助産師はニーズが高くやりがいも大きい職業です。そのため、助産師として活躍を続けたい人や助産師をめざしている人は多いでしょう。助産師として働き続けることを考えるうえで、自分に適した勤務形態や就業場所をよく検討することも大切ですが、収入面の待遇を確認しておくことも重要です。
当記事では、施設規模や年齢などに応じた助産師の平均年収について解説します。助産師の平均年収が高い地域や看護師との平均年収の違い、年収アップをめざす方法を知り、自身の希望に合った職場へ就職・転職しましょう。
助産師の平均年収はどれくらい?
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、2020年における助産師の平均年収は約584万円でした。年収の内訳である月収や賞与は、以下のとおりです。
月収 | 賞与 | 年収 |
---|---|---|
約35万円 | 約106万円 | 約584万円 |
助産師の月収は40万円近く、賞与も100万円を超えていることから、平均年収は決して低水準ではないことが分かります。しかし、あくまでも平均であるため、すべての助産師が約584万円の年収を手にしているわけではありません。ここからは、就業先の規模・年齢・経験年数に応じた平均年収を紹介します。
【規模別】助産師の平均年収
「1,000人以上」「100~999人」「10~99人」の3つの区分における助産師の平均年収は、以下のとおりです。
1,000人以上 | 約584万円 |
---|---|
100~999人 | 約586万円 |
10~99人 | 約584万円 |
助産師の平均年収は、就業先の規模によってそれほど大きな差は見られません。
ただし、規模ごとの月収を見ると、規模が大きい就業先のほうが低く、規模が小さい就業先のほうが高い結果となっています。一方、賞与は規模が大きい就業先のほうが高い傾向にあり、「1,000人以上」と「10~99人」では約34万円もの差がありました。小規模の施設で月収が高い理由は、1人あたりの担当業務や時間外勤務、オンコール対応が多いためと考えられるでしょう。
【年齢別】助産師の平均年収
年齢別の助産師の平均年収は、以下のとおりです。
20~24歳 | 約410万円 |
---|---|
25~29歳 | 約496万円 |
30~34歳 | 約537万円 |
35~39歳 | 約562万円 |
40~44歳 | 約644万円 |
45~49歳 | 約637万円 |
50~54歳 | 約698万円 |
55~59歳 | 約593万円 |
60~64歳 | 約511万円 |
一般的な病院やクリニックでは、勤続年数に応じて一定の昇給が見込めるため、同じ職場で勤続すれば年齢に応じて収入も上がる傾向にあります。また、主任や師長といった役職に就くことにより、役職に応じた手当も支給されるため、さらなる年収アップが期待できるでしょう。ただし、途中で転職することによって一時的に年収が上がらなくなる場合もあります。
なお、55歳未満よりも55歳以上のほうが年収が低いのは、「役職定年を迎える」「体力的に長時間労働が難しい」「介護休暇を取得する」などの理由が挙げられるでしょう。60歳で正職員としての定年退職を迎え、嘱託職員となる場合もあることから、60歳以上ではさらに収入が減少すると考えられます。
【経験年数別】助産師の平均年収
一般的な病院やクリニックでは、定期昇給などにより、勤続年数(勤務年数)が長くなるほど平均年収も高くなる傾向にあります。助産師における経験年数別(年次別)の平均年収は、以下のとおりです。
0年 | 約301万円 |
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1~4年 | 約425万円 |
5~9年 | 約462万円 |
10~14年 | 約552万円 |
15年以上 | 約569万円 |
経験年数が10年以上になると年収は550万円を超え、15年以上では570万円近くの収入を得ることができます。助産師として高収入を得たい人は、経験年数・勤続年数を重ねることを目標にすると良いでしょう。
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助産師の年収は地域で変わる?
助産師の平均年収は就業先の規模や年齢、経験年数といった要素のほか、就業する地域によっても違いが見られます。助産師の年収が高い地域とやや低い地域を比較すると、約200万円以上の開きがあるため、高収入を得たい人は就業するエリアを十分に検討しましょう。
ここでは、助産師の平均年収が高い都道府県と低い都道府県について、それぞれ5つずつ紹介します。平均年収が高いエリア・低いエリアを踏まえたうえで、自分が働きたい勤務地を考えてみましょう。
助産師の年収が高い都道府県
助産師の平均年収が高い上位5つの都道府県は以下のとおりです。
鳥取県 | 約711万円 |
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神奈川県 | 約710万円 |
滋賀県 | 約707万円 |
岐阜県 | 約696万円 |
大分県 | 約690万円 |
助産師の平均年収が高い都道府県は、鳥取県・神奈川県・滋賀県・岐阜県・大分県です。
助産師全体の平均年収より100万円以上も高いことから、これらの都道府県では高水準の収入が見込める求人も多いと考えられるでしょう。
ただし、都道府県別の平均年収額や順位は、調査年度によって変動する場合があります。「上記のエリアは助産師の平均年収が高水準となった実績がある都道府県」という認識にとどめ、自分が働きたいエリアについて検討しましょう。
助産師の年収が低い都道府県
助産師の平均年収が全国平均よりも大幅に高い都道府県もあれば、年収の水準が低い都道府県もあります。助産師の平均年収がやや低い傾向にある都道府県は以下のとおりです。
福井県 | 約435万円 |
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佐賀県 | 約459万円 |
沖縄県 | 約467万円 |
香川県 | 約476万円 |
千葉県 | 約477万円 |
助産師の平均年収が低い都道府県は、福井県・佐賀県・沖縄県・香川県・千葉県です。
助産師全体の平均年収と比べて100万円以上も低い傾向にあります。
ただし、平均年収は調査年度によって多少の変動があり、上記のエリアにおける助産師の平均年収が常に低いとは限りません。平均年収の水準がやや低い都道府県での就業を希望する場合は、直近の傾向をあらためて確認したり、全国平均に近い年収を提示する求人を探したりすることも重要です。
助産師と看護師の平均年収の違い
助産師は、看護師・准看護師・保健師と並ぶ看護職の一つです。ここでは、助産師を含めた4つの看護職の平均年収について比較します。
看護師 | 約508万円 |
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准看護師 | 約418万円 |
助産師 | 約584万円 |
保健師 | 約481万円 |
助産師の平均年収は、看護系の専門職の中で最も高い水準です。
病院や有床診療所に勤務する助産師の場合、看護師・准看護師と同様に夜勤や残業、オンコール対応があるケースも少なくありません。勤務形態が似ていると考えられる看護師や准看護師と比べて、約76万円~166万円も高い助産師の平均年収は大きな魅力といえるでしょう。
保健師も助産師と同様に、看護師資格に加えて保健師資格が必要なダブルライセンス職ですが、看護師や助産師よりも平均年収は低めです。保健師は「自治体などの公的機関の公務員となるケースが多い」「夜勤・残業が少ない」などの理由から、看護師や助産師よりも平均年収が低くなっていると考えられます。
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助産師の年収が看護師よりも高い理由
看護業界は慢性的に人手不足であるため、看護師の需要は非常に高い状態が続いています。その中でも、助産師は専門性の高さやニーズの多様化によって特に需要が高まっており、平均年収も上昇傾向にあります。
ここでは、助産師が看護師よりも年収が高い理由について、「専門性の高さ」「需要の高まり」といった2つの観点から解説します。
助産師になるのは簡単ではない
看護師よりも助産師の平均年収が高い理由の一つとして、助産師として働くまでの道のりが決して楽ではないことが挙げられます。
助産師になるには、大学や看護専門学校などの看護師養成課程を経て看護師資格を取得したうえで助産師養成所で1年間学び、助産師国家試験に合格する必要があります。教育機関において看護師養成課程と並行して助産師養成課程を学ぶこともできますが、非常に多忙な学生生活となるでしょう。
また、看護師国家試験はいうまでもなく、助産師国家試験も周到な準備なしでは合格が難しい試験です。学生時代にしっかりと学業に励み、知識やスキルを身につけたうえで試験勉強を行って、2つの国家試験に臨む必要があります。
助産師として働くということは、これらの課題・困難を乗り越えたうえで就業するということです。看護師になるよりも難易度が高く、専門性も高いため、看護師よりも年収が高い傾向にあると考えられます。
産婦人科が減って助産師も少ない
少子化が大きな社会問題となっている近年、出生数や産婦人科の施設数はともに減少傾向にあり、助産師の人数も減っています。しかし、毎年赤ちゃんは産まれており、助産師のニーズが高いことに変わりはありません。
厚生労働省によると、産婦人科・産科を標榜する一般病院数は2008年で1,496件ありましたが、2021年には1,283件と200件ほど減少しています。一般診療所も同様の傾向があり、2008年に3,955件あった産婦人科・産科クリニックは、2020年には3,143件にまで減っています。
近年は高齢出産の増加により、厳密な体調管理を必要とする出産も増えました。そのため、以前よりも多忙になり、妊産婦や新生児のケアに関する専門知識を保持する助産師を求めている施設が多数存在します。
また、助産師は看護師資格と助産師資格の両方が必要であるうえ、女性しかなれない職業です。そうした背景もあり、2019年における看護師の総数が約127万人であるのに対し、助産師の総数は約4万人と大幅に少なく、人材不足が続いている状況です。
上記のような理由から、少子化であっても助産師の需要は高く、ほかの看護職よりも恵まれた給料設定になっていると推測されます。
参照元:
厚生労働省「令和3(2021)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」
日本看護協会「看護統計資料」
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求人から見る! 助産師の平均年収
これから助産師をめざしている人や助産師として活躍し続けたい人が、求人情報の年収相場を知っておくことは非常に重要です。実態に即した助産師の年収を知れば、就職活動や転職活動の参考になるでしょう。
ここでは、実際の求人情報に基づく助産師の年収相場を紹介します。
【施設形態別】助産師の平均年収
助産師の平均年収は、勤務先の施設形態によっても異なります。職場別の大まかな業務内容とともにチェックしましょう。
病院 | 約450万〜550万円 |
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クリニック・診療所 | 約400万〜500万円 |
美容クリニック | 約450万〜500万円 |
訪問看護ステーション | 約350万〜450万円 |
保育施設 | 約330万〜440万円 |
病院やクリニックといった助産師の専門性を活かせる職場は、ほかの施設形態よりも平均年収が高い傾向にあります。その他の施設では給与水準がやや低下するものの、夜勤や残業が少なく休みも確保しやすいため、家庭と仕事を両立しやすいでしょう。それぞれの施設における助産師の主な仕事内容は以下のとおりです。
病院
正常分娩の介助や帝王切開のサポート、助産師外来における妊婦健診、授乳指導・栄養指導・沐浴指導、育児へのアドバイスなど、さまざまな業務に従事します。
クリニック・診療所
有床診療所の場合、病院と同様に分娩介助など助産師の基本的な業務を担当します。
クリニックによっては、育児相談やマタニティヨガ教室、ベビーマッサージなどの企画・実施も助産師の仕事です。
美容クリニック
美容クリニックの中には、不妊治療を扱う施設も存在します。助産師は、主に不妊治療を受ける患者さんのサポートや医師の補助を行います。
訪問看護ステーション
助産師は、一般的な訪問看護師が行う看護業務のほか、乳幼児や学童の看護ケアも担当します。
保育施設
保育園や託児所などで、利用する子どもたちの健康管理や身体測定、各種健診、病気やケガなどへの応急処置、保健だよりの作成、保健指導などを担当します。職場によっては保育の補助も行います。
【勤務形態別】助産師の平均年収
助産師の収入は夜勤の有無によっても変動します。勤務形態ごとの助産師の平均年収には、以下のような違いがあります。
常勤(二交替制) | 約450万〜550万円 |
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常勤(三交替制) | 約430万〜550万円 |
夜勤なし | 約350万〜500万円 |
夜勤専従 | 約450万〜600万円 |
多くの場合、助産師を含む看護職には夜勤の回数に応じた金額の夜勤手当が支給されます。したがって、常勤(交替制)や夜勤専従のほうが、年収相場が高くなる傾向にあります。それぞれの勤務形態における助産師の働き方は下記のとおりです。
二交替制(日勤・夜勤)
二交替制の勤務時間例は、以下のとおりです。
夜勤:17時~翌朝9時頃
病棟における夜勤は長時間の勤務となるため、体力面や精神面でタフさが求められますが、夜勤回数は三交替制よりも少ないというメリットがあります。
三交替制(日勤・準夜勤・深夜勤)
三交替制の勤務時間例は、以下のとおりです。
準夜勤:16時30分~翌1時頃
深夜勤:深夜0時~翌朝9時頃
夜勤の回数は二交替制より多くなるケースもありますが、1回あたりの勤務時間は二交替制よりも短めです。
夜勤なし
入院病床のないクリニックや保育施設などでは、日勤のみの職員募集が行われています。また、二交替制や三交替制を採用している病院・クリニックにおいても、日勤のみの勤務が可能な職場もあります。
夜勤専従
主に二交替制勤務を採用している職場で、夜勤業務のみを担当する勤務形態です。昼夜逆転の生活となりますが、「常に同じ時間帯で働ける」「効率よく高収入を得られる」というメリットがあります。
助産師が年収アップをめざす方法
助産師の平均年収はほかの看護職と比較しても高水準ですが、さらに年収をアップさせる方法があります。助産師が年収を上げる主な方法は、以下の3つです。
看護師長や副看護師長になる
看護師長などの管理職は、業務の円滑化や助産師・看護師の教育などに携わります。基本給アップや役職手当の加算により収入増が見込めますが、「責任が重くなる」「上司と現場看護師・助産師との板挟みになる機会も多い」というデメリットもあります。
助産所を開業して独立する
「助産師として5年以上の実務経験がある」といった開業条件を満たせば、助産所の独立開業も可能です。経営が軌道に乗れば高収入を見込めますが、「妊婦が集まる助産所にする」「助産所で一緒に働いてくれる人材を見つける」といった課題をクリアする必要があります。
また、助産所を開業した場合、分娩や妊婦健診における責任者は自分自身です。母子の命や健康を任されるという重責・リスクに耐えながらの業務となるため、精神力や体力、臨機応変な対応力が求められます。
年収の高い職場に転職する
助産師としての知識や能力を磨きながら高収入をめざしたい人は、年収の高い職場に転職するのがおすすめです。管理職や経営者ほどの重責は負わずに助産師としての仕事に集中できるため、キャリアアップ・スキルアップを実現しながら収入アップをめざせるでしょう。
まとめ
助産師は資格取得の難しさやニーズの高さなどの理由から、平均年収は約584万円と看護職の中でも高い水準です。年齢や経験年数、勤務エリア、施設形態、勤務形態によっても収入相場は異なるため、自分の希望条件に合った求人を複数確認したうえで就職・転職先の検討を進めましょう。
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