• 2022年3月17日
  • 2024年4月10日

学校保健師とは? 仕事内容・立場別のなり方・求められるスキルも

 

ひとくちに保健師といっても、働く場所によってさまざまな種類があります。医療機関で働く保健師は「病院保健師」、企業で働く保健師は「産業保健師」、保健所や保健センターで働く保健師は「行政保健師」、そして学校で働く保健師のことは「学校保健師」と呼ばれます。

学校保健師にもさまざまな働き方があり、具体的な仕事内容も違えば必要となる免許・資格も違ってきます。学校で働きたいと考えている保健師の方は、どのように活動したいかをまず考えたうえで、取得しておくべきスキル・資格を見つけ出しましょう。

そこで今回は、学校保健師の概要や仕事内容、学校保健師と養護教諭(保健室の先生)との違い、さらに学校保健師になる方法まで詳しく解説します。

学校保健師とは?

学校保健師とは、小学校・中学校・高校・大学・短大・専門学校といった学校(教育施設)に常駐して働く保健師のことです。主な仕事は生徒や職員のけがの応急処置や、健康維持・促進に関するアドバイスを行うことで、ときには万が一の場合に備えた救急用品の準備や点検も行います。

上記の主な仕事内容から、「保健室の先生」とイメージする方も多いでしょう。しかし、学校保健師=保健室の先生というわけではありません。保健室の先生になるためには、養護教諭の免許を取得する必要があります。

養護教諭である保健室の先生とは異なり、学校保健師は法律で規定された職種ではありません。単純に、「学校に勤務する保健師」程度の意味で用いられることを覚えておきましょう。

また、学校保健安全法(学校の保険に関して規定されている法律)では、「保健師」や「看護師」についての言及もありません。学校保健安全法で保健指導を行う存在として直接的に規定されているのは、保健室の先生、いわゆる養護教諭となります。加えて、学校教育法では児童の養護をつかさどるのは養護教諭と示されています。

学校保健安全法 第九条

養護教諭その他の職員は、相互に連携して、健康相談又は児童生徒等の健康状態の日常的な観察により、児童生徒等の心身の状況を把握し、健康上の問題があると認めるときは、遅滞なく、当該児童生徒等に対して必要な指導を行うとともに、必要に応じ、その保護者(学校教育法第十六条に規定する保護者をいう。第二十四条及び第三十条において同じ。)に対して必要な助言を行うものとする。

(引用:e-Gov法令検索「学校保健安全法」

学校教育法 第三十七条12

養護教諭は、児童の養護をつかさどる。

(引用:e-Gov法令検索「学校教育法」

とはいえ、学校保健安全法・学校教育法などの法律で保健師の設置を否定しているわけではありません。学校保健安全法第九条の文頭では「養護教諭その他の職員は」となっているように、もちろん保健師も「その他の職員」の1人として業務に関与することが可能です。学校によっては任意で保健師を設置でき、実際に学校保健師を設置しているところも多くあります。

学校保健師と養護教諭(保健室の先生)との違い

学校保健師と養護教諭(保健室の先生)は、厳密には異なることを説明しました。では、具体的な業務範囲・必要資格においてはどのような違いがあるのでしょうか。

  学校保健師 養護教諭(保健室の先生)
業務範囲
  • 生徒・教員の健康維持促進や管理
  • 生徒・教員のけがや病気の応急処置
  • 生徒・教員のメンタルヘルス支援
  • 校内の健康に関する取り組み実施
  • 生徒・教員のけがや病気の応急処置
  • 校内健康診断の管理
  • けがや病気、性問題に関する授業
  • 生徒からの相談対応
  • 校内衛生管理
必要資格
  • 看護師資格
  • 保健師資格
  • 養護教諭免許
勤務施設
  • 大学・専門学校
  • 私立の小学校・中学校・高校
  • 大学・専門学校
  • 公立の小学校・中学校・高校
  • 私立の小学校・中学校・高校
設置義務 任意(設置義務なし) 小学校・中学校・高校は設置義務あり

学校保健師と養護教諭(保健室の先生)の業務範囲に大きな違いはない一方で、保健室に駐在するかしないかといった働き方に大きな違いがあることが特徴です。

養護教諭(保健室の先生)は保健室に駐在してあらゆる業務を担当しますが、学校保健師はあくまでも学校・保健室に勤務するという位置づけとなっていることを覚えておきましょう。児童や生徒たちと日頃からより密に関わりながら保健教育・保健指導を行えるのも養護教諭(保健室の先生)となっています。

勤務可能な施設に差がある点にも注意が必要です。学校保健師が勤務できるのは、大学や専門学校に加え、「私立」の小学校・中学校・高校のみに制限されています。「公立」の小学校・中学校・高校での勤務を希望する場合、養護教諭の免許取得が必須です。

また学校保健師は設置が任意となっていますが、養護教諭(保健室の先生)は小学校・中学校・高校での設置が義務付けられていることも大きな違いとして挙げられます。

学校保健師の主な仕事内容

学校保健師の主な仕事内容

生徒や教職員の健康を支える学校保健師の仕事は多岐にわたります。日々の健康管理から緊急時の対応、健康教育に至るまで、役割は非常に広範囲です。以下では、学校保健師が担う主な仕事内容を5つに分けて解説します。

生徒・教職員の健康管理

生徒や教職員の健康を総合的に管理するのが、学校保健師の主な仕事です。健康診断の結果を基にした健康管理や持病を抱える生徒のサポート、感染症予防のための環境整備など、さまざまな業務を行います。

持病やアレルギーを持つ生徒に関しては、担当教員と連携して健康状態を把握し、安全に学校生活を送れるよう支援します。また、学校内の衛生状況を日々チェックし、水質や空気の検査を行うのも重要な業務です。一つひとつの教室が健康的な環境であることを確認し、生徒と教職員の健康を守ります。

生徒・教職員の保健相談

生徒や教職員のメンタルヘルスを含む保健相談に応じるのも、学校保健師の重要な役割です。就職活動や人間関係に関する不安、いじめ問題など、心の悩みを抱える生徒の異常をいち早く察知し、適切なアドバイスやサポートを提供します。心身の健康に関するカウンセリングでは、専門のカウンセラーと連携するケースも少なくありません。

また、生徒だけでなく、ハラスメントの問題や心身の問題を抱える教職員に対するサポートとケアも、学校保健師の大切な仕事です。

体調不良・けがの応急処置

学校保健師は、体調不良やけがをした生徒の応急処置も行う立場です。生徒が保健室を訪れた際は必要に応じて処置を施し、症状や状況によっては病院へつき添います。免疫力が未熟な子どもたちは体調を急変させることがあり、早期の対応が必要です。

また、インフルエンザのような感染症が広がりを見せた場合、学校保健師が対策の中心となります。食物アレルギーなどで発作を起こした生徒に対しても、迅速で的確な処置が必須です。いずれの状況もときには生命に関わる問題であり、学校保健師には重大な責任が伴います。

定期健診の推進・サポート

定期健診の推進とサポートも、学校保健師の仕事の1つです。健康診断や身体測定の計画・準備・実施を担い、生徒たちの健康状態や発育を把握します。健診の結果に基づいた、生活習慣の改善を促す指導も学校保健師の仕事です。

食事・睡眠・起床時間、歯磨きといった家庭での生活習慣に関する調査を行い、その情報を踏まえた指導をするケースも少なくありません。また、学校によっては、予防接種の実施に関わることもあります。これらの活動を通じて、生徒たちの健康維持と発育を支援するのが学校保健師の仕事です。

保健教育

保健教育では、学校保健師が生徒たちに対して病気やけがの予防、健康意識の向上に関する啓蒙活動を行います。日常生活での健康管理方法、たとえば歯磨きや手洗い、うがいの重要性などの指導が代表的です。

全校集会やホームルームでの啓蒙、掲示物の作成、保健便りの配布、講習会の開催などを通じて生徒たちに自己の健康を守る方法やメリットを教えます。また、担任やほかの教員と連携し、性に関する授業を行うこともあります。これらの活動を通じて、生徒たちが健康な生活を送るための知識と意識を高めるのが学校保健師の仕事です。

無資格から学校保健師になる方法

無資格から学校保健師になる方法

学校保健師になるには保健師資格の取得が必須条件であり、保健師資格の受験資格を得るには看護師免許状の保有が絶対条件です。そのため、無資格の状態から学校保健師を目指すのであれば、まず看護師資格を取得する必要があります。保健師資格と看護師資格はいずれも国家資格であり、国家試験に合格しなければ取得できません。

学校保健師を目指す場合のルートは、下記の2種類です。

  • 看護師資格と保健師資格をまとめて取得するルート
  • 看護師資格を取得したのち、保健師資格を取得するルート

ここでは、ルート別に保健師資格を取得する流れを紹介します。

看護師資格と保健師資格をまとめて取得するルート

看護師資格と保健師資格をまとめて取得する場合のルートは、以下の通りです。

高等学校卒業
 
大学(4年制)   専門学校(4年制)
 
看護師・保健師国家試験
看護師・保健師免許取得

このルートでは、大学・専門学校ともに4年制で、かつ看護師・保健師の総合カリキュラムを採用している学校を卒業する必要があります。ただし、保健師国家試験に合格した場合でも、看護師国家試験に受からなければ保健師資格は得られません。

看護師資格を取得してから保健師資格を取得するルート

看護師資格を取得してから保健師資格を取得する場合のルートは、以下の通りです。

高等学校卒業   中学校卒業
     
大学・専門学校
(4年制)
  短期大学
(3年制)
  専門学校
(3年制)
  5年一貫
看護師養成課程
     
看護師国家試験
看護師免許取得
 
保健師養成課程(1年制)   看護系大学保健師養成課程(3年次編入)
 
保健師国家試験
保健師免許取得

このルートの場合、看護師として働きながら保健師養成課程で学び、キャリアアップを目指すこともできます。

看護師・保健師から学校保健師になる方法

看護師・保健師から学校保健師になる方法

もともと保健師資格を保有している方であれば、学校に就職して勤務することで学校保健師として活躍することが可能です。

しかし、保健師資格を取得していない看護師が学校保健師になるためには、まず保健師資格を取得してから学校に就職しなければなりません。看護師が保健師資格を取得するためには、1年制の保健師養成施設に入学し、定められた教育課程を修了したのち卒業年次に保健師国家試験を受験し、合格する必要があります。なお、学校保健師の就職先は、求人サイトなどを活用して各種学校から募集されている保健師求人を探すことが基本です。

看護師・保健師から養護教諭になる方法

看護師・保健師から学校保健師になる方法

学校の保健室に駐在し、保健指導に携わりたいという場合は、学校保健師だけでなく養護教諭という選択肢もあります。いわゆる保健室の先生として、保健師業務だけでなく児童・生徒の教育に興味がある方は、養護教諭の免許取得を目指すのもよいでしょう。

また、養護教諭(保健室の先生)ではなく、学校保健師として活躍したいという方でも、養護教諭免許を保有していることは就職・転職において有利となります。

以下では、看護師・保健師から養護教諭を目指す方法について、順序立てて紹介します。

養護教諭の免許資格を取得する

養護教諭(保健室の先生)を目指すのであれば、まずは国家資格である養護教諭免許の取得を目指しましょう。

保健師資格を取得するためには看護師資格の保有が必須条件ですが、養護教諭は看護師資格・保健師資格の保有を必須条件としていません。しかし、養護教諭免許を取得するためには看護師・保健師と同様、養成施設に入学する必要があります。このとき、看護師資格の保有者と保健師資格の保有者とで在籍期間が異なることも覚えておきましょう。

看護師資格の保有者 養護教諭養成施設に1年以上在籍し、指定科目を修得する
保健師資格の保有者 養護教諭養成施設に半年以上在籍し、指定科目を修得する

看護師資格や保健師資格を保有している方は、いずれの資格も保有していない方に比べて単位軽減などの優遇措置があるため、養護教諭免許が比較的取得しやすいことが特徴です。

また、養護教諭免許は取得の経路によって下記の3種類が存在します。

種類 経路
養護教諭一種免許状 指定の大学(教育・看護・保健系学部)で教育課程を修了して取得する
養護教諭二種免許状 短大・専門学校の教育・看護・保健系コースで教育課程を修了して取得する
養護教諭専修免許状 大学の養護教員養成学部で指定単位を取得し、大学院を修了して取得する

養護教諭免許の種類に関係なく、養護教諭採用試験を受験することは可能です。しかし、求人によっては専修免許状の保有を最も重視するケースもあることを留意しておきましょう。

養護教諭採用試験に合格する

養護教諭免許の取得後は養護教諭採用試験を受験し、合格後採用されれば晴れて養護教諭(保健室の先生)として働けるようになります。

養護教諭採用試験の受験資格として、養護教諭免許状の保有が必須です。前述の通り、免許状の種類は問われませんが、自治体によっては看護師・保健師資格の保有者のみ採用試験で何らかの優遇を受けられる可能性があります。たとえば大阪府の場合、看護師資格の保有者は1次選考において10点分の加点措置が受けられます。
(出典:大阪府「令和4年度大阪府公立学校教員採用選考テスト受験案内」

下記は、2023年に実施された養護教諭採用試験の受験者数と採用者数です。

受験者数 採用者数
9,170人 1,234人
(出典:文部科学省「令和5年度(令和4年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイント」

養護教諭採用試験は、自治体によってばらつきがありますが基本的には一般の教員採用試験よりも倍率が高い傾向です。なかには20倍近くになる自治体もあることから分かるように、養護教諭採用試験の合格難易度は決して低いとはいえません。

養護教諭採用試験では、主に筆記試験・面接(個人面接・集団面接)で選考されます。児童や生徒の健康に関わる専門知識に限らず、教諭になるために必要な教養からこれまでの生活・取り組みも問われることが特徴です。そのため、学生生活や社会人生活を通じてあらゆる経験を積んでいることや、勉学やボランティア活動などの取り組みに深く携わってきたことを強くアピールすることが合格のポイントといえるでしょう。

学校保健師に求められる3つのスキル

学校保健師に求められる3つのスキル

生徒や教職員の健康を支える学校保健師には、コミュニケーションスキルをはじめとした3つのスキルが求められます。いずれのスキルも、学校現場での効果的な対応や、生徒の健康と安全の確保に不可欠です。

ここでは、学校保健師に求められる3つのスキルの概要と、そのスキルが求められる理由を解説します。

コミュニケーションスキル

学校保健師には、高度なコミュニケーションスキルが求められます。学校保健師は、生徒や教職員など、さまざまなタイプの方々と関わる仕事です。感情表現が苦手な方や、他人とうまく接することが難しい方からの相談にも対応するケースも少なくありません。ときには非常に深刻な悩みを相談されることもあり、教師や親、友達とは異なる立場で信頼されるには、コミュニケーション能力が必須です。

相手が安心して話せる環境と信頼関係の構築が必要となるため、誰に対しても明るく、朗らかに接せられる性格が望ましいでしょう。また、仕事を円滑に進めるには周囲のスタッフとの密な連携も不可欠であり、そのためにもコミュニケーションスキルは必要です。

生徒たちの気持ちに寄り添える能力

学校保健師は、生徒たちの気持ちに寄り添える能力が求められます。この能力は、生徒たちに対するケアだけでなく、彼らとの信頼関係を築くためにも不可欠です。学校保健師は教職員のケアも行いますが、主に関わる相手は生徒となるため、子どもの立場になって物事を考えられる保健師はより活躍できるでしょう。

生徒たちの心身の健康を守るには、その年齢や環境ならではの感情や考えを理解したうえでの、適切なサポートの提供が重要となります。特に、小児科での勤務経験のある看護師・保健師であれば、幼稚園・小学校・中学校などで特に需要が高まる傾向です。

子どもならではの健康問題に関する知識

近年、生活習慣の乱れ・メンタルヘルスの不調・アレルギー疾患・性に関する問題・薬物乱用など、さまざまな健康問題を抱える子どもが増加しているといわれています。医療技術の進歩により、長期間にわたる医療的ケアが必要な子どもの数も増加しており、彼らのケアの場所は病院から学校へと移行しつつある状況です。
(出典:文部科学省「令和4年度学校における医療的ケアに関する実態調査結果(概要)」
(出典:文部科学省「令和元年度学校における医療的ケアに関する実態調査」

学校には、看護師・保健師といった医療資格者が教職員と協力し、生徒たちのケアにあたることが求められています。そのため、子どもがよくかかる病気や感染症、思春期特有のメンタルヘルス問題など、「子どもならではの幅広い健康問題」に精通した学校保健師の需要が高まっています。
(出典:文部科学省「学校における医療的ケアの今後の対応について」

まとめ

学校保健師とは、小学校・中学校・高校・大学・短大・専門学校といった学校(教育施設)に常駐して働く保健師のことです。「保健室の先生」とイメージする方も多くいますが、保健室の先生になるためには、保健師資格ではなく養護教諭の免許を取得する必要があります。

養護教諭免許を保有していることは、学校保健師を目指す方でも就職・転職においてとても有利となります。将来的なキャリアチェンジ・スキルアップも検討している方は、養護教諭免許の取得を目指すのもよいでしょう。

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※当記事は2024年1月時点の情報をもとに作成しています

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