• 2022年3月25日
  • 2022年3月25日

「排尿リハってどうしたらいいの?」 排尿ケアナースの悩み「知識不足」を解消する1冊を紹介

 

看護師にとって排尿ケアとは、どの診療科や施設でも、あるいは在宅でも、少なからず関わってくるものではないでしょうか。日頃から行う機会も多い排尿ケアですが、どれだけの知識や技術があってケアを行えているかと振り返ってみると、自信を持って「できている」とは言いにくいかもしれません。

排尿ケアナースの悩み「知識不足」

『排尿ケアチーム看護師が活動するうえで抱く困難感(※1)』の調査によると、排尿ケアナースの抱く困難感の特徴として対応分析を行ったところ、「知識」「不足」「泌尿器」「理解」「連携」に関する困難感を抱えていることがわかりました。さらに、「組織の体制に関する活動の困難感」「職種間の考え方や評価の違いに関する連携の困難感」「知識・技術に関する介入の困難感」などもカテゴリーとしてあげられています。

また、『排尿ケア実施時の看護師の意識に関する研究(※2)』では、泌尿器科病棟看護師の排尿ケアに携わる意識として、「直接的なケアをする」「人間関係を築く」「病状経過を理解する」「ケアを意識的に振り返る」の4つのカテゴリーで表されています。そして、実施したケアを意識的に振り返り、次の実践に繋げ、質の向上を常に考えながら実践していることが明らかとなりました。こうした現状があるなか、排尿ケアに関する知識や技術の不足を補うため、またチーム活動において多職種との連携・調整が円滑に進められるためにおすすめの一冊をご紹介します。

排泄リハビリテーションの必要性

超高齢社会を迎え、さまざまな疾患や障害をかかえる高齢者が増えてきています。また、高齢者に限らず、小児を含めて広い年代でも排泄障害をもった人もいます。そのなかで行われるのが、排尿や排便に関するリハビリテーションです。『排泄リハビリテーション』という言葉は、少し聞き慣れない人もいるかもしれません。リハビリテーションの語源は、「再び適した状態にすること」「本来あるべき状態への回復」などの意味を持ちます。

例えば、排泄行動のプロセスであっても、尿意や便意を感じることができるか、尿意や便意を排泄と結び付けて自覚し、ある程度我慢することができるか。トイレへの移動、ズボンや下着の上げ下ろし、便座を確認して、座る、立ち上がることができるか。その後始末ができるかなど、複雑多岐にわたります。排尿方法といってもトイレやオムツ、ストーマ、膀胱留置カテーテルなどさまざま。排泄リハビリテーションでは、病態生理や治療、ケアはもちろん、これらの排泄行動を理解しアプローチしていくことが、自立への道を開くことになるでしょう。そのため、各病院や施設では腎泌尿器科や脳神経外科の医師、皮膚・排尿ケアや脳卒中リハビリテーション看護の認定看護師、各部署の看護師、理学療法士、作業療法士などを中心とした「排尿ケアチーム」として活動しているところも増えてきています。

「排尿自立指導料」とは?

排尿ケアチームが作られた背景には、2016年度にはじめて診療報酬として「排尿自立指導料」が新設されたことにあります。これが2020年度には「外来排尿自立指導料」に改定されたため、「排尿自立指導料」の見直しが行われ、さらに「排尿自立支援加算」が新設されました。いずれも排尿ケアチームの設置やそのなかに専任の看護師を設置すること、包括的排尿ケアの計画や実施が算定要件として含まれています。

また、2018年度の介護保険の改定では、「排せつ支援加算」が新設され、自立した排泄を支援する体制を評価する仕組みが充実しつつあります。

[参考]

チームで取り組む「排尿ケア」、看護師の役割とは

排尿ケアの重要性は、診療報酬などの改定によってもわかる通り、排尿ケアチームをはじめとして、病院だけではなく施設や在宅でもその取り組みは必要となってくるでしょう。そのため、排尿ケアに関する専門的知識がある多職種からなる排尿ケアチームと、各部署の看護師とでスムーズに連携していくことが大切です。

排尿自立支援を円滑に進めるためには、まずは排尿ケアの重要性を、看護師だけではなく、他職種を含めて病院全体で意識を共有することから始めてみましょう。例えば、包括的排尿ケアに関わる看護師としては、排泄機能の評価、排泄動作の評価と支援、入退院支援などの役割があります。そこまで重点的に関わらないという病棟看護師でも、治療や手術、疾患の種類や年齢、ADL状況などから排尿障害や排尿に関するトラブルが起こりやすい患者をマークし、排尿自立支援が必要な患者を漏らさずに支援につなげることが大切と言えます。

そのためには、スムーズに病棟から排尿ケアチームに報告・相談がいくような仕組みなども必要です。また、排尿ケアチームの専任看護師は排尿ケアチームの窓口として、排尿ケアチームや各部署の看護師の橋渡し役を担うことが求められるでしょう。

[参考]

アセスメント力がつくオススメの1冊『排泄リハビリテーション 理論と臨床』

排泄に関連するすべての領域を網羅し、排泄リハビリテーションについてまとめられた『排泄リハビリテーション 理論と臨床』が13年ぶりに改訂されました。改訂第2版では、排泄とはなにか、解剖や生理、障害を引き起こす疾患、アセスメントと治療やケア、社会環境や医療経済についてなど、新しいガイドラインや診療報酬に基づいた多くの最新情報をもとに解説がアップデートされています。特に解剖や生理ではわかりやすい図を用いて解説し、事例を含めて、排泄障害をもつ人に対してどのような検査・アセスメントを行い、どのように治療・ケアを行っていけばよいか、排泄障害に用いる製品の最新情報を写真と共に網羅しています。さらに、「脳腸相関」「ディスバイオーシス」「仙骨神経刺激療法」「がん終末期の排尿ケア」「多職種連携・病診連携」などが新項目として追加されました。

なかでも、排泄の心理学、排泄障害者に対する心理学的アプローチについて、患者やその家族の心理を把握し、理解することの重要性もまとめられています。排泄障害に対するアプローチは身体的治療だけでなく、心理学的治療を相互補完的に行っていくことも多いため、看護師にとっても大切なことです。

この本は、排泄に関わる医療者がそれぞれの立場で用いることができるように、「排泄障害を診るだけでなく、排泄障害をもった人を診ることができる」成書となるように編集されています。タイトル通り、排泄リハビリテーションにおける理論と臨床を結びつけるものとして、排泄全体を網羅する実用的な専門書となっています。排尿ケアや排泄リハビリテーションに関わる看護師が知識や技術の不足を補い、実践に繋げることができ、チーム活動において多職種との連携・調整が円滑に進められることを手助けしてくれる一冊です。

【書籍情報】

書名:排泄リハビリテーション 理論と臨床 (改訂第2版)
編集 後藤百万(独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院・院長)
本間之夫(日本赤十字社医療センター・院長)
前田耕太郎(藤田医科大学病院 国際医療センター・教授)
味村俊樹(自治医科大学外科学講座 消化器一般移植外科部門・教授)
B5判/並製/4色刷/576頁/定価9,680円(本体8,800円+税)
ISBN 978-4-521-74935-8 

文:ナースプラス編集部

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