• 2022年7月5日
  • 2023年8月22日

看護研究とは? テーマの決め方から研究項目の書き方まで解説

 

看護職として一定の経験を積んだ看護師は、「看護研究」に取り組むことがあります。看護研究は看護の質向上を図るため、そして看護師自身のステップアップに資するために古くから行われている活動です。

しかし、看護研究は決して簡単な活動ではありません。看護業務を科学的な視点で評価し、新たな看護の知識を創る必要があることから、苦手意識をもつ看護師さんもいるのではないでしょうか。

今回は、看護研究の概要から進め方・テーマの決め方、項目別の書き方、書く時のポイントまで詳しく解説します。苦手意識をなくし、自信をもって看護研究を行いたい看護師さんは、ぜひご一読ください。

看護研究とは

看護研究とは、看護の質を向上して患者さんによりよいケア・サポートを実施するため、看護の基盤となる知識を洗練させ、既存の看護学に新たな知識を創り出す活動のことです。

看護研究の歴史は、1930〜1940年代にまで遡ります。初めて看護研究を行ったのは、近代看護教育の母とも呼ばれるイギリスの看護教育学者「フローレンス・ナイチンゲール」で、クリミア戦争での戦傷者の死亡率を、統計手法を用いて研究したことが始まりでした。現代においても看護の基盤として参考にされている『看護覚え書』は、フローレンス・ナイチンゲールの看護研究の成果といえるでしょう。

看護研究の目的は、主に「看護の質向上」が挙げられます。看護の質が向上すれば、将来的な看護の発展に役立てられるだけでなく、看護師一人ひとりのステップアップにもつながります。

高齢化が進む近年、医療・看護の需要はますます高まっています。そのような状況の中、業界全体の質の維持・向上につながる看護研究は非常に重要な活動といえるでしょう。

看護研究と業務改善の違い

看護の質向上を目指す看護研究は業務改善と間違われやすいですが、両者には明確な違いがあります。

看護の業務改善は、現在の看護業務で発生している問題を解決するための活動です。実際に担当している患者さんへのメリットを目的としており、問題解決のプロセスでは科学的根拠や再現性はあまり重視されません。

対して看護研究は、現在の看護業務を科学的な視点で評価し、新たな看護の知識を創り出します。研究プロセスでは常に科学的根拠が求められ、結果の再現性も確保されていなければなりません。看護研究によって得られた新たな知識は、将来担当する多くの患者さんへのメリットとなります。
(出典:名桜大学看護実践教育研究センター「看護研究の意義」

看護研究の進め方

看護研究の進め方

看護研究は、具体的に以下のようなプロセスで実施します。

(1)研究するテーマを決める

看護研究を進めるにあたり、まずは研究テーマを決定します。「研究したいテーマは特にない」という場合は、日頃感じている疑問を深掘りするとよいでしょう。

(2)先行研究や文献を確認する

ある程度のテーマが定まったら、先行研究や文献を確認しましょう。これらの確認は、すでに重複したテーマでの研究文献がないか、または自身の看護研究に活かせるデータや情報がないかを調べることに役立ちます。

(3)研究計画書を作成する

研究テーマを決定したら、いよいよ研究計画書を作成します。研究計画書とは、「このような考えのもと、このような方法で研究を進める」ということが分かる、いわゆる企画書のような書類です。

(4)データを収集する

研究計画書を作成したら、記載した方法に沿って必要なデータを収集します。データの収集方法には、主に「質的研究」「量的研究」の2つがあります。質的研究とは、インタビューや聞き取りなどの面接調査で対象者が語った内容を分析するという研究方法で、量的研究とは、あらかじめ配布したアンケート用紙から集まった回答を分析するという研究方法です。

(5)収集したデータを分析する

質的研究・量的研究のいずれか、または双方からデータ収集ができたら、次はデータ分析を行います。分布を見て平均値を算出する、傾向や関係性を調査するなど、研究の目的に沿った分析方法を実施しましょう。

(6)研究結果を発表する

収集データの分析が完了したら、研究結果を論文にまとめ、看護研究発表会にて発表します。多くの場合、パワーポイントにまとめてスライド形式で発表します。一目見ただけでも理解しやすいよう、なるべく1枚のスライドに膨大な情報量を詰め込まないこと、適宜表やグラフを用いて論文作成を行うことがポイントです。

看護研究の種類

看護研究の種類

看護研究でのデータの収集方法には、主に「量的研究」「質的研究」の2つがあります。

量的研究は、あらかじめ配布したアンケート用紙から集まった回答を分析するという研究方法です。一方の質的研究は、インタビューや聞き取りなどの面接調査で対象者が語った内容を分析するという研究方法です。

量的研究・質的研究のそれぞれについて、具体的な方法やメリット、研究デザインの種類を紹介します。

量的研究

量的研究とは、研究対象を数量的なデータとして扱って特徴や原因を分析し、仮説の検証を行う研究方法です。

量的研究の方法としては、主にアンケートや心理テストを研究対象の集団に実施し、結果をデータ化して分析します。数字のデータに基づく研究ができるため、信頼性が高い点がメリットです。

量的研究には、大きく分けて3つの研究デザインが存在します。

●介入研究

介入研究は「臨床試験」とも呼ばれ、一般的に、適切に実施された介入研究からは、観察研究よりも信頼性の高い情報が得られます。効果などがまだ十分に確認されていない方法を試験することもあり、高い倫理性と科学性が求められる研究方法です。

●横断研究

横断研究は、集団の現時点におけるデータのみを収集し、データの要因には何があるかを分析する研究デザインです。

横断研究の代表例にはケース・コントロール研究があります。ケース・コントロール研究とは、特定の事象が見られる集団と見られない集団を比較し、要因にどのような違いがあるかを検討する手法です。

横断研究はデータの収集が簡単で、短い期間で結果を出せるメリットがあります。

●縦断研究

縦断研究は、集団に対して継続的なデータ収集を行い、時間軸に合わせてデータの変化や要因を分析する研究デザインです。

縦断研究の代表例にはコホート研究があります。コホート研究とは、集団に一定期間の追跡調査を行い、要因への曝露によってどのような結果が得られるかを分析する手法です。

縦断研究はデータの変化を直接的に調べることで、結果と要因の因果関係を明確にできるメリットがあります。

質的研究

質的研究とは、研究対象から得られた主観的データをもとに分析し、研究対象の内面世界や社会的・文化的背景についての理解を深める研究方法です。

質的研究を行う際は、一般的にインタビューや観察から集団のデータを収集し、特徴などを記述して実態を調べます。体験・行動といった定量化できない要因を分析でき、研究テーマについての新たな知識獲得を目指せる点が、質的研究のメリットです。

質的研究の代表的な研究デザインを3つ紹介します。

●事例研究

事例研究は、特定の事例について現在までの過程を多角的・全体的に調査し、法則性や新たな知識の発見につなげる研究デザインです。特殊な事例についての対応方法を知れるほか、発見した法則性に基づく仮説から量的研究につなげられるメリットがあります。

●フィールドワーク

フィールドワークは、研究対象の事象が存在する現場に研究者自身が赴き、直接的なデータ収集と分析を行う研究デザインです。事例を直接確認・観察するため、データの変容を防げる点がメリットです。個人や集団との対話を通して、データ収集だけでは見えない学びも得られます。

●グラウンデッド・セオリー

グラウンデッド・セオリーは、インタビューなどで得たデータを文章化したうえで細かく分断し、特徴的な内容にラベルをつけて意味や関連性を調べる研究デザインです。細分化されたデータを系統的・客観的に分析でき、新たな理論の構築につなげられるメリットがあります。

看護研究のテーマの決め方とポイント

看護研究のテーマの決め方とポイント

看護研究のテーマは、いわゆる看護研究の柱です。看護研究発表会に参加する人々にとって興味深い内容でなければ、積極的に読んでもらえません。とはいえ、多くの人が興味のあるテーマを考えることは決して簡単とはいえないでしょう。

看護研究のテーマを決めるときに最も重要なことは「まず興味をもてる内容であるか」です。自分が興味をもてる内容であれば、研究のモチベーションを維持できます。興味をもてる内容については十分な予備知識をもっていることが多く、具体的な研究計画もイメージしやすいでしょう。

以下では、研究テーマを決めるときに押さえておきたいその他のポイントも紹介します。

研究で明らかにできるか

看護研究のテーマは、自分が実施する研究によって明らかにできるものにしなければなりません。

看護師が行う看護研究では、研究可能な対象や、研究にあてられる期間・費用に限りがあります。どれほど興味があり、また実際の看護業務に役立つ内容であっても、自分にできる研究の範囲で明らかにできないものは、研究テーマに選ばないようにしましょう。

ただし、簡単に明らかにできる内容も看護研究のテーマには適していません。自分が取り組める範囲で、かつ研究する価値の大きい研究テーマを考えることが大切です。

調査することで何に役立つのか

看護研究のテーマは、「調査することで何に役立つか」も意識して決定しましょう。

看護研究は、調査・研究によって得られた知識をほかの看護師と共有し、よりよい看護の提供につなげることを目的としています。「研究によって特定の症状がある患者さんの回復に寄与できる」「看護学生や新人看護師が看護技術を習得しやすくなる」など、研究成果を具体的に示せるようにしましょう。

役立つテーマは研究する価値が分かりやすく、看護研究発表会に参加する人々の興味も引けるようになります。

看護研究でおすすめのテーマ

看護研究でおすすめのテーマ

これまで実際に行われてきた看護研究には、さまざまなテーマがあります。下記は、一部のテーマ例です。

看護研究のテーマ例
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う社会人の生活習慣と健康状態の変化
  • 専門看護師として実践する中で得られた経験
  • 育児をする母親のスマートフォン使用による不安・孤独感解消の関連性
  • 終末期がん患者さんを支える看護師の対話方法
  • 認知症患者さんに対する各セラピー効果の比較

このように、看護研究のテーマは必ずしも「看護業界」「患者さんに提供する看護内容」にかかわるものでなければならないというわけではありません。

幅広いテーマを選択できることから、かえって悩みがちな部分でもありますが、「向いているテーマ」と「向いていないテーマ」それぞれの特徴を押さえておくと、最終決定がしやすくなるでしょう。

向いているテーマの特徴 向いていないテーマの特徴
  • 壮大すぎず、矮小すぎることもない
  • 研究結果を出すことで、実務に役立てられそう
  • 自分が取り組めるレベルの範囲・方法・難易度
  • 結果を出すのに多大な期間を要する・壮大
  • 看護師としての役割から非常に逸脱している
  • わざわざ研究しなくても、答えが推測できてしまう

【項目別】看護研究の書き方

【項目別】看護研究の書き方

看護研究の内容をまとめる論文は、下記の要素で構成されることが一般的です。

  • 研究テーマ(目的)
  • 序論(意義)
    →研究の背景・動機・必要性 など
  • 研究方法
    →研究対象者・対象条件・データ収集・分析方法 など
  • 研究結果・分析結果
  • 考察
  • 要約
  • 文献

また、看護研究の形式(項目)は研究者や研究テーマによって大きく異なることはほとんどありません。基本的には上記の項目で構成されるため、それぞれに記載する内容さえ分かれば看護研究に苦手意識をもつ方でも簡単に書けるようになります。

また、看護研究に必要となる研究計画書は、ネット上で公開されているテンプレートの活用もおすすめです。

テーマ(目的)

看護研究では、まず研究内容を表したテーマを記載します。いわゆる「タイトル」は、パッとみて誰に対して、どのような目的で、何を明らかにした研究なのかを想像できるような内容にすることがポイントです。

また、なるべく情報を詰め込もうとして長いタイトルをつけると、分かりにくくなるため、重要な要素のみをかいつまんで、なるべく簡潔にしましょう。長くなりそうな場合は、副題をつけると、伝わりやすいタイトルになります。

序論(意義)

序論は、本文の前置きとして研究目的の根拠を示す部分となります。「はじめに」という項目を立てて作成することが一般的です。ここでは、下記のような順番で書くと話の流れがより分かりやすくなります。

  • 研究の背景・動機
  • 研究の意義(研究結果を出すことの効果・メリット)
  • 文献検討
  • 用語の定義

読者となる看護研究発表会の参加者にしっかり読んでもらう研究論文を作るためには、研究の背景・動機や意義について魅力的な内容になるよう意識することが大切です。特に、「このテーマにおける研究の必要性」や「研究結果から判明した内容を実施することの効果」を明確に示すことは、読まれやすさを格段に向上させる要因となるでしょう。

方法

方法の項目においては、「研究の対象者・対象条件」や「データの収集方法・分析方法」、「研究機関」、「倫理的配慮」を明記します。

なかでも、特に重要となる項目が「データの収集方法・分析方法」です。科学的根拠に基づいていないデータは信ぴょう性に欠けるため、必ずエビデンスを残せる確実なデータをとってからまとめる必要があります。根拠の把握ができないデータは明記しないようにしましょう。

また、データの収集・分析にはそれぞれいくつかの方法があります。対象者に対してアンケート用紙や質問用紙で必要データを収集する方法(量的研究)もあれば、面接を通して調べる、対象者の行動を観察して調べるといった方法(質的研究)もあります。どのような研究方法を用いたのかを明確に示す必要があることを覚えておきましょう。

結果

結果の項目においては、実施した看護研究の分析結果から分かったことを客観的に明記します。

このとき、研究対象者の性別や年齢といった基本属性から調査人数・有効回答数まで必ず示しましょう。また、結果をきちんと伝えるためには、ベースとなる分析結果も具体的に出さなければなりません。誰が見ても理解できるよう、図や表を使用して視認性を高めることもポイントです。

考察

考察の項目においては、実施した看護研究の分析結果から分かったこと、さらに見えてきた問題点や今後の課題・対策について主観的に明記します。

結果の項目とやや似たような印象をもちますが、結果は「客観的に分析結果を示す」一方で、考察は「主観的に分析結果を解釈する」という違いがあります。結果と考察が混乱しないよう注意しましょう。

結果と考察が混乱しそうな場合、考察には「結果や結果の解釈が看護実践においてどのように役立つか」といった内容を含めると、比較的容易に差別化を図れます。

要約(まとめ)

要約は、研究内容・研究目標・結論を包括的に、かつ簡潔に明記する、いわゆる「まとめ」部分となります。読者によっては序論の次に目を通す部分でもあることから、全編を端的に記載することがポイントです。

序論で何らかの問題提起をしている場合は、その問題を解決できる一言を入れておくだけでも、読まれやすさは大きく異なります。「同じことを2回説明している」というイメージを抱かれないよう、言い方を変え端的にまとめることを心がけましょう。

文献

文献の項目においては、看護研究を行うにあたって参考にした文献をすべて記載します。ほかの項目とは違って、自身で構成を組み立てて文章をつくるわけではなく、単純に参考にした文献を示すだけであるため、「上手に書けないこと」に対する心配はさほど必要ありません。

しかし、文献の発表・発行元によっては文献・出典元の投稿規定が定められているケースもあります。そのため、必ず参考にした文献の投稿規定をチェックし、定められた形式に沿って記載するようにしましょう。

また、世に出ている数ある文献のなかには、古い情報が記載されている場合もあります。文献を参考にする際は、最新の情報となっているかどうかもきちんと精査しておきましょう。

文献の検索方法

文献の検索方法

参考にする文献や先行文献を検索するときは、インターネットの文献検索ツールを活用しましょう。看護研究のテーマや根幹となる疑問・課題をキーワード化し、文献検索ツールに入力して検索すると、取り組んでいる看護研究に沿った文献を探し出せます。

また、東京都清瀬市と兵庫県神戸市に設置されている日本看護協会の専用図書館を利用することもおすすめです。

以下では、文献検索に役立つツールや、専用図書館の利用方法を紹介します。

おすすめの文献検索ツール

看護研究の文献検索に役立つツールは、次の4つがあります。

最新看護索引Web
日看護協会が提供する文献データベースです。看護分野に特化しており、看護の実践・研究・教育に関連した文献を検索できます。看護分野に限定されたデータベース(約26万件)で、初めて堅固研究に取り組む人にも使いやすくなっています。有料ですが、会員であれば無料利用ができます。
(出典:公益社団法人日本看護協会「文献を探す(最新看護索引)」

医中誌Web
医学中央雑誌刊行会が提供する、国内の医学系分野に関連する論文情報を網羅したデータベースです。絞り込み条件に「看護文献」があり、看護系の文献を簡単に検索できます。類義語を含めて検索可能。「本文あり」機能でweb上で全文を読むこともできます。サービスは有料です。

Google Scholar(グーグル・スカラー)
Googleが提供する検索サービスの1つで、Web上の学術論文を検索できるデータベースです。検索結果に被引用数を表示する点が特徴で、引用されている数の多さで論文の質を推測できます。引用されている文献をたどることで効率よく先行研究を確認できます。利用無料です。

CiNii Research(サイニィ・リサーチ)
国立情報学研究所が提供する、学術論文情報や資料を検索できるデータベースです。検索条件を詳細に設定することで目的の文献を素早く検索でき、論文本文の表示も行えます。無料で利用可能です。

専用図書館の利用方法

日本看護協会は病院単位で入会することもあり、会員になっている看護師さんも多いでしょう。日本看護協会の会員である方は、電子会員証もしくはカードの会員証を提示することで専用図書館を利用できます。
(出典:公益社団法人日本看護協会「図書館」)

また、会員ではない方も専用図書館の利用はできますが、利用希望日の前日までに電話での事前予約をしなければなりません。日本看護協会図書館(清瀬)は、利用日当日は、健康保険証・職員証などの身分証明書と、319円(税込)の利用料金が必要です。
(出典:公益社団法人日本看護協会「日本看護協会図書館利用手引(会員外)」

日本看護協会図書館分室(神戸研修センター内)は、利用料金は無料です。

看護研究を書く時の4つのポイント

看護研究を書く時の4つのポイント

看護研究を書くにあたって、ポイントや注意点がいくつかあります。ポイントをおさえることで、魅力的な看護研究をスムーズに書けるようになるでしょう。また、著作権などの思わぬトラブルの発生を最大限防ぐことも可能です。

最後に、看護研究を書く時のポイントを4つ紹介します。看護研究に苦手意識をもっている方は、ぜひ参考にしてください。

事前に研究疑問と答えを用意する

看護研究に研究担当者として取り組まなければならないことが決まったら、まずはすぐに研究疑問と答えを用意しておくとよいでしょう。研究疑問とは、研究で明らかにしたいこと、いわゆる研究目的を指します。

研究疑問を用意できたら、次にその疑問に対する答えを用意します。答えの想像がまったくできていなければ、質問用紙・アンケート用紙の作成といった調査に必要な準備ができないためです。これらの調査は、あらかじめ用意していた答えが本当に正解といえるのかを確認するための活動といってもよいでしょう。

また、どうしても答えが浮かばないという場合は、他職種や専門家に意見を仰ぐ、文献検索をするなどしてヒントを得るのもおすすめです。たとえば「先輩たちの看護研究のテーマを見てみる」「看護の研究論文をネットで検索してみる」などが効率よいと言えます。

実践的な内容にする

看護研究を書く際、構成を守ったり正しい文法を使用したりすることについ意識がいきがちです。しかし、読者に興味深いと思わせるためには、構成や文法を重要視するのではなく、「いかに実践的な内容になっているか」を重要視しましょう。

臨床において実践的な内容でなければ、いくら構成や文法がきれいで読みやすい論文・研究計画書であっても、興味をもって読んでもらうことはできません。看護研究を進める際は、実践的な内容となっているかどうかに注力することを忘れないでおきましょう。

人を対象にする場合は倫理的配慮をする

人を対象にして看護研究を行う場合は、倫理的配慮が欠かせません。倫理的配慮とは、研究の対象者となる個人や施設が特定されないようにする、いわゆるプライバシーの配慮のことです。

収集データの発表や解釈にはある程度の研究対象者の情報が必要となりますが、なるべく不要な個人情報を出さないようにしましょう。たとえば、入退院の年月日を示すのではなく入院期間のみを記載するなど、適宜曖昧な表現を使用することがポイントです。

また、万が一倫理的な欠陥が生じた際に備え、十分な対応を迅速にとれるような準備も徹底しておきましょう。

文章を引用する時は一次資料の規定に従う

看護研究の論文・研究計画書の作成において、文献から文章を引用する場合は必ず一次論文を入手し、かつ投稿規定に従いましょう。一次資料の規定に従って引用しなければ、著作権の侵害や無断転載とみなされ、努力して作成した論文や研究成果が無効となるおそれがあります。引用する場合は、どこが引用した部分かを明確にする必要があります。区別する場合は、「」や“”でくくったり、書体を変えるなど区別しましょう。

データの一部を変更して引用することは「改変」になります。「改変」する場合は著作権者の承諾が必要となります。

また、図や表を引用する場合も、転載許諾を得たうえで明記することが必須です。引用ではなく改変して使用(出典)する場合も同様となります。

看護研究において、あらゆる先行文献を参考にすることは大切です。しかし、このように取り扱いには十分に注意しておく必要があることを覚えておきましょう。

まとめ

看護研究は、看護の基盤となる基礎知識を洗練させ、既存の看護学に新たな知識を創り出す研究活動です。イギリスの看護教育学者であるフローレンス・ナイチンゲールが初めて行った看護研究は、現代においても「新たな看護知識の創生による看護の質向上」に向けて重要なものとされています。

看護研究の形式(項目)は基本的に決まっているため、看護研究の経験が少ない方でも比較的簡単に書くことが可能です。最も大切なのは研究テーマで、「いかに読者が興味を抱くテーマを選定するか」が肝となることを覚えておきましょう。看護研究に必要な資料を探すときは、日本看護協会が提供する文献データベースで検索するのがおすすめです。

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※当記事は2023年4月時点の情報をもとに作成しています

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