• 2020年7月30日
  • 2022年2月10日

尿道カテーテルQ&A「尿道カテーテル留置時は尿の何をどう観察する?」

 

『エキスパートナース』2018年3月号<尿道カテーテル[挿入][継続][抜糸]の根拠Q&A>より抜粋。「Q3尿道カテーテル留置時は尿の何をどう観察する?」を紹介いたします。

松本尚子 大阪市民病院機構 大阪市立十三市民病院 看護部、6階病棟看護師

尿のアセスメント項目

尿は、「体液中の異常物質や代謝産物が高濃度に含有された総決算の産物」[引用文献1]であり、その「量・色・臭い」[引用文献1]はさまざまです。それらを通して看護師が行うべきアセスメントのポイントについてみていきましょう。

1)尿量

①正常な尿量
一般的な成人では8001,500mL/日であり、小児(16歳)は3001,000mL/日、小児(612歳)は5001,500mL/日の尿がみられます。

②多尿
成人では2,500mL/日以上、小児では2,000mL/日以上を多尿とします。また、1日のうち夜間の尿量が33%以上であれば夜間頻尿といいます。必ず尿量だけでなく、食事量、摂取水分量も確認することが大切です。

③乏尿・無尿
乏尿は尿量400mL/日、無尿100mL/日とされます。腎臓での尿の生成低下や上部尿路の閉塞などにより、尿量が減少した状態です。水分の貯留、不要な代謝物が蓄積され、電解質の異常も起こります。

乏尿・無尿の場合には、早期に治療を始める必要があります。原因により治療方法が異なるため、患者情報の収集や血液データを含めた全身状態の把握が重要です。

手術後、侵襲の大きい検査や治療、また化学療法実施時は、主治医の指示する尿量を患者がクリアできるように観察し対応することが、看護師の役割です。

④尿排出障害・尿閉
膀胱内に貯留している尿を排泄できない状態であり、下腹部膨隆が見られます。腎臓での尿の生成は正常でまったく排泄できない場合を「完全尿閉」、少量でも排泄がある場合は「不完全尿閉」といいます。

尿閉の原因は前立腺肥大症や尿道狭窄、膀胱内の凝血塊や結石、糖尿病や骨盤内手術などがあり、風邪薬や飲酒などが原因となる場合があります。

尿閉の際はまずカテーテルで尿を排出した後、原因の対処を行います。

2)尿の色

尿の色の変化と考えられる原因について、(表1/参考文献1-3)に示します。 色が薄くなり、淡黄色で混濁がない「正常」になればよいのですが、場合によってはすぐに処置が必要になることもあります。尿道カテーテル挿入中は特に感染結石などの合併症の早期発見に努めましょう。

なお、共通の指標として血尿スケールを使用します。スケールⅢ以上に尿の色が変化した際は処置が必要な場合があり、医師に報告します。 また、まれに便秘や尿路感染により尿の色が紫色になることがあります。これは紫色蓄尿バッグ症候群(purple urine bag syndrome、PUBS)と呼ばれるものです(図1)。抗菌薬は投与不要ですが、排便コントロール、尿量の確保などが必要です[引用文献4]。

尿色については、リファンピシン、センノシド、シクロホスファミド、イホスファミドなどで「赤色」を呈するときがあります。また検査でエバンスブルーを投与して組織を染色したときには青色になります。

1 紫色蓄尿バッグ症候群(PUBS

3)尿臭

臭気についても重要な所見です。排泄介助は看護師の大きな役割ですが、感染尿であれば排尿直後から腐臭があります。臭気が増している場合は感染の可能性があり、主治医への報告が必要です[引用文献1]

表1 尿の色による所見

(文献1-3を参考に作成)


[引用文献]
1.鈴木康之:尿検査の意義と方法について教えてください.後藤百万,渡邉順子 編:徹底ガイド排尿ケアQ&A.総合医学社,東京,2006:68.
2.篠原信雄:肉眼的血尿.Uro-Lo 2016;21(1):8-9.
3.林智世:カテーテル留置中に血尿がみられたらどうすればよいのですか.後藤百万,渡邉順子 編:徹底ガイド排尿ケアQ&A.総合医学社,東京,2006:122-123.
4.日本泌尿器科学会 泌尿器科領域における感染制御ガイドライン作成委員会:泌尿器領域における感染制御ガイドライン.日本泌尿器科学会雑誌 2009;100(4):16.

 


[参考文献]
1.後藤百万:蓄尿と排尿のメカニズム.NPO愛知排泄ケア研究会 編,排泄機能指導 士テキスト:16-17.
2.日本創傷・オストミー・失禁管理学会 編:排泄ケアガイドブック.照林社,東京,2017.102-103.
3.白井小百合:検査・処置.医療情報科学研究所 編,病気がみえるvol.8 腎泌尿器 第2版.メディックメディア,東京,2014:16-17

[PROFILE]

 

松本尚子(まつもと・なおこ)

大阪市民病院機構大阪市立十三市民病院 看護部、6階病棟看護師

6階病棟外科、泌尿器科、消化器内科病棟勤務。排泄機能指導士、日本コンチネンス協会電話相談員、おむつフィッター、間歇導尿指導士。

本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)照林社 [出典]エキスパートナース2018年3月号 P.56~「尿道カテーテル 挿入・継続・抜去の根拠Q&A」


■関連記事
尿道カテーテル[挿入][継続][抜糸]の根拠Q&A
まず大前提として確認しよう! “なぜ尿道カテーテルを入れているの?
尿道カテーテルQ&A「尿道カテーテル挿入・留置時の尿道損傷、どう防ぐ?」
尿道カテーテルQ&A「尿道カテーテルが“困難”な場合、どうする?」
尿道カテーテルQ&A「おさらいしたい!尿道カテーテル挿入時・留置中の “感染対策上”の注意点は?」
尿道カテーテルQ&A「尿道カテーテル留置中のトラブル:こんなときどうする?」


関連記事

『エキスパートナース』2018年3月号<尿道カテーテル[挿入][継続][抜糸]の根拠Q&A>より抜粋。ここでは挿入・継続・抜糸のよくある疑問を紹介いたします。詳しくは<この記事を読む>からリンクしている解答ページで確認できます。[…]

お一人で悩まず、看護師専任の
キャリアアドバイザーに相談してみませんか?