• 2021年7月28日
  • 2021年11月9日

つらい生理痛から解放される体質をつくる「ふたつの栄養素」

 

生理のときは、いつも腹痛や腰痛を我慢しながら仕事をしている——。そんなふうに、つらい生理痛に悩まされている人は、少なくないと思います。生理痛がひどいのは、月に数日かもしれませんが、それが毎月、何年も続くとなると憂鬱なもの。生理を気にしてスケジュールを組むのも簡単ではないですし、重症になると欠勤せざるを得ないほど体調が悪くなるケースも珍しくありません。

でも、なぜ生理痛がない人と重い人がいるのでしょうか? その違いには、普段の食生活が深く関係しています。「ずっと鎮痛剤に頼っていていいのか心配」「少しでもラクに過ごしたい」という人に向けて、生理痛を緩和するための栄養対策を紹介します。

管理栄養士・分子栄養学カウンセラー/篠塚明日香
写真/櫻井健司

生理痛はなぜ起こるのか?

生理痛は、経血を押し出すために子宮が収縮することで起こる痛みです。下腹部が痛むだけでなく、腰痛、頭痛、吐き気、下痢などをともなうこともあり、その症状に悩む人は多いでしょう。

こうした症状が起こる原因となっているのは、子宮内膜から放出されるプロスタグランジンという生理活性物質(子宮の収縮を促して、生理の経血を身体の外に排出する役目を果たしています)。この量が多すぎると、子宮や血管の収縮が強くなり、不快な症状が出るのです。

プロスタグランジンは、子宮だけでなく体の各所でつくられており、けがをしたときに傷を治したり、出血を止めたりといった大切な働きも持っています。しかし、体質によってはこの物質がつくられ過ぎたり、収縮した子宮や血管が緩みにくくなったりすることもあり、それが重い生理痛を引き起こす原因になってしまいます。

では、なぜそのような体質になってしまうのでしょうか?栄養摂取の面から見ると、次のふたつの原因が考えられます。

①摂取している油のバランスの偏り
②マグネシウム不足

ここからは、ふたつの原因について順に解説してきます。

どんな油をとっているかで体質が決まる!?

まずは、「摂取している油のバランスの偏り」について、具体的に説明しましょう。

先に挙げたプロスタグランジンは、普段の食事でとった油からつくられる物質です。わたしたちの体は細胞の集合体ですが、その細胞の壁にあたる細胞膜はほとんどが油(脂質)。食事から取り入れた油は、細胞膜の材料となって保管されており、必要なときに切り出されて使われています。

プロスタグランジンは、肉や卵、サラダ油などに含まれる脂肪酸からつくられますが、油には、痛みを抑える性質のものもあります。それは、オメガ3系といわれる脂肪酸。こちらは、主に魚の油、えごま油、亜麻仁油などからつくられます。

これを食べ物に当てはめて考えてみましょう。炒め物や揚げ物、肉料理に偏った食事をすると、必然的にプロスタグランジンをつくりやすい細胞膜になります。一方、肉も魚もバランスよく食べ、オリーブオイルやえごま油などの良質な油もきちんと摂取していると?オメガ3が多い細胞膜がつくられ、その結果、痛みや炎症を起こしにくい体質をつくることができるわけです。

ちなみに、プロスタグランジンはアレルギーのような炎症反応を起こす働きも持っているので、花粉症やアトピーが出やすい人も、オメガ3系の油の摂取が不足している可能性があります。

オメガ3を効率的にとれるのは、さばやいわしなどの青魚ですが、青魚が苦手な人も多いでしょうし、こまめに食べるのは難しいかもしれません。そんな場合は、亜麻仁油やえごま油を活用するのがおすすめです。ただし、オメガ3は酸化しやすく加熱に弱い性質がありますから、魚は刺身や酢締めにし、オイルはサラダやスープ、和え物にかけるという食べ方にしましょう。

なお、ファストフードを中心とした、外食やスナック菓子を食べることが多い食生活だと、どうしてもサラダ油の摂取量が増えてしまうので、そうした習慣を改善することも意識してください。

マグネシウム不足が筋肉を緩みにくくする

続いて、「マグネシウム不足」について説明しましょう。

マグネシウムは、体に不可欠な必須ミネラルのひとつで、カルシウムとのバランスを取って働く性質があります。カルシウムは筋肉を収縮させる作用、マグネシウムは筋肉を緩める作用があり、このふたつは2(カルシウム):1(マグネシウム)で摂取するのが理想とされていますが……。現代人はこのバランスが崩れ気味。そうなると、子宮が収縮しやすくなり、生理痛を起こしやすくなってしまいます。

たとえば、牛乳やチーズなどの乳製品はカルシウムが多く、カルシウムとマグネシウムのバランスが10(カルシウム):1(マグネシウム)になっている食品。ひんぱんに乳製品を食べる人は、マグネシウム不足が強い傾向があります。

また、加工食品に含まれる添加物のなかには、マグネシウムをはじめとする必須ミネラルの吸収を阻害するものもありますから、外食やコンビニ食が増えることでもマグネシウム不足は加速します。

しっかりとマグネシウムを補うだけで、生理痛がかなり緩和されるケースもありますので、乳製品や加工食品のとり過ぎには普段から気をつけましょう。加えて、マグネシウムが多く含まれるアーモンドやゴマなどの種実類、ひじきやあおさなどの海藻類、納豆や豆腐などの豆類をしっかり食べてください。手軽なおやつとして、マグネシウムがたっぷりのアーモンドフィッシュを取り入れるのもおすすめです。

食事によって体質が変わるのは、細胞が入れかわる約2~3カ月がひとつの目安となります。少し長いと感じるかもしれませんが、継続することで必ず変化が出てきますのでコツコツと取り組んでみてください。

また、強い生理痛の場合、子宮内膜症や子宮筋腫といった疾患が原因となっているケースもあります。症状が重いときは、専門医に診てもらうことも忘れないようにしてください。

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