• 2021年10月26日
  • 2021年11月16日

フィジカルアセスメントとは? 5つの手順と2つのコツについて解説

 

医療業界では、一般的な人々が把握することのできない専門用語が多く存在します。医療業界で活躍するにあたり、患者さんのサポートをきちんと行う・同じ職場のスタッフとスムーズにコミュニケーションをとるためには、各専門用語とその概要まで事細かに把握しておかなければなりません。

そこで今回は、医療業界における専門用語の一つである「フィジカルアセスメント」について、意味や手順、行うときのポイントや注意点を交えて詳しく解説します。看護師を目指す方や医療業界で活躍したいと考える方は、ぜひ参考にしてください。

フィジカルアセスメントとは?

フィジカルアセスメントとは、問診・視診・触診・打診・聴診などの身体診査を用いて患者の全身の情報を収集・評価し、一人ひとりの患者に適した対応を判断することです。フィジカルは「身体的」、アセスメントは「評価・査定」を意味し、「身体診査」と呼ばれることもあります。

フィジカルアセスメントを行う目的は、医師・看護師とでやや異なることが特徴です。医師によるフィジカルアセスメントは「患者さんの身体診察・診断結果の確定」が目的で、看護師のフィジカルアセスメントは「患者さんの状態に適切な看護ケアの明確化・実施した看護ケアの評価」が目的となっています。

フィジカルアセスメントの手順5つ

問診を行う看護師

フィジカルアセスメントの手順は定められており、患者さんへの負担が少ない作業から実施することが基本です。

フィジカルアセスメントの基本的な手順
(1)問診 患者さんについての情報を得る
(2)視診 身体機能の異常について確認する
(3)触診 皮膚の状態を確認する
(4)打診 内部の状態を知る
(5)聴診 身体内部の音を確認する

なお、フィジカルアセスメントの部分によっては負担の大小が異なるため、順番が交互するケースもあります。たとえば、厚生労働省が示す「看護師の特定行為研修における実習指導(共通科目)の手引き」では、「腹部の診察」において、以下の順番で示されています。

問診→視診→聴診→打診(叩打診)→触診

(出典:厚生労働省「看護師の特定行為研修における実習指導(共通科目)の手引き 事例6(身体診察(研修生同士による実習):腹部)」

ここからは、問診・視診・触診・打診・聴診の順番で、各手順における詳細、および厚生労働省が提供するフィジカルアセスメントの実習例をもとにした「腹部の診察例」を紹介します。

【問診】患者さんについての情報を得る

問診とは、患者さんに下記のような情報を直接尋ねる診察法です。

  • 自覚症状
  • 既往歴
  • 家族の病歴
  • 生活歴

患者さんが伝えてくれた情報から、どのような疾患があるのか・緊急性はあるのかといった判断をします。多くの場合、上記の簡単な内容は問診票を用いて待ち時間の間に患者さんに記入してもらいます。その後の直接的な会話で、主な自覚症状から適切な質問項目を考え、より詳細な患者さんの身体的健康上の情報を収集・評価することが一般的です。

【視診】身体機能の異常について確認する

視診とは、実際に患者さんの身体を目で見て、身体機能に異常をきたしていないか・症状がどのようにあらわれているかを診察する方法です。異常部分の位置や大きさ、形、色、動き、左右対称性を判断します。必要に応じて、ペンライトや内視鏡を使用することもあります。

視診で特に大切なポイントは、患者さんが記入した問診票の内容を確認して、「どこを診るべきか」を瞬時に判断することです。たとえば、呼吸困難を感じている患者さんの場合、呼吸の動きだけでなくチアノーゼの有無も即座にチェックしなければなりません。診察室に入った瞬間の顔色や意識状態、会話中の挙動も観察しておくべき部分と言えます。

以下は、厚生労働省が提供するフィジカルアセスメントの実習例をもとにした「腹部の視診例」です。

【腹部の視診で確認すべき例】

  • 腹壁の形状・輪郭の状態
  • 皮膚の状態(皮疹・着色斑・静脈怒張・皮膚線条などの有無)

(出典:厚生労働省「看護師の特定行為研修における実習指導(共通科目)の手引き 事例6(身体診察(研修生同士による実習):腹部)」

【触診】皮膚の状態を確認する

触診とは、患者の身体や患部に直接触れて、異常部分の位置、大きさ、かたさ、動きなどを判断する診察法です。基本的に、利き手の人差し指・中指・薬指を用いて診察しますが、患部や診察の目的に応じて、使用する指を使い分けたり、両手を使うことも特徴です。

触診の場合、診察するうえで患者さんが痛みを感じることも珍しくありません。フィジカルアセスメントの基本的な手順と同様、触診の手順も患者さんにとって負担の少ない場所、つまり痛みを感じていない部位から行うことが基本です。

【腹部の触診で確認すべき例】

  • 肝・脾・腎の状態(圧痛・腫瘤・腫大などの有無)

(出典:厚生労働省「看護師の特定行為研修における実習指導(共通科目)の手引き 事例6(身体診察(研修生同士による実習):腹部)」

【打診】内部の状態を知る

打診とは、指先や打診器を用いて患部の表面を叩き、振動により生じた音から内部の状態を判断する診察法です。主に胸部や腹部にある内部臓器の診察に用いられる方法で、異常部分の位置や大きさ、密度を判断することができます。

指先を用いて打診を行う際は、利き手ではない方の中指全体を患者の皮膚に密着させ、その指の遠位指節間関節(第一関節)あたりを利き手の中指で軽く2回程度、素早く叩きます。鼓音が響く場合は空気が溜まっていることが多く、濁音が響く場合は臓器・水分であることが多い傾向です。

【腹部の打診で確認すべき例】

  • 腹部全体・肝臓・脾臓の打診音や各部の大きさなど
  • 叩打診による叩打痛の有無

(出典:厚生労働省「看護師の特定行為研修における実習指導(共通科目)の手引き 事例6(身体診察(研修生同士による実習):腹部)」

【聴診】身体内部の音を確認する

聴診とは、主に聴診器を用いて患者さんの身体内部から発生する音(呼吸音・心音・血管音・腸蠕動音)を聴き取り、状態や異常音の有無を判断する診察法です。聴診器を用いた聴診のことを「間接聴診法」、患部に直接耳をつけて診察する聴診のことを「直接聴診法」と言います。

聴診器にはさまざまな種類があり、血圧の測定や呼吸器系・消化器系の聴診など、用途により使い分けることが基本です。主に血圧測定を行うことの多い看護師は、シングルサイドの聴診器を用いる傾向にあります。

【腹部の聴診で確認すべき例】

  • 腸蠕動音・腹部動脈・腹部の血管音
  • 腸蠕動音の聴取頻度や音の性状
  • 血管雑音の有無(腎動脈(両側)・腹部大動脈・総腸骨動脈(両側)で確認)
  • 振水音(腸管内ガスと水の貯留を確認)

(出典:厚生労働省「看護師の特定行為研修における実習指導(共通科目)の手引き 事例6(身体診察(研修生同士による実習):腹部)」

フィジカルアセスメントを行うときのポイント2つ

フィジカルアセスメントを行う看護師

フィジカルアセスメントは、患者さんの身体上の健康状態を正しく判断する必要があるため、苦手意識を持つ看護師は多くいるでしょう。しかし、苦手意識がかえって悪循環を起こしている可能性も大いに考えられます。

フィジカルアセスメントに対して苦手意識を持っている場合は、少しのコツを把握・実践することで、意外と簡単に苦手意識を解消できる可能性も否めません。

最後に、フィジカルアセスメントを行うときのポイントを2つ解説します。

さまざまな視点からの質問を投げかける

フィジカルアセスメントに対して苦手意識を持ってしまう原因は、「尋ねるべき質問量が少ないことによって、得られる情報量も少ないため」である可能性があります。得られる情報量が少ないということは「判断に値する情報がない」とも言え、その自信のなさから結果的に苦手意識を持ってしまっているのかもしれません。

フィジカルアセスメントを行うときは、発症したときの状況や影響する因子など、さまざまな視点からの質問を投げかけることが効果的です。下記に、背中の痛みを訴えている患者さんに対する質問例を紹介します。

フィジカルアセスメントの質問例
  • 「背中の痛みは、いつから起こりましたか?」
  • 「背中の痛みは、鈍痛・チクチクした痛み、どちらに近いですか?」
  • 「痛みを感じている部分は、背中側全体ですか? それとも一部分のみですか?」
  • 「背中の痛みがひどくなる、あるいはましになるきっかけはありますか?」
  • 「背中の痛みとともに感じている、何か別の症状はありますか?」

また、痛みを感じている患者さんに対して質問攻めをすることは、患者さんの負担増加につながります。事前に要点を絞り、患者さんが簡潔に答えられるような質問を用意しておきましょう。

「SOAP(ソープ)」を活用する

フィジカルアセスメントを行うときは、「SOAP(ソープ)」の活用も効果的です。SOAPとは、フィジカルアセスメントを行った結果を記録することで、下記4つの要素で構成されています。

要素 詳細
<S>
Subject(主観的な情報)
患者さんが主に訴えている情報
<O>
Object(客観的な情報)
主観的な情報以外に、看護師が診察で得た情報
<A>
Assessment(アセスメント)
S(主観的情報)・O(客観的情報)をもとに分析・評価し、看護師である自身が感じた印象や意見
<P>
Plan(プラン)
S(主観的情報)・O(客観的情報)・A(アセスメント)をもとにした、今後の治療方針などの計画

SOAPとしてフィジカルアセスメントで得た情報を記録することにより、内容をわかりやすく整理できるうえ、課題点に焦点をあてて適切な治療方針を判断することにも大いに役立つでしょう。

フィジカルアセスメントを実施するときの注意点

フィジカルアセスメントを実施する看護師

フィジカルアセスメントを実施するときは、ただやみくもに診察をするのではなく、診察後のケアにつなげることが重要です。

そのためには、フィジカルアセスメントの各手順におけるコツや注意点をおさえておくだけでなく、患者さんにさまざまな視点からの質問を投げかけたり、SOAPを活用したりすることが欠かせません。

広い視野と深い知識をもってフィジカルアセスメントを行うためには、先輩看護師が実際に行っている姿を見て、吸収することがまず大切と言えるでしょう。

まとめ

ここまで、フィジカルアセスメントの概要や基本的な手順から、フィジカルアセスメントを行うときのポイントと注意点までを徹底的に解説しました。

看護師のフィジカルアセスメントは、「患者さんの状態に適切な看護ケアの明確化・実施した看護ケアの評価」が目的であり、各項目できちんと患者さんの情報を得る必要があります。先輩看護師のフィジカルアセスメントを実際に見るなどして、徐々に知識と経験を積みましょう。

フィジカルアセスメントをきちんと学ぶためには、就職先・転職先選びも重要です。職場によっては、フィジカルアセスメントをなかなか任せられないケースもあります。医療業界でしっかり活躍したいと考えているのであれば、業界に精通したプロの転職アドバイザーがぴったりの求人を紹介する看護師転職サイト「マイナビ看護師」をぜひご利用ください。

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