看護師として実践する中で得られた経験
  • 育児をする母親のスマートフォン使用による不安・孤独感解消の関連性
  • 終末期がん患者さまを支える看護師の対話方法
  • 認知症患者さまに対する各セラピー効果の比較

このように、看護研究のテーマは必ずしも「看護業界」「患者さまに提供する看護内容」にかかわるものでなければならないというわけではありません。

幅広いテーマを選択できることから、かえって悩みがちな部分でもありますが、「向いているテーマ」と「向いていないテーマ」それぞれの特徴をおさえておくと、最終決定がしやすくなるでしょう。

向いているテーマの特徴 向いていないテーマの特徴
  • 壮大すぎず、矮小すぎることもないテーマ
  • 研究結果を出すことで、実務に役立てられそうなテーマ
  • 結果を出すのに多大な期間を要する壮大なテーマ
  • 看護師としての役割から非常に逸脱したテーマ

【項目別】看護研究の書き方

【項目別】看護研究の書き方

看護研究の内容をまとめる論文は、下記の要素で構成されることが一般的です。

  • 研究テーマ(目的)
  • 序論(意義)
    →研究の背景・動機・必要性 など
  • 研究方法
    →研究対象者・対象条件・データ収集・分析方法 など
  • 研究結果・分析結果
  • 考察
  • 要約
  • 文献

また、看護研究の形式(項目)は研究者や研究テーマによって大きく異なることはほとんどありません。基本的には上記の項目で構成されるため、それぞれに記載する内容さえ分かれば看護研究に苦手意識を持つ方でも簡単に書けるようになります。

また、看護研究に必要となる研究計画書は、ネット上で公開されているテンプレートの活用もおすすめです。

テーマ(目的)

看護研究では、まず研究内容を表したテーマを記載します。いわゆる「タイトル」は、パッとみて誰に対して、どのような目的で、何を明らかにした研究なのかを想像できるような内容にすることがポイントです。

また、なるべく情報を詰め込もうとして長いタイトルをつけると、分かりにくくなってしまうため、重要な要素のみをかいつまんで、なるべく簡潔にしましょう。長くなりそうな場合は、副題をつけると、伝わりやすいタイトルになります。

序論(意義)

序論は、本文の前置きとして研究目的の根拠を示す部分となります。「はじめに」という項目を立てて作成することが一般的です。ここでは、下記のような順番で書くと話の流れがより分かりやすくなります。

  • 研究の背景・動機
  • 研究の意義(研究結果を出すことの効果・メリット)
  • 文献検討
  • 用語の定義

読者となる看護研究の参加者にしっかり読んでもらう研究論文を作るためには、研究の背景・動機や意義について魅力的な内容になるよう意識することが大切です。特に、「このテーマにおける研究の必要性」や「研究結果から判明した内容を実施することの効果」を明確に示すことは、読まれやすさを格段に向上させる要因となるでしょう。

方法

方法の項目においては、「研究の対象者・対象条件」や「データの収集方法・分析方法」、「研究機関」、「論理的配慮」を明記します。

いくつかの項目の中でも、特に重要となる項目が「データの収集方法・分析方法」です。科学的根拠に基づいていないデータは信ぴょう性に欠けるため、必ずエビデンスを残せる確実なデータをとってからまとめる必要があります。根拠の把握ができないデータは明記しないようにしましょう。

また、データの収集・分析にはそれぞれいくつかの方法があることも特徴です。対象者に対してアンケート用紙や質問用紙で必要データを収集する方法(量的研究)もあれば、面接を通して調べたり、対象者の行動を観察して調べたりする方法(質的研究)もあります。どのような研究方法を用いたのかを明確に示す必要があることを覚えておきましょう。

結果

結果の項目においては、実施した看護研究の分析結果から分かったことを客観的に明記します。

このとき、研究対象者の性別や年齢といった基本属性から調査人数・有効回答数まで必ず示しましょう。また、結果をきちんと伝えるためには、ベースとなる分析結果も具体的に出さなければなりません。誰が見ても理解できるよう、図や表を使用して視認性を高めることもポイントです。

考察

考察の項目においては、実施した看護研究の分析結果から分かったこと、さらに見えてきた問題点や今後の課題・対策について主観的に明記します。

結果の項目とやや似たような印象をもちますが、結果は「客観的に分析結果を示す」一方で、考察は「主観的に分析結果を解釈する」という違いがあります。結果と考察が混乱しないよう注意しましょう。

結果と考察が混乱しそうな場合、考察には「結果の解釈や結果が看護実践においてどのように役立つか」といった内容を含めると、比較的容易に差別化を図ることができます。

要約(まとめ)

要約の項目においては、研究内容・研究目標・結論を包括的に、かつ簡潔に明記する、いわゆる「まとめ」部分となります。読者によっては序論の次に目を通す部分でもあることから、全編を端的に記載することがポイントです。

序論で何らかの問題に提起している場合は、その問題を解決できる一言を入れておくだけでも、読まれやすさは大きく異なります。「同じことを2回説明している」というイメージを抱かれないよう、言い方を変えたり端的にまとめたりすることを心がけましょう。

文献

文献の項目においては、看護研究を行うにあたって参考にした文献をすべて記載します。ほかの項目とは違って、自身で構成を組み立てて文章をつくるわけではなく、単純に参考にした文献を示すだけであるため、「上手に書けないこと」に対する心配はさほど必要ありません。

しかし、文献の発表元によっては文献・出典元の投稿規定が定められているケースもあります。そのため、必ず参考にした文献の投稿規定をチェックし、定められた形式に沿って記載するようにしましょう。

また、世に出ている数ある文献の中には、最新の情報と異なる情報が記載されている場合もあります。文献を参考にする際は、最新の情報となっているかどうかもきちんと精査しておきましょう。

看護研究を書く時のポイント4つ

看護研究を書く時のポイント4つ

看護研究を書くにあたって、ポイントや注意点がいくつかあります。ポイントをおさえることで、魅力的な看護研究をスムーズに書けるようになるでしょう。また、著作権などの思わぬトラブルの発生を最大限防ぐことも可能です。

最後に、看護研究を書く時のポイントを4つ紹介します。看護研究に苦手意識をもっている方は、ぜひ参考にしてください。

事前に研究疑問と答えを用意する

看護研究に研究担当者として取り組まなければならないことが決まったら、まずはすぐにでも研究疑問と答えを用意しておくとよいでしょう。研究疑問とは、研究で明らかにしたいこと、いわゆる研究目的を指します。

研究疑問を用意できたら、次にその疑問に対する答えを用意します。答えの想像がまったくできていなければ、質問用紙・アンケート用紙の作成といった調査に必要な準備ができないためです。これらの調査は、あらかじめ用意していた答えが本当に正解といえるのかを確認するための活動といってもよいでしょう。

また、どうしても答えが浮かばないという場合は、他職種や専門家に意見を仰いだり、文献検索をしたりしてヒントを得ることもおすすめです。

実践的な内容にする

看護研究を書く際、構成を守ったり正しい文法を使用したりすることについ意識がいってしまいがちです。しかし、読み手に興味深いと思わせるためには、構成や文法を重要視するのではなく、「いかに実践的な内容になっているか」を重要視しましょう。

臨床において実践的な内容でなければ、いくら構成や文法がきれいで読みやすい論文・研究計画書であっても、興味をもって読んでもらうことはできません。看護研究を進める際は、実践的な内容となっているかどうかに注力することを忘れないでおきましょう。

人を対象にする場合は倫理的配慮をする

人を対象にして看護研究を行う場合は、倫理的配慮が欠かせません。倫理的配慮とは、研究の対象者となる個人や施設が特定されないようにする、いわゆるプライバシーの配慮のことです。

収集データの発表や解釈にはある程度の研究対象者の情報が必要となりますが、なるべく不要な個人情報を出さないようにしましょう。例えば、入退院の年月日を示すのではなく入院期間のみを記載するなど、適宜曖昧な表現を使用することがポイントです。

また、万が一倫理的な欠陥が生じた際に備え、十分な対応を迅速にとれるような準備も徹底しておきましょう。

文章を引用する時は一次論文の規定に従う

看護研究の論文・研究計画書の作成において、文献から文章を引用する場合は必ず一次論文を入手し、かつ投稿規定に従いましょう。一次論文の規定に従って引用しなければ、著作権の侵害や無断転載とみなされ、努力して作成した論文や研究成果が無効となってしまうおそれがあります。

また、図や表を引用する場合も、転載許諾を得たうえで明記することが必須です。引用ではなく改変して使用(出典)する場合も同様となります。

看護研究において、あらゆる先行文献を参考にすることは大切です。しかし、このように取り扱いには十分に注意しておく必要があることを覚えておきましょう。

まとめ

看護研究は、看護の基盤となる基礎知識を洗練し、既存の看護学に新たな知識を創り生す研究活動です。イギリスの看護教育学者であるフローレンス・ナイチンゲールが初めて行った看護研究は、現代においても「新たな看護知識の創生による看護の質向上」に向けて重要なものとされています。

看護研究の形式(項目)は基本的に決まっているため、看護研究の経験が少ない方でも比較的簡単に書くことが可能です。最も大切なのは研究テーマで、「いかに読者が興味を抱くテーマを選定するか」が肝となることを覚えておきましょう。

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※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています

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