• 2022年2月28日
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WOCナースとは? 皮膚・排泄ケア認定看護師になるには?

 

「看護師」とひとくちにいっても、その働き方や有している知識・技術によってさまざまな分野が存在することが特徴です。中でも、皮膚・排泄ケアのできる看護師は「WOCナース」とも呼ばれています。

厚生労働省の資料では、WOCナースについて以下のように示されています。

ストーマの造設や褥瘡などの創傷及び失禁に伴って生じる問題に対して、専門的な技術を用いて質の高い看護を提供する看護師

(引用:厚生労働省「皮膚排泄ケア認定看護師の活動について」

WOCナースの役割は多岐にわたり、認定を取得することでスキルアップをはじめとしたあらゆるメリットを受けることが可能です。

そこで今回は、WOCナースの概要や仕事内容から、認定取得のメリット、WOCナースになる方法、やりがいまでを徹底解説します。WOCナースが何か気になっている方や、キャリアチェンジを考えている現役看護師の方は、ぜひ参考にしてください。

WOCナースとは?

WOCナースとは、Wound(創傷)・Ostomy(オストミー)・Continence(失禁)の分野および排泄管理・セルフケア支援に関する高い看護技術をもった看護師のことです。
(出典:一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会事務局「皮膚・排泄ケア認定看護師とは」

1996年に日本看護協会から教育課程が開始された「WOC看護認定看護師(WOCナース)」は、一般の人々からの理解度向上を目的に、2007年7月から「皮膚・排泄ケア認定看護師」に名称が変更されました。

WOCナースが初めて誕生したのは1997年で、そこからWOCナースは毎年増加傾向にあります。2020年12月時点において、全国のWOCナースは2,581人となっています。下記は、2016年から2020年までのWOCナース数の推移です。

2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
2,307人 2,422人 2,489人 2,544人 2,581人
(出典:公益社団法人日本看護協会「分野別都道府県別登録者数(日本地図版)」

高齢化などにより医療従事者の需要が高まっている近年、高い水準の知識をもったWOCナースの需要も高まっています。今後も、WOCナース数は上昇するといえるでしょう。

WOCナースの役割と仕事内容

WOCナースの役割と仕事内容

WOCナースの「W・O・C」は、それぞれ下記のような意味を示しています。

  意味 具体的な役割
W Wound
(創傷)
皮膚トラブルや創傷の発生予防に有用なスキンケアの実施
O

Ostomy
(オストミー・ストーマ)

適切なストーマ装具の選択

ストーマケアの情報提供

ストーマケア上のトラブル予防の実施

C Continence
(失禁)

尿や便失禁の予防・改善に向けた看護ケアの実施

失禁関連皮膚炎の予防・ケアの実施

WOCナースとして活躍する際は、上記の役割をすべて担わなければなりません。ここからは、各ケア内容のより具体的な仕事内容について紹介します。

W=創傷

WOCナースは、Wound(創傷)の分野において、スキントラブルや創傷の発生予防を目的とした、トラブルケア・スキンケアの実施を行います。

高齢者や、何らかの病気・疾患によって体を自由に動かすことができなくなった患者さんは、同じ姿勢で過ごすことによって血流障がいが起こり発生する「床ずれ(褥瘡)」や、皮膚の摩擦によって皮膚が裂ける「スキンテア(皮膚裂傷)」などが起こりやすくなります。

WOCナースは、これらの症状を防ぐべく活動状況に適したマットレスを選択したり適切なスキンケア用品を選択したりして、一人ひとりにあわせた予防・ケアを実施することが主な業務内容です。
(出典:一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会事務局「皮膚・排泄ケア認定看護師とは」
(出典:一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会事務局「創傷ケアについて」

O=ストーマ

WOCナースは、Ostomy(オストミー)の分野において、ストーマに関する情報提供やストーマケア上のトラブル予防の実施を行います。

お腹の形やストーマの形は、人それぞれ異なります。ストーマ装具から尿や便が漏れるケースは決して珍しくなく、人によっては不安に感じることもあります。また、ストーマ周辺の皮膚はかぶれやすくなっており、スキンテア(皮膚裂傷)につながるおそれもあるでしょう。

WOCナースは、このような不安を抱えた患者さんに対し、情報を提供したり、日常生活におけるアドバイス・サポートを行います。ストーマ造設手術を控えている患者さんには、適切な装具を選択したり、管理に困らないようなストーマの位置決めを医師と相談しながら行うこともあります。

ストーマ周辺の皮膚のかぶれに対しても、原因を調査し、その原因を取り除くための対処法を見つけることは、WOCナースの重要な仕事です。
(出典:一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会事務局「皮膚・排泄ケア認定看護師とは」
(出典:一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会事務局「ストーマケアについて」

C=失禁

WOCナースは、Continence(失禁)の分野において、尿や便失禁の予防・改善に向けたケアや、失禁関連皮膚炎の予防・ケアを実施します。

人間は、加齢だけでなく何らかの病気や手術によっても尿や便失禁が起こりやすくなります。また度重なる失禁で排泄物が皮膚に接触することにより、皮膚炎(かぶれなど)も起こりやすくなってしまいます。

WOCナースは、尿や便失禁が見られる患者さんに対し、適切な用品を選択したり、日常生活におけるアドバイス・サポートを行うことが基本です。また、失禁関連の皮膚炎を予防

改善するための方法を見つけ出し、実施することも欠かせません。
(出典:一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会事務局「皮膚・排泄ケア認定看護師とは」
(出典:一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会事務局「失禁ケアについて」

WOCナースの認定を取得するメリット

WOCナースの認定を取得するメリット

WOCナースの認定(皮膚・排泄ケア認定看護師)を取得することには、スキル面だけでなく給与面でも恩恵があります。求人先によっては、WOCナースを必要としているケースもあるため、転職を考えている看護師の方も認定の取得を前向きに検討するとよいでしょう。

では、WOCナースの認定取得で具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここからは、WOCナースの認定取得で得られるメリットを3つ紹介します。

スキルアップが図れる

WOCナースをはじめとした認定看護師となることには、一般的な看護師の方よりも高度な知識とケア技術が身につくことから、スキルアップが図れるというメリットがあります。

特に、皮膚や排泄におけるケアは、どのような診療科の患者さんでも必要となるケアです。そのため、WOCナースは自分が配属している診療科のみならず、ほかの診療科からも頼りにされる可能性があるでしょう。

スキルアップを図ることで、ほかのスタッフの教育を任されたり、病院全体における看護の質の向上にも携わったりできるため、給与の高い管理職への昇進もしやすくなります。

収入アップが期待できる

公益社団法人日本看護協会が2012年・2015年に発表したデータによると、認定看護師の賃金処遇環境を整備していない病院は54.8%(※1)でした。しかし、裏を返せば認定看護師の賃金処遇環境を整備している病院は約45%と、半数程度の病院が認定看護師に対して賃金の優遇を行っていることが分かります。また、賃金処遇改善の整備による認定看護師への手当額は平均11,006円/月(※2)となっています。
(※1 出典:公益社団法人日本看護協会「2012 年 病院勤務の看護職の賃金に関する調査」
(※2 出典:公益社団法人日本看護協会「看護職の賃金 処遇の現状と改善に向けたポイント」

このように、認定看護師・専門看護師の認定取得で収入アップは大いに期待できます。職場によっては、WOCナースの賞与(ボーナス)も一般の看護師の方より高く設定しているケースもあるでしょう。なお、当データは2012~2015年の調査であり、高齢化が進み認定看護師の需要がより高まった現在では、賃金優遇を取り入れている病院が増加している可能性もあります。

転職時に有利になる

そもそも看護師は全国で需要の高い職業となっていますが、高度な知識・スキルを有した認定看護師は、さらに多くの医療施設が求めています。また、皮膚・排泄ケアのプロフェッショナルであるWOCナースは医療施設だけでなく、介護福祉施設(老人ホーム・訪問看護ステーション)などからの需要も高まっており、あらゆるフィールドで活躍できる職業です。

そのためWOCナースは転職も非常に有利となり、希望の施設で採用されやすくなるだけでなく、一般的な看護師の方よりもよい待遇で働き始めることができる点も魅力といえます。

WOCナースになるには?

WOCナースになるために勉強している女性

WOCナース(皮膚・排泄ケア認定看護師)になるには、認定看護師の教育機関でのカリキュラムを修了したうえで、審査を受ける必要があります。WOCナースになるための主な流れは、下記の通りです。

STEP1 教育機関の入学要件を満たす
STEP2 認定看護師の教育機関に入学する
STEP3 皮膚・排泄ケア認定看護師の認定審査を受ける
STEP4 皮膚・排泄ケア認定看護師として登録する

ここからは、WOCナースになるための方法をSTEP1から分けて徹底解説します。

STEP1:教育機関の入学要件を満たす

まず、WOCナースの認定を取得するためには、国内の看護師免許を取得したうえで、実務研修を通算5年以上(うち3年以上は皮膚・排泄ケア分野の実務研修)受けなければなりません。認定看護師の教育機関に入学するためには、上記の条件を満たす必要があります。

しかし、看護師免許の取得・通算5年以上の実務研修の条件を満たしていれば、誰もが教育機関に入学できるわけではありません。

日本看護協会では、A課程・B課程の2パターンの教育課程で認定看護師教育を実施しています。A課程とB課程における実務研修内容の基準も入学要件の1つとなっているため、注意してください。それぞれの実施研修内容の基準は下記の通りです。

課程 実施研修内容の基準
A課程
  • 外科系領域もしくはストーマケアを実施する施設での看護実績を通算3年以上有している
  • 特定認定看護分野の実績を有している
    (ストーマ造設患者の看護:1例以上/創傷もしくは失禁ケア分野の看護:4例以上)
  • ストーマ・創傷・失禁ケアを行う施設で現在勤務している
    ※必須ではないが、望ましい
B課程
  • 皮膚・排泄ケア領域における看護実績を通算3年以上有している
  • 特定認定看護分野の実績を有している
    (皮膚・排泄ケア領域の看護:5例以上(うち創傷・ストーマ・排泄管理の実績を1例以上含む))
  • 皮膚・排泄ケア領域を行う施設で現在勤務している
    ※必須ではないが、望ましい
(出典:公益社団法人日本看護協会「認定看護師」

STEP2:認定看護師の教育機関に入学する

看護師免許の取得・通算5年以上の実務研修経験に加え、A課程・B課程いずれかの実施研修内容の基準を満たせば、認定看護師の教育機関に入学して認定プログラムを受けることが可能です。 また、STEP1で教育機関にはA課程・B課程の2パターンがあると説明しました。入学の際は、いずれかの課程を選ぶ必要があります。A課程・B課程はそれぞれ、受講時間や教育機関などにおいて違いがあることに注意してください。下記は、2021年度におけるA課程・B課程の受講時間・教育機関・開講期間です。

  A課程 B課程
受講時間 645時間~ 808時間
教育機関
  • 北海道医療大学 認定看護師研究センター(休講)
  • 京都橘大学 看護教育研修センター(休講)
  • 福岡県看護協会
  • 日本看護協会 看護研修学
  • 静岡県立静岡がんセンター 認定看護師教育課程
開講期間 8か月 12か月

上記を見て分かるように、すべての都道府県に教育機関が設置されているわけではないうえ、A課程・B課程によっても教育機関や開講期間は異なります。なお、各教育機関で定員数も定められており、年度によっては受け入れが終了していたり、何らかの理由で休講となったりするケースがあることにも注意してください。

なお、A課程認定看護師の教育機関のカリキュラムを修了した方に対する認定審査は2029年度をもって終了する予定です。
(出典:公益社団法人日本看護協会「認定看護師」

STEP3:皮膚・排泄ケア認定看護師の認定審査を受ける

認定看護師の教育機関に入学し、必要なカリキュラムを修了したら、皮膚・排泄ケア認定看護師の認定審査を受けます。日本看護協会では、「認定看護師認定審査」を毎年1回実施しています。認定看護師審査の申請方法は、下記の通りです。

認定看護師審査の申請方法

(1)「資格認定制度 審査・申請システム」からWeb申請を行う

(2)審査料(税込51,700円)を振り込む

(3)必要書類を提出する

認定看護師認定審査では、四肢択一・マークシート方式の筆記試験(100分間)が実施されます。審査の合否はWeb申請を行う「資格認定制度 審査・申請システム」にて2週間後程度に個別発表されるため、随時確認しましょう。
(出典:公益社団法人日本看護協会「認定看護師」
(出典:公益社団法人日本看護協会「審査に関するご案内 認定看護師」

STEP4:皮膚・排泄ケア認定看護師として登録する

「資格認定制度 審査・申請システム」にて審査合格が分かったら、皮膚・排泄ケア認定看護師の登録手続きを行います。登録手続きは、そのまま「資格認定制度 審査・申請システム」のページから行うことが可能です。

皮膚・排泄ケア認定看護師として登録したら、名簿に名前が登録されることとなります。このとき、A課程・B課程の合格者で登録分野が異なる点にも注意してください。B課程での合格者はB課程認定看護師名簿に登録され、「特定認定看護師」と名乗れます。

また、皮膚・排泄ケア認定看護師を含む認定看護師は、レベル保持のため取得後5年ごとに更新する必要があります。更新時の手続きも資格認定制度 審査・申請システムから行い、必要となる審査書類を提出しましょう。なお、更新審査料は30,800円です。
(出典:公益社団法人日本看護協会「認定看護師」
(出典:公益社団法人日本看護協会「審査に関するご案内 認定看護師」

WOCナースになれる教育機関に入学するには?

WOCナースになれる教育機関に入学するには?

前述の通り、WOCナースになるには皮膚・排泄ケア認定看護師の教育課程を開講している教育機関に入学する必要があります。教育機関の一般的な試験スケジュールについては、下記を参考にしてください。

願書受付期間 教育期間の前年度9月上旬から10月上旬まで
試験日 教育期間の前年度11月ごろ
試験方法 筆記試験・個別面接
合格発表日 試験日より約1か月後

上記はあくまでも一般的な例であり、教育機関によって要項はやや異なる可能性があることを覚えておきましょう。

教育機関の入学にあたって必要になる費用

教育機関への入学にあたって、入学検定料や入学金、さらに授業料(学費)などが必要となります。各費用項目の平均額は下記の通りです。

入学検定料 約50,000円
入学金 50,000~150,000円
授業料(学費) 850,000~1,050,000円

授業料(学費)は、定められている金額のほか、タブレットPC・書籍代や実習先への交通費なども別途発生します。また、すでに特定研修を修了している方の場合は、所定の手続きを行うことで一部授業料の免除が適用されます。

各費用項目には納付期限が定められているため、納付漏れのないよう注意してください。

WOCナースの主な就職先

WOCナースの主な就職先、病院

WOCナースは、医療施設だけでなく、老人ホームや訪問看護ステーションなどの介護福祉施設でも活躍することが可能です。日本看護協会が発表している「分野別所属先素別登録者数一覧」データでは、2021年3月時点におけるWOCナースの主な就職先が分かります。下記は、特にWOCナースの就業者数が多い就職先です。

就職先 登録者数 割合
病院 2,300人 約88.8%
訪問看護ステーション 76人 約2.9%
学校・大学 35人 約1.3%
(出典:公益社団法人日本看護協会「認定看護師」

WOCナースの就職先としては圧倒的に病院が占めているものの、訪問看護ステーションといった介護福祉施設だけでなく学校・大学などの教育機関・公共施設でも活躍することができます。

また、就職先によってWOCナースの働き方がやや異なる点も特徴です。ストーマ外来のある病院で勤務する場合は、主にオストミー領域の業務をメインにこなします。一方で、訪問看護ステーションなどの介護福祉施設で勤務する場合は、皮膚・排泄ケア領域だけでなく介護領域にも携わる可能性があります。

WOCナースとして得られるやりがい

WOCナースとして得られるやりがい

WOCナースは、厳しい審査や実務研修を経てなることのできる認定看護師です。看護の質の高さを証明できるれっきとした認定資格であり、高齢化が進み、高度な医学的知識とスキルをもつ医療従事者・ケアスタッフの需要が高まっている現在、あらゆる業界においてWOCナースの需要は右肩上がりとなっています。

WOCナースの存在は、ケアやサポートを受ける患者さんや介護施設の利用者本人はもちろん、その家族にとっても頼もしい存在となります。患者さん・利用者やその家族から頼りにされ、「ありがとう」と伝えられることは、かけがえのないやりがいを実感できるでしょう。

まとめ

WOCナースは、Wound(創傷)・Ostomy(オストミー)・Continence(失禁)の分野および排泄管理・セルフケア支援に関する高い看護技術をもった看護師のことです。現在では「皮膚・排泄ケア認定看護師」と呼ばれており、登録者数は毎年増加傾向にあります。

病院だけでなく介護施設や学校などあらゆるフィールドで活躍することが可能であることから、WOCナースの求人も幅広い施設から出されています。WOCナースを目指す方は、働きながら認定資格の取得を目指せる職場への転職も検討してみてはいかがでしょうか。

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