日本で看護師の勉強をしたり実務経験を積んだりした人の中には、海外で看護師として働く道を選ぶ人もいます。海外で看護師として働くことは大変な面もあるものの、日本国内ではできない経験が積める方法です。
海外の看護師として働くことに興味があり、海外で働く看護師の仕事内容や転職方法を知りたい人も多いのではないでしょうか。当記事では、日本と海外における看護師の違いから、看護師が海外で働くメリットや転職する方法まで、海外で働きたい看護師に向けた情報を解説します。
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日本の看護師と海外の看護師の違い
同じ看護師の職種であっても、日本と海外ではさまざまな面で違いがあります。海外の看護師として働くときは、まずは日本と海外における看護師の違いを知ることが大切です。
ここでは、日本の看護師と海外の看護師にはどのような違いがあるかを、資格・仕事内容の観点から解説します。
資格
看護師として働くときに看護師資格が必要である点は、日本も海外も違いはありません。しかし、日本と海外では必要な「看護師資格の種類」が異なります。
日本で働く看護師の必要資格は、日本の厚生労働省が所管している「日本の看護師資格」です。日本の看護師資格は看護師国家試験に合格することで取得できます。
(出典:厚生労働省「看護師国家試験受験資格認定について」)
一方、海外で働く看護師の必要資格は、働きたい「当該国の看護師資格」です。たとえば、アメリカで働くときはアメリカの看護師資格を取得しなければなりません。
海外の看護師として働くとき、日本の看護師資格取得者に対して資格試験が行われるかは、国によって異なります。基本的に語学力審査が実施されるため、語学力は磨いておきましょう。
1-2. 仕事内容 日本の看護師も海外の看護師も、仕事内容として「患者の看護を行う」点は同じです。しかし、日本の看護師と海外の看護師では、下記のように看護方法に明確な違いがあります。
看護方法 | |
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日本の看護師 | 医師の指示に従い患者の看護を行う |
海外の看護師 | 医師と対等の立場で患者の看護を行う |
日本の看護師は、医師の指示に従って患者の看護を行うことが特徴です。日本の看護師は医師をサポートする面が強く、診察補助・バイタルチェック・見守り・病棟巡回・カルテ管理など仕事内容は多岐にわたります。
海外の看護師は、一般的に医師と対等な立場にある職業です。海外の看護師は専門分野を持ち、専門分野の看護については医師と対等な立場で意見交換を行えます。職種も細分化されており、自分が専門とする仕事内容に集中して働けることが特徴です。
【国別】看護師の平均給与

日本の看護師と海外の看護師を比較する上では、給与面の違いも知っておくことが大切です。まずは日本で働く看護師の平均給与(年収)を紹介します。
【日本で働く看護師の平均給与(年収)】
男女計 | 男性 | 女性 |
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約492万円 | 約506万円 | 約490万円 |
上記の金額はあくまでも平均給与である点に注意してください。看護師には新人看護師から看護主任・看護師長・看護部長までが存在し、年功序列で受け取れる給与額は上がります。
対して、海外の看護師はどのくらいの平均給与を受け取っているのでしょうか。海外で働く看護師の平均給与について、アメリカ・イギリス・オーストラリアのそれぞれで傾向を紹介します。
アメリカで働く看護師の平均給与の傾向 |
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2021年10月時点で、アメリカで働く看護師の平均給与は約870万円です。経験年数が1年未満の看護師でも平均給与は約780万円であり、アメリカの看護師は日本よりも高い給与を受け取れることが分かります。ただし、アメリカの看護師は細分化された職種の内容や、勤務する州によって、給与額に大きな差が見られる点に注意してください。 ※1$(USD)=110円と換算 |
イギリスで働く看護師の平均給与の傾向 |
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2021年10月時点で、イギリスで働く看護師の平均給与は約383万円です。イギリスでは「Band」と呼ばれる階級制で看護師の職位が分かれていて、看護師の平均給与もBandによって大きく区切られています。イギリスの看護師はボーナスが支給されないことが平均給与を低くしているものの、土日祝日や夜勤の手当は充実していることが特徴です。 ※1£(GBP)=150円と換算 |
オーストラリアで働く看護師の平均給与の傾向 |
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2021年10月時点で、オーストラリアで働く看護師の平均給与は約848万円です。オーストラリアの公立病院では、経験年数1年~8年の看護師は年功序列で給与が上がるシステムとなっています。8年目以降はキャリアアップによる給与アップが期待でき、給与額の伸びしろが大きいことが特徴です。 ※1$(AUD)=80円と換算 |
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看護師が海外で働くメリット・デメリット

看護師が海外で働くことは給与面やキャリア面などでメリットがあります。しかし、海外で働くデメリットがあることも留意しなければなりません。
海外で看護師として働きたいと考える人は、メリット・デメリットを比較した上で決断することが大切です。以下では、看護師が海外で働くメリット・デメリットをそれぞれ紹介します。
海外で働くメリット
海外で働く主なメリットは、日本で働く看護師では経験できない内容が中心となっています。
・広い視野を持って仕事に取り組める
海外の看護師は患者とコミュニケーションを取る機会が多いことが特徴です。海外の医療機関はさまざまな人たちが利用しており、日本人の患者に対応することが多い日本の環境とは大きな違いがあります。海外で働く看護師は、看護師の仕事を通してさまざまな文化や価値観の人と接することができ、広い視野を養えることがメリットです。
・海外で身につけた知識を日本でも生かせる
海外で働く看護師として身につけた知識は、日本へ帰国後にも生かせます。近年、日本の医療機関では外国人患者の受け入れ体制整備を進めており、海外で働いた経験がある看護師は貴重な人材です。日本語に慣れていない患者に、適切な対応で看護できることは大きな強みとなります。
・国によっては高収入を期待できる
国によっては、日本の看護師として働くよりも高収入を期待できることがメリットです。特にアメリカやオーストラリアの看護師は高収入で知られています。ただし、現地の物価が高いと高収入であっても生活費がかさむため、給与面を考えるときは物価とのバランスも考えることが大切です。
・研修や勉強会などの支援が充実している
海外の看護師は、研修や勉強会などの支援が充実していて、医療機関によるサポートも整っていることが特徴です。たとえば、フルタイムで働いていて長期研修を受けたいときには、勤務体制をパートタイムに変えてくれます。勉強会も勤務時間中に行うことが基本であり、日本のように残業してまで勉強会に参加する必要はありません。
海外で働くデメリット
海外で働くデメリットは、海外で働くときの障害となる要因が中心です。
・英語を習得する必要がある
海外で働く看護師となるためには、現地の言葉を習得しなければなりません。特に重要な言語が、英語圏の国で第一言語とされている英語です。患者とコミュニケーションを取れるように英語で日常会話ができることはもちろん、看護師の仕事内容に必要な看護・医療関係の英語力も磨く必要があります。
・看護学部に通う場合は就職トレーニングなどの教育費や生活費がかかる
海外で看護師として働くときには、現地の大学・短大などに通って看護教育プログラムや就職トレーニングの受講が必要なケースもあります。受講中は看護師として働けないだけでなく、教育費や生活費がかかることがデメリットです。海外で働く前には、現地で看護師として働けるまでにかかるお金を計算する必要があります。
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・看護師資格を持っていても経験がなければ就職が難しい
現地の看護師資格を持っていても、海外の医療機関にすぐ就職できるとは限りません。看護師が人気職である国は多く、医療機関も基本的に自国の看護師や実務経験者を優先して採用したいと考えています。日本の看護師が海外で就職するためには、看護師としての経験を十分に積んで自分の強みとすることがおすすめです。
・日本よりも業務の範囲が広く看護師自身で判断する必要性も出てくる
海外の看護師は、日本の看護師よりも看護師判断で行える業務が多い反面、行える業務の範囲が広いデメリットもあります。看護方針について医師と話し合いを行い、患者のケアや看護助手・准看護師への指示も行わなければなりません。看護方針は看護師自身で判断する必要性もあり、責任の重さも伴います。
看護師が海外で活躍するための方法5つ

海外で看護師として働くためには、どのような方法で海外に就職できるかも知っておく必要があります。看護師が海外で活躍する方法はさまざまなものがあり、自分の状況や希望に沿った方法を選択することが大切です。
ここでは、看護師が海外で活躍するための方法を5つ紹介します。
看護留学をした上で海外に就労する
看護留学とは、海外の学校に留学して看護師に関する教育を受けることです。看護留学には下記のメリットがあります。
- 海外で最新の医療技術や看護研究について学べる
- 医療関係の英語力が磨ける
- 就労に必要な資格取得が目指せる
看護留学をするときは、自分の目的に合った看護留学の種類を選ぶことが大切です。海外留学には、大きく分けて下記の3種類があります。
資格留学 | 現地で就労するために正看護師資格の取得を目指す |
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インターンシップ | 現地で就労しながら看護師の経験・知識を積む |
語学留学 | 看護師に必要な医療英語の習得を目指す |
看護留学をした上で海外に就労するときは、資格留学を選ぶことがおすすめです。
なお、看護留学では教育費を含めた留学費用がかかる点に注意してください。留学費用は留学先の国・教育機関と留学期間により異なるものの、1年間の看護留学では約200万~500万円がかかります。
海外インターンシップに参加する
海外インターンシップとは、現地の医療機関で看護師や看護助手として働くための研修を受けることです。海外インターンシップには下記のメリットがあります。
- 医療現場で実習を行い、海外で働く看護師の経験を積める
- カリキュラムに沿って資格取得ができる
- 英語を使用する機会が多く、英語力が向上しやすい
- 有給インターンシップは収入が得られる
海外で看護師として働くときに必要な資格取得・語学習得・実習を一度に行えることが、海外インターンシップの特徴です。
海外インターンシップはさまざまなエージェントがプランを提供しています。海外インターンシップに参加して海外で就労したいときは、就労したい国や希望の就労期間、予算も考えた上でのプラン選択が大切です。
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海外研修のある病院で働く
海外研修の制度が整備されている日本国内の病院で働き、海外研修に参加する方法もあります。海外研修のある病院で働くメリットは下記の通りです。
- 病院側が海外研修のプランニングや研修先指定を行ってくれる
- 研修費用は病院側が負担することが多い
- 看護師としてキャリアアップできて、昇進にもつながる
海外研修のある施設の一例は、日本赤十字看護大学です。日本赤十字看護大学では海外研修を定期的に行っており、参加することで看護師としての国際性を高めることができます。
ただし、海外研修では、海外の病院に就職できるわけではない点に注意してください。海外研修を通して学んだ知見を生かし、日本国内の病院で働きたいと考える人におすすめの方法です。
医療ボランティアとして看護職に就く
医療ボランティアとは、発展途上国や医療が発達していない地域で行う国際医療支援活動のことです。医療ボランティアとして看護職に就くことには、下記のメリットがあります。
- 分の能力を発揮して、能動的に行動できる力が身につく
- 異なる国籍や文化の医療従事者とともに働く機会が得られる
- 渡航費用などを団体側が負担してくれることもある
医療ボランティアとして看護職に就きたいときは、下記の活動に参加する方法があります。
・青年海外協力隊
青年海外協力隊は独立行政法人国際協力機構による、海外ボランティア派遣事業です。主な派遣先はアジア・中東・アフリカ・中南米地域の発展途上国となっています。
・国境なき医師団
国境なき医師団は非政府組織(NGO)の国際医療団体です。主な派遣先は紛争地帯・難民キャンプ・災害被災地などの医療が不足しているエリアとなっています。
・世界の医療団
世界の医療団は世界73か国で300以上の活動を行う、非政府組織(NGO)の国際医療団体です。自然災害や紛争・貧困などによって医療を受けられない人への支援を主に行っています。
・ジャパンハート
ジャパンハートは国内外への医療支援活動を行う日本のNPO法人です。アジア諸国への医療支援や被災地の復興支援、子どもへの福祉活動などを主に行っています。
■関連記事
国際看護師として働く
国際看護師とは、海外の医療機関に就職して働く看護師のことです。国際看護師になることには下記のメリットがあります。
- 海外で働く経験を通して、看護師としての能力が向上する
- 文化や価値観の多様性を理解した上で患者に対応できる力が身につく
- 看護師の平均給与が高い国で働いたときは給与アップが期待できる
国際看護師として働くためには、下記の条件を満たすことが大切です。
- 現地の言語を医療用語も含めて習得する
- 現地の看護師資格を取得する
また、海外で働くときには現地の就労ビザ取得、もしくは永住権取得の必要があります。国際看護師として海外で活躍するためには、看護師の実務経験も重要であり、まずは日本国内で看護師経験を積むことがおすすめです。
海外で看護師として働くことが向いている人の特徴

日本と海外では、看護師に向いている人の特徴にも違いがあります。海外で働くときには、自分に海外の看護師に向いている特徴が備わっているかを確認しましょう。
最後に、海外で看護師として働くことを検討している人に向けて、海外の医療現場で求められるスキルや資質を解説します。
多様な人々の背景や価値観を尊重し寄り添える人
海外で働く看護師は、多様な人々の背景や価値観を尊重し、異なる考えにも寄り添えることが大切です。言語の壁がある中で、看護師として患者と信頼関係を築くには、相手の気持ちや考え方を理解する姿勢を持たなければなりません。
また、同僚の看護師や医師とも、互いの考え方や意見を尊重することが大切です。チーム内で考え方の違いが生じたときは話し合いの場を持つなど、チームの目的を達成するための協調性も求められます。
スタッフや患者とのコミュニケーションを円滑に進められる人
海外で看護師として働くときは、スタッフや患者とのコミュニケーションを円滑に進めることが大切です。海外では、基本的に思ったことを言葉にして伝える文化があります。日本のように一歩引いた対応を取ると、「何か隠しごとをしている」と受け取られることもあるため注意してください。
コミュニケーションを円滑に進める上で大切なことが、できることはできる、できないことはできないと言うことです。自分の意見をはっきり伝えることが、相手との信頼関係を構築する第一歩となります。
マネジメント力・リーダーシップのある人
アメリカやイギリスで働く正看護師には、看護助手や准看護師を統括して看護業務を進める役割もあります。正看護師として多くの看護人材を動かすときは、個々の能力を生かせるマネジメント力が欠かせません。
また、海外の看護師は医療チームの一員として自発的な行動を取るシーンが多くあります。自発的な行動を取れる看護師になるためには、リーダーシップも必要です。自分の専門分野では積極的に能力を発揮し、後輩の看護師にも適切な指導を行う役割が求められます。
まとめ
海外で働く看護師は、多様な文化や価値観への理解を深め、最新の医療技術・知識を学べます。日本より看護師の平均給与が高い国が多いことも、海外で働くメリットの1つです。
海外インターンシップへの参加や国際看護師など、看護師が海外で働く方法はいくつかあります。ただし、働くためには現地の看護師資格や、看護の臨床経験が必要です。
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