• 2020年9月25日
  • 2022年2月10日

尿道カテーテルQ&A「おさらいしたい!尿道カテーテル挿入時・留置中の “感染対策上”の注意点は?」

 

『エキスパートナース』20183月号<尿道カテーテル[挿入][継続][抜糸]の根拠Q&A>より抜粋。「Q4おさらいしたい!尿道カテーテル挿入時・留置中の感染対策上の注意点は?」を紹介いたします。

南里純代
大阪市民病院機構 大阪市立十三市民病院 看護部主査(感染管理認定看護師)

尿路感染症は医療関連感染全体の30~40%を占め、そのうち約80%が尿道カテーテルなどの器具が原因となっています(p.58参照)。そのため、尿路感染症を起こさないためには、尿道カテーテルの適正使用と管理が最も重要になります。カテーテル関連尿路感染症(catheter-associated urinary tract infectionCAUTI)予防のためのポイント6を、以下に示します。

尿道カテーテルの臨床上の主な適応は、以下の場合です。

①下部尿路閉塞を解消する場合
②泌尿器系あるいはそれに隣接する臓器の手術を行う場合
③長時間の手術、尿量モニタリングが必要な手術を行う場合
④重症患者において正確な尿量を測定する場合
⑤長時間、ベッド上安静が必要な場合 など

尿道カテーテルは必要時にのみ挿入し、継続の必要性を日々アセスメントする必要があります。医療者の利便性のため、失禁患者の看護の代替としての使用は避けなければなりません。

2.カテーテルの閉鎖は破らない

ランニングチューブと尿道カテーテルの接続部は、不必要な開放をできるだけ避ける必要があります。

尿検体採取時は採尿ポート(サンプルポート、図1)から採取を行います。入浴時においてもランニングチューブとカテ ーテルは接続したまま入浴します。

カテーテルの閉塞時など、カテーテルの交換が必要な際には蓄尿バッグを含めた一式(図2)の交換が必要です。蓄尿バッグを外した際に、尿道カテーテル内に微生物が侵入する可能性があるからです。開放式カテーテルと閉鎖式カテーテルを比較すると、留置後の細菌尿の検出期間に違いがあると言われています(表1/文献1)。感染予防の観点からは、閉鎖式カテーテルが推奨されます。

1 採尿ポート(サンプルポート)からの採取

適切な検体採取のため、無菌的に尿を採取する必要がある

2 閉鎖式カテーテルのセット

1 開放式カテーテルと閉鎖式カテーテル留置後の細菌尿の検出期間の違い

3.尿道カテーテルの挿入は清潔操作で行う

挿入前に手指衛生を行い、滅菌手袋を着用します。挿入は、滅菌器具を用いて無菌手技により行います。

手指衛生は手袋を脱いだあとも必要です。尿道カテーテル挿入の実施者は、正しい挿入技術と、尿道カテーテル挿入時の合併症に関する知識の習得が必要です。

4.交差感染を予防する

まず、手袋、エプロン、ゴーグルを着用します。

尿回収時、排液口が容器に触れないように注意します(図3)。回収容器は異なる患者間で、同じ容器を使い回さないことが必要です。

排液後、排液口は清潔なガーゼやアルコール綿で拭くなどして、尿の溜まりを除きます(図4)。

3 尿の回収

4 排液口を拭く

5.尿の逆流防止

蓄尿バッグが膀胱よりも低い位置になるように固定します(図5)。

なお、車椅子への移動時には、あらかじめ蓄尿バッグを空にしてから移動します。その後、蓄尿バッグを引きずらないように、膀胱よりも低い位置に固定します。

5 蓄尿バッグの固定位置

6.適切な尿道カテーテルの選択

尿道カテーテルの種類には「材質」「形状」「サイズ」があります。それぞれの特徴を理解し、選択する必要があります(表2/文献2)。

尿道カテーテルのサイズは尿道の外傷を極力少なくするため、尿量が確保できる可能な限り細いサイズ(一般的には1416Fr程度)を選択します。

2 カテーテルの材質と特徴


[引用文献]
1.馬場真子,祖父江正代:膀胱留置カテーテル.後藤百万 編,排尿管理の技術Q&A 127,メディカ出版,大阪,2010:82
2.膀胱留置カテーテル挿入.ナーシング・スキル日本版,エルゼビア・ジャパン.最終更新日2017.12.25.
[参考文献]1.満田年宏 訳・著:カテーテル関連尿路感染予防のためのCDCガイドライン2009.ヴァンメディカル,東京,2010.
2.病態別ガイドライン Ⅰ 尿路感染症防止,尿道カテーテル管理.国公立大学附属病院感染対策協議会 編,病院感染対策ガイドライン 改訂第2版.じほう,東京,2015:101-108.

[PROFILE]

南里純代(なんり・すみよ)

大阪市民病院機構
大阪市立十三市民病院 看護部主査
(感染管理認定看護師)

2010年感染管理認定看護師認定。2016年名古屋市立大学大学院博士前期課程修了。院内感染対策担当者を務める。


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)照林社
[出典]エキスパートナース20183月号
P.56~「尿道カテーテル 挿入・継続・抜去の根拠Q&A


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