• 2019年6月11日
  • 2022年2月28日

看護師のグリーフケア(遺族への精神的支援)について

 

看護師は患者さんの死と向き合う機会が多いですが、さまざまな理由から自身の心のケアをおろそかにしがちです。

今回は日々の積み重ねで起こる、悲しみの乗り越え方についてお伝えします。

悲しみにふたをしない

看護師は患者さんが死を迎えたとき、遺族に対する精神的支援(グリーフケア)を優先しますが、そのぶん、自分自身の悲嘆に対するケアをおろそかにしやすい傾向があります。
「仕事で泣くのは看護師失格」「私よりも悲しいのは遺族」と、自分の感情を抑圧する頻度が高い場合、知らず知らずのうちに心がダメージを受けてしまい、無気力やむなしさ、無感情、不眠などさまざまな症状が起こることがあります。
このように職業柄起こる悲嘆のことを「プロフェッショナル・グリーフ」と呼び、日本でも該当者に対するケアの重要性が広まりつつあります。

私は、働き始めて2年目のとある夜勤で、患者さんが目の前で急に心停止して亡くなるという体験をしました。当時は自分のあまりの未熟さにがくぜんとし、「患者さんの最期に目に映ったものが、こんなに情けない私の姿で本当によかったのだろうか」と無力感や自責の念が消えず、プライベートでも延々と考え続けたことがありました。

その後も、たくさんの患者さんの死に立ち会う機会がありましたが、悲しみから立ち直るまでに時間がかかるケースは多かったように思います。
しかし、そんな私が患者さんの死を乗り越えられたいちばんの理由は、「きちんと、悲しんだ」ということです。
悲しみから目をそらし、無理に立ち直ろうと奮い立たせるのではなく、湧き上がるすべての感情を抱ききったことで、時間をかけながらも少しずつ前を向いて歩けるようになったと思います。

思いを吐きだす勇気を

私は看護師として25年働いてきた今でも患者さんの死に対し、涙することがあります。しかし、その涙は後悔や悲しさからくるものというより、「その人がご自身の人生を精いっぱい生き抜いたこと」に対する敬意からあふれ出るものへと変化しています。それは、さまざまな体験を重ねることによって培われた死生観にも関係していると感じています。

仕事以外の場面でも、「泣いてばかりいたら、身がもたない」「あのときもっと早く対処できたら、もう少し長く生きることができたかもしれない」と、悲嘆を心のなかに抱えてため込んでしまうと、ますます悲しみや後悔の思いは深まります。
まずは自分の思いを信頼できる誰かに話す、それが難しければ日記などに書きだして思いを吐きだすなど、何らかの形で発散することをおすすめします。

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