• 2021年10月25日
  • 2021年11月16日

インシデントレポートとは? 報告書の書き方もわかりやすく解説

 

医療現場において、患者さんに対して誤った医療行為を実施しようとしてしまったり、医療ミスにつながりかねない出来事が発生してしまったりすることを「インシデント」と言います。

新人ナースに限らず、ベテランナースでもインシデントを起こす可能性は十分にあります。インシデントの再発を予防するためには、「インシデントレポート」が欠かせません。大きな役割を持つインシデントレポートだからこそ、概要や基本的な書き方は必ずおさえておかなければなりません。

そこで今回は、インシデントレポートの概要や目的から、書き方と注意点について詳しく解説します。インシデントレポートについて知りたい方や、インシデントレポートを書くことが苦手な看護師は、ぜひ参考にしてください。

インシデントレポートとは?

インシデントレポートとは、誤った医療行為の実施につながる出来事や、医療ミスが発生するおそれのある事態を指す「インシデント」を報告する、いわば報告書のことです。近年では紙ベースのインシデントレポートから、専用のシステム・ツールを導入してデジタル化し、パソコン上で簡単に作成・提出できるようにしている病院も増加傾向にあります。

インシデントレポートを作成すれば、起きたインシデントの原因を突き止めたり、再発防止策をとったりできます。ケースによっては、院内ルールの変更など大きなきっかけとなることもあるでしょう。

インシデントレポートを作成するのは、インシデントを起こしてしまった当事者だけではありません。他看護師によるインシデントを発見した看護師も、同僚への注意喚起を意図として作成することがあります。

なお、誤った医療行為を実際に行い、患者に被害を与えてしまった医療事故のことは「アクシデント」と言います。このように、インシデント・アクシデントで明確な違いがあることも必ず覚えておきましょう。

インシデントレポートの目的

インシデントレポートを作成する目的は、主に「インシデントの再発防止」です。インシデントの再発を防ぐために、インシデントレポートにインシデントの原因や再発防止策を記入します。

インシデントを起こしてしまった当事者がインシデントレポートで事実を報告することは、非常に勇気がいるものです。しかし、インシデントレポートはミスをした職員の反省文や始末書ではありません。あくまでも、インシデントが起きたという事実の把握・インシデント事例の管理・分析をして、再発防止に努めるための報告書です。

インシデントレポートは、なぜインシデントを起こしてしまったのかといった根本的な原因を突き止めることで、背景にある問題点や次なる課題点を把握することにもつながります。

つまりインシデントレポートの作成は、病院全体でのインシデントの背景や課題の共有・再発防止に重要な作業であると言えるでしょう。

インシデントレポートが苦手な看護師は多い?

インシデントレポートが苦手な看護師

インシデントレポートは、今後同じようなミスを犯さないため・起きたインシデントを病院全体で共有するために作成すべき情報です。しかし、新人看護師・ベテラン看護師に限らず、インシデントレポートを苦手とする方は多い傾向にあります。

インシデントレポートに苦手意識を持ってしまう理由は、下記の通りです。

  • 上司や先輩に追及されたり責められたりしそうで怖い
  • 書き方がわからない
  • 報告書作成に手間と時間がかかる
  • 改善につながった経験がなく、作成の意味を感じられない

インシデントレポートは、決して命令されて作成する反省文や始末書ではないものの、自身のミスを報告することやスタッフ全体に共有されることから苦手意識を持ってしまうことも珍しくありません。

インシデントレポートの書き方

インシデントレポートを見せている看護師

インシデントレポートに対して苦手意識を持ってしまう原因の一つに、「書き方がわからない」ことが挙げられます。書き方がわからなければ、作成にさらに時間がかかってしまい、焦りから改善につながるような内容をまとめられない可能性もあります。

厚生労働省では、Webサイトに重要事例情報を公開しているため、インシデントレポートを書く際の例として参考にすることがおすすめです。基本的には、以下の3項目に沿ってまとめられています。

  • 具体的な内容
  • インシデントが発生した要因
  • 実施した、もしくは考えられる改善案

(出典:厚生労働省「重要事例集計結果」

上記をふまえ、ここからはインシデントレポートを書く際のポイントを詳しく解説します。

インシデントのレベルを把握しておく

インシデントレポートを作成する際は、まず起こしてしまったインシデントがどのようなレベルのミスなのかを把握することが重要です。インシデントレベルとアクシデントレベルの例は、下記表を参考としてください。

インシデント レベル0 医療上のエラーや不具合は見られたが、患者には実施されなかった
レベル1 医療上のエラーや不具合が見られ、患者にも実施されたが、実害や影響を及ぼす変化は生じなかった
レベル2 医療上のエラーや不具合による患者の軽度な変化が見られたが、緊急治療は必要なかった
または、検査・一時的かつ簡単な処置・治療(消毒・鎮痛剤の投与など)を要した
アクシデント レベル3 医療事故により、患者に生命の危機を及ぼす影響はないものの、緊急かつ濃厚な治療を要した
レベル4 医療事故により、患者に永続的な障害や後遺症が残った
レベル5 医療事故により、患者が死亡した

なお、インシデントレベル・アクシデントレベルの定義は、病院の方針によってもやや異なる点に注意が必要です。病院によっては、一時的かつ簡単な処置・治療を要した出来事をインシデントと定義するところもあります。

5W1Hを意識して時系列でまとめる

厚生労働省の「重要事例集計結果」からもわかる通り、インシデントレポートを作成する際は、「具体的な内容」や「インシデントが発生した要因」の項目を詳細に記載することが大切です。

「いつ・誰が・どこで・何を・どのように・なぜ」がわかる5W1Hを意識して、それぞれの項目を整理すると、文章を組み立てやすくなります。特にチーム医療となりやすい看護師は、一つの物事に複数人が関わることも多々あるため、各看護師の行動をわかりやすく時系列でまとめましょう。

投与量や時間などは具体的な数字で書く

患者への投与量や投与した時間など、数値化できるものは具体的な数字で書くことがポイントです。患者への投与量については、指示された投与量と実際に投与した量まで書きましょう。また投与した時間についても、分単位で記録することが理想です。

NG例 「〇月〇日、指示された投与量とは異なる量で投与してしまった」
OK例 「〇月〇日〇時〇分ごろ、投与量は〇mlと指示されていたにもかかわらず、誤って患者Aさんに〇mlを投与してしまった」

インシデントの原因や対策を記録する

厚生労働省の「重要事例集計結果」にも「インシデントが発生した要因」「実施した、もしくは考えられる改善案」の項目がある通り、原因や今後の対策の記載も必要です。

ただ起きたインシデントの状況だけをインシデントレポートに記載するだけでは、再発防止にはつながりません。また、大きな原因を見つけることも大切ですが、インシデントの発生状況を改めて振り返り、状況ごとに「なぜそれが起きたのか」といった小さな原因を詳しく掘り下げることも重要です。

小さな原因も掘り下げることで、根本的な原因の究明はもちろん、適切な再発防止策・未然防止策を考えられるでしょう。

インシデントレポートを書く際の注意点

インシデントレポートを書く際の注意点を示す看護師

インシデントレポートを書く際は、下記の点に注意が必要です。

〇言い訳ではなく事実を述べる

自身の間違いを報告する場でもあるインシデントレポートには、反省や言い訳を含む傾向にあります。しかし、今後の再発防止対策として共有するインシデントレポートに反省や言い訳は必要ありません。起こったインシデントの事実を、ただ簡潔に述べることが重要です。

〇余計な情報は入れない

前後の流れをより詳しく書こうとするあまり、余計な情報を含ませすぎているケースもあります。余計な情報が多く含まれたインシデントレポートは読みづらく、重要な情報を見落としてしまう可能性も否めません。何を削れば良いかわからないという方は、一度「本来すべきこと・してしまったこと(起きてしまったこと)」の2つに絞ってみましょう。

〇推測の情報は入れない

転倒したところを見ていないにもかかわらず、仰向けで床に横たわっている患者さんを見て「患者が転倒していた」と書くなど、推測の情報を入れないようにしてください。実際に転倒した場面を見ていなければ、「転倒した」という状況はただの憶測に過ぎません。見たままの状況を事実として記載しましょう。

インシデントレポートは病院全体に共有されることが多々あるため、書き方に戸惑う看護師も多くいます。しかし、インシデントレポートの本来の目的は「問題点と再発防止策の洗い出し」です。インシデントレポートを上手に書くことだけが目的とならないよう、本来の目的も忘れずに、わかりやすいインシデントレポートを作成してください。

まとめ

ここまで、インシデントレポートの概要や目的から、書き方と注意点について詳しく解説しました。インシデントレポートとは、誤った医療行為の実施につながる出来事や、医療ミスが発生するおそれのある事態を指す「インシデント」の報告書です。インシデントの再発を防ぐためにも、インシデントレポートは欠かせません。

インシデントレポートはある程度のフォーマットが用意されているものの、誰もが瞬時に理解できる報告内容を作ることは大変です。患者さんをしっかり預かるうえで重要なインシデントレポートだからこそ、きちんと教えてくれる職場を選ぶことをおすすめします。

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