• 2022年5月20日
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精神看護とは? 精神科で働く看護師の仕事内容・適性も紹介!

 

看護師は、何らかの不調を抱えた患者さんのケアやサポートを行います。多くの人にとって看護師は「ケガや病気を治療する仕事」というイメージもついていますが、必ずしもそうとは限りません。病院にはさまざまな診療科があり、中には精神看護として患者さんの心のケアやサポートを行う看護師もいます。

当記事では、精神看護とは一体どのようなものなのか、精神科看護との違いや精神科で働く看護師の仕事内容・働くメリットとデメリットを挙げながら詳しく紹介します。さらに、精神科で働く看護師の年収やスキルアップにおすすめの資格、向いている人の特徴も解説しているため、ぜひ参考にしてください。

精神看護とは?

精神看護とは、人間の「精神保健」に関わる看護のことです。分かりやすく説明すると、精神的な問題を抱える患者さんの看護・ケアの総称といえるでしょう。

精神看護は、精神看護学に基づいて行われることが一般的です。精神看護学とは、精神疾患の有無・年齢・性別に関係なくすべての人を対象とした、こころの健康維持・増進に関する看護学習領域です。

精神看護学では、精神疾患患者さんへの理解・一人ひとりの生活に応じた必要な精神看護の考案・看護に関する専門知識と高度な技術を活用した問題解決・現代社会の精神的問題の分析・課題解決が求められます。

精神科看護との違い

精神看護とよく似た言葉に、「精神科看護」が挙げられます。いずれも「対象者に向けた心のケア・サポート」という面では同様ですが、厳密には違うものです。

精神科看護は、下記のように定義付けられています。

精神科看護とは、
精神的健康について援助を必要としている人々に対し、
個人の尊厳と権利擁護を基本理念として、専門的知識と技術を用い、
自律性の回復を通して、その人らしい生活ができるよう支援することである。

(引用:日本精神科看護協会「精神科看護の定義」

精神看護は精神的な問題を抱える患者さんの看護・ケアの総称であることから、対象者は限らておらず幅広いことが特徴です。一方で精神科看護は「精神的健康に関する援助を必要としている人々」が対象となります。つまり、精神看護に精神科看護が含まれていると考えてよいでしょう。

とはいえ、精神科看護の対象者は必ずしも「精神疾患を有する患者さん」だけではありません。人々は生きるうえで、さまざまな心の問題に直面します。このようなケースにおいて、看護師は個人を尊重しながら、その人らしい生活を送れるような幅広いサポートが必要です。 病院の精神科で働く看護師は、一人ひとりの患者さんと向き合いながら、患者さんを取り巻く心の問題を解決するためにも、精神看護・精神看護学・精神科看護における知識を幅広く身につけておく必要があります。

精神科で働く看護師の仕事内容

精神科で働く看護師の仕事内容

精神科はほかの診療科と異なり、特に看護師による心のケアやサポートが必要とされる科となります。そのため、これまで別の科で看護師経験のある方であっても、これまでの働き方と大きな違いを感じる可能性もあるでしょう。

精神科で働くことを検討しているのであれば、あらかじめ精神科で働く看護師の仕事内容を理解しておくことがおすすめです。

コミュニケーションによる心のケア

精神科で働く看護師は、患者さんとのコミュニケーションを積み重ねながら、適切な心のケアを行うことが最も重要視されています。

なぜコミュニケーションが大切なのか、その理由の1つには「信頼」が挙げられます。患者さんの心のケアを行うためには、患者さんのことを理解し、尊重しなければなりません。そのうえでお互いの信頼関係を築き上げることが重要です。そして、信頼関係を築き上げるためにはコミュニケーションが欠かせません。

また、日々のコミュニケーションは患者さんのストレス緩和にもつながります。精神科で働くことを検討しているのであれば、適切なコミュニケーションのとり方も考えておきましょう。

患者さんの状態評価・判断

精神疾患を抱える患者さんや、心の不調を感じる患者さんのすべてが、現状自身に起きている症状や抱えている気持ちを素直に、かつ正確に伝えられるわけではありません。特に信頼関係がまだ築き上げられていない状況では、何も話してくれないどころか強い言葉を使ってしまうケースもあります。

精神科で働く看護師は、このようなさまざまな状態に陥った患者さんの背景を理解したうえで、日々の様子を観察しながら正確に状態を評価・判断することも重要な仕事です。評価・判断した報告を正確に医師に報告するまでが「患者さんの状態評価・判断」であることも覚えておきましょう。

セルフケア援助

精神科で働く看護師は、患者さんに向けたセルフケア援助も大切な仕事の1つです。セルフケア援助とは、健康維持のために行う自己管理を指します。具体的には、食事や睡眠、トイレや入浴、整容(身だしなみを整えること)、メンタルヘルスなどが挙げられます。

精神疾患を抱える患者さんの中には、体が重く、なかなか思うように動けないという患者さんも多くいます。精神科で働く看護師は、このような患者さんに向けてセルフケアの取り組みをサポートすることが求められます。要介護者に対する援助・介助とはまた異なるため、基本的には「自分自身で行ってもらうこと」を重要とした最小限の援助に留めることが重要です。

薬の管理・与薬

精神科での治療は、薬物療法が一般的です。そのため、精神科で働く看護師は患者さんに対する薬の管理・予約も重要な仕事となります。

患者さんによっては、服薬を拒否したり吐き出したりするケースもあるため、細心の注意を払いながら患者さんがきちんと服薬できているかを確認することが重要です。

入退院のサポート

患者さんの入退院のサポートも、精神科で働く看護師が行います。入院であれば決定時から患者さんの状況をアセスメントし、適切な支援を円滑に提供できるよう整えたり、退院であれば患者さんの状況を見ながら、「退院後はどのような生活をしたいのか」といった確認を行い、選択を支援したりするなど、行うべき業務は多岐にわたります。

また近年では、「入院医療中心から地域生活中心へ」がこれからの精神保健医療福祉のあり方とされています。精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築が推進されていることから、精神科で働く看護師は「住み慣れた地域での生活に一日も早く戻れるための退院サポート」が特に重要とされていることも特徴です。帰宅するまでの一次利用機関として「ショートステイサービス」を利用する患者さんも多く、この場合看護師は定期的に見守り訪問するケースもあります。
(出典:厚生労働省「最近の精神保健医療福祉施策の動向について」
(出典:厚生労働省「精神障害者に対する支援について」

精神科で働く看護師の1日

精神科で働く看護師の1日

時間 業務
8:00~9:00 出勤・申し送り
9:00~11:30 ラウンド・バイタルサイン測定・看護ケア など
11:30~12:30 昼食介助
12:30~13:30 昼休憩
13:30~16:00 ラウンド・投薬・看護ケア・カンファレンス・入浴介助 など
16:00~17:00 看護記録作成・申し送り・退勤

夜勤の場合は、夜17:00~翌朝9:00まで仮眠をしながらラウンドを中心に行います。精神疾患を抱える患者さんは、夜間に調子が不安定になることも多々あるため、時には心のケアを重点的に行う日もあります。

看護師が精神科で働くメリット・魅力

看護師が精神科で働くメリット・魅力

看護師が精神科で働くメリットや魅力は、下記の通りです。

(1)一人ひとりに寄り添った「心の看護ケア」を行える

精神科で働く看護師は、患者さんとの信頼関係が生まれやすく、より近い距離から一人ひとりの患者さんに寄り添ったケアを行える点が魅力です。特に精神科患者さんは治療が長期間となることも多々あります。じっくりと時間をかけた末に信頼関係が生まれたり、患者さんの状態がよくなったりすると、大きなやりがいを感じられる点も大きな魅力といえるでしょう。

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(2)残業が少ない

精神科は投薬治療がメインであり、ほかの診療科と比較して患者さんの容体が急変したり、緊急処置が必要となったりするケースは極めて低くなっています。そのため残業が少なく、基本的に定時で帰宅することが可能です。ワークライフバランスを重視している方や、育児との両立を求めている方にとっては大きな魅力となるのではないでしょうか。

看護師が精神科で働くデメリット・注意点

看護師が精神科で働くデメリット・注意点

看護師が精神科で働くデメリットや注意点は、下記の通りです。

(1)一般的な看護スキルが取得しづらい

投薬治療がメインとなる精神科は、比較的残業が少ないというメリットがあります。しかしその一方で、他の診療科で得られる一般的な看護スキルが身に付きづらくなってしまうという点にも注意が必要です。最新の医療技術・医療機器に触れる機会も少ないため、スムーズなスキルアップは難しいといえるでしょう。

(2)患者さんから心ない言葉を投げかけられることもある

精神科に入院する患者さんの中には、重度の精神疾患を抱えている患者さんや認知症患者さんもいます。人を信じられない・自分の気持ちをうまく伝えられないことから、看護師に対して心ない言動をしてしまうケースもあります。時にはせん妄状態・錯乱状態となった患者さんが暴れてけがをしてしまうこともあるでしょう。このような場合でも、看護師は患者さんの視点に立ちながら真摯に向き合う必要があります。

精神科で働く看護師の年収

精神科で働く看護師の年収

厚生労働省が発表したデータによると、看護師全体の平均年収は約492万円です。では、精神科で働く看護師に限定した年収の相場はどれくらいなのでしょうか。
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」

全国の看護師求人サイトを多数掲載する求人サイト「マイナビ看護師」に記載されている求人情報から算出した精神科で働く看護師の平均年収は、約400万~500万円です。看護師全体の平均年収とさほど大きな変わりはなく、職場によっては600万円近い年収を提示しているケースもあります。

また、中には400万円前後と看護師全体の平均年収よりも低い年収が設定された求人もありますが、このような求人は年間休日数が多く、出産・育児休暇などの福利厚生も整っている傾向にあることが特徴です。

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精神科で働く看護師のスキルアップにおすすめの資格

精神科で働く看護師のスキルアップにおすすめの資格

精神科で働く看護師が給与を上げるためには、着実にスキルアップを目指すことが大切です。そして、スキルアップを目指すためには実務に役立つ関連資格の取得をおすすめします。

ここからは、精神科で働く看護師や精神科でのキャリアに疑問を持つ看護師に向けて、おすすめの関連資格を紹介します。

精神科認定看護師

精神科認定看護師は、「精神科での看護領域において優れた看護知識・看護技術を用いて質の高い看護を実践できる看護師」「看護現場における看護のケアの質向上を図れる看護師」であると認められた看護師のみに与えられる資格です。

日本精神科看護協会が1995年に創設したこの資格は2015年に改正され、より専門性の高い資格となりました。精神看護においてはトップクラスの知識と技術を有することの証明としても示すことができ、資格を保有していれば転職・就職が有利となったり、活躍の幅が広がったりします。
(公式サイト:日精看オンライン「精神科認定看護師制度」

公認心理師

公認心理師とは、心の問題を抱える人々のメンタルケアに携わる心理職専門の国家資格です。公認心理師は、2017年に施行された「公認心理師法」により誕生しました。

心理職においては唯一の国家資格となるため、公認心理士資格の保有は絶大な信頼感を得られます。資格を取得するまでにはやや時間がかかるものの、間違いなくキャリアアップにつながるうえ、将来的に「精神科の看護師」としてでなく福祉分野・教育分野・産業分野などさまざまなフィールドでの独立開業も不可能ではありません。
(公式サイト:厚生労働省「公認心理師」

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臨床心理士

臨床心理士とは、心の問題を抱える人々のメンタルケアに携わる心理職専門の証となる資格です。公認心理師とよく似た資格ですが、臨床心理士は国家資格ではありません。そのため、公認心理師と比較して資格取得の難易度がやや低くなっています。

臨床心理士は心理アセスメントや心理カウンセリングを得意とする資格です。そのため、精神科の看護師が臨床心理士の資格を取得することは、「専門的な知識を有したうえで適切なメンタルケアを行えること」の証明となります。職場はもちろん、患者さんからの信頼度も高まるでしょう。
(公式サイト:公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士とは」

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精神科が向いている人の特徴

精神科が向いている人の特徴

どのような仕事においても向き・不向きがあるように、精神科で働く看護師にも仕事の向き・不向きがあります。とはいえ、精神科看護師は比較的多くの看護師が自身のペースを保って働くことができる点が魅力です。

最後に、精神科が向いている看護師の特徴を紹介します。なお、実際に働く中で適正が身につくケースも多々あるため、チャレンジする前に「自分には当てはまらない・向いていない」と諦めるのはおすすめしません。

強い精神力を持っている

精神科で働く看護師に特に重要なのは、精神力の強さです。患者さんの中には興奮して心ない言動をぶつけたり暴れたりすることもあり、慣れないうちは気持ちが沈むことも多いでしょう。場合によってはけがをしてしまったり、患者さんのけがを防げなかったりする可能性もあります。

どのような状況となっても、精神科で働く看護師は冷静にかつ適切に対応し、患者さんに安心感を与えるという役割を果たさなければなりません。そのため、少々のことでは挫折しない強い精神力が必要です。

患者さんと根気よく向き合える

精神科に入院する患者さんの中には、意思疎通が困難で、コミュニケーションをとるのに時間がかかってしまうケースもあります。思うような関わり方ができなくても、患者さんと根気よく向き合える看護師は精神科に適正があるといえるでしょう。

また、単純にコミュニケーションに積極的であるかどうかが問われるのではありません。患者さんのペースに最大限合わせて、コミュニケーション方法に工夫を取り入れながら地道に距離を縮めていける看護師は、多くの精神科患者さんからの信頼を得られるでしょう。

コミュニケーション能力が高い

精神科に入院する患者さんと距離を縮めるためには、看護師のコミュニケーション能力も必要不可欠です。ここでいうコミュニケーション能力とは、単純に話を盛り上げられるスキルではありません。

患者さんが自分ではうまく伝えられない悩みや感情を観察し理解したうえで、言葉にして引き出すことをサポートしたり、時には聞き手となって患者さんの話を伺ったりするなど、その時々に合わせた適切なコミュニケーションが求められます。

観察力に優れている

精神科に入院する患者さんの環境・考え方を理解し、根気よく患者さんと向き合うためには、観察力も欠かせません。

前述の通り、患者さんの中には意思疎通が苦手で、自分の心情や症状をうまく言葉にできないという人もいます。このような患者さんにおいても、「今何を伝えたいのか」といった希望をキャッチするためには、観察力や察する能力が必要です。

適切な観察力に加えて、患者さんが求めていた対応・看護師として適切な対応をスムーズに行える看護師は、精神科において非常に重宝されます。

まとめ

精神看護とは、日常生活において誰もが体験する人間の「精神保健」に関する看護のことで、いわゆる精神的な問題を抱える患者さんの看護・ケアの総称です。

精神科で働く看護師は、患者さんとのコミュニケーションによる心のケアをはじめ、状態評価・判断やセルフケアの援助、薬の管理、入退院のサポートが主な仕事となります。

地域包括ケアシステムの構築が推進されている近年、精神科分野の看護師は病院のみならずあらゆる場所での活躍が期待されています。

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※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています

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