• 2021年11月9日
  • 2021年11月9日

保健師と看護師の違いは? 仕事内容や平均年収を徹底比較!

 

保健師は、地域社会や企業に属する人たちの健康維持・増進に重要な役割を果たしています。保健師を目指す場合は、看護師免許に加えて保健師免許も必要です。どちらも似た仕事と思われることが多いため、自身がどちらを目指すべきか判断がつかない人もいるでしょう。

そこで今回は、保健師と看護師の違いについて、必要となる資格や仕事内容などを8つの項目に分けて解説します。看護師ではなく保健師として働くメリットや、保健師に向いている人の特徴も紹介するため、ぜひ参考にしてください。

【比較】保健師と看護師の違い

保健師は、主に行政施設や一般企業・学校・医療機関に所属し、病気や怪我を予防する保健業務に努める職業です。看護師の仕事を兼任する保健師も少なくないため、2つの職業は同一視されることがあるものの、保健師と看護師はさまざまな点で異なります。

ここでは、保健師と看護師の違いを解説します。

資格

保健師・看護師ともに、看護師免許が必須です。保健師として働くためには、看護師免許に加えて保健師免許も取得しなければなりません。

以下は、一般的な保健師・看護師の免許取得方法です。

●保健師

保健師免許を取得できる主なルートは、下記の通りです。

高校卒業 保健師・看護師統合カリキュラムのある大学・専門学校(4年) 保健師国家試験・看護師国家試験合格
看護師資格あり 保健師養成学校(1年) 保健師国家試験合格
看護系大学保健師養成課程(3年次編入)
看護系短期大学専攻科(1年)
看護系大学院(2年)

(出典:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」

●看護師

看護師免許を取得できる主なルートは、下記の通りです。

中学卒業 高等学校看護科・専攻科(5年一貫) 看護師国家試験合格
高校卒業 看護系大学(4年) 看護師国家試験合格
看護系短期大学(3年)
看護師養成所(3年)
准看護師 看護系短期大学(2年) 看護師国家試験合格
看護師養成所(2年)
高等学校専攻科(2年)
看護業務に従事(3年以上)

(出典:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」

また、保健師・看護師ともに外国の学校卒業・各免許相当の資格があり、日本で免許を取得できるレベルの知識・技能を持っていると判断された場合も、受験が可能です。

仕事内容

保健師の資格取得には看護師資格が必須であるものの、看護師としての仕事を行うことは多くありません。以下は、保健師・看護師の主な仕事内容です。

●保健師

保健師の仕事は「保健指導」が主となり、臨床現場に立つ業務は少ない傾向にあります。職場によって仕事の詳細は異なるものの、下記の業務に従事するケースが一般的です。

  • 健康管理・診断の実施
  • 特定保健指導の実施
  • 電話相談・家庭訪問による健康支援
  • メンタルヘルスケア
  • 健康に関するイベント・啓発活動の企画・実施
  • 個人・企業の勤務時間や労働環境の改善に向けた助言

保健師は健康診断時の生活指導をはじめ、メンタルヘルス対策など個人や地域住民の健康面に関する問題を中心として支援活動を行います。

●看護師

看護師の主な仕事は、傷病者・妊産婦に対する診察や手術において医師を補助し、療養者の世話を行うことです。職場によって仕事の詳細は異なるものの、下記の業務を担当します。

  • 患者さんの診察・手術時における医師の補助
  • 採血・注射・点滴の実施
  • 患者さんの服薬チェック
  • 患者さんのバイタル測定
  • 入院患者さんの世話・介助
  • 患者さんのカルテ作成・整理

看護師は医師の指示に従って動くことが多く、自身が主導して患者さんの指導・支援を行うケースは少なめです。

職場

保健師と看護師では、資格や仕事内容だけでなく職場も大きく異なります。以下は、保健師・看護師の主な職場の傾向です。

●保健師

保健師の職場は、市区町村の役所や保健センターが全体の46.7%と最も多い割合を占め、次いで診療所の15.6%、保健所の12.9%と続きます。他にも、病院・事業所・学校などが保健師の職場として一般的です。
(出典:日本看護協会「看護統計資料室(2)保健師(年次別・就業場所別)」

また、保健師は職場によって複数の種類に分かれます。

行政保健師 役所や保健センターなどの行政施設に勤務する保健師です。公務員にあたるため、国家公務員試験・地方公務員試験に合格しなければなりません。
産業保健師 一般企業に勤務し、社員の健康管理を行う保健師です。社内の医務室や衛生管理部門、健康保険組合などへ所属します。
学校保健師 大学・専門学校や私立の高校・中学に勤務する保健師です。学内における病気や怪我の応急処置にあたる他、生徒や教師の健康相談・メンタルケアに努めます。
病院保健師 医療機関に勤務する保健師です。健康診断・相談を主に担当する他、職場によっては看護師業務も兼任します。

●看護師

看護師の職場は医療機関が大半を占めており、病院や診療所の割合が83.9%です。続いて訪問看護ステーションの4.3%や居宅サービスの3.1%、介護老人保健施設の2.1%と続きます。
(出典:日本看護協会「看護統計資料室(4)看護師、准看護師(年次別・就業場所別)」

看護師は医療・介護系の施設で働くことが多いものの、保育園や幼稚園、健診センターなどに勤務する人もいます。また、看護師の資格や経験を生かして治験コーディネーターの道へ進む人も珍しくありません。

保健師と看護師の主な職場は異なります。しかし、保健師は看護師免許も取得済みのため、看護師として職に就くことも可能です。

働き方

保健師と看護師では、夜勤や残業において以下のような差が生じます。

●保健師

保健師の平均的な1か月の時間外労働時間は、10時間程度です。
(出典:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」

保健師の多くは日勤であり、長時間の時間外労働や夜勤、休日出勤などは多くありません。しかし、担当する仕事内容や相手によっては、想定外の残業が発生するケースもあります。また、医療機関などで看護師業務を兼任する場合は、夜勤も担当する傾向です。

●看護師

看護師の平均的な1か月の時間外労働時間は、6時間程度です。
(出典:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」

看護師は残業が発生しやすいものの、勤務が交替制の職場も多いため、業務を引き継ぐことで個別の残業を抑えられるケースは少なくありません。マイナビ看護師の「看護師白書2020年度版」によると、看護師は日勤のみよりも夜勤込みで働く人のほうが多く、準夜勤・深夜勤ともに月4回程度担当します。

保健師・看護師ともに対人の仕事が多いため、担当となる相手の状況によって、夜勤や残業の有無が変化することを覚えておきましょう。

平均年収

保健師・看護師が2020年度に支給された年収の平均は以下の通りです。

●保健師

保健師の平均年収は約476万円です。
(出典:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」

保健師の年収は地域によって差があります。和歌山県の約596万円など、全国平均を大きく上回る地域がある一方、300万円前後にとどまる地域も少なくありません。

●看護師

看護師の平均年収は約492万円です。
(出典:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」

看護師の平均年収は、青森県や岐阜県が周囲よりも高めの傾向にあるものの、全国的にほぼ同じ程度の年収が得られます。

全体の平均値を比較すると、保健師よりも看護師のほうが年収が高めの傾向です。しかし、県によっては保健師の年収が上回る場合もあるため、一概には言えません。

また、看護師の年収には夜勤手当が含まれます。どちらの職に就くかを迷った際は、年収額だけでなく働き方が自分のライフスタイルに合致するかを考えることも大切です。

求人数

保健師・看護師の求人数は以下の通りです。なお、参考とする数値は2021年10月時点におけるマイナビ看護師の求人数です。

●保健師

マイナビ看護師では、保健師の求人が全国で1,168件あります。
(出典:マイナビ看護師

保健師の求人のうち、正社員としての募集が955件、夜勤なしの職場は962件となっており、日勤で安定して働ける職場が多い傾向です。パート・アルバイトの募集も197件あるため、地域によってはライフスタイルに合った職場を選べるでしょう。

●看護師

マイナビ看護師では、看護師の求人が全国で51,035件あります。
(出典:マイナビ看護師

看護師の求人のうち、正社員としての募集は37,329件、夜勤なしの職場は35,035件です。パート・アルバイトの募集は18,409件、夜勤専従の募集も335件あるため、幅広い条件で働き方が選べます。

保健師・看護師ともに、東京都・愛知県・神奈川県の求人数が多めです。東京都と神奈川県の求人は、年収が全国平均より高いため、働く場所を選べる場合は積極的に探すとよいでしょう。

就業者数・学校養成所数

保健師・看護師としての就業者、および学校養成所数は以下の通りとなります。

●保健師

2019年次における保健師の就業者数は64,819人、2020年次の学校養成所数は全国で294か所です。学校養成所は東京都が24か所と最も多く、千葉県・大阪府・愛知県と続きます。
(出典:日本看護協会「看護統計資料室(2)保健師(年次別・就業場所別)」
(出典:日本看護協会「看護統計資料室(2)都道府県別・総数(令和2年4月)」

●看護師

2019年次における看護師の就業者数は1,272,024人、2020年次の学校養成所数は大学・3年課程が861か所、2年課程が161か所、5年一貫教育が79か所です。大学・3年課程はすべての都道府県に設置されているものの、2年課程と5年一貫教育を選択できない都道府県もあります。
(出典:日本看護協会「看護統計資料室(4)看護師、准看護師(年次別・就業場所別)」
(出典:日本看護協会「看護統計資料室(2)都道府県別・総数(令和2年4月)」

保健師・看護師ともに全国で教育を受けられるチャンスがあるため、将来働きたい都道府県の学校を選ぶことも1つの方法です。

スキル

保健師・看護師の仕事は、医療の専門知識以外にもそれぞれ下記のスキルが求められます。

●保健師

  • コミュニケーション能力
  • 推察力
  • 企画能力
  • 提案能力
  • 管理・調整能力
  • リーダーシップ能力

病気や怪我の予防を助ける保健師は、不調を感じていない人にも必要な知識を届けなければなりません。連携・協働する関係機関との調整役を担うことも多いため、周囲とコミュニケーションを取りつつ、時には自分が率先して動くことが求められます。

●看護師

  • コミュニケーション能力
  • 思いやり
  • メンタル面の強さ
  • 体力
  • 観察力・判断力

看護師が接する相手は心身が弱っている人が多いため、相手の心に寄り添って安心感を与えることが大切です。肉体労働のため体力的な強さはもちろん、悲しいことが起きた日でも他の患者さんに悪影響を与えないよう、メンタル面の強さが求められます。

保健師と看護師では求められるスキルが異なるため、就きたい職に必要なスキルを優先的に伸ばしましょう。

看護師ではなく保健師として働くメリット

看護師から保健師になった女性

保健師と看護師では、必要な資格や仕事内容、働き方などの面でさまざまな相違点があります。仕事上のやりがいやメリットも異なるため、進路や職業を選ぶ際は、保健師として得られるメリットを把握することが重要です。

ここでは、看護師ではなく保健師として働くメリットを4つ解説します。

予防医療を通して社会貢献ができる

保健師として働く一番のメリットは、予防医療を通して社会貢献ができることです。

看護師はすでに病気や怪我をした人の回復を助けるため、目に見えた結果が実感しやすい仕事です。一方、人々の健康維持を助け、病気や怪我の予防に努める保健師は、仕事の成果が分かりにくい傾向にあります。

しかし、保健指導や健康支援を続ける中で、生活習慣の見直しや検診を積極的に受けるなど、人々の行動に変化が見られた際の喜びはより大きく感じられるでしょう。

また、感染症などが流行した場合、社会にもたらす被害を最小限にとどめるためにさまざまな対策を講じることも、保健師の果たす役割です。1人でも多くの人が健康に暮らせる社会に貢献できることは、保健師の大きなやりがいと言えます。

自分に合うフィールドを見つけられる

保健師として働くことのメリットに、活躍できるフィールドの幅が広いことが挙げられます。

保健師は予防医療に努めることが主な仕事であるものの、一言で予防医療と言っても実際の業務内容は職場によって大きく異なります。例えば、食事を指導したり検診をすすめたりといった健康促進に携わる業務から、感染症の予防や罹患者への対応といった伝染病に携わる業務までさまざまです。メンタルヘルス対策や育児・介護に関する相談に対応する業務もあります。

働く職場も行政施設・医療機関・一般企業などがあり、選択肢が幅広いことも特徴です。経験を積みスキルを磨けば、自分の興味がある分野や専門性の高い分野を選べる可能性が高まります。

ワークライフバランスが充実する

保健師は、ワークライフバランスが取りやすい職場が多いこともメリットの1つです。

保健師の主な職場となる行政施設や一般企業、学校などは基本的に日勤のみの勤務体制を取っています。医療機関でも看護師業務と兼任しない場合は、夜勤を担当しないことも珍しくありません。

また、土日祝日が休みとなることも多く福利厚生が充実している上、有給も取得しやすい職場が多い傾向です。担当する業務によっては残業も発生しにくいため、生活リズムを保ちやすく家庭と仕事を両立させやすい仕事と言えるでしょう。

安定して働き続けられる

職業としての安定性が高いことも、保健師として働くことのメリットです。

役所や保健センターで働く行政保健師は公務員となるため、身分や収入が安定しやすい傾向にあります。また、産業保健師の勤務先は比較的大手の企業が多いこともあり、勤務環境だけでなく職場の長期的な維持も期待できるでしょう。他にも、医療・介護施設や学校をはじめとしてさまざまな職場にニーズがあるため、自身のキャリアプランに合わせて働き方を選べます。

また、育児や介護などで勤務時間が限られる場合や、仕事にブランクが発生した場合でも就職先・転職先を見つけやすい職業です。ライフスタイルが変化しても安定して働き続けられることは、保健師という仕事の大きな魅力と言えます。

保健師に向いている人の特徴は?

保健師に向いている人

保健師は、社会にとって縁の下の力持ちと言える存在です。多くの人と直接触れ合う中で感謝の言葉をもらえたときは、保健師として大きなやりがいを感じられるでしょう。

以下のような特徴がある人は、保健師の仕事に向いています。

●明るく親しみやすい人
保健師は、健康上の不安がある人や心身が病んでいる人にアドバイスを送ったり、カウンセリングを行ったりしなければなりません。対象となる人の年齢や立場、状況もさまざまなため、どのような相手からも打ち解けてもらえる明るさや親しみやすさが必要です。

●子どもが好きな人
保健師は、乳幼児の健診や予防接種をサポートしたり、発達度合いの相談に乗ったりと幼い子どもと接する機会の多い仕事です。優しく声をかけて笑顔で接するような子どもに懐かれやすい人は、保護者からの信頼も得やすくスムーズに仕事を進められます。

●人に説明することが得意な人
保健師がアドバイスや提案を行う相手は、医療や健康に関する専門的な知識を持たない人がほとんどです。難解な言い回しや専門用語などを幼い子どもにも理解してもらえるよう、かみ砕いて説明する能力が求められます。

保健師は、誰かのために動ける人や他人の未来を思いやれる人に向いている職業です。目に見えた成果は見えづらいものの、粘り強く取り組むことができれば、やりがいのある仕事として続けられるでしょう。

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まとめ

多くの人の健康を支える保健師は、社会にとって欠かせない存在です。看護師免許に加えて保健師の免許取得も必要であるため、就職の難易度は上がるものの、職場や働き方の選択肢も多くあります。関われる仕事内容や担当できるエリアの範囲は職場によって異なるため、自分に合ったフィールドを選ぶとよいでしょう。

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