• 2022年7月4日
  • 2023年6月14日

【看護師向け】環境整備とは? 目的や実施方法・ポイントを解説

 

「看護師の仕事」と聞くと、患者さんのケアや介助をイメージする方も多いでしょう。実際にこれらは看護師の主な業務にあたりますが、ほかにも患者さんが安心かつ気分よく病院生活を過ごせるように環境を整える「環境整備」も、看護師の重要な仕事です。

そこで今回は、環境整備の概要や実施目的から、実施の流れ、チェックポイント、質の高い環境整備を行うための方法まで具体的に説明します。幅広い知識を身につけたうえで、看護師業務に自信をもって取り組みたいという方は、ぜひ参考にしてください。

環境整備とは?

看護師が行う環境整備とは、入院患者さんのベッド周りをはじめとした病室などの環境を、安全かつ清潔に整えることです。

「近代看護教育の母」としても有名なイギリスの看護教育学者であるフローレンス・ナイチンゲールは、「看護実践において、環境整備は非常に重要である」と述べました。実際に、患者さんが早期回復を目指して安楽に療養生活を送るためには環境整備が欠かせません。そして、現代においてこの環境整備は、看護師としての責務にもなっています。

看護師が環境整備を実施する5つの目的

看護師が環境整備を実施する5つの目的

フローレンス・ナイチンゲールが看護実践における環境整備の重要性を提言して以降、現代においては看護師が環境整備を実施することが基本となりました。では、看護師が環境整備を実施することには具体的にどのような目的があるのでしょうか。

看護師が環境整備を実施する5つの目的について紹介します。

患者にとって安全な環境を整える

病室は、入院患者さんの生活の場です。そして多くの患者さんの行動範囲は、ベッド周りに限定されます。

患者さんの自立度が高ければ自身である程度の環境を調整できるものの、余計な体力を消耗させかねません。また、整備されていない環境は患者さんの転倒事故やストレスの原因にもなります。

そのため、看護師は個々の患者さんに適した安全な環境をアセスメントすることが重要です。

衛生的な環境を整え院内感染などを防ぐ

入院患者さんは、疾患を抱えていない健康な方より免疫力が低下していると想定されます。また、病院はさまざまな感染症の患者さんも多く集まる場であるため、たとえ免疫力低下の影響がない患者さんであっても衛生管理は必須です。

そのため、看護師は院内感染が生じないよう、病室はもちろん、トイレ、浴室、病棟食堂などあらゆる場所における衛生管理を徹底する必要があります。

また、感染症は人から人だけでなく、医療器具を介して発生するケースもあることから、室内の衛生環境を整えるだけでなく、治療や診察の際に用いる医療器具の衛生管理も重要です。
(出典:厚生労働省「医療施設における院内感染の防止について」

入院患者が快適に過ごせるようにする

「空気(温度や湿度)・明るさ(光)・音・におい」が人間にとって快適なものでなければ、大きなストレスを感じる要素となります。大きなストレスは、免疫力の低下をはじめとしたあらゆる悪影響を及ぼすでしょう。フローレンス・ナイチンゲールは、「新鮮な空気と陽光、暖かさと清潔さ、静けさを適切に保つこと」を看護の基本としています。

入院患者さんに快適に過ごしてもらうためには、院内・病室を清潔にしておくのはもちろん、病室の空気や明るさを快適なレベルに調節する、不快な音やにおいを防ぐといったことが重要です。

また、精神的ストレスを徹底的に予防するためには、複数の入院患者さんがいる大部屋などでは、同室の入院患者さんとの不和が生じていないかなどをきちんとチェックすることも、環境整備を実施する看護師の大切な業務といえるでしょう。

患者さんとのコミュニケーションの機会を生む

本来の業務を通して、患者さんの観察を行い、積極的なコミュニケーションをとることで、看護に役立てることも環境整備の実施目的です。

高齢化社会が進む近年、コミュニケーションを柔軟にとることが困難な高齢の患者さんが増加しています。環境整備を実施する中で感じた患者さんのこだわりや、傾向をよく観察しましょう。これらは、患者さんの容体を察するためにも大切です。

また、環境整備業務を外注せずいつも担当している看護師が対応することで、患者さんは安心感を得られます。そのため環境整備は、患者さんとの信頼関係を築くことにもつながります。

スタッフが安全に働ける環境を整える

環境整備は、「患者さんに快適に過ごしてもらうこと」が主な実施目的ですが、同時に自身を含む看護師や医師、その他医療スタッフが安全に働ける環境を整えるものでもあります。

転倒などのけがのリスクがあるのは、入院患者さんだけではありません。患者さんの介助やケアのために病室に訪れるすべての方にあるリスクです。

環境整備によりすべての医療スタッフ・医療関係者が安全かつ快適に労働できる環境を整えることは、看護師の責務といえるでしょう。

環境整備が必要な場所・部分

環境整備が必要な場所・部分

病院は感染症に対する抵抗力が弱くなった患者さんが過ごす場所であるため、複数の方が高頻度で触れる場所には特に適切な環境整備が必要です。

医療現場において環境整備が必要なのは以下のような場所です。

  • ベッド周り(ベッド柵・ベッドリモコン・オーバーテーブル・ナースコール・床頭台・テレビのリモコンなど)
  • 居室内(電気のスイッチ・病室のドアノブ・車椅子・歩行器など)
  • トイレ(便座・手すり・ペーパーホルダー・ドアノブなど)
  • 廊下手すり
  • 食堂(テーブル・椅子など)
  • 談話室
  • リハビリ室

患者さんの身の回りの環境整備を行うのは、主に看護師や看護助手の役割になります。患者さんの安全に配慮しながら、患者さんや医療従事者が触れて使用する場所の環境を整えることが大切です。

環境整備の使用品とその管理方法

環境整備の使用品とその管理方法

環境整備を行う際には、適切な物品を使用し正しい管理を行わなければなりません。病院の環境整備で使われる道具と、それぞれの管理方法は以下の通りです。

物品 使用方法・ポイント・管理方法
雑巾
  • 清潔な場所から順に使用する
  • 患者さんごとに清潔な雑巾を使用する
  • 使用後はよく洗い乾燥させる
環境クロスシート
  • 清潔な場所から順に使用する
  • 途中で乾燥した場合は取り替える
  • 清掃範囲が広い場合は複数枚使用する
  • 患者さんごとに新しいクロスを使用する
  • 乾燥しないように使用後は蓋をしっかりと閉める
ハンディワイパー
  • 清潔な場所から順に使用する
  • 患者さんごとに新しいワイパーに交換する
ダスタークロス
  • 清潔エリアから不潔エリアの順に使用する
  • 不潔エリアの清掃後にクロスを交換する
モップ
  • 清潔エリアから不潔エリアの順に使用する
  • 使用後はよく洗い乾燥させる

床を拭くためのモップの使用方法には「オンロケーション方式」と「オフロケーション方式」があります。

オンロケーション方式は清掃場所にバケツを持っていき、モップが汚れたら洗って床を拭く作業を繰り返す方法です。一方、オフロケーション方式はモップが汚れたらヘッドを交換しながら拭いていき、最後にまとめて洗う方法です。

オンロケーション方式では、汚れた水でモップを洗うのでさらに汚染が拡大する危険性があります。そのため、病院ではオフロケーション方式で清掃するのが一般的です。
(出典:公益社団法人青森県看護協会「環境整備の重要性」

看護師による環境整備の流れ

看護師による環境整備の流れ

環境整備を行う流れは、職場によって細かく異なることが特徴です。しかし基本的には大差がなく、下記のような流れで行います。

1 患者さんに対して、環境整備を行う旨を説明する

2 患者さんから了承を得たら、病室の窓を開けて換気する

3 照明の点灯を確認し、窓やベッド周りのほこりを除去する

4 粘着ローラーなどでベッド上のほこり・ゴミを除去する

5 ベッド上の片付けをし、枕・シーツ・掛け布団を整える

6 ベッド柵やサイドテーブル・面会用の椅子の整理整頓・拭き掃除をする

7 患者さんの手の届く位置にナースコールを配置する

8 カーテンフック・カーテンレール・カーテン本体の状態を確認する

9 不要となった医療用品(酸素マスク・吸引カテーテルなど)を処分する

10 尿器やポータブルトイレなどにある排せつ物を処理する

11 病室の通路や廊下の整備・掃除をする

病室や患者さんによっては、上記で説明した手順のいずれかを省く、または何らかの手順を追加することになります。すべての環境整備が終わった後は、手洗いをして消毒液で手指消毒を行うことが基本です。

環境整備のチェックポイント

環境整備のチェックポイント

環境整備を行うにあたって、特に下記の点は重点的にチェックしておきましょう。

  • ベッド周り
  • 室温
  • 明るさ
  • におい
  • 騒音
  • プライバシー
  • 備品
  • その他(床・トイレなど)

一つひとつは細かな作業となりますが、これらすべてのポイントに気を配りながら環境整備を行うことで、患者さんの回復・治療の促進が期待できます。

各ポイントについて詳しく説明します。

ベッド周り

ベッド周りを整えることは、環境整備のなかでも非常に重要とされています。ベッド周りの環境整備を行う際は、特に下記4つのポイントをおさえておくようにしましょう。

〇マットレスの厚さはベッド柵の高さに適しているか

マットレスの厚さがベッド柵の高さと近ければ、患者さんが寝返りをうったときに誤って転落する恐れがあります。しかし、マットレスの厚みがない場合は立ち上がりの際の負担が大きくなるため、マットレスの厚さ・ベッド柵の高さは適切に調節しなければなりません。

〇ベッドの高さは患者さんの体格に合っているか

ベッドの高さが患者さんの体格に合っていなければ、立ち上がりの際に身体に大きな負担がかかる場合や、転倒の恐れが生じる場合があります。適切な高さは、立ち上がる寸前のベッド端に座った状態で床からかかとが浮かない程度です。

〇ナースコールが患者さんの手元に置いてあるか

ナースコールは、患者さんの容体急変に備えて常に手元に置いておかなければなりません。ベッド周りの環境整備を行う際は、患者さんがベッドに横になった状態でいつでも手の届く位置にナースコールを配置しましょう。

〇状況に応じてベッド柵を設置しているか

ベッド柵が必要な方には設置忘れがないか確認が必要です。ベッド柵を設置し忘れると、ベッド柵を支えに立ち上がりや寝返りをしていた方の動作ができなくなります。また、ベッドからの転落事故の原因にもなり危険です。適切な場所に設置していなければ移動時の妨げになる場合もあるため、患者さんの身体状況に合った位置への設置が大切です。

室温

室温が適切でなければ、患者さんは不快に感じます。基礎看護学における病室の適切な室温は夏と冬で異なることが特徴で、一般的に夏は25~27℃、冬は20~22℃とされています。

しかし、上記はあくまで目安であり、患者さんの年齢や疾病の種類によって実際の温冷感は細かに異なります。そのため、患者さんと積極的にコミュニケーションをとりつつ、一人ひとりに合わせた室温に調節することが最も重要です。

明るさ

患者さんが病室で快適に過ごせるかどうかは、照明・日光による明るさも1つの要素です。明るすぎても暗すぎてもストレスを感じるため、日中は150~200ルクス程度の明度が適切といえるでしょう。

また、1日に数回カーテンを開けて、患者さんに適度に日光を浴びてもらうのもおすすめです。日光を浴びるとセロトニンが分泌しやすくなり、患者さんのストレス軽減につながります。しかし、西日が強く差し込むような時間帯にカーテンを開けるのはかえってストレスとなるため、時間を見てカーテンやブラインドで遮光することも忘れてはなりません。

におい

病棟には、食事のにおいや患者さんの排せつ物のにおいなど、あらゆるにおいが発生します。患者さんがにおいを気にしてストレスを感じないよう、環境整備として定期的に換気を行い、消臭剤や脱臭装置を使用して、不快なにおいを徹底的に排除しましょう。

常に病棟にいる看護師にとって、においは日常茶飯事であることから、不快なにおいに気づけなくなっているケースもあります。しかし、外部から訪れる見舞客や家族はにおいに敏感です。院内の衛生管理に対する不安を感じさせないためにも、定期的に換気することは非常に重要といえるでしょう。

騒音

一般的に、騒音と聞くと電車の音や自動車のエンジン音がイメージされますが、より静かな環境が求められる病院においては、ちょっとした音でも騒音に感じやすい傾向にあります。個人差はあるものの、基本的にはどの病院においても日中は50デシベル以下、夜間は40デシベル以下が望ましいとされます。

たとえ上記の基準値を超えない音であっても、突発的で統一性のない音の連続は多くの患者さんが不快に感じます。そのため、騒音防止設備の導入はもちろん、ストレッチャーやワゴンに油を差す、音を立てるような医療器具の取り扱い方をしない、足音を大きく立てないなど、あらゆる点に気を配っておく必要があるでしょう。

プライバシー

複数の患者さんとともに大部屋で入院する患者さんは、プライバシーの確保ができず少なからずストレスを感じている可能性もゼロではありません。特に、室内で排せつを行わざるを得ない患者さんにはその傾向が強く見られます。

とはいえ、患者さんによってプライバシーの意識は異なるため、コミュニケーションをとりながらどのような欲求や不安があるかを察知し、可能な限り対応することが重要です。年齢や疾患に関係なく、患者さんのプライドを傷つけないよう常に注意しておきましょう。

備品

患者さんが快適に入院生活を過ごせるよう、そしてすべての医療スタッフが安全かつスムーズに業務を行えるよう、病室内の備品の整理整頓は重要です。

ベッド周りや床頭台には、患者さんの私物が置かれていることも多々あります。環境整備の際にたとえ一瞬だけ動かす場合でも、患者さんが「勝手に動かされた」と感じないよう、必ず一声かけるようにしましょう。

また、ナースコールの位置にも注意です。位置が悪ければナースコールがベッドから滑り落ちる原因にもなり、「本当に必要なときにナースコールが押せない」という状況に陥る可能性もあります。なるべく患者さんが横になったときの手元に置き、場所をしっかり伝えて患者さん自身にもナースコールの転落に注意してもらうとよいでしょう。

時計は見えやすい位置に配置されているか、ティッシュやリモコンなどよく使うものは取りやすい位置にあるかなども訪室するたびに確認します。付き添いの方やお見舞いに来られた方のために、テーブルや椅子が準備されているかなどの細かい配慮も大切です。

ベッド上で生活することの多い患者さんが快適な入院生活を送れるように、常に心がけておきましょう。

その他

環境整備において、病室の床の状況をチェックしておくのも大切なポイントです。

病室の床のチェックポイントは以下の通りです。

  • 床が濡れていないか
  • 床に私物が置かれていないか
  • 履き物は分かりやすい位置に置かれているか

訪室時に病室の床が濡れていたら拭いておき、余計なものが置かれていたら片付けるようにして患者さんの転倒リスクを予防しなければなりません。くわえて、履き物を探す行為は転倒の原因になり得るため、分かりやすい位置にあるかも合わせて確認しましょう。

また、洗面所やトイレの環境整備も重要です。水回りが共用であれば、感染予防の観点からもこまめに清掃、消毒をして清潔保持に気をつけなければなりません。私物など不要なものは置かないようにし、トイレットペーパーや手洗い石鹸などの残量もチェックするようにしましょう。

人工呼吸療法中の患者さんの環境整備

人工呼吸療法中の患者さんの環境整備

人工呼吸器などの医療機器を使用している患者さんの環境整備も重要です。医療機器が必要になった患者さんは、病状に合わせて適切な病室に転床するケースも多いため、病室を移った際には必ず環境確認を徹底しましょう。

人工呼吸療法中の患者さんの環境整備チェックポイントは以下の通りです。

  • 医療機器が正常に作動しているか
  • 必要な医療物品はそろっているか
  • 緊急時対応が迅速に行える環境か
  • ベッド、エアマットの電源が入っているか
  • 電源コード類が整理されているか
  • ナースコールは押しやすい場所に設置されているか
  • 患者さんに必要な物品が適切な位置に設置されているか
  • ベッドの高さ、角度などポジショニングが適切か
  • ベッドのストッパーをかけたか
  • ベッド柵を設置したか

人工呼吸療法中の患者さんの病室の環境整備を怠ると、命の危険につながるケースもあります。長期臥床により身体が思うように動かせない患者さんは不安や精神的ストレスが大きいため、安楽に過ごせるようにアセスメントしながら適切な環境整備を行いましょう。

環境整備における問題点

環境整備における問題点

リスクマネジメントの観点からも環境整備は重要で、多くの病院では徹底されています。しかし、医療現場において環境整備に対する意識に差が生じているケースもゼロではありません。

環境整備における問題点には、以下のようなものがあります。

  • 人材不足により環境整備の優先順位が落ちる
    環境整備の意識に差が生じている背景には、医療現場の人材不足があります。日本は急速に進む少子高齢化で、医療や福祉を必要とする人口が増加していますが、人材の供給が追いついていません。仕事の忙しさから、環境整備が後回しになり優先順位が低くなっている状況があります。
  • そもそも環境整備を業務の1つとして捉えていない
    看護師のうち、業務の1つとして環境整備を捉えていない方は残念ながらゼロではありません。また、環境整備を意識している看護師は多いものの、実態として徹底した行動が行えていない看護師も少なくないことという声もあるそうです。
  • 担当者により清潔状態のムラが生じる
    看護師自身が環境整備を業務の1つとして捉えておらず、質の高い環境を提供することへの意識に差が生じているケースがあるのも問題です。特に、手順書が存在せず、個々人が業務スケジュールの空き時間などを利用して環境整備を行う場合、担当者により清潔状態にもムラが生じます 。

質の高い環境整備を行うには?

質の高い環境整備を行うには?

患者さんがより快適に入院生活を過ごせるようにするためには、質の高い環境整備を目指すことが大切です。

ここからは、質の高い環境整備を行う方法を4つ紹介します。環境づくりの基礎知識だけでなく、より応用的な知識を身につけたいという方はぜひ参考にしてください。

患者目線を忘れない

質の高い環境整備を行うためには、患者さん目線を忘れないこと、つまりなるべく患者さんの希望やペースを配慮し、優先して考えることが大切です。動き回る看護師の気温の感じ方と、横になっている患者さんの気温の感じ方が違うように、感覚は個々によってさまざまといえます。

なるべく患者さんの希望や欲求をベースに環境整備を行うためには、コミュニケーションを積極的に図りつつ、患者さんの身になって実施するべき業務を検討することが重要です。

時間帯による変化を考慮する

看護師は、常に担当患者さんの病室で働くわけではありません。そのため、訪問時間以外は病室がどのような状態となっているかを簡単に把握することは困難でしょう。質の高い環境整備を行うには、時間帯における何らかの変化を考慮することが大切です。

たとえば、夏は夕方になっても明るいままですが、冬は同じ時間帯でもみるみるうちに暗くなります。採光の状態も季節によって変化するため、これらを考慮しつつ適切な環境整備を行うことが重要です。

患者の状態変化に合わせる

患者さんの状態は、日々変化します。ADL(日常生活動作)が低下することもあれば、反対に向上することもあるでしょう。このような状態変化に伴って、適切な環境整備を行う必要があります。たとえば臥床状態から回復し、自力で立ち上がり歩行することが可能となった場合は、ベッド柵の高さを変更するなどの環境整備が必要です。

また、患者さんの状態変化により不要となった医療用品・物品は、すみやかに片付けることも環境整備の重要な業務の1つといえます。

ルールを決め看護師間で連携を取る

複数の看護師が担当して環境整備を行う場合、質に個人差が生じることを避けなければなりません。個人差が生じるということは、すなわち「日によって清潔状態にバラつきがある」ということとなり、患者さんやそのご家族から不安・不信感を抱かれる原因にもなり得ます。

そのため、環境整備を行う際は看護師間でルールを決めたうえでしっかり連携を取ることが重要です。またルール決めの際は口頭や個人のメモでまとめておくのではなく、手順書を作成しましょう。手順書を作成しておけば、すべての担当看護師がマニュアルに基づいた環境整備を行え、実施内容や質に個人差が生じることを最大限防げるようになります。

環境整備に関する看護計画

環境整備に関する看護計画

環境整備は、看護師の基本スキルです。しかし、年齢や症状が異なる入院患者さんのすべてが対象となり、幅広い視点での実施が必要となるため、難易度は決して低くありません。なるべくスムーズに環境整備に関するスキルや看護技術を身につけたいのであれば、下記に紹介する「環境整備に関する一般的な看護計画」を指標としておさえておきましょう。

〇環境整備の「看護目標」

環境整備は、「安心・安楽・安全」に過ごせる室内空間の提供が主となります。そのため、看護目標ではこれら3項目を立てることが基本です。しかし、個々に適した環境整備を行うには、コミュニケーションが欠かせません。コミュニケーションを加えた4項目で看護目標を立てるとよいでしょう。

安心 心身ともに安らぎを与える
安楽 転倒や転落、院内感染などのインシデントを防ぐ
安全 居心地のよい快適な空間・入院生活を提供する
コミュニケーション 積極的なコミュニケーションを通して必要な情報収集を行う

〇環境整備の「観察項目」

環境整備において、観察項目は非常に多岐にわたることが特徴です。下記に、大分類の観察項目(6つ)について、いくつか具体的な観察項目(小分類)を挙げながら紹介します。

観察項目(大分類) 観察項目(小分類)
環境調節
  • 湿気・温度
  • 騒音
  • 臭気管理
清潔管理
  • ベッドの汚れ
  • ゴミ箱内のゴミの量
  • 排せつ物の滞留
事故防止
  • 電気コード類の整理
  • ベッドの高さ
  • ベッド柵の高さ・固定
整理整頓
  • ベッドサイドの整理
  • 使用済み・不用品の処分
  • ナースコールの位置
医療機器・物品管理
  • 医療機器の動作状況
  • 適切な配置
プライバシー管理
  • 適切な時間におけるドア・カーテンの開閉
  • 同室患者との不和の有無

「環境調節」では、湿度・温度・騒音・臭気を看護師が実際に感じ取って調整を行います。看護師によって感覚が異なるため、一人ひとりの患者さんに配慮した環境調節が大切です。さらに「清潔管理」や、ベッド周りや病室内の「整理整頓」による病室の環境整備も患者さんの精神的な安定につながります。

「事故防止」「医療機器・物品管理」の項目では、医療機器の管理やベッドの高さや柵の安全性の観察が大切です。患者さんの安全や命を守るためにも重要な項目です。

「プライバシー管理」も忘れてはなりません。着替えや排せつなど同室の方に見られたくない状況では、カーテンをして見えないように配慮します。尿器やポータブルトイレなどは人に見えないようにし、臭気にも気をつけましょう。また、同室の患者さんとの人間関係が良好か、せん妄などの兆候はないか、などを観察することも重要です。
(参考:小川朝生(2017).看護科学研究 vol. 15, 45-49「せん妄 適確にアセスメントをし、せん妄を予防する」

上記はあくまでも一部であり、小分類の観察項目はほかにも複数あります。環境整備を実際に行うときや、手順書を作成するうえで非常に参考となるため、一度確認してみてはいかがでしょうか。

まとめ

環境整備とは、入院患者さんのベッド周りをはじめとした病室などの環境を、安全かつ清潔に整えることです。環境整備を行うにあたって、特にチェックしておくべきはベッド周り、室温、明るさ、におい、騒音、プライバシー、備品の7つです。

質の高い環境整備を行うには、患者さんの目線を忘れずに、時間帯や患者さんの状態変化に応じた対応が必要です。また、質に個人差が生じることを避けるため、スタッフ間でルールを決めて手順書を作成し、連携の取れた環境整備を行いましょう。

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※当記事は2023年4月時点の情報をもとに作成しています

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