• 2016年11月29日
  • 2022年5月17日

犯人は患者さん!? 身近にせまる「看護師ストーカー」

 

近年、看護師のストーカー被害が増えているのをご存じでしょうか。ストーカーになっているのは、実は患者さんということも……。患者さんとのトラブルは上司に報告しづらいため、悩みを抱えてしまう看護師も多いようです。今回は、看護師A子さんが実際に経験したストーカー体験を例に、患者さんへの接し方などを解説いたします。

看護師の熱心な信頼関係構築が「勘違い」に

外科病棟に勤務する、独身でひとり暮らしの看護師A子さん(26才)は、受け持ちをした独身男性患者さんのB氏(43才)からストーカー被害を受けました。
外科病棟は、重症患者さんが比較的少なく、回復して退院していく患者さんがほとんどです。術後の経過によっては長期に入院する患者さんもいるので、その間に患者さんと親しくなることもあります。看護師としては、自分の受け持ち患者さんと信頼関係を築くのは当然のこと。受け持ち意識が非常に高かったA子さんは、骨折で入院していたB氏と積極的にコミュニケーションをとり、信頼関係を構築していました。しかし、A子さんのそういった看護の姿勢が悲劇を生むきっかけとなってしまいました。女性経験の少ない、まじめな性格のB氏は、『自分に好意を抱いている』『自分だけは特別』だと思いこみ、勘違いをしてしまいました。

エスカレートする患者さんの行動

訪室のたびに、A子さんはB氏から「親身に看護をしていただいたお礼に、退院したらご飯をごちそうしますよ」などと声をかけられるようになりました。その言動は日増しにエスカレートし、清拭時には「胸を触らせて」といった驚きのセクハラ発言まで出てくるほど。いくら受け持ち意識が高いA子さんでも、この発言には不快感を覚え、ほかの看護師へ相談することに……。しかし、同世代の看護師もB氏に同じようなことを言われたと話していたので、『自分だけではないのか』と安心し、とくに警戒することなく、それ以降はB氏の発言を聞き流すようにしていました。
B氏が退院する日、退院説明をするためA子さんが訪室したときのこと。思いつめた表情のB氏が「場所を変えて話をしたい」と言い出しました。『退院に際してなにか問題でもあるのかも?』とB氏の申し出を聞き入れ、B氏に言われるがまま、人けのない洗濯室へ。すると、そこでA子さんの想定外のできごとが……。自分の連絡先を渡しながら、「退院してからも会いたい」「ご飯をごちそうするって以前に約束したから、食事に行こう」「連絡先を教えてほしい」と、鬼気迫る表情で迫ってきたB氏。狂気すら感じる表情に恐怖を感じた看護師A子さんは断ることができず、連絡先を教えてしまいました。

家を知られ、ストーカー行為に発展

退院したB氏からは毎日、数時間おきに執拗な誘いのメールが届くようになりました。断ったり、無視をしたりしていると、おとなしそうなB氏からは想像もつかない汚い言葉で書かれた逆ギレのようなメールが届くことも。怖くなったA子さんは、悩んだすえ、『同僚も一緒なら』という条件で食事に行くことにしました。
食事会はとくに何事もなく終わりましたが、お酒を飲み過ぎてしまったA子さん。足元のおぼつかないようすを見たB氏は、『同じ方面なので僕が送ります』と同僚を安心させ、A子さんを家まで送ることに――これが悲劇の始まりでした。
A子さんの住所を知ったB氏のストーカー行為がその日から始まりました。家の前で待ち伏せされたり、在宅中に突然ドアを叩かれたりするなど、行動はどんどん過激に。身の危険を感じたA子さんは、転居したうえに携帯番号も変更して、ストーカー対策をとりました。しかし、ほっとしたのもつかの間。これが裏目にでて、B氏は勤務先の病棟に訪れ、さらには帰宅するA子さんを尾行するようになりました。精神的にも肉体的にも追いつめられたA子さんは、師長へ相談。病院運営改善部や医療安全部が動いて、B氏の出入りを禁止にし、ストーカー行為を免れることになりました。

危険を感じたら、すぐに上司に相談することが大切

看護師は、ストーカー相手が患者さんだとなかなか上司には報告しづらいものです。しかし、行動がエスカレートすると、自分や同僚レベルではどうにもできなくなる事態に発展してしまうため、患者さんのストーカー行為からは、病院全体で看護師を守っていく必要があります。患者さんの言動に危険や違和感を覚えたら、必ず上司に相談するようにしましょう。

文:看護師 水谷良介

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