助産師と看護師は、どちらも同じ医療職です。そのため、助産師と看護師は何が違うのか、明確に把握していない人もいるでしょう。助産師と看護師の相違点を理解すれば、どちらが自分にとって向いている職業なのかどうかを判断することができます。
当記事では、資格や仕事内容などの6項目で助産師と看護師の違いを比較した上で、助産師に向いている人の特徴を解説します。助産師という職種に興味のある人や、助産師としてのキャリアアップを考えている人は、看護師との違いを理解しておきましょう。
助産師と看護師の違いを6つの項目でチェック!
助産師は、戦前は産婆と呼ばれ、古くから妊婦と赤ちゃんの安全・安心を守り続けてきました。女性にとって妊娠・出産は重要なライフイベントのひとつです。医療が進んだ現代でも、女性や胎児の命に危険が伴うお産には、経験を積んだプロのサポートが欠かせません。一方で、看護師も人々の命を守る職業です。
ここからは、6項目に分けて助産師と看護師の違いを比較します。
資格
助産師と看護師は、どちらも保健師助産師看護師法で定められた国家資格です。看護師として働くためには看護師国家試験に、助産師として働くためには看護師国家試験と助産師国家試験の両方に合格する必要があります。
●助産師
助産師国家試験の受験資格を得るためには、文部科学大臣の指定学校、もしくは都道府県知事の指定助産師養成所で学ぶ必要があります。看護学科と助産師養成課程のある大学に進めば、助産師・看護師両方の受験資格が得られますが、助産師養成課程に進めるのは一握りです。そのため、看護師免許の取得後、助産師養成所あるいは助産師養成課程のある大学で学ぶコースが一般的となっています。
●看護師
看護師国家試験の受験資格を得るためには、助産師同様に法律で定められた教育機関で3年以上の履修が必要です。看護師を目指せる教育機関には大学や専門学校などの種類があり、教育課程や資格取得にかかる年数・学費などもさまざまです。
仕事内容
看護師は子どもから高齢者まで老若男女を対象にケアを行いますが、助産師は妊産婦や新生児など対象者が限定されることが特徴です。
●助産師
妊娠から出産・育児に至るまで、母子の健康を守るための保健指導や管理を行います。
- 妊娠期〜出産後の健康管理・指導
- 新生児のケア
●看護師
傷病者の心身の回復を目指し、さまざまな支援を行います。
- 医師の診察や治療の補助
- 食事・排泄・移動など日常生活の援助
看護師は、医師の判断や指示をもとに医療行為を行います。助産師は、看護のスキルに加えて出産に関する専門知識と技術を有しているため、正常分娩に限り医師の指示なく助産行為が可能です。
職場
看護師・助産師ともに半数以上が病院で働いています。看護師は、外科や内科などさまざまな病棟に配属される可能性があります。一方で、お産の専門職とされる助産師は産婦人科あるいは婦人科に限られるため、希望しなければ異動はほとんどないでしょう。助産師・看護師の働く主な職場と割合は下記の通りです。
●助産師
割合は少ないものの教育機関や研究機関などに勤務する人も存在しており、助産師の活動の場は徐々に拡大しつつあると言えます。
病院 | 60.9% |
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診療所 | 24.5% |
助産所 | 5.6% |
(出典:日本看護協会「看護統計資料室(3)助産師(年次別・就業場所別)」)
●看護師
医療機関以外の職場では、居宅サービス等・介護老人福祉施設の就業者数が増加傾向にあります。少子高齢化が進む中で医療の場が多様化し、看護を提供する場が病院から介護施設や在宅へ移行している状況がうかがえます。
病院 | 68.9% |
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診療所 | 15% |
訪問看護ステーション | 4.3% |
(出典:日本看護協会「看護統計資料室(4)看護師、准看護師(年次別・就業場所別)」)
助産師には看護師にはない開業権が認められています。助産師として独立・開業すれば、こだわりのあるケアを提供することも可能です。
平均年収
助産師は、看護師に比べて約80万円高い収入です。
助産師 | 約570万円 |
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看護師 | 約492万円 |
●助産師
看護師と助産師の2つの免許を持つため、看護師よりも高めの給料設定の施設や助産師手当の付く施設が多数あります。また、分娩介助手当や出産オンコール待機手当など、助産師ならではの手当も存在します。
●看護師
収入アップを狙う方法としては、看護師長や部長などの管理職を目指すスタイルが一般的です。また、認定看護師や専門看護師などの上級資格を取得することで資格手当が付く場合もあります。
助産師は女性にのみ許された資格であり、高い専門性を求められることが、助産師と看護師の年収の差につながっていると言えるでしょう。
求人数
助産師の求人は看護師と比べて少数です。しかし、生命の存続に妊娠・出産は不可欠であるため、今後も一定の求人数が出ると予測されます。
助産師 | 754件 |
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看護師 | 50,411件 |
(出典:マイナビ看護師)
特に、2020年以降は新型コロナウイルス拡大により医療機関や療養施設が増加したことに伴い、看護師の求人数は多くなっています。また、不妊治療・ハイリスク出産の増加など、近年は助産師のニーズも高い時代だと言えるでしょう。独自の分娩スタイルにこだわる母親や家族も増えています。そのため、助産師・看護師ともに需要がなくなることはないでしょう。
就業者数・学校養成所数
助産師の就職者数は、看護師と比べて圧倒的に少ないことが特徴です。また、学校養成所は助産師・看護師ともに大都市圏に集中しています。
●助産師
都道府県別の人口10万対比を見ると、新潟・宮城・富山・秋田の順で助産師の割合が高く、東北地方に助産師が集中している状況です。学校養成所数は、東京・大阪・福岡の順に多く、主要都市がほとんどを占めています。
就業者数 | 40,632人 |
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学校養成所数 | 228校 |
(出典:日本看護協会「看護統計資料室(3)助産師(年次別・就業場所別)(6)都道府県別看護職員、人口対比(2)都道府県別・総数(令和2年4月)」)
●看護師
都道府県別の人口10万対比では鹿児島・高知・長崎・宮崎の看護師数が多く、九州地方は看護師が充実している地域であることが分かります。学校養成所数は、東京・大阪・北海道の順に多く、人口の多いエリアに集中しています。
就業者数 | 1,272,024人 |
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学校養成所数(大学・3年課程) | 861校 |
(出典:日本看護協会「看護統計資料室(4)看護師、准看護師(年次別・就業場所別)(6)都道府県別看護職員、人口対比(2)都道府県別・総数(令和2年4月)」)
助産師・看護師ともに就業者数は増えているものの、慢性的な人手不足であることに変わりはありません。
助産師に向いている人の特徴は?

母親と子ども、2つの命を守る助産師の仕事は責任重大です。しかし、他では得られないやりがいや達成感のあるすばらしい職種だと言えるでしょう。助産師に向いている人の特徴は、以下の通りです。
●タフな強さがある
時には死産・流産・中絶に関わることもあります。一緒に悲しむだけではなく、母親や家族を前向きな気持ちにできる精神的な強さも必要です。
●思いやりがある
妊娠中は精神的に不安定になる妊婦が多いとされます。多忙な業務の中でも優しさや思いやりを忘れず関わることが大切です。
●体力に自信がある
出産は予測不可能であるため、夜勤帯の急な呼び出しや立て続けの出産など、超過勤務は避けられません。それでも妊婦を支え続ける体力が求められます。
神秘的な生命の誕生に魅力を感じる人、スキルを生かして自分にしかできないケアを提供したいと考える人に、助産師は適していると言えるでしょう。
まとめ
看護師とのダブルライセンスとなる助産師は、専門的な知識と高い技術力が求められる職種です。妊娠前から出産後まで妊婦と子どもが安心・安全に過ごせるよう、丁寧なケアが求められます。多様化する分娩を支える専門職として、知識や技術力をブラッシュアップし続ける向上心と、女性ならではの細やかな気配りが助産師には必要不可欠です。
助産師としての働き方に興味を持った人や、自分に合ったキャリアプランを知りたい人は、マイナビ看護師をぜひご活用ください。
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