• 2022年4月8日
  • 2022年9月12日

GCUとは? 新生児の退院までのケア内容も解説

 

看護師として働いている方や看護師をめざしている方のなかには、GCUという言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。GCUはリスクやハンデを持って生まれてきた新生児の看護と、家族のサポートを担当する部門です。

この記事では、GCUの概要と新生児の退院までのケア、看護師が担当する仕事の内容を解説します。GCUで働く看護師のやりがいや役立つ資格も紹介しているので、新生児看護に携わりたい看護師の方はぜひ参考にしてください。

GCUとは?

GCUとは、「Growing Care Unit」の略称です。日本語に訳される場合は、「新生児回復室」「回復治療室」「発育支援室」「継続保育室」など、施設によって呼び名が異なります。主にNICUで治療を受け、状態が安定した新生児・乳児とそのご家族のケアを継続して担当する部門です。

NICUと連携して動くことが多く、新生児の状態が悪化した場合などはNICUでの治療に戻るケースもあります。ただし、出生時の病状が安定している場合、初めからGCUでケアを行うことも珍しくありません。下記は、GCUの入院対象となる新生児の例です。

  • 退院準備に入った新生児
  • 急性期を脱して全身状態が安定し、継続治療に移った新生児
  • 先天性疾患の疑いがあり、精密検査を要する新生児
  • 新生児仮死により、継続治療を要する新生児
  • 重度の障害があり、長期入院を要する新生児
  • 低出生体重児

GCUとNICUとの違い

GCUと連携して動くNICUとは「Neonatal Intensive Care Unit」の略称であり、専門家が常駐し高度な医療機器を備える新生児の入院施設です。日本語では「新生児集中治療管理室」と呼ばれ、早産や低出生体重児、あるいは先天性疾患を持った新生児を集中的に治療・管理します。

【低出生体重児とは】

低出生体重児とは、出生体重が2500g未満の新生児のことです。1500g未満は極低出生体重児、1000g未満は超低出生体重児と呼びます。以前は「未熟児」という名称で呼ばれていました。
身体的・臓器的な機能面で成熟が足りないため、正確な知識と医療機器の庇護下における専門的なケアが必要です。

新生児のケアという面ではGCUとNICUで共通するものの、以下のような差があります。

GCU
  • 退院に向けた育児練習・指導
  • ご家族の愛着形成補助
  • 新生児の生活リズム形成
  • 病状ケアに必要な知識・技術の指導
  • 退院後の育児不安に対するフォロー
NICU
  • 高度で専門的な集中治療
  • 新生児の病状に合わせた環境管理
  • 家族関係を形成するための支援
  • ご家族の精神的ケア

NICUは不安定な状態や急を要する容体の新生児を治療する施設であり、GCUは状態が安定し退院に向かう新生児をご家族と協力しながらケアする施設です。

参照元:厚生労働省 – 平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「低出生体重児-保健指導マニュアル」

GCUに必要な設備および看護師の配置基準

厚生労働省の「周産期医療体制計画指針」によって、GCUに必要な設備および看護師の配置基準が定められています。GCUの病床数と看護基準、必要な設備は以下のとおりです。

  • 病床数
    GCUはNICUの2倍以上の病床数を有することが望ましい

  • 看護基準
    総合周産期医療センターにおいては、常時、6床に1名の看護師が必要

  • 必要な設備
    「NICUから退出した新生児」と「輸液・酸素投与等の処置および心拍呼吸監視装置の使用を必要とする新生児」の治療に必要な設備を備えること。また、新生児と家族の愛着形成を支援するために、GCUへの入室面会および母乳保育を行うための設備や家族が宿泊する設備を備えることが望ましい

参照元:厚生労働省「周産期医療体制計画指針」

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GCUでの退院までのケア内容

GCUでの沐浴ケア

NICUでの専門的かつ高度な医療的ケアに比べて、GCUでは新生児の退院と退院後の発達を支援するケアに重点を置いています。ただし、あくまでも傾向であり、両部門のケア内容は明確に分離しているわけではありません。日々変化する新生児の状況に応じて、臨機応変な処置を行っています。

ここでは、GCUで提供されることが多い、代表的な新生児のケア内容を紹介します。

カンガルーケア

カンガルーケアは早期母子接触とも呼ばれ、新生児を裸の胸で抱っこし、直接皮膚と皮膚を触れ合わせることによって親子の絆を深めるケアです。母親を中心に行われますが、父親の参加を促す施設も少なくありません。

カンガルーケアのメリットは、下記のとおりです。

【カンガルーケアのメリット】

  • 互いの体温・鼓動・息遣いを感じることで、安心感や幸福感が生まれる
  • 母性ホルモンの分泌が促され、母乳が出やすくなる
  • 出産後の精神面が安定しやすくなる
  • 母親・父親となった実感と愛情を持ちやすくなる

カンガルーケアには多くのメリットがある反面、下記の点で注意が必要です。

【カンガルーケアの注意点】

  • 新生児の容体急変に注意する
  • うつ伏せで抱きしめるため、窒息しないよう気をつける
  • ご家族が新生児の扱いに慣れていない場合の落下リスクに気をつける
  • 低体温症とならないよう温度管理に気を配る
  • ご家族のストレスにならないよう、疲れているときは無理強いしない

カンガルーケアが実施可能な時期は、新生児の容態によって異なります。また、ご家族へ丁寧な説明を行い、メリットと注意点を理解したうえで積極的に参加してもらうことが大切です。

沐浴ケア

沐浴ケアは、抵抗力の弱い新生児を専用のベビーバスで入浴させるケアです。GCUの看護師は、入院中の新生児を沐浴させるとともに、退院に向けてご家族へ沐浴指導を行います。

沐浴ケアのメリットは、下記のとおりです。

【沐浴ケアのメリット】

  • 全身の状態を観察できる
  • 血液の循環がよくなる
  • 新陳代謝を活発にする
  • 清潔さを保ち、肌トラブルや細菌感染のリスクを下げる
  • スキンシップになる
  • 睡眠が促される
  • 軽い運動効果が見込める
  • 哺乳力アップが見込める

沐浴ケアには多くのメリットがある反面、下記の点で注意が必要です。

【沐浴ケアの注意点】

  • 新生児の安全を確保する
  • 新生児の皮膚を傷つけないよう、爪を短く、滑らかにする
  • 室温25度前後・湿度40~60%・湯温38~40度に保つ
  • 10分以内に手早く丁寧に終わらせ、体温の低下を防ぐ
  • タオルや服は傍に配置しておく
  • 空腹状態や授乳直後は避ける
  • 体温が37.5度未満であることを確認する
  • 嘔吐・下痢をはじめ、体調不良を起こしていないことを確認する
  • 沐浴の実施時間を一定にする

沐浴時に全身をくまなく観察することで、新生児の異常を早期発見できます。おむつかぶれの有無などから、ご家族へのアドバイスや指導にもつなげられるでしょう。

授乳ケア

授乳ケアは、新生児の成長や免疫獲得を目的とした母乳育児支援です。直接母乳を飲めない時期の新生児には、母乳を染み込ませた綿棒を口に含ませる「母乳口腔内塗布」を行います。

授乳ケアのメリットは、下記のとおりです。

【授乳ケアのメリット】

  • 新生児の免疫機能が上がる
  • 母乳の味やにおいで新生児がリラックスできる
  • 授乳することで母親の回復が早まり、乳汁分泌が促される
  • 新生児と母親の間で愛着が形成される
  • 母親の精神が安定しやすくなる

授乳ケアには多くのメリットがある反面、下記の点で注意が必要です。

【授乳ケアの注意点】

  • 母親がリラックスできる環境を整える
  • 新生児の体が冷えないよう気を配る
  • 新生児に異変がないか観察する
  • 母親が授乳を拒否した場合は強要しない

授乳ケアで保護器や粉ミルクを使用する場合、ご家族が不安や不満を抱えないよう丁寧に治療方針を説明することが大切です。適切な介助を行い、ご家族の身体的・精神的な負担を減らしつつ、できるだけ多く授乳の機会を設けましょう。

GCUで勤務する看護師の仕事内容

GCUで勤務する看護師の仕事内容

GCUで勤務する看護師は、新生児のケアだけでなくご家族のサポートなど、さまざまな業務を行います。GCUは一般病棟のように診療科が分かれていないため、新生児がかかるあらゆる疾患に関する知識が必要です。
以下は、GCUの看護師が主に担当する具体的な業務内容です。

日常的なケア業務・バイタル測定

授乳・投薬・おむつ交換・沐浴・体重測定など、新生児の状態に合わせた日常的なケア業務を行います。看護師1人につき、日中3~4人・夜間6~7人を担当する看護体制が一般的です。

また、勤務帯ごとに1~2回を目安として、各新生児に必要なバイタル項目をチェックし、医師が確認しやすいよう整理します。

医療ケア・医療処置介助・検査介助

GCUでも、輸液や注射などの医療ケアは看護師の仕事です。医師が行う医療処置の介助や人工呼吸器などの管理も担当します。

また、GCUに入院している新生児は、病室内で検査を終えることがほとんどです。看護師は検査が安全に終了するよう、医師や技師をサポートします。

新生児の経過観察・ストレスの軽減

必要不可欠とはいえ、GCUで行われる医療や検査などは新生児に多大なストレスを与える行為です。そのため、検査疲れで呼吸が不安定になったり、授乳後に嘔吐しやすくなったりします。
看護師は新生児の様子に異常がないかを綿密に観察し、ストレスが軽減できるよう努めなければなりません。特に投薬は微量の差でも大きな影響が出やすいため、入念な確認が必要です。

ご家族への支援

GCUの看護師は退院後に円滑な家族生活が始められるよう、新生児のご家族へ技術的な育児指導を行うとともに、精神的サポートにも気を配る必要があります。

GCUでの入院期間は長期に及ぶことが多く、なかには退院が見込めない新生児や治療の甲斐なく亡くなってしまう新生児も珍しくありません。親子間の分離が長いことで愛情形成がうまくいかなかったり、自責の念に駆られて精神が不安定になったりすることもあります。
そのため、新生児の病状やご家族の精神状態に合わせて、保健師や臨床心理士などと協力体制を取り、ご家族の不安を解消し精神を安定させられるよう努めることが大切です。

また、新生児の病状によっては、退院後も自宅での継続的な医療ケアが必要となります。看護師は、各家庭の家族構成や住宅環境なども踏まえたうえで、ご家族が新生児に必要なケアを習得できるように指導・支援します。

感染対策

GCUへ入院中の新生児は抵抗力が弱く、感染症になりやすいうえに重症化のリスクが高い状態です。GCU自体は外界から遮断され清潔な状態を保っているものの、看護師自身も何かをするたびに必ず手洗い消毒を欠かさないなど、感染防止対策に神経を尖らせる必要があります。

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GCUの勤務で得られる看護師のやりがいとは?

GCUの勤務で看護師が得られるやりがい

GCU勤務は大変な思いやきつい思いをすることがある反面、やりがいも非常に多く感じられる仕事です。以下では、看護師GCU勤務で得られるやりがいを紹介します。

小さな命を守れたという実感が得られる

GCUに入院する新生児は、生まれた瞬間から大きなハンデを抱えていたり死の危険と隣り合わせだったりします。懸命な処置とケアで元気に育つ姿を見ると、大きな喜びを感じられるでしょう。

また、弱々しかった新生児が元気になると同時に、悲痛な思いで見守っていたご家族も明るい笑顔を見せてくれるようになります。感謝の言葉をかけてもらえたときには、「大切な命を守ることができた」という充足感を得られます。

社会貢献ができる

GCUでの仕事は、社会的に大きな意義があります。新しく生まれてくる命は、国の、そして世界全体の未来を担う大切な存在です。GCUやNICUで命をつないだ新生児はのびやかに成長をし、いずれは社会でさまざまな活躍をするでしょう。

なかには、次世代の医療従事者として活躍したり、世界中を駆け回って多くの人を助けたりする子がいるかもしれません。目の前にある小さな命を守り抜くことが、巡り巡ってさらに多くの命を救うことに繋がるかもしれないのです。新生児の将来に思いをはせれば、さらに自分の仕事に強い誇りとやりがいを感じられるでしょう。

最先端の医療現場で専門性を高められる

GCUやNICUのある病院は地域でも比較的規模が大きく、積極的に最新医療を導入する傾向にあります。なかでも、GCUやNICUはより細やかで高度な医療が求められるため、最先端の医療機器が備えられていることがほとんどです。
同時にGCUやNICUで勤務する看護師には、より専門的で高度な知識・技術が求められます。トップクラスの医療現場で専門性の高い経験を積み、スキルアップしたい方にはうってつけの環境です。

GCU勤務をめざす看護師に役立つ資格2選

GCU、役立つ資格

看護師がGCUで勤務するにあたって、必須の資格は特にありません。しかし、GCUという施設の特性上、新生児に関する専門的な知識や技術が求められます。そのため、GCU勤務を希望する看護師は、業務に生かせる資格の取得をめざすとよいでしょう。

以下では、GCU勤務に役立つ資格を2つ紹介します。

新生児集中ケア認定看護師

新生児集中ケア認定看護師は、日本看護協会が制定する資格です。生まれながらにハンデやリスクを抱える新生児の処置や、ケアに関する専門的な知識と技術を身につけたと認定された看護師のみが取得できます。

資格を得る過程で一層深い知識や技術を学ぶことにより、GCUやNICUの看護師として自信と誇りを持って働くことができるでしょう。また、専門家としての認定資格を得ることで、周囲からの信頼も高まります。

新生児集中ケア認定看護師になるには、認定看護師教育機関の教育課程(6か月・600時間以上)を修了したうえで、認定審査に合格しなければなりません。

下記は、教育課程に進むための条件です。

  • 日本の看護師免許を保有している
  • 看護師免許取得後に、通算5年以上の実務研修を受けている
  • 実務研修のうち3年以上は認定看護分野の実務研修を受けている

また、条件ではないものの、教育課程に進む時点で下記の要件を満たしていることが望まれます。

  • 生後1週間以内のハイリスクな新生児の集中ケア、および親族に対する看護を5例以上担当したことがある
  • ハイリスクな新生児の退院支援を1例以上担当したことがある
  • 現在、ハイリスク新生児のケアを行う部門で勤務している
  • 新生児の組成に関する知識・技術を習得済みである

新生児集中ケア認定看護師の資格は現場での実務研修が求められるため、GCUやNICUで働きながら取得の準備を進めましょう。なお、資格取得後も5年ごとに更新審査受験が必要です。

参照元:日本看護協会「専門看護師・認定看護師・認定看護管理者」

助産師

助産師は、出産の介助と産後のケアを専門とする国家資格です。新生児や妊婦・褥婦に対する深い知識を有する資格であり、GCUやNICUの看護師には特に歓迎される傾向にあります。また、母親やご家族からの信頼も得やすく、頼りにしてもらいやすいことも資格を取得する利点です。

助産師となるためには、看護師免許を取得したうえで助産師の国家試験に合格しなければなりません。

下記は、助産師となるための条件です。

  • 日本の看護師免許を保有している
  • 専門教育を修了し、試験に合格する
  • 女性である

助産師資格を得るための主なルートは、下記の3つとなります。

  1. 4年制の看護系大学で看護師課程に進む
  2. 3~4年制の看護系大学・短大・専門学校から、1~2年の助産師課程へ進む
  3. 看護師として働きながら、1~2年の助産師課程へ進む

助産師の資格を取得すると、GCUで働く看護師としてだけでなく助産師としても重宝されます。勤務先の病院で産科医や助産師が不足している場合は、助産師としての仕事を望まれることもあるでしょう。看護師として、キャリアアップ・ステップアップにつながる資格です。

参照元:厚生労働省-職業情報提供サイト「助産師」

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助産師に必要な資格とは? 資格取得できる学校・難易度

まとめ

GCUは、リスクやハンデを抱えた新生児が入院する施設です。繊細なケアを長期的に必要とするため、看護師にも高い知識と技術、強い責任感が要求されます。看護師の負担は大きいものの、多くのやりがいも得られます。「小さな命を救いたい」と考える看護師の方は、GCU勤務を検討してみてください。

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