• 2019年2月26日
  • 2022年3月22日

不眠患者の看護計画~睡眠障害のアセスメントの方法~<睡眠ケアの最新エビデンス>

 

『エキスパートナース』201611月号<最新エビデンスに基づく今はこうする! 患者の睡眠ケアQ&A>より抜粋。知ると役立つ! 「睡眠ケアの今はこうする」「Q2患者が『眠れない』と訴えるときは、何から確認する?」を紹介いたします。

金子昌子 獨協医科大学看護学部 老年看護学 教授

Q:患者が『眠れない』と訴えるときは、何から確認する?

A :“不眠のタイプ・期間”を確認することから始めましょう。(金子昌子)

睡眠のアセスメントとは、主観的な休息の満足度を調べること

患者が「眠れない」と訴えているときは、主観的なその訴えを傾聴し、ツールを用いて睡眠の質や量をアセスメントします。 さらに、睡眠は日中の活動とも関連します。朝は「すっきり覚醒し、1日のリズムをつくる準備行動がとれているか」、日中は「活動への意欲や横になっている時間が多くなっていないか」というように、アセスメントする必要があります。

「眠れない」をアセスメントする方法

1眠れないタイプ”“眠れていない期間を確認する

ひと口に「眠れない」と言っても、そう感じる理由はさまざまであり、不眠のタイプは次のように分類されます。 ?なかなか寝つけない[入眠困難] ?夜間に何度も目が覚めてしまう[中途覚醒] ?早朝に目が覚めてしまう[早朝覚醒] ?睡眠時間はとれているが、寝た感じがしない[熟眠障害] など

これらに対し、例えば入眠困難では「光や音、室温などの環境調整を図る」、熟眠障害では「覚醒中の活動を促す」といったように対応が異なることから、最初に“どのように眠れていないのか”、訴えを聴くことが必要です。

さらに、その状態が以下のどの期間に当てはまるかを尋ねます。 ?数日続いている[一過性不眠] ?13週間くらい続いている[短期不眠] ?慢性的に眠れない状態が続いている[長期不眠]

一過性不眠は眠れない心理的な要因や環境要因を取り除く支援が必要ですが、長期不眠の場合は、加齢による概日リズムの乱れやベースに何らかの疾患が考えられるため治療が必要となります。

2)ツールを用いて睡眠状態を評価する

続いて、ツールを用いてアセスメントします。 入院患者の24時間以内の睡眠状態評価には、質問項目が少なく簡便な睡眠の質の評価に適している「セントマリー病院睡眠質問票」表1)(引用文献1,2)が向きます。

入院前から「眠れない」という患者には、過去1か月の時間枠で睡眠状態を評価する、ピッツバーグ睡眠質問票が向きます。このツールは、「睡眠の質」「睡眠時間」「入眠時間」「睡眠効率」「睡眠困難」「眠剤使用」「日常生活への影響」をとらえ、不眠の原因となる抑うつや不安など心理的な状態を知る手がかりを得ることもできます。

3)理由を考え、看護介入を開始する

睡眠の状況を把握したら、睡眠に及ぼす影響要因から、不眠の理由を考えます(図1)。「眠れない」という状況は多くの要因が絡んでおり、原因を1つに特定することは困難です。しかし、そのなかに身体的要因や薬剤性要因が考えられる場合は、医師や薬剤師などの他職種と相談・調整を図り、対応を検討します。 また環境要因や心理・精神的要因が予測できる場合は、環境調整やリラクゼーション、部分浴ほかを取り入れるなどの看護介入を開始します。

コラム 01

“負のスパイラル”を生じさせる、不穏・せん妄と睡眠障害の関係

せん妄について、看護師は経験的にせん妄であると判断しがちです。しかし、せん妄は見当識障害や注意力の欠如など可逆的な脳の機能不全によるものです。そのため、適切な評価に基づく医学的診断を要します。一方、不穏や混乱は状態をさすものであり、せん妄とは明確に区別をします。もちろん不穏や混乱のベースにせん妄が潜在していることも多いので、十分な観察と評価が重要です。 せん妄は、個体のもつ直接因子(脳機能中枢神経代謝障害や薬剤など)と準備因子(高齢認知症抑うつなど)に誘発因子(ICU入室身体拘束発熱など)が複雑に絡み合うことで発症するとされています。 これらの因子は、睡眠覚醒を支配する概日リズムに影響を及ぼし、不眠や昼夜逆転などの睡眠障害を引き起こします。睡眠障害は、活動性の低下や現状認知をゆがめるなど認知機能へも悪影響を及ぼし、せん妄や混乱・不穏を増悪させることにつながります。

[引用文献]
1.Ellis BW,Johns MW,Lancaster R et al.:The St. Mary’s Hospital sleep questionnaire:a study of reliability.Sleep 1981;4(1):93-97.
2.内山真,太田克也,大川匡子:睡眠および睡眠障害の評価尺度.太田龍朗,大川匡子 責任編集,臨床精神医学講座13 睡眠障害.中山書店,東京,1999:489-498.


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