• 2022年3月14日
  • 2023年8月23日

専門看護師と認定看護師の違いとは? 向いている人の特徴も解説

 

看護師がキャリアアップを目指す手段として、専門看護師・認定看護師の資格取得は最も代表的です。しかし、現在看護師を目指している方や看護師として働き始めてまだ間もない方にとっては、専門看護師と認定看護師の違いがいまいち分からないという場合も多いのではないでしょうか。

また、専門看護師と認定看護師のほかにも、認定看護管理者・特定看護師といった資格も存在します。そこで今回は、専門看護師・認定看護師・認定看護管理者・特定看護師の違いとそれぞれに向いている人の特徴、さらに認定看護師を目指している方が利用できる支援制度をいくつか紹介します。

専門看護師・認定看護師・特定看護師の違いは?

看護師の数あるキャリアアップ手段のなかでも、特に代表となるのが専門看護師と認定看護師の資格を取得することです。専門看護師と認定看護師はいずれも「看護師のスペシャリスト」として活躍できるようになる認定資格ですが、具体的には担う役割や分野において多くの違いが存在します。

  専門看護師 認定看護師
概要 看護分野全体のスペシャリスト 看護現場におけるスペシャリスト
特定分野 13項目
(がん看護/精神看護/老人看護 など)
21項目
(緊急看護/皮膚・排泄ケア/緩和ケア など)
役割
  • 実践
  • 指導
  • 相談
  • 調整
  • 倫理調整
  • 研究
  • 実践
  • 指導
  • 相談

また、看護業界のスペシャリストとして活躍できるようになる資格には、ほかにも認定看護管理者・特定看護師が挙げられます。

  認定看護管理者 特定看護師
概要 看護現場における管理職・マネジメントのスペシャリスト 「特定行為に係る看護師の研修制度」を修了した看護師

ここからは、専門看護師・認定看護師・認定看護管理者・特定看護師の仕事内容や資格の取得方法などについて、それぞれ詳しく紹介します。

専門看護師

専門看護師とは、個人・家族および集団に対して水準の高い看護ケアを提供するための、特定専門看護分野における知識や看護技術を深めた看護師のことです。専門看護師の特定看護分野は、がん看護・精神看護・老人看護含む合計13分野となっています。がん看護分野で認定資格を取得した看護師は、「がん看護専門看護師」と呼ばれます。

専門看護師に求められる役割は、実践/指導/相談/調整/倫理調整/研究の6つであり、専門知識や技術をもって医師と患者さんやほかの医療スタッフとの連携ができる「分野全体のスペシャリスト」といえるでしょう。

具体的な仕事内容は、水準の高い臨床看護の実践・保健福祉医療関係者を含む各職種間との連携・看護の向上を目的とした教育活動などが挙げられます。勤務先も幅広く、病院のほか大学病院や訪問看護ステーションなどでも活躍することが可能です。

専門看護師資格を取得するためには、看護師資格を保有したうえで専門看護師教育課程の所定単位を取得し、5年間以上の実務研修(うち3年以上は専門分野)を積むことが必須条件となっています。その後書類審査と筆記試験での認定審査を受け、合格すれば専門看護師として登録できます。
(出典:日本看護協会「専門看護師」
(出典:日本看護協会「専門看護師ってどんな看護師?」

認定看護師

認定看護師とは、特定看護分野において熟練した知識・技術を用いた水準の高い看護を実践できる看護師のことです。認定看護師に求められる役割は、実践/指導/相談の3つであり、専門知識や技術をもって適切かつ徹底的なケアを実践できる「看護現場におけるスペシャリスト」といえるでしょう。

具体的な仕事内容は、特定分野の知見に基づいて治療・看護が必要な患者さんやその家族に対して適切な看護を検討することや、看護の向上を目的に教育活動を行うことが挙げられます。

認定看護師資格を取得するためには、看護師資格を保有したうえで5年間以上の実務研修(うち3年以上は認定看護分野)を積み、認定看護師教育課程を修了することが必須条件となっています。その後筆記試験での認定審査を受け、合格すれば認定看護師として登録できます。
(出典:日本看護協会「認定看護師」
(出典:日本看護協会「認定看護師ってどんな看護師?」

認定看護管理者

認定看護管理者とは、病院や介護老人保健施設における看護管理者として水準の高い知識・技術を有していると認められた看護師のことです。認定看護師と似た名前ですが、認定看護師は看護現場におけるスペシャリストである一方、認定看護管理者は「看護現場における管理職・マネジメントのスペシャリスト」といえるでしょう。

具体的な仕事内容は、保健医療福祉の政策などに関する知識や組織管理に必要となる知識を修得したうえで施設のサービス向上を図り、教育体制や職場環境を整えることが挙げられます。いわゆる、各施設の経営基盤を支える人材として活躍できるでしょう。

認定看護管理者資格を取得するためには、看護師資格を保有したうえで5年間以上の実務研修を積み、定められた教育課程や要件を満たすことが必須条件となっています。その後書類審査および筆記試験での認定審査を受け、合格すれば認定看護管理者として登録できます。
(出典:「認定看護管理者」
(出典:「認定看護管理者ってどんな看護師?」

特定看護師

特定看護師とは、厚生労働省が2015年10月にスタートさせた「特定行為に係る看護師の研修制度(=特定行為研修制度)」を修了した看護師のことです。特定行為研修制度を修了した看護師は、特定行為と認められている21区分38行為において、医師の指示なしに自らの判断で実施できます。

専門看護師・認定看護師・認定看護管理者は認定資格が付与されることに対し、特定看護師は特定看護師資格を取得できる、というわけではありません。あくまでも特定行為研修制度を修了した看護師を「特定看護師」と呼ぶことを覚えておきましょう。

特定看護師になるためには、指定研修期間で特定行為研修(共通科目・区分科目)を受けることが必須条件となっています。特定看護師も一般的な看護師も主な仕事内容はさほど変わりませんが、医師の指示を待たず手順書に基づいて特定行為を自ら実施できるため、効率的に業務を行える点が特徴です。
(出典:日本看護協会「看護師の特定行為研修制度ポータルサイト」

特定看護師は主に急性期医療や在宅看護など、迅速な判断と対応が要求される分野で活躍できます。たとえば、医師不足によって適時適切なケアを行いにくい在宅看護の現場で特定看護師が手順書に基づく処置を実施すれば、在宅療養の継続支援が可能です。適時適切なケアを実践し重症化予防や回復促進につながれば、高齢者のQOL向上も図れるでしょう。
(出典:日本看護協会「特定行為研修を修了した認定看護師の活動」

なお、特定看護師になるための特定行為研修は単独ではなく、認定看護師のカリキュラムに組み込まれる形で提供されます。今後、看護師から特定看護師を目指す方は認定看護師の「B課程認定看護師教育機関」を修了し、認定審査を受けるルートを選ぶとスムーズです。

「A課程認定看護師教育機関」を経て認定看護師資格を取得した方の場合は特定看護師研修を修了して必要な手続きを行うことにより、特定看護師になれます。
(出典:日本看護協会「認定看護師」

専門看護師と認定看護師の違いは?

専門看護師と認定看護師の違いは?

専門看護師と認定看護師では、専門性を発揮できる分野や資格取得後の役割が異なります。自分自身の理想とする看護師像に沿って挑戦する専門資格の種類を検討し、スキルアップの方向性を明確化しましょう。

以下では、専門看護師と認定看護師の違いを詳細に紹介します。

分野の違い

専門看護師は専門看護分野の専門家であり、認定看護師は認定看護分野の専門家です。専門看護分野とは専門看護師制度委員会が「変化する看護ニーズに対して、独立した専門分野として知識及び技術に広がりと深さがある」と認める以下の14分野を意味します。

  • がん看護
  • 精神看護
  • 地域看護
  • 老人看護
  • 小児看護
  • 母性看護
  • 慢性疾患看護
  • 急性・重症患者看護
  • 感染症看護
  • 家族支援
  • 在宅看護
  • 遺伝看護
  • 災害看護
  • 放射線看護

(出典:日本看護協会「専門看護師」

一方、認定看護分野とは、高度な看護技術や知識を必要とする分野として日本看護協会が認める以下の21分野です。

  • 救急看護
  • 皮膚・排泄ケア
  • 集中ケア
  • 緩和ケア
  • がん化学療法看護
  • がん性疼痛看護
  • 訪問看護
  • 感染管理
  • 糖尿病看護
  • 不妊症看護
  • 新生児集中ケア
  • 透析看護
  • 手術看護
  • 乳がん看護
  • 摂食・嚥下障害看護
  • 小児救急看護
  • 認知症看護
  • 脳卒中リハビリテーション看護
  • がん放射線療法看護
  • 慢性呼吸器疾患看護
  • 慢性心不全看護

ただし、上記の区分は2026年度で終了し、2021年から新分野の認定審査が開始されています。

  • 感染管理
  • がん放射線療法看護
  • がん薬物療法看護
  • 緩和ケア
  • クリティカルケア
  • 呼吸器疾患看護
  • 在宅ケア
  • 手術看護
  • 小児プライマリケア
  • 新生児集中ケア
  • 心不全看護
  • 腎不全看護
  • 生殖看護
  • 摂食嚥下障害看護
  • 糖尿病看護
  • 乳がん看護
  • 認知症看護
  • 脳卒中看護
  • 皮膚・排泄ケア

(出典:日本看護協会「認定看護師」

看護専門分野・認定看護分野のいずれも随時更新されるため、最新の情報は、日本看護協会のホームページで確認ください。

役割の違い

専門看護師には専門看護分野の知識や技術をいかし、「実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究」を担当する役割があります。一方の認定看護師は認定看護分野の知識や技術をいかし、「実践・指導・相談」を担当することが役割です。

実践とは、臨床現場で実際に看護ケアを行うことです。相談とはほかの看護師などの相談役となり、コンサルテーションを行うことを指します。指導や教育とは、周囲の看護師に対して質の高い看護ケアを実現するための教育的指導を行うことです。

専門看護師特有の役割にあたる「倫理調整」とは、看護現場における倫理的な問題が発生しやすい場面で患者さんやご家族の思いを反映させ、働きかけることを指します。専門看護師は医療福祉の発展に貢献するための「研究」も担当し、成果をいかした看護を行う必要があります。
(出典:日本看護協会「専門看護師」
(出典:日本看護協会「専門看護師ってどんな看護師?」
(出典:日本看護協会「認定看護師」
(出典:日本看護協会「認定看護師ってどんな看護師?」

働き方の違い

専門看護師はほかの看護師や認定看護師と比較して、より広範囲の支援を担当する傾向があります。専門看護師の支援対象は病院外に及ぶケースも多く、訪問看護ステーションの担当者やケアマネジャーと関わり、自宅療養の環境整備をサポートすることも仕事です。また、専門看護師は、複雑な問題を抱える患者さんを担当することも多くあります。

一方の認定看護師の活躍場所は原則的に病院内で、専門看護師ほど広範囲な支援を担当しません。代わりに認定看護師には特定分野に関する専門知識を存分にいかし、適切な支援を実践する責任があります。組織としての看護の質の向上を図るために後輩看護師の指導や教育を行うことも、認定看護師の重要な仕事の1つです。
(出典:日本看護協会「専門看護師ってどんな看護師?」
(出典:日本看護協会「認定看護師ってどんな看護師?」

【専門看護師・認定看護師・特定看護師】向いている人の特徴は?

【専門看護師・認定看護師・特定看護師】向いている人の特徴は?

専門看護師・認定看護師・認定看護管理者・特定看護師は、それぞれ働き方や特徴が大きく異なります。キャリアアップを図りたい・キャリアアップが見込める資格を取得したいと漠然と考えている看護師さんは、まず自分にはどの資格を取得するのがよいかを検討してみましょう。ここからは、専門看護師・認定看護師・認定看護管理者・特定看護師それぞれの向いている人の特徴を紹介します。

専門看護師に向いている人の特徴
  • 医療機関と患者さん・家族の仲介的な役割を果たしたい人
  • 看護師の育成にも携わりたい人
  • 患者さん・家族に対して倫理面でのサポートもしたい人
認定看護師に向いている人の特徴
  • 専門的な看護分野の知識をもち、さらに患者さん・家族に寄り添う医療を提供したい人
  • 特定の看護分野に関してより高い知識を修得し、看護実践能力を高めたい人
認定看護管理者に向いている人の特徴
  • 医療現場における管理業務・マネジメント業務に興味のある人
  • 施設の経営面から、教育体制や職場環境の調整業務に携わりたい人
特定看護師に向いている人の特徴
  • 医師に近い視点で質の高い医療を提供したい人
  • 自立的かつ積極的に患者さん・家族のサポートを行いたい人

いずれの資格を取得しても、幅広い医療機関で活躍することは可能です。どこで活躍したいか、ではなくどのように活躍したいかを考えたうえで、意向に沿った資格を取得しましょう。また、各資格の認定試験も決して簡単なものではありません。認定試験を受験するための必須条件をクリアしたうえで、合格ラインに到達できるよう日々試験勉強をすることも重要です。

専門看護師・認定看護師を増やすための支援制度

専門看護師・認定看護師を増やすための支援制度

専門看護師・認定看護師になるためには実務経験を積むこと以外に、所定の教育機関における単位の取得や認定審査の合格が必要です。金銭的負担を軽減するには、さまざまな支援制度を活用する方法も考えましょう。

以下では、専門看護師・認定看護師を目指す方が利用できる最新の支援制度を紹介します。
(出典:日本看護協会「専門看護師」
(出典:日本看護協会「認定看護師」

 石橋美和子がん看護CNS奨学金

石橋美和子がん看護CNS奨学金は、より多くの「がん看護専門看護師」を育成するために創設された奨学金です。以下は、2023年度の募集要綱を示します。

対象者 がん看護専門看護師を目指す方
支援金 1人あたり180万円以内
申請期間 2023年4月3日~2023年4月28日

石橋美和子がん看護CNS奨学金に応募するための資格要件詳細は、以下の通りです。

1.保助看法による保健師・助産師又は看護師の免許を有すること

2.看護系大学大学院がん看護専門看護師教育課程又は日本看護系大学協議会によりがん専門看護師教育課程の認定を受けている大学に在籍すること(入学許可も含む)

3.臨床あるいは地域看護の分野に4年以上の実務経験があること

4.がん看護専門看護師登録後、保健医療分野の現場に2年以上就業する意思があること

日本国籍がない場合、在留資格が「法定特別永住者」「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」のいずれかであること

石橋美和子がん看護CNS奨学金で貸与した奨学金は、学費や生活費などの目的に幅広く使用できます。上記の資格要件を満たす方であれば、応募者の居住地域や年齢は問われません。

石橋美和子がん看護CNS奨学金への応募書類は、日本看護協会のホームページで入手できます。以下は、書類の送付から振り込みまでの流れです。

〜4月:応募書類の送付

5月:応募書類の審査

〜5月末頃:貸与者の決定

〜6月中旬:貸与の必要書類を提出

7月末頃:指定口座に振り込み

奨学金の返済は、貸与期間が終了した翌月から見て6か月以内に開始する必要があります。ただし、教育機関の在学中は返済の猶予が可能です。
(出典:日本看護協会「石橋美和子がん看護CNS奨学金」
(出典:日本看護協会「2023年 石橋美和子がん看護CNS奨学金募集案内≪貸与型奨学金≫」
(出典:日本看護協会「奨学金の応募方法」

認定看護師教育課程奨学金

日本看護協会では、さらなる専門性の発揮を目指す看護師を「認定看護師教育課程奨学金」にて支援しています。認定看護師教育課程奨学金は、年齢や所得による制限がなく、年額120万円以内を一括貸与してもらえる奨学金制度であり、学費や生活費など幅広く活用できます。ほかの奨学金と併用可能な点も魅力といえます。

対象者

(1)認定看護師教育課程を受講する看護師

(2)特定行為研修を受講する認定看護師

支援金 1人あたり120万円以内
申請期間 【第1回】2023年4月3日~2023年4月28日
【第2回】2023年8月1日~2023年8月31日

なお、認定看護師教育課程奨学金を貸与するためには、2名の連帯保証人が必要です。連帯保証人との続柄は問われないものの、年金収入のみの方は不可とされる点に注意しましょう。
(出典:日本看護協会「認定看護師教育課程奨学金」
(出典:日本看護協会「2023年度 認定看護師教育課程 奨学金のご案内」
(出典:日本看護協会「奨学金の応募方法」

認定看護師の育成支援金

認定看護師の育成支援金とは、芸能事務所からの寄付金を利用した基金によって運営される制度です。認定看護師の育成支援金は新型コロナウイルス感染症によって医療提供体制が大きく変化する中、質の高い看護ケアを提供できる人材を育成する目的で運営されています。

認定看護師の育成支援金は2021年度から運営されてきたものの、2023年度が最終年です。以下は、2023年度の募集要項を示します。

対象者 2023年度に認定看護師教育課程を受講する看護師で、感染管理認定看護師養成推進事業での助成を受けていない方
支援金 1人あたり30万円
申請期間 【第1回】2023年7月3日~2023年7月14日
【第2回】2023年12月1日~2023年12月14日

2023年度の支援対象者の人数は、第1回228名・第2回120名の年間348名を予定しています。所定の人数を超える方からの応募があった場合には抽選で、対象者を決定するルールです。
(出典:日本看護協会「認定看護師」

まとめ

看護師の数あるキャリアアップ手段のなかでも、代表的なのが専門看護師もしくは認定看護師の資格取得です。しかしこれら以外にも、認定看護管理者・特定看護師といったキャリアアップが見込める資格や制度数々存在します。

専門看護師・認定看護師・認定看護管理者・特定看護師はいずれも活躍の場所はさほど変わりませんが、働き方や特徴は大きく異なります。どこで活躍したいか、ではなくどのように活躍したいかを考えて、最適な資格の取得を目指してください。

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