一部の病院やクリニックでは、「院内トリアージ」が実施されています。以前から全国の医療機関で行われていましたが、近年の新型コロナウイルスの影響で一般の方にも認知されるようになりました。
この記事では、院内トリアージの概要と目的、実施するメリットを解説。院内トリアージで用いられるJTAS法の詳細もまとめています。さらに、院内トリアージを実施する際の注意点やトリアージナースのなり方も紹介しているので、スキルアップ・キャリアチェンジを検討している方はぜひ参考にしてください。
院内トリアージとは
院内トリアージとは、救急外来に来た方を対象として行うトリアージのことです。患者さんの症状を見極めて、適切な順番で診察・治療をするために行われます。
もともとトリアージは災害などの緊急時に実施されており、以前は「医療資源が不足している災害時における考え方」という概念が強くありました。しかし、1990年代からは医療資源が充足する病院においても院内トリアージが浸透し始め、近年では新型コロナウイルス感染症の感染拡大をきっかけに、一般的に広く知られるようになりました。
院内トリアージの目的
トリアージ能力のある看護師が緊急度や重症度を判断し、医師による診察・治療の順番を決めることで、適切な医療を適切なタイミングで提供することが可能です。また、待合室での重症化を防げるだけでなく、救命率にも大きな影響を及ぼします。
そのほか、院内トリアージを実施している旨を公表することで、ほかの患者さんからの「受付順で診察されない」「後からきた患者さんが先に診察してもらっている」などのクレームを防ぐ目的もあります。
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院内トリアージはJTAS法で判断する

院内トリアージでは、災害現場などで使われるSTART法ではなく、JTAS法(緊急度判定支援システム)を用いて5段階で判定します。
JTASは救急外来や災害時において、患者さんの緊急度や治療の優先順位を迅速に決定するための方法です。以下の表のとおり、緊急度は5つのレベルと色で判定されます。
緊急度判定レベル | 診察の必要性 |
---|---|
蘇生 | 直ちに診療、治療が必要 |
緊急 | 10分以内に診察が必要 |
準緊急 | 30分以内に診察が必要 |
低緊急 | 1時間以内に診察が必要 |
非緊急 | 2時間以内に診察が必要 |
JTASはタブレットやスマートフォンといった情報通信機器でアプリ化されています。患者さんの症状やバイタルサインをアプリ上で選択することで、院内トリアージレベルの判定が可能です。
参照元:厚生労働省「重症度と緊急度」
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院内トリアージをする3つのメリット

近年、実施する医療機関が増加傾向にある院内トリアージ。院内トリアージの実施には、以下の3つのメリットがあります。
1.緊急度に応じた迅速な対応ができる
院内トリアージで緊急度を迅速に評価することで、生命の危機にある患者さんや重症の患者さんを優先的に治療できます。
医療機関を受診する患者さんは、一人ひとり症状が異なります。特に救急外来となれば、一刻を争う状態の患者さんも少なくありません。適切なタイミングで医療を提供できないと、最悪の事態に陥る可能性もあります。
院内トリアージを実施することで、治療の遅れによる悪化を防ぎ、患者さんの生存率を高めることが可能です。
2.待機時間の管理と患者さんの満足度向上につながる
院内トリアージにより、患者さんの緊急度に応じた待機時間を効率的にコントロールすることが可能です。
院内トリアージを実施した場合、必ずしも診察・治療の順番が来院順となるわけではありません。したがって、場合によっては先に訪れていた患者さんからクレームが入る可能性もあります。しかし、JTAS法に基づいた院内トリアージを実施していれば、順番に関する不満を抱えた患者さんが納得できるような、エビデンスをもった説明が可能です。
その結果、患者さんの不安軽減や満足度向上にもつながります。
3.スタッフの業務効率をアップできる
院内トリアージで基本的に用いられるJTAS法はアプリ化されています。パソコン・タブレット・スマートフォンに患者さんの症状・バイタルサインといった項目を入力することで、レベルの判定が可能です。これにより、看護師の業務負担を大幅に削減でき、効率アップに繋がるでしょう。
また、トリアージツールのなかには、電子カルテシステムと連携したものもあります。システム間で連携できるツールを導入することで、業務効率をさらに向上させられるでしょう。
院内トリアージを実施する際の注意点

院内トリアージを実施する際の注意点として、アンダートリアージとオーバートリアージが挙げられます。
アンダートリアージとは、トリアージの際に適切な基準よりも低く判断することです。反対に、適切な基準よりも高く判断することをオーバートリアージといいます。
オーバートリアージよりも、アンダートリアージのほうが患者さんの命にかかわります。また、患者さんの予後にも大きな影響を及ぼすため、アンダートリアージを発生させないことが重要です。
トリアージの実施者には、相応の知識や経験が求められます。そのため、救急医療の経験が豊富であり、トリアージに関する知識と決断力に富んだ人が最適といえるでしょう。
トリアージナースになるには

救急看護を含むあらゆる看護経験・スキルをもって院内トリアージを実施する看護師のことを、トリアージナースといいます。
トリアージナースになるために、特定の資格は必要ありません。しかし、セミナーを受けておくことでトリアージに関する知識を持ち合わせていることを証明可能です。トリアージナースをめざす看護師に役立つセミナーとして、日本救急看護学会が開催している「トリアージナースコース」があります。
「トリアージナースコース」は、看護師が一定水準の知識・技術のトリアージを提供できるようになることを目的として開催されています。
トリアージナースコース研修会を受講することで修了証が発行され、トリアージナース認定申請書とトリアージ実践件数リストを提出することで、トリアージナース認定証が発行されます。なお、トリアージナース認定は 2年毎の更新制です。
トリアージナースをめざす方やトリアージスキルを向上させたい方は、セミナーの受講を検討してみましょう。
まとめ
院内トリアージは、外来に訪れた患者さんの緊急度や重症度を判定し、診察・治療の優先順位付けを行うことです。新型コロナウイルスの流行もあり、近年では多くの医療機関で院内トリアージが実施されています。
救急外来などでは、院内トリアージのスキルが求められることがあります。スキルアップをめざす人は、資格取得やセミナーの受講を検討すると良いでしょう。
救急外来でトリアージのスキルを活かして働きたい方は、マイナビ看護師にご相談ください。
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