• 2022年7月4日
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【看護師向け】環境整備とは? 目的や実施方法を解説

 

「看護師の仕事」と聞くと、患者さんのケアや介助ばかりをイメージする方も多いでしょう。実際にこれらの業務は看護師の主な業務にあたりますが、ほかにも患者さんが安心かつ気分よく病院生活を過ごせるように環境を整える「環境整備」も、看護師の重要な仕事です。

そこで今回は、環境整備の概要や実施目的から、実施の流れ、チェックポイント、質の高い環境整備を行うための方法まで具体的に説明します。幅広い知識を身につけたうえで、看護師業務に自信をもって取り組みたいという方は、ぜひ参考にしてください。

環境整備とは?

看護師が行う環境整備とは、入院患者さんのベッド周りをはじめとした病室の環境を、安全かつ清潔に整えることです。

「近代看護教育の母」としても有名なイギリスの看護教育学者であるフローレンス・ナイチンゲールは、「看護実践において、環境整備は非常に重要である」と述べました。実際に患者さんが早期回復を目指して安楽に療養生活を送るためには環境整備が欠かせません。そして、現代においてこの環境整備は、看護師としての責務にもなっています。

看護師が環境整備を実施する5つの目的

看護師が環境整備を実施する5つの目的

フローレンス・ナイチンゲールが看護実践における環境整備の重要性を提言して以降、現代においては看護師が環境整備を実施することが基本となりました。では、看護師が環境整備を実施することには具体的にどのような目的があるのでしょうか。

ここからは、看護師が環境整備を実施する5つの目的について紹介します。

患者にとって安全な環境を整える

病室は、入院患者さんの生活の場です。そして多くの患者さんの行動範囲は、ベッド周りに限定されてしまいます。

患者さんの自立度が高ければ自身である程度の環境を調整できるものの、余計な体力を消耗させかねません。また、整備されていない環境は患者さんの転倒事故やストレスの原因ともなってしまいます。

そのため、看護師は個々の患者さんに適した安全な環境をアセスメントすることが重要です。

衛生的な環境を整え院内感染などを防ぐ

入院患者さんは、何らかの疾患を抱えていない健康な方より免疫力が低下していると想定されます。また、病院はさまざまな感染症を患った患者さんも多く集まる場であるため、たとえ免疫力低下の影響がない患者さんであっても衛生管理は必須です。

そのため、看護師は院内感染が生じないよう、病室はもちろん、トイレ、浴室、病棟食堂などあらゆる場所における衛生管理を徹底する必要があります。

また、感染症は人から人だけでなく、医療器具を介して発生することもあることから、室内の衛生環境を整えるだけでなく、治療や診察の際に用いる医療器具の衛生管理も重要です。
(出典:厚生労働省「医療施設における院内感染の防止について」

入院患者が快適に過ごせるようにする

「空気(温度や湿度)・明るさ(光)・音・におい」が人間にとって快適なものでなければ、大きなストレスを感じる要素となります。大きなストレスを感じると、免疫力の低下をはじめとしたあらゆる悪影響を及ぼすでしょう。実際にフローレンス・ナイチンゲールは、「新鮮な空気と陽光、暖かさと清潔さ、静けさを適切に保つこと」を看護の基本としています。

そのため、看護師は入院患者さんに快適に過ごしてもらうため、院内・病室を清潔にしておくことはもちろん、病室の空気や明るさを快適なレベルに調節したり、不快な音やにおいを防いだりすることが重要です。

また、精神的ストレスを徹底的に予防するためには、複数の入院患者さんがいる大部屋などでは、同室の入院患者さんとの不和が生じていないかなどをきちんとチェックすることも、環境整備を実施する看護師の大切な業務といえるでしょう。

患者さんとのコミュニケーションの機会を生む

本来の業務を通して、患者さんの観察はもちろん、積極的なコミュニケーションを図りつつ、看護に役立てることも環境整備の実施目的です。

高齢化社会が進む近年、コミュニケーションを柔軟にとることが困難な高齢の患者さんが増加しています。環境整備を実施する中で感じた患者さんのこだわりや、傾向をよく観察しましょう。これらは、患者さんの容体を察するためにも大切です。

また、環境整備業務を外注せずいつも担当している看護師が対応することで、患者さんは安心感を得られます。そのため環境整備は、患者さんとの信頼関係を築くことにもつながります。

スタッフが安全に働ける環境を整える

環境整備は、「患者さんに快適に過ごしてもらうため」が主な実施目的ですが、同時に自身を含む看護師や医師、その他医療スタッフが安全に働ける環境を整えるためでもあります。

転倒などのけがのリスクがあるのは、入院患者さんだけではありません。患者さんの介助やケアをしに病室に訪れるすべての方にあるリスクです。

環境整備によりすべての医療スタッフ・医療関係者が安全かつ快適に労働できる環境を整えることは、看護師の責務といえるでしょう。

看護師が環境整備を行う流れ

看護師が環境整備を行う流れ

環境整備を行う流れは、職場によって細かく異なることが特徴です。しかし大差はなく、基本的には下記のような流れで行います。

1 患者に対して、環境整備を行う旨を説明する

2 患者から了承を得たら、病室の窓を開けて換気する

3 照明の点灯を確認し、窓やベッド周辺のほこりを除去する

4 粘着ローラーなどでベッド上のほこり・ゴミを除去する

5 ベッド上の片付けをし、枕・シーツ・掛け布団を整える

6 ベッド柵やサイドテーブル・面会用のイスの整理整頓・拭き掃除をする

7 患者の手に届く位置にナースコールを配置する

8 カーテンフック・カーテンレール・カーテン本体の状態を確認する

9 不要となった医療用品(酸素マスク・吸引カテーテルなど)を処分する

10 尿器やポータブルトイレなどにある排せつ物を処理する

11 病室の通路や廊下の整備・掃除をする

病室や患者さんによっては、上記で説明した手順のいずれかを省く、または何らかの手順を追加することとなります。すべての環境整備が終わったあとは、手洗いをして消毒液で手指消毒を行うことが基本です。

環境整備のチェックポイント

環境整備のチェックポイント

環境整備を行うにあたって、特に下記の箇所は重点的にチェックしておきましょう。

  • ベッド周り
  • 室温
  • 明るさ
  • におい
  • 騒音
  • プライバシー
  • 備品

一つひとつは細かな作業となりますが、これらすべてのポイントに気を配りながら環境整備を行うことで、患者さんの回復・治療の促進が期待できます。

ここからは、各ポイントについて詳しく説明します。

ベッド周り

ベッド周りを整えることは、環境整備の中でも非常に重要とされています。ベッド周りの環境整備を行う際は、特に下記3つのポイントをおさえておくようにしましょう。

マットレスの厚さはベッド柵の高さに適しているか

マットレスの厚さがベッド柵の高さと近ければ、患者さんが寝返りをうったときに誤って転落してしまうおそれがあります。しかし、マットレスの厚みがない場合は立ち上がりの際の負担が大きくなるため、マットレスの厚さ・ベッド柵の高さは適切に調節しなければなりません。

〇ベッドの高さは患者さんの体格に合っているか

ベッドの高さが患者さんの体格に合っていなければ、立ち上がりの際に身体に大きな負担がかかってしまったり、転倒のおそれが生じたりします。適切な高さは、立ち上がる寸前のベッド端に座った状態で床からかかとが浮かない程度の高さです。

〇ナースコールが患者さんの手元に置いてあるか

ナースコールは、患者さんの容体急変に備えて常に手元に置いておかなければなりません。ベッド周りの環境整備を行う際は、患者さんがベッドに横になった状態でいつでも手の届く位置にナースコール設備を配置しましょう。

室温

室温が適切でなければ、患者さんは不快に感じます。基礎看護学における病室の適切な室温は夏と冬で異なることが特徴で、夏は25~27℃、冬は20~22℃とされています。

しかし、上記はあくまで目安であり、患者さんの年齢や疾病の種類によって実際の温冷感は細かに異なります。そのため、患者さんと積極的にコミュニケーションをとりつつ、一人ひとりに合わせた室温に調節することが最も重要です。

明るさ

患者さんが病室で快適に過ごせるかどうかは、照明・日光による明るさも1つの要素です。明るすぎても暗すぎてもストレスを感じてしまうため、日中は150~200ルクス程度の明度が適切といえるでしょう。

また、1日に数回カーテンを開けて適度に日光を浴びさせることもおすすめです。日光を浴びるとセロトニンが分泌しやすくなり、ストレスを感じにくくすることにもつながります。しかし、西日が強く差し込むような時間帯にカーテンを開けるのはかえってストレスとなるため、時間を見てカーテンやブラインドで遮光することも忘れてはなりません。

におい

病棟には、食事のにおいや患者さんの排せつ物のにおいなど、あらゆるにおいが発生します。患者さんがにおいを気にしてストレスを感じてしまわないよう、環境整備として定期的に換気を行ったり、消臭剤や脱臭装置を使用したりして、不快なにおいを徹底的に排除しましょう。

常に病棟にいる看護師にとって、においは日常茶飯事であることから、不快なにおいに気づけなくなっているケースもあります。しかし、外部から訪れる見舞客や家族はにおいに敏感です。院内の衛生管理に対する不安を感じさせないためにも、定期的に換気することは非常に重要といえるでしょう。

騒音

一般的に、騒音と聞くと電車の音や自動車のエンジン音がイメージされますが、より静かな環境が求められる病院においては、ちょっとした音でも騒音に感じやすい傾向にあります。個人差はあるものの、基本的にはどの病院においても日中は50デシベル以下、夜間は40デシベル以下が望ましいとされます。

たとえ上記の基準値を超えない音であっても、突発的で統一性のない音の連続は多くの患者さんが不快に感じます。そのため、騒音防止設備の導入はもちろん、ストレッチャーやワゴンに油を差す、音を立てるような医療器具の取り扱い方をしない、足音を大きく立てないなど、あらゆる点に気を配っておく必要があるでしょう。

プライバシー

複数の患者さんとともに大部屋で入院する患者さんは、プライバシーの確保ができず少なからずストレスを感じている可能性も0ではありません。特に、室内で排せつを行わざるを得ない患者さんにはその傾向が強く見られます。

とはいえ、患者さんによってプライバシーの意識は一人ひとり異なるため、コミュニケーションをとりながらどのような欲求や不安があるかを察知し、可能な限り対応することが重要です。年齢や疾患に関係なく、患者さんのプライドを傷つけないよう常に注意しておきましょう。

備品

患者さんが快適に入院生活を過ごせるよう、そしてすべての医療スタッフが安全かつスムーズに業務を行えるよう、病室内の備品の整理整頓は重要です。

ベッド周辺や床頭台には、患者さんの私物が置かれていることも多々あります。環境整備の際にたとえ一瞬だけ動かす場合でも、患者さんが「勝手に動かされた」と感じてしまわないよう、必ず一声かけるようにしましょう。

また、ナースコールの位置にも注意です。位置が悪ければナースコールがベッドから滑り落ちる原因にもなってしまい、「本当に必要なときにナースコールが押せない」という状況に陥る可能性もあります。なるべく患者さんが横になったときの患者さんの手元に置き、置き場所をしっかり伝えて患者さん自身にもナースコールの転落に注意してもらうとよいでしょう。

質の高い環境整備を行うには?

質の高い環境整備を行うには?

患者さんがより快適に入院生活を過ごせるようにするためには、質の高い環境整備を目指すことが大切です。

ここからは、質の高い環境整備を行うための方法を4つ紹介します。環境づくりの基礎知識だけでなく、より応用的な知識を身につけたいという方はぜひ参考にしてください。

患者目線を忘れない

質の高い環境整備を行うためには、患者さん目線を忘れないこと、つまりなるべく患者さんの希望やペースを配慮し、優先して考えることが大切です。動き回る看護師にとっての気温の感じ方と、横になっている患者さんの気温の感じ方が違うように、感覚は個々によってさまざまといえます。

なるべく患者さんの希望や欲求をベースに環境整備を行うためには、コミュニケーションを積極的に図りつつ、患者さんの身になって実施するべき業務を検討することが重要です。

時間帯による変化を考慮する

看護師は、常に担当患者さんの病室で働くわけではありません。そのため、訪問時間以外は病室がどのような状態となっているかを簡単に把握することは困難でしょう。質の高い環境整備を行うためには、時間帯における何らかの変化を考慮することが大切です。

例えば、夏はある程度夕方になっても明るいままですが、冬場は夕方になるとみるみるうちに暗くなります。このように採光の状態も季節によって変化するため、これらの変化を考慮しつつ適切な環境整備を行うことが重要です。

患者の状態変化に合わせる

患者さんの状態は、日々変化していきます。ADL(日常生活動作)が低下することもあれば、反対に向上することもあるでしょう。このような状態変化に伴って、適切な環境整備を行う必要があります。例えば臥床状態から回復し、自力で立ち上がり歩行することが可能となった場合は、ベッド柵の高さを変更するなどの環境整備が必要です。

また、患者さんの状態変化により不要となった医療用品・物品は、すみやかに片付けることも環境整備の重要な業務の1つといえます。

ルールを決めスタッフ間で連携を取る

複数の看護師が担当して環境整備を行う場合、質に個人差が生じることを避けなければなりません。個人差が生じるということは、すなわち「日によって清潔状態にばらつきがある」ということとなり、患者さんやそのご家族から不安・不信感を抱かれる原因にもなり得ます。

そのため、環境整備を行う際はスタッフ間でルールを決めたうえでしっかり連携を取ることが重要です。またルール決めの際は口頭や個人のメモでまとめておくのではなく、手順書を作成することをおすすめします。手順書を作成しておけば、すべての担当看護師がマニュアルに基づいた環境整備を行え、実施内容や質に個人差が生じることを最大限防げるようになります。

環境整備に関する看護計画

環境整備に関する看護計画

環境整備は、看護師の基本スキルです。しかし、年齢や症状が異なる入院患者さんのすべてが対象となり、幅広い視点での実施が必要となるため、難易度は決して易しくありません。なるべくスムーズに環境整備に関するスキルや看護技術を身につけたいのであれば、下記に紹介する「環境整備に関する一般的な看護計画」を指標としておさえておきましょう。

〇環境整備の「看護目標」

環境整備は、「安心・安楽・安全」に過ごせる室内空間の提供が主となります。そのため、看護目標ではこれら3項目を立てることが基本です。しかし、個々に適した環境整備を行うためには、コミュニケーションが欠かせません。コミュニケーションを加えた4項目で看護目標を立てるとよいでしょう。

安心 心身ともに安らぎを与える
安楽 転倒や転落、院内感染などのインシデントを防ぐ
安全 居心地のよい快適な空間・入院生活を提供する
コミュニケーション 積極的なコミュニケーションを通して必要な情報収集を行う

〇環境整備の「観察項目」

環境整備において、観察項目は非常に多岐にわたることが特徴です。下記に、大分類の観察項目(6つ)について、いくつか具体的な観察項目を挙げながら紹介します。

観察項目(大分類) 観察項目(小分類)
環境調節
  • 湿気・温度
  • 騒音
  • 臭気管理
清潔管理
  • ベッドの汚れ
  • ゴミ箱内のゴミの量
  • 排せつ物の滞留
事故防止
  • 電気コード類の整理
  • ベッドの高さ
  • ベッド柵の高さ・固定
整理整頓
  • ベッドサイドの整理
  • 使用済み・不用品の処分
  • ナースコールの位置
医療機器・物品管理
  • 医療機器の動作状況
  • 適切な配置
プライバシー管理
  • 適切な時間におけるドア・カーテンの開閉
  • 同室患者との不和の有無

上記はあくまでも一部であり、小分類の観察項目はほかにも複数あります。環境整備を実際に行うときや、手順書を作成するうえで非常に参考となるため、一度確認してみてはいかがでしょうか。

まとめ

環境整備とは、入院患者さんのベッド周りをはじめとした病室の環境を、安全かつ清潔に整えることです。フローレンス・ナイチンゲールが看護実践における環境整備の重要性を提言し、快適な療養環境が整備されて以降、現代では看護師の基本的かつ重要な仕事となりました。

環境整備を行うにあたって、特にチェックしておくべきはベッド周り、室温、明るさ、におい、騒音、プライバシー、備品の7つです。これらは人間のストレスに大きく影響する部分のため、担当看護師によって、質の差を生じないようにすることが重要です。

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※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています

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