• 2021年12月27日
  • 2023年4月14日

プライマリーナースとは? 役割およびメリット・デメリットを紹介

 

多くの患者さんに対して適切な医療を提供するために、各病院ではあらゆる看護方式を採用しています。数ある看護方式の中でも、代表的なものが「プライマリーナース」です。

この記事では、代表的な看護方式のプライマリーナースの概要やメリット・デメリット、向いている人・向いていない人を解説します。加えて、プライマリーナース以外の看護方式や看護師のキャリアプラン例も紹介するため、キャリアアップを目指す看護師はぜひ参考にしてください。

プライマリーナースとは?

プライマリーナースとは、1人の看護師が1人の患者さんの入院から退院までの生活を一貫して受け持つ看護師のことです。1人の患者さんを1人の看護師が一貫して担当する看護方式のことを、「プライマリーナーシング」と呼びます。

近年では、プライマリ・ケアを実践できる人材の育成が注目されています。実際に2016年に行われた「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」では、「地域で総合診療医とともに活躍できる「プライマリ・ケア・エキスパートナーズ」の育成」についての議論も挙げられました。

三重県では三重県プライマリ・ケアセンターを設置し、「プライマリ・ケア・エキスパートナーズ」の認証を受けた看護師も多くいます。

参照元:
厚生労働省「2016年11月24日 第4回 新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」
厚生労働省「三重県プライマリ・ケアセンター」

プライマリーナースの役割

プライマリーナースの役割

患者さんの入院から退院までのすべてを担当・サポートするプライマリーナースには、「看護計画の立案」「看護の実施」「看護計画の評価」の役割があります。

看護計画の立案

患者さんの入院が決定すると、プライマリーナーシングを担当する看護師(プライマリーナース)は、患者さんの状態に適した看護計画を立案します。24時間看護が必要な病院では、担当が不在でもほかの看護師が受け持ちの患者さんに対応できるよう、立案した看護計画を共有します。

看護の実施

日々の看護は、担当看護師自身が立案した看護方針と看護内容に則って行います。プライマリーナースは患者さん一人ひとりに丁寧な医療を提供するため、担当する患者さんは多くても5人程度です。

プライマリーナースが不在のときは、代わりの看護師が患者対応を行います。プライマリーナースの代わりを担うナースのことを、「アソシエイトナース」と呼びます。プライマリーナースは、アソシエイトナースが業務をスムーズに行えるように定期的に患者さんの情報を共有するのです。

看護計画の評価

プライマリーナーシング中は、週1回・月1回など定期的に看護計画の評価や見直しを行うのが基本です。患者さんの状態と看護計画の内容、さらに日々の記録や申し送りの情報をもとに判断し、患者さんの退院後は看護計画の最終評価を行います。

プライマリーナースのメリット・デメリット

プライマリーナースのメリット・デメリット

プライマリーナースが行う看護は人間関係が構築しやすく患者さんの安心感につながる反面、患者さんと相性の問題があったり、看護に質の差が出やすかったりなどのデメリットもあります。
プライマリーナースのメリット・デメリットを、以下で詳しく解説します。

メリット

プライマリーナースが行う看護のメリットは、以下のとおりです。

  • 1人の患者さんの入院から退院までを見届けられる
  • 患者さんとの信頼関係を築き上げやすい
  • 患者さんの安心感につながる
  • 責任の所在が明確となり業務を進めやすい

プライマリーナースは1人の患者さんをサポートし続けるため、責任感ややりがいが生まれやすいといえます。人間関係を構築しやすいので、より患者さんに寄り添った看護を実現できるでしょう。
同じ看護師が一貫して診るため、患者さんの安心感にもつながります。

デメリット

プライマリーナースが行う看護のデメリットは、以下のとおりです。

  • 看護師と患者さんの相性が関わりやすさに影響する
  • トラブル時の人間関係による影響が出やすい
  • 提供する医療・看護の質に差が出やすい

プライマリーナースは責任をもって患者さんを診られる一方で、患者さんとの相性が悪いと関わりづらかったり、クレームを受けやすくなったりします。また、患者さんの病状によっては、一部のプライマリーナースに業務負担が集中しやすいでしょう。
患者さん目線でのデメリットとしては、医療・看護の質に差が出やすい点が挙げられます。

プライマリーナースに向いている人・向いていない人

プライマリーナースに向いている人

プライマリーナーシングは特徴のある看護方式であることから、向いている人・向いていない人の特徴が少なからずあります。プライマリーナースに向いている人・向いていない人の特徴は以下のとおりです。

向いている人

1人の患者さんにじっくりと寄り添った看護を提供したい人は、プライマリーナースに向いているといえます。

プライマリーナーシングをやり遂げるには、患者さんの入院から退院までの間、細かな状況変化をチェックしながら適切な対応を行わなければなりません。そのため、看護過程の最後まで責任をもって、1人の患者さんに寄り添える人がプライマリーナースに向いています。

向いていない人

看護師としての経験が浅く、コミュニケーション能力に自信がない人は、プライマリーナースになるのは難しいといえます。

チームで行う看護体制の場合、わからないことがあってもチームスタッフに聞けば簡単に答えを得られます。しかし、プライマリーナースは1人で患者さんの対応をしなければなりません。そのため、経験の浅い新人看護師にとっては、難易度が高いといえます。

また、患者さんとコミュニケーションをとったうえで関係性を構築しなければならないので、コミュニケーション能力に絶対的な自信がないという人も難しいでしょう。

プライマリーナース以外の看護方式

プライマリーナース以外の看護方式、(チームナーシング)

プライマリーナース以外に、以下の看護方式があります。

  • チームナーシング
  • モジュールナーシング
  • 固定チームナーシング
  • パートナーシップ・ナーシング・システム
  • セル看護提供方式

自身に合った看護方式を知るには、各看護方式に関する知識を得ておくことが大切です。ここからは、プライマリーナース以外の看護方式を紹介します。

チームナーシング

チームナーシングとは、1人の患者さんが入院してから退院するまでの看護をチームで行う看護方式です。一定水準の看護を提供することを目的として、アメリカで開発されました。

チームナーシングではリーダーとなる看護師を1人定め、そのほかの看護師がメンバーとして患者さんに日々の看護を行います。メンバーの担当が定期的に入れ替わる点や、看護の質はリーダーの采配によってコントロールされることも特徴です。

チームナーシングのメリット
  • 患者さんに対して一定の質で看護を提供できる
  • 各看護師の知識を集約して看護を提供できる
  • 経験の浅い新人看護師の効率的な成長が期待できる
チームナーシングのデメリット
  • 患者さんの情報共有を徹底する必要がある
  • 一部メンバーの業務負担が重くなる

チームナーシングを適切に行うには、チーム全体での細かな情報共有が不可欠です。

モジュールナーシング

モジュールナーシングとは、1つの病棟の看護師を2つ以上のチームに分割し、そのメンバーをさらに数名ずつの単位(モジュール)に分けて、一定数の患者さんの入院から退院までを担当する看護方式です。プライマリーナーシングとチームナーシングの魅力をそれぞれ取り入れて開発された、日本独自の看護方式です。

モジュールナーシングはチームナーシングよりも1人の患者さんに集中でき、プライマリーナーシングよりも看護師1人あたりの業務負担量を減らすことができます。

モジュールナーシングのメリット
  • 患者さんに対して一定の質で看護を提供できる
  • 各看護師の知識を集約して看護を提供できる
  • 個々の患者さんに適した看護計画を立案できる
モジュールナーシングのデメリット
  • モジュール外の看護師とのコミュニケーション・連携が不足する
  • プライマリーナーシングに比べて看護師の責任感が生まれにくい

プライマリーナーシングとチームナーシングの魅力をそれぞれ取り入れたモジュラーナーシングは、チーム医療という観点においてメリットの多い看護方式です。しかし、個々の看護師の観点では責任の所在があいまいになるなどのデメリットもあります。

固定チームナーシング

固定チームナーシングとは、一定期間、リーダー・メンバーを固定するチームナーシングです。臨床看護をチーム制で提供するという考えをもとに開発されました。

1人の患者さんに1人の担当看護師が付くという点は、プライマリーナーシングと似たような特徴といえるでしょう。しかし、固定チームナーシングではチームで看護を提供するため、担当看護師が不在の場合もチーム内の看護師が結束して患者さんをサポートできます。

固定チームナーシングのメリット
  • 担当看護師が明確なため、患者さんとの関係性を構築しやすい
  • 担当看護師が不在でも、看護の質を一定に保てる
  • 入れ替わりがないため業務を進めやすい
固定チームナーシングのデメリット
  • メンバー内の看護師が途中で退職した場合、業務負担が分散される
  • ほかの患者さんを担当しないため、幅広い知識の習得が期待できない

固定チームナーシングも、プライマリーナーシングとチームナーシングの魅力が取り入れられた看護方式といえます。しかし、入れ替わりがないことによるデメリットが生じるため、バックアップ体制を構築することが重要です。

パートナーシップ・ナーシング・システム

パートナーシップ・ナーシング・システムとは、2人の看護師がパートナーシップとなり複数の患者さんに看護を提供する看護方式です。頭文字をとって「PNS」と呼ばれることもあります。パートナーシップ・ナーシング・システムのみを看護方式として採用する病院は少なく、ほかの看護方式と組み合わせるのが基本です。

ペアとなる看護師は「新人看護師×ベテラン看護師」「准看護師×認定看護師」など、それぞれ異なる特性を持っており、お互いの特性を活かして能力を補完し合いながら日々の仕事を進めます。

パートナーシップ・ナーシング・システムのメリット
  • プライマリーナーシングに比べて業務負担が少ない
  • パートナーから刺激が得られ、成長に結び付く
  • 経験の浅い看護師はインシデントを防げる
パートナーシップ・ナーシング・システムのデメリット
  • 責任の所在があいまいになりやすい
  • 経験の浅い看護師はベテラン看護師へ意見を主張しづら

パートナーシップ・ナーシング・システムは、特性の異なる看護師がパートナーシップとなることから双方に成長が見込めるのが魅力です。しかし、責任の所在が曖昧になったり、経験の浅い看護師がベテラン看護師に意見を主張しにくかったりするデメリットもあります。

セル看護提供方式

セル看護提供方式とは、1つの病室に対して数名の看護師がチームとなり、看護業務を担当する看護方式です。受け持ち看護師の業務の「無駄」を取り除き、患者さんの近くで看護業務に専念することを目的に日本で開発されました。

病室を単位として看護業務を進めるため、看護師にとっては動線の無駄を省け、生産性の向上につながるといわれています。まだ代表的な看護方式ではありませんが、働き方改革が重要視されている近年では、セル看護提供方式を採用する病院も増加傾向にあります。

セル看護提供方式のメリット
  • 患者さんの細かな病状変化に気付きやすく早期のケアにつながる
  • 動線の無駄を省け、業務効率化や生産性向上につながる
セル看護提供方式のデメリット
  • 緊急処置などが起きた場合は業務量に差が出る

セル看護提供方式は病室に複数の看護師を配置するので、患者さんが安心感を得やすく、クレームを防げるという隠れたメリットも存在します。ナースコール対応や残業も減ることから、業務改善という面でも恩恵を受けられます。

プライマリーナースの経験を活かす看護師のキャリアプラン

プライマリーナースの女性

幅広い知識を得られるプライマリーナースの経験がある看護師は、重宝される傾向にあります。1年目からプライマリーナースの経験をしっかりと積むことができれば、看護師としてのキャリアプランを明確に描けるでしょう。

以下では、看護師のキャリアプラン例を「1~2年目」「3~5年目「5年目以降」に分けて紹介します。

【1~2年目】看護師としての基本を身につける

1~2年目の看護師は、まずは基本的な知識や果たすべき役割などを把握することが重要です。まだまだ「新人看護師」と類される勤続年数となるため、自身の立場を把握したうえで、何をするべきか、どのような知識を得るべきかを考えて行動しましょう。

また、基礎知識を身につけるだけでなく、今後入ってくる新人看護師の育成を担うことも想定し、少しずつ周囲からの信頼を得ることも求められます。責任感を持つのはもちろん、看護師長や先輩看護師からのアドバイスを素直に聞き入れることも重要です。

【3~5年目】リーダーとして活躍する

3~5年目は、リーダーとして周囲を引っ張ることもあるでしょう。リーダーになると日々の看護業務に加え、新人看護師の相談を聞きながら教育・育成したりチームが抱える問題の解決策を練ったりします。

また、これまでの経験を活かして何らかの専門性を身につけ、さらなる成長を目指す時期でもあります。リーダーとして活躍しながら、今後のキャリアプランや方向性について考え始めると良いでしょう。

【5年目以降】自身の適性に合う道を選ぶ

5年目以降は、「スペシャリスト」「ジェネラリスト」のいずれかの道に進んでいくこととなります。

スペシャリストとは、「認定看護師」や「専門看護師」といった資格を取得したうえで、特定専門分野で質の高い看護を提供する看護師を指します。一方のジェネラリストは、分野を問わず幅広い領域で臨機応変に質の高い看護を提供する看護師を指します。

病院によって異なるものの、スペシャリストとジェネラリストとでは働き方や業務の進め方が大きく異なるのが一般的です。どちらが自身に合うのか、経験を振り返って考えてみると良いでしょう。

まとめ

プライマリーナースとは、1人の患者さんの入院から退院までの生活を一貫して受け持つ看護師のことです。1人の患者さんを1人の看護師が一貫して担当する看護方式のことを、「プライマリーナーシング」といいます。

1人の患者さんに看護サービスを提供するため、責任感ややりがいを感じられやすいというメリットがある反面、看護の質に差が出やすいなどのデメリットもあります。1人の患者さんに寄り添いたいという看護師は、プライマリーナーシングが向いているといえるでしょう。

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