公認心理師の年収は?
  • 2022年1月26日
  • 2024年4月19日

公認心理師の年収は? 臨床心理士との違いや収入アップの方法を紹介

 

近年、日本ではメンタルヘルスの不調を訴える人が増加しており、心理職のニーズが高まっています。

公認心理師は、心理的な問題の解消や心理支援を目的として誕生した国家資格です。
この記事では、公認心理師の年収を勤務先の分野・雇用形態・経験年数に分けて解説しています。さらに、公認心理師の将来性や年収アップをめざす方法も紹介しているため、心理職の方はぜひ参考にしてください。

公認心理師とは?

公認心理師は、2017年9月施行の公認心理師法で定められた「日本初の心理職に関する国家資格」のことです。公認心理師は心理学に関する専門性の高い知識や技術を持ち、助言や指導、援助などを行います。

公認心理師国家試験は2018年に第1回目が実施されています。以降毎年実施されており、2024年3月には第7回公認心理師試験が実施され、2,089人が受験しました。

参照元:厚生労働省「第7回公認心理師国家試験(令和6年3月3日実施)合格発表について」

公認心理師が活躍する場所

公認心理師は、あらゆる分野で活躍しています。具体的な分野と施設例は、以下のとおりです。

保健医療分野 ・精神保健福祉センター
・保健所、保健センター
・精神科を主とする病院や診療所
・介護老人保健施設 
福祉分野 ・児童相談所包括支援センター
・児童福祉施設(児童養護施設・放課後等デイサービスなど)
・障害福祉分野の相談支援や通所機関
・高齢者福祉分野の相談支援機関、通所施設、入所施設
教育分野 ・公立教育相談機関や教育委員会
・小学校、中学校、高等学校、大学
・特別支援学校
司法・犯罪分野 ・警察関係
・裁判所関係
・法務省矯正局関係(少年鑑別所・少年院・刑事施設など)
・法務省保護局関係(保護観察所・地方更生保護委員会など)
産業・労働分野 ・組織内の健康管理相談室
・組織外で労働者の心理支援を行う健康管理相談室
・障害者職業センター、生活支援センター
その他 ・私設心理相談室
・大学や研究所
・国または地方公共団体の心理支援施設

日本心理研修センター「令和5年度公認心理師活動状況等調査」によると、保健医療分野・福祉分野・教育分野で活躍する公認心理師が半数以上を占めています。

参照元:日本心理研修センター「令和5年度公認心理師活動状況等調査」報告書

臨床心理士との違い

公認心理師と似た資格として、「臨床心理士」が挙げられます。臨床心理士は1988年に誕生した、公益財団法人の日本臨床心理士資格認定協会が認定する「心理に関する民間資格」です。公認心理師法が成立するまでは、心理に関する事実上の公認資格とされていました。

公認心理師との違いは以下のとおりです。

公認心理師 臨床心理士
資格 国家資格 民間資格
受験資格 4年制大学の卒業+指定大学院の修了 指定大学院の修了
資格更新制度 あり(5年) なし
仕事内容 ①心理状態の観察・分析
②対象者への指導・助言・援助
③関係者への指導・助言・援助
④心の健康に関する教育・情報提供
①対象者に対する援助方法の解明
②問題解決に資する心理支援
③地域住民や団体に属する人々に向けた支援活動
④臨床心理的調査・研究活動

「対象者の心理的問題を分析し、対象者および周囲の人への支援を行う」という点で、両者の仕事内容に大きな違いはありません。
異なるのは、心理に関する「教育・情報提供をするか」「調査・研究をするか」という点です。公認心理師が「心の健康に関する教育・情報提供」を行うのに対し、臨床心理士は「臨床心理的調査・研究活動」を行います。

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公認心理師の年収

厚生労働省が発表したデータによると、年収300万〜400万円程度を得ている公認心理師の割合がもっとも多くなっています。

とはいえ、働く場所や雇用形態、経験年数によって公認心理師の年収はさまざまです。以下では、分野・雇用形態・経験年数別の年収のほか、多職種との年収の違いについて解説します。

分野別の年収の違い

公認心理師の年収は、働く分野によって多少の差があります。

分野 割合が最も高かった年収
保健医療 350万~400万円
福祉 300万~400万円
教育 300万~400万円
司法・犯罪 500万~600万円
産業・労働 400万~500万円
その他 1,000万円~

保健医療・福祉・教育分野で働く公認心理師の一般的な年収は、約300万~400万円です。司法・犯罪分野は少し高く、約500万~600万円でした。

なお、その他の分野では、約1,000万円を超える年収を得ている公認心理師がもっとも多い結果となっています。具体的な職場は大学・研究所であり、幅広い知識や技術をもって活躍していることが伺えます。

雇用形態による年収の違い

公認心理師は、非常勤として働く人が多い傾向にあります。

常勤と非常勤では、年収が大きく異なります。以下は、常勤および非常勤における割合が最も高かった年収額です。

常勤 非常勤
400万~500万円 200万~300万円

常勤公認心理師の一般的な年収は、400万~500万円でした。一方で、非常勤公認心理師は200万~300万円と、常勤公認心理師と比べてやや低くなります。

経験年数による年収の違い

公認心理師は、経験年数によっても年収に差が生まれます。経験年数が10年未満の公認心理師と、10年以上の公認心理師とでは、年収に下記のような違いがありました。

経験年数 割合が最も高かった年収
10年未満 300万~400万円
10年以上 400万~500万円

上記のように、経験年数が10年あるかないかで、年収は100万円以上異なります。ただし、年収を左右するのは経験年数だけではありません。その人の経験やスキルも年収に影響します。

他職種との年収の違い

厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」によると、その他医療系職種の年収は以下のとおりです。

職種 年収
看護師 508万1,700円
准看護師 407万1,100円
保健師 451万0,500円
リハビリテーション職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士) 432万5,200円

公認心理師の平均年収が約300万~400万円なのに対し、その他医療系職種の平均年収は400万円以上です。公認心理師の平均給与は、その他医療系職種と比較してやや低い傾向にあるといえるでしょう。

参照元:
厚生労働省「公認心理師の活動状況等に関する調査」
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

公認心理師の年収が低い理由

公認心理師の平均的な年収が低い理由として、主に以下の3つが挙げられます。

新しい国家資格で現場に浸透していない

公認心理師は2018年に誕生した国家資格です。資格が創設されてから5年ほどと歴史は浅め。年々資格保有者は増え、認知度も高まっていますが、現場に浸透していないのが現状です。需要を獲得できていないことが、 年収の低さに繋がっていると考えられます。

業務独占資格・必置資格ではない

公認心理師は、業務独占資格・必置資格ではありません。たとえば、医療行為は医師の資格を保持する人しか行えませんが、公認心理師しか行えない業務はないのが現状です。臨床心理士といったほかの心理職と同じ業務を行っており、需要が高まりづらいことが、年収アップを妨げる要因となっています。

収益性が実証されていない

メンタルヘルス問題が取り沙汰されている近年、公認心理師の存在は徐々に認識され始めているものの、職場によっては「公認心理師を拡充しても、収益につながるのか」といった疑問はまだまだ残っています。新たな資格であることから、収益性が実証されていないことも、公認心理師の年収が低くなっている要因といえます。

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公認心理師が年収アップをめざす方法

公認心理師が確実な年収アップをめざすには、キャリアアップを見据えた働き方をすることが大切です。

幅広い就職先を視野に入れ経験を積む

心の健康を保つことが重要とされている近年、公認心理師の主な活躍の場である医療機関以外でも心理職の需要が高まっています。

福祉分野や教育分野、司法・犯罪分野など、あらゆる業界で多くの経験を積むことで、想定されるさまざまな場面にスムーズに対応できるようになります。また、ほかの公認心理師にはない得意分野をつくることで、転職も有利となるでしょう。

開業する

公認心理師は、「心理カウンセラー」として独立・開業することが可能です。国家資格を保持した心理カウンセラーは、お客様からも信頼されやすくなります

心理カウンセラーとして開業するメリット・デメリットは、下記の通りです。

メリット デメリット
・比較的自由な時間に働ける
・年収の限界がなくなる
・ランニングコストが比較的少ない
・集客から事務作業まで、経営に関するすべての業務を行う必要がある
・認知度を高めたうえで集客をしなければ売上が不安定になりやすい

開業をすると、サービス内容・提供方法・勤務時間などを自由に決められます。そのため、プライベートを大事にしたいと考えている方にはぴったりの働き方といえるでしょう。

一方で、経営に関するすべての業務を担わなければならない点や、集客がうまくいかない場合のリスクが大きい点はデメリットといえます。

関連資格を取得する

公認心理師は関連資格の取得をすると、さらなるキャリアアップ・スキルアップにつながる可能性があります。特におすすめの関連資格は、以下のとおりです。

臨床心理士

公認心理師と臨床心理士は、いずれも心理学に関する代表的な資格であり、共通点が多いことが特徴です。臨床心理士は公認心理師が誕生する前から存在していた資格のため、認知度が高め。
公認心理師と臨床心理士のダブルライセンスの場合は、いずれか一方の資格取得者よりもさらに幅広い知識を持っている人とみなされます。

福祉心理士

福祉心理士は、日本福祉心理学会が認める民間資格です。主に福祉サービスの利用者に向けたアセスメントや心理相談、支援を行っています。
公認心理師と福祉心理士のダブルライセンスであれば、「福祉領域の専門知識も有した心理職」として信頼されやすくなり、福祉分野へのキャリアアップや転職が有利になるでしょう。

精神保健福祉士

精神保健福祉士は、精神保健福祉士法で定められた国家資格です。精神科領域を担当するソーシャルワーカーとして、精神科病院や社会復帰の促進を図る施設にいる人に助言や指導、日常生活への適応のために必要な訓練といった援助を行います。

公認心理師と精神保健福祉士のダブルライセンスの方は、保健医療分野や福祉分野でキャリアアップや転職が有利になるでしょう。

公認心理師の将来性

資格ができた当初は認知度が高いとは言い難かった公認心理師ですが、注目度は徐々に高まっています。

日本国内の精神疾患を有する総患者数は約419.3万で、年々増加しています。また、自殺者数は毎年2万人以上で、多くの人がメンタルヘルスケアを必要としている状態です。

近年はAI技術の発達により業務の自動化が進んでいますが、人々の感情・心理を扱う業務は人にしか行えません。公認心理師は感情・心理を扱う唯一の国家資格であり、ニーズは今後さらに高まり続けると想定されます。

参照元:
厚生労働省「精神疾患を有する総患者数の推移」
警察庁「令和5年中における自殺の状況」

まとめ

公認心理師は心理職初の国家資格です。誕生して間もない資格であるものの、徐々に認知度が高まっています。

公認心理師の平均的な年収は、300万~400万円です。しかし、携わる分野や働き方によって収入は異なり、なかには年収1,000万円を超える公認心理師もいます。

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