• 2020年6月29日
  • 2022年5月11日

看護師こそ保険に入るべき? 看護職賠償責任保険について解説!

 

日々の業務を通して看護師向けの保険があることは知っていても、「どれに入っていいか分からない……」 「そもそも忙しい中で保険のことを考えることが面倒」という方も多いのではないでしょうか。 しかし、看護師は会社員に比べて訴訟リスクが高く、看護を通じて自分が感染症にかかってしまう可能性もあります。 今回は、看護師が保険に入るべき理由や、どのような保険に入るべきかを詳しく解説します。

看護師に保険加入をすすめる理由

看護師の仕事では、病院であれば患者さんに医療行為を、施設であれば利用者の方に介助などを行います。 その専門性の高さから、一つ判断を誤れば医療事故を起こすリスクもあります。 もちろんミスがないのが何よりですが、対応する相手が健康上や日常生活上、弱い立場にあるほど、何かあった時のリスクが大きくなります。さらに、時代の変化とともに、海外だけでなく日本でも患者さんから看護師個人が訴訟を起こされるケースが増えています。

看護師に付きまとうのは、訴訟リスクだけではありません。新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、医療従事者が感染するケースが報告されているように、看護師は自らが被感染者になるという大きなリスクを負っています。

こうしたリスクから自分を守るためには、保険を上手に利用することが選択肢の一つになります。

看護師に関わる過去の判例

看護師に関わる裁判などは、年々増えてきています。 例えば、以下の凡例などが挙げられます。

・病院での事例(2007年)
看護師が病院内で患者さんに対して爪切りを行った後に爪が剥がれ、傷害罪として起訴される。実刑が確定するが、のちに控訴審で無罪。
・特別養護老人ホームでの事例(2013年)
特別養護老人ホームで入所者がおやつをのどに詰まらせ、1ヶ月後に死亡。 おやつ介助中の見守りが不十分だったとして看護師に業務上過失致死有罪判決(20万円の罰金刑)が言い渡される。 ※2020年8月11日ナースプラス編集部追記:東京高裁は7月28日、罰金20万円とした一審の長野地裁松本支部判決(2019年3月25日)について破棄し、被告に逆転無罪を言い渡した。
[参照元]https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200808/k10012557791000.html

このほか、精神科での抑制後にできた擦過傷に対する損害賠償、看護師の言動で精神的苦痛を被ったという訴えなど、看護師本人が訴えられるケースは多数あります。また、患者さんから預かった入れ歯の紛失、床頭台に置いてあったタブレットの破損といった物損事故も考えられます。

インシデント・アクシデントがないように勤務しているつもりでも、「絶対に事故を起こさない」と言い切れる看護師はいないはず。安心して働きたいと考えている人は、看護職賠償責任保険に加入しておくといいでしょう。

看護職賠償責任保険とは?

看護職賠償責任保険とは、看護師が看護行為をした際のトラブルなどを補償する保険です。 法律上の賠償責任が発生した場合には損害賠償金が、損害賠償責任に関する訴訟・示談交渉では弁護士費用や訴訟費用などが支払われます。

総合病院など規模が大きい病院は、病院が病院賠償責任保険に加入して、医療事故・物損事故などに備えているのが一般的です。 しかしそこまで規模が大きくない病院など、勤務先によっては病院賠償責任保険に加入していないケースがあり、看護師個人が訴えられると、看護師自身が責任を負わなければならないケースも想定されます。

どこの事業者の保険に入ればよい?

看護職賠償責任保険は、次の事業者が取り扱っています。

(1)日本看護協会の「看護職賠償責任保険制度」

・日本看護協会の会員が加入できます。
・主な引受会社:東京海上日動火災保険株式会社・三井住友海上火災保険株式会社・損害保険ジャパン株式会社

  金額
掛け金 2650円/年
対人賠償 5000万円/1事故
人格権侵害 5000万円/1事故
対物賠償 100万円/1事故
傷害死亡・後遺障害保険金 66.3~85万円
初期対応費用 500万円
血液曝露等傷害保険金 HBV:1.8万円
HCV:18万円
HIV:60万円

対人賠償では「誤った薬剤を投与してしまい、患者に障害を負わせてしまった」といったケース、人格権侵害では「会話した患者から『名誉を傷つけられた』と訴えられた」といったケースなどが補償の対象になります。 また、セクハラやパワハラなどの法律相談費用も補償対象になっています。

(2)Willnext(ウィルネクスト)の「看護職向け賠償責任保険」

・事業主:日本看護学校共済会 ・保険加入資格:日本看護学校共済会の加入者であればだれでも加入できます。看護学生・病院勤務看護師も加入可で、看護学校に勤務していなくても大丈夫です。
・引受会社:東京海上日動火災保険株式会社

Willnext Aプラン
  金額
掛け金 2980円/年
対人事故 5000万円/事故
対物 50万円/1事故
人格権侵害 5000万円/1事故
初期対応費用 250万円/1事故
感染見舞金制度 1~10万円
Willnext Bプラン
  金額
掛け金 3440円/年
対人事故 1億円/1事故
対物事故 100万円/1事故
人格権侵害 1億円/1事故
初期対応費用 250万円/1事故
感染見舞金制度 1~10万円

Willnextの「看護職向け賠償責任保険」には感染見舞金制度があり、針刺し事故だけでなく、インフルエンザや流行性角結膜炎など身近な感染症のほか、新型コロナウイルスに感染した場合にも感染見舞金が支払われます。

(3)大学病院・看護師派遣会社が提供する「看護職賠償責任保険」

看護職賠償責任保険は、大学病院や看護師派遣会社などでも提供しています。 ご自身の勤務先で保険加入ができるかぜひ確認してみましょう。

※補償内容を一部抜粋しました。詳細は各事業所・保険会社へお問い合わせください

予測不可能な時代だからこそ、看護師も保険加入を

一昔前までは医療従事者は聖職で、その人たちに対し訴訟を起こすなどありえませんでした。しかし、今では医療従事者も一つの職業人としてとらえられ、年々看護師が訴訟トラブルにあうことも増えています。 まだまだ身の回りで看護師の保険に加入している方は少ないかもしれませんが、安心して働くためにも、保険加入を考えてみてはいかがでしょうか。

[参照]

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